「はたらく」選択肢を増やし、
多様な社会を目指すメディア。

正社員比率10%。“業務委託中心の組織”が生み出す新サービスとは

株式会社DeltaX

リモートワーク、副業・兼業、フリーランス、地方移住。個人の働き方が多様化するなか、企業における人材確保のあり方にも、変化が求められています。一方で、従来の“正社員雇用”を選択する企業が多いのも、また事実です。

そのようななか、“業務委託中心”の組織で事業・サービスの成長に挑んでいる企業があります。学習塾比較メディア事業を展開する、株式会社DeltaXです。

正社員比率は10%。エンジニアチームは全員業務委託。DeltaXはどのような考えで、この組織を構築し、目標に向けて走っているのでしょうか。お話を伺いました。

多様な働き方の組み合わせが、稼働効率を上げる

――まずは事業について教えてください。現在は「ベスト塾ガイド」という学習塾検索サイトを運営されていますね。

はい。私自身、これまでも学習塾比較メディアには携わってきましたが、なかなか難しい領域であり、ユーザーのニーズに応えきれていないと感じることがありました。DeltaXは、既存のサービスでできていないことを形にしたい、ニーズに応えきれていない現状を変えていきたいという想いで立ち上げた会社です。現在「ベスト塾ガイド」というメディアを運営していますが、実は近々大きなリニューアルを控えています。もしかすると、サービス名称自体も変わるかもしれません。

――リニューアルを通して、どのようなサービスを目指しているのでしょうか。

既存とは異なる学習塾の選び方を提案したいと考えています。まず着手したいのは、学校情報の掲載と、そこに合格者を輩出した塾の情報を紐づけることです。

学習塾の入り口に、「○○学校 合格者○名」などと張り紙がされているのを見かけたことがありませんか。 その張り紙は、学習塾を検討する方に「この塾に通って合格した方がいます」と伝えるのが目的であり、塾の実績を示す重要な情報だと思います。しかし、現在の学習塾比較メディアでは、学校名と塾の情報が紐づいていません。

塾は、志望校合格という目標達成のためのプロセス。だからこそ、学校名から塾を逆引きできるようにすべきだと考え、まずはそこを改善したいと考えています。

――現在の学習塾比較メディアでは、志望校と塾が紐づいていないのですね、知りませんでした。不便に感じる方が多そうですね。

学習塾の領域は、まだまだ情報格差があると感じています。身近に受験経験者がいたり、保護者同士で情報交換できたりする状況であれば良いですが、誰もがそういった環境にあるとは限りませんよね。本来であれば、その格差をインターネット上にある情報によって補填すべきなのですが、現在の学習塾比較メディアは、ユーザーが求めている情報を網羅しているとは言えません。

たとえば以前携わっていたサービスでは、口コミの充実を重視していました。もちろん口コミも大切ですが、自分が親となりユーザーの側に立ったとき、口コミがあるというだけでは、情報が不足していると気が付きました。口コミを書いた方は合格したのか否か、合格したときの偏差値はいくつなのか。ユーザーが本当に知りたいことって、きっとそういうことだと思うんです。

身近に情報を持っている方がいなくても、情報が手に入る。本当に求めている情報を知ることができる。それがインターネットの良さだと私は考えています。だからこそ今回つくるサービスでは、ユーザーが本当に必要とする情報の提供を成し遂げたいです。

――ありがとうございます。サービスを構築するスタッフのほとんどは業務委託契約を結んだフリーランスの方と伺っています。現在の組織構成を教えてください。

社員が4名で、業務委託の方は35名です。エンジニアチームは全員が業務委託契約です。

――なぜそのような組織形態になったのでしょうか。

時間は誰にでも平等で、1日24時間しかありません。企業として早急に前進したいフェーズにある今、時間をいかに有効活用するかを考えたとき、業務委託の皆さんの力を借りたいと考えました。

正社員の場合、勤務時間は平日の日中というケースが大半です。しかし、業務委託契約を結ぶ方のなかには、土日に働く方や、夜の時間帯に働く方もいます。すると、社員がお休みの間に業務委託の方が作業してくださったり、逆に業務委託の方がお休みの間に社員が成果物をチェックしたりが可能になる。トータルで見たときに、会社として稼働できる時間が増えるんです。

もちろん業務委託の方のなかにも平日の日中に働く方はいますので、一概に言えません。しかし、クラウドソーシングが浸透し、これまで多くの方にご依頼してきたなかで、成果物のクオリティの高さは実感していましたし、多様な働き方の組み合わせによる効果を理解していたのも事実です。

また、DeltaXのマインドとして「成果を上げてくださった方に報いたい」という想いが強くありました。報酬がすべてではありませんが、頑張った分だけ報われる組織の方が、働く人のモチベーションアップにつながる。業務委託契約は成果を上げた分だけ収入が増えていく仕組みなので、報いたい我々と成果が収入に直結しやすい業務委託のベクトルが一致したというのも、一つの理由ですね。

同じ目標に向かう仲間に、社員も業務委託もない

黒岩 剛史さん

――業務委託中心の組織について、エンジニアチームを例にとって具体的にお話を伺わせてください。まず、業務をご依頼するフリーランスの方は、どのようにして見つけているのですか。

私自身が知っている方にお声かけすることもありますし、知人からの紹介を受けたり、人材を紹介してくださるエージェント会社にお願いすることもあります。

――業務委託に限らず、新しい方に業務をお願いする場合、スキルやマインドのすり合わせが上手くいくか悩まれる企業も多いと聞きます。何か意識されていることはありますか。

我々も、ミスマッチを完全に防げているわけではなく、難しさを感じます。ただ、エンジニアであればスキルベースで「できる」「できない」を判断しやすいので、スキル面のミスマッチは比較的防ぎやすいのではないでしょうか。マインドは、働かないと分からないというのが正直なところ。合わなかったらやむなし、勉強代として考えるようにしています。

一方で、開発環境を整えたり、高いスキルをお持ちの方には正社員でいう役職・階級に相当するものを提示したりと、個人の方に働きたいと思っていただけるような体制整備には力を入れています。辞められてしまうのは、我々の責任によるところもあると思いますので。

――業務委託契約を結ぶエンジニアの方には、どのようにお仕事をご依頼しているのでしょうか。

業務委託に限った話ではありませんが、ミッション毎にアサインするという感覚でご依頼することが多いですね。もちろん「○○の言語を使ってください」「○○の考えでやっています」といったポイントは押さえていただきますが、それ以外の部分は、プロとしてお任せしています。業務委託だから権限を与えにくいと思ったこともありません。お任せするからには、決定権を渡さないとお任せしたとは言えませんからね。

――業務委託契約を結ぶメリットについてお聞かせください。

即戦力の方に入っていただけるのはメリットですね。今は育成する余力がありませんので、こちらから一つひとつ説明せずとも、プロとして適切に判断しながらご対応いただけるのは大変助かっています。

あとは、場所や時間にとらわれずに、優秀な方と一緒に働けるのもメリットだと感じています。営業職や販売職だと難しいかもしれませんが、エンジニア職であれば本来、その方の優秀さと居住地は関係ないはずです。しかし正社員として働くとなると、エリアを絞らざるを得ないことも多い。業務委託であれば、介護があるから出社できないという方も、地方移住したいという方も、関係なく一緒に働けます。時間も同様です。「子どもがいるから日中は働けないけど、子どもが寝たあとの夜なら働ける」という方も、業務委託なら受け入れられる。

場所と時間。その二つの制約がなくなることは、我々にとっても個人にとっても、メリットだと思います。

――実際、離れた場所に住む方もいらっしゃるのですか。

はい、エンジニアの方は東京以外に住まわれている方が多いです。業務委託の方のなかには、フィリピンの首都マニラから車で3時間ほどかかる場所に住んでいる方もいるほど。その方の生き方だと思うんですよね。コロナのおかげという言い方は変ですが、オンラインによるコミュニケーションが当たり前になったのは追い風だと感じています。

――4名の社員の方は、どのような働き方をされていますか。

社員もフルリモート・フルフレックス制を採用しています。フルリモートですが、オフィスをWeWorkに構えていますので、出社したければもちろん構いません。

――社員の方も自由度のある働き方ですね。

業態によってリモートワークやフレックスが難しいことは当然理解していますが、当社に限って言えば、時間や場所を制限した際のメリットはほとんどないと考えています。お客さまがいるなら仕方ありませんが、そうでないなら朝9時に必ずオフィスにいなきゃいけない理由もないし、毎日出社する必要もないと思っています。

私自身の経験から言えることですが、やることをやっている、ないしは終わっているのに、決められた場所に決められた時間いなければいけないのは辛いと思うんです。先ほどもお話しした通り、誰しも時間は1日24時間。時間を無駄にせず、無駄に使うくらいなら自分に投資してほしいです。

――業務委託中心の組織ゆえ、スタッフの多くが組織に属しておらず、なおかつ社員もフルリモート・フルフレックスで場所や時間に縛られない。自由度が高い一方、経営者としては、全員に同じ方向を向かせる難しさを感じませんか。

「今世の中で実現できていないサービスを作ろう」という企業としての大きな目標があり、それについては、社員にも業務委託の方にも、まんべんなくできる限り伝えるようにしていています。そこに理解を得られていれば、進む方向に迷ったりバラつきが生じたりすることは、抑えられるのではないでしょうか。

「社会への貢献」や「自分の仕事がどのような結果を生むのか」を想像できる方が働きやすいと思いますが、特に今回は“塾”という分かりやすいテーマがあります。そして「新しい選び方をする」というプロダクトもイメージに難くありません。目標とやるべきことがストーリーとして結び付けやすいのは、皆の理解を得る一助になっていると思います。

継続契約していただける確率が高いのも、理解が得られており、なおかつ「面白い」と思ってもらえているからこそではないでしょうか。

――目標を共有し共感が得られていれば、場所も契約形態も関係ないんですね。

そうですね。社員であろうが業務委託であろうが、関係ないと思っています。意識もあまりしていません。我々としては、目指すべきものに対して一緒に向かっている、一緒に作っているという感覚を共有することが重要だと考えています。

“差分”を、生み出し続ける

黒岩 剛史さん

――現在、業務委託中心の組織を構成されています。今後目指す姿はありますか。

意思疎通ができていること。それゆえに、たとえ課題にぶつかっても、それぞれの現場レベルで正しく判断できるような組織を目指したいと考えています。私は企業のトップとしてメッセージを発信する役目を担っていますが、だからといって私に忖度することなく、間違っていることは間違っていると言い合える、そのような状態が理想ですね。そのためには、業務委託の方に第三者として意見いただくことも欠かせないと思っています。

――ありがとうございます。最後に今後の展望をお聞かせください。

社名に入っているデルタ(Delta)は、数学の微分積分のデルタで、「差分」という意味を持ちます。世の中に大量のサービスが溢れかえる現在、今までにない新しい領域のサービスをつくることは正直難しい。しかし、既存のサービスにちょっとした変化をつけることで、まったく違うものが生まれてくると考えています。

まずは学習塾の領域で。その後はまた別の領域で。我々はそうやって既存サービスとの違いを、“差分”を、ずっと生み出し続ける会社でありたいと思っています。

取材後記
業務委託中心の組織。インタビュー前はイメージできないことも多くありましたが「社員も業務委託も関係ない」と何度もおっしゃる姿を見て、決して特別なことではないのだと感じました。しかし、組織として成立させるためには、ビジョンを的確に伝え、成すべきことを共有し、そのうえで正しく評価していくことが重要です。個人の働き方の多様化に伴い、雇用の形にとらわれない組織づくりを考えてみてはいかがでしょうか。
and HiPro編集部
パーソルキャリア株式会社
and HiPro(アンドハイプロ)は、「『はたらく』選択肢を増やし、多様な社会を目指す」メディアです。雇用によらないはたらき方、外部人材活用を実践している個人・企業のインタビューや、対談コンテンツなどを通じて、個人・企業が一歩踏み出すきっかけとなる情報を発信してまいります。

この記事が気に入ったら「シェア」

POPULAR

人気記事

DAILY
WEEKLY

SERVICE

HiPro サービス

HiPro Direct

企業と副業・フリーランスをつなぐ
マッチングプラットフォーム

HiPro Biz

経営課題解決に取り組む企業向けの
経営支援サービス

HiPro Tech

フリーランスITエンジニア専門の
IT・テクノロジー特化型エージェント