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プライム市場とは? 他の市場との違いや上場するメリット・デメリットをわかりやすく解説

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旧東証一部に相当するプライム市場は、東証一部と異なる部分が多く存在しています。上場が叶えば、企業の資金調達力とブランド信用度の向上が見込める一方で、コンセプトや上場基準を正しく理解できていなければ、ガバナンス強化を進めることも難しいでしょう。

本記事では東証市場の再編によって誕生したプライム市場の意味をはじめ、再編の背景、上場基準の違い、上場メリット・デメリットを中心にご紹介します。

プライム市場への上場を検討されている方は、ぜひご一読ください。

プライム市場とは?

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コーポレートガバナンスに対する変化として、2021年に起こったのが東証の市場区分の変更によるプライム市場の誕生です。

東証市場再編によってできた「プライム市場」

プライム市場は、東京証券取引所(東証)が生み出した新たな市場区分の1つです。東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQという4つの市場区分が、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編された結果、最上位に位置するのがプライム市場になります。再編時の移行対象は、主に東証一部に属していた企業が当てはまります。

3つの市場区分の中でも、プライム市場は最上位の市場であるがゆえに、かつて東証一部に上場していた場合であっても、基準を満たせない企業がいるほど、上場基準が厳しく設定されています。

市場再編の背景

市場区分の見直しが行われた背景は、主に2つあります。

1つ目は、市場区分におけるコンセプトの明確化です。これまでの市場区分では、東証二部、マザーズ、JASDAQの位置づけが曖昧でした。

市場区分が曖昧になると、投資の判断が難しくなり、投資家に負担がかかります。結果、海外投資家の興味・関心を得られず、市場の活性化につなげにくい状態となっていました。

特に近年はESG投資(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)に対する意識が高まり、企業は短期的な利益に加えて、中長期的な社会貢献を求められている状況です。このグローバル・スタンダードを市場区分に取り入れるためにも、今回の再編は重要であるといわれています。

2つ目は、上場における価値向上の動機付けです。これまでの基準は「上場しにくいが、残りやすい」という状態で、新規上場よりも上場維持の基準が緩いといわれていました。

この結果、上場後に企業が持続的な価値を求める動きが生まれにくく、格下げが必要な企業でも、東証一部上場企業として残り続けられることが問題視されていました。

それが今回の再編により、流動性、ガバナンス、経営成績・財政状態などの基準が明確化されることで、上場後も企業の積極的な価値向上を促すことが期待されています。

「スタンダード市場」「グロース市場」との違いとは?

プライム市場と、スタンダード市場、グロース市場の主な違いは、メインターゲットにあります。

プライム市場のメインターゲットは、海外投資家をはじめとした大口投資家です。そのため、世界各国の投資家と建設的な対話に重きを置いて、企業が持続的な成長と価値向上にコミットすることをコンセプトにしています。このことから、プライム市場に入る企業は、大口投資家の投資対象になり得るレベルの時価総額とガバナンス水準を満たす必要があります。

対して、スタンダード市場は一般投資家を、グロース市場はリスク許容度の高い投資家をメインターゲットにしています。

プライム市場と他の市場の条件の違い

ここではプライム市場と他の市場における上場条件について解説します。3つの市場における上場の基準は、以下のように定められています。

  プライム市場 スタンダード市場 グロース市場
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式数 20,000単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上
流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上

その他、スタンダード市場では収益基盤や財政状態、プライム市場ではスタンダード市場の条件に加え、売買代金も新規上場基準になっています。そして新たな市場区分では新規上場基準だけでなく、上場維持基準も明確に決められているのが特徴です。

どの市場も企業価値の向上を求められるため、企業は実現可能な価値発揮を基準にし、市場を選ぶ必要があります。結果として、プライム市場には大企業が、スタンダード市場には中堅企業が、グロース市場には新興企業が多くなりやすい傾向にあるようです。

プライム市場に上場するメリット・デメリット

ここではプライム市場について、企業が上場するメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

上場のメリット

プライム市場に上場するメリットは、資金調達です。プライム市場は海外投資家をはじめとした大口投資家をメインターゲットにしているため、国内外の幅広い投資家から資金を調達できます。

この資金調達を可能にするのが、プライム市場の上場基準です。プライム市場は再編によって、流動性、ガバナンス、経営成績・財政状態などを高い水準で維持しなければなりません。

つまり、プライム市場に上場していることは社会的価値があり、投資家にとって安心材料につながります。これは従業員にとっても同様であり、働くことに対する安心感や価値の向上により、モチベーションアップが期待できるでしょう。

上場のデメリット

プライム市場に上場するデメリットは、これまで以上に上場維持が難しい点です。プライム市場では他の市場に比べ、コーポレートガバナンスコードが厳しく設定されています。

  • 独立社外取締役の3分の1以上の選任
  • 英語での開示書類の提供
  • サステナビリティ情報の開示

これらの対応により、IR情報や経営企画など、投資家向けの情報提供資料の作成や、コーポレートガバナンスの維持に関わるコストが増大します。企業規模によっては、人材獲得や内部統制の構築の負担に耐えられない可能性もあるでしょう。

上場維持のコストは決して軽微ではないため、上場後の維持を前提とした対策を立てることが重要です。

申請の流れ

プライム市場に新規上場する場合、申請から承認が下りるまでに、主に7つのフローがあります。

  1. 上場申請エントリー
  2. 審査担当者・主幹事証券会社間での調整
  3. 申請書類の提出・ヒアリング対応
  4. 質問事項への回答
  5. 面談による適合審査
  6. 社長説明会の実施
  7. 上場承認

上場審査では、定量的な上場基準を満たしているかだけでなく、事業活動における継続性や収益性、経営の健全性、コーポレートガバナンスや内部管理体制の有効性なども踏まえて、総合的に判断されます。

まとめ

本記事では東証市場の再編によって誕生したプライム市場の意味をはじめ、再編の背景、上場基準の違い、上場のメリット・デメリットを中心にご紹介しました。

再編後の市場の中で最上位に位置するプライム市場は、新規上場・上場維持どちらの基準も高く、グローバルでの対応が求められます。一方で資金調達力に優れ、グローバル展開がしやすいため、事業成長を後押しする材料としても有効です。

特に近年はSDGsをはじめ、世界基準での取り組みが加速しています。そのうえで海外投資家の投資対象に入ることは、企業が持続的な価値向上を実現するためにも効果的であるといえるでしょう。

プライム市場への上場を考えている場合は、基準やフローを確認し、専門家の意見も交えながら、着実に検討材料を集めていきましょう。

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