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ジョブ型人事制度とは? メリット・デメリットと失敗しない導入方法を解説

ジョブ型人事制度とは? メリット・デメリットと失敗しない導入方法を解説
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近年、これまでの終身雇用や年功序列が前提のメンバーシップ人事制度から、ジョブ型人事制度に方針転換する企業が増えています。とはいえ、従来の人事制度を変更することで、混乱を招く恐れがあると懸念する人事担当者の方もいるでしょう。

本コラムでは、ジョブ型人事制度のメリット・デメリットや実際の導入事例をご紹介します。ジョブ型人事制度の導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

ジョブ型人事制度とは

ジョブ型人事制度 イメージ画像

ジョブ型人事制度とは、業務内容や就業場所、責任範囲を明確に定めた「ジョブディスクリプション(職務記述書)」にもとづいて雇用契約を結ぶ人事制度です。労働時間や勤続年数ではなく、職務や役割に応じて評価されます。

海外では、ジョブ型人事制度が積極的に採用されています。一方、従来の日本ではメンバーシップ人事制度が主流であり、ジョブ型人事制度を導入しているのは一部の企業に留まってきました。しかし近年、導入や導入を検討する企業も増えてきています。

パーソル総合研究所が行った調査では、ジョブ型雇用・人事制度を導入検討・導入済の企業は57.6%にもおよんでいます。

ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 調査結果

引用:ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 調査結果(2021/株式会社パーソル総合研究所

ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度の違い

従来の日本型の雇用システムは「メンバーシップ型人事制度」と呼ばれ、終身雇用や年功序列制度など勤続年数に応じた給与体系が基本です。この制度は社員を組織の一員として採用する意味合いが強く、企業が社員の能力や適性をみて、部署異動やジョブローテーションを行うのが一般的です。

一方、ジョブ型人事制度は、業務内容や責任範囲を明確に定めて雇用契約を結びます。異動や転勤は基本的になく、報酬は仕事の成果やスキルに依存します。年齢や勤続年数も関係ありません。

ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度は、さまざまな点で異なる制度といえるでしょう。

ジョブ型人事制度が注目される背景

終身雇用制度の限界

近年日本の終身雇用制度は、グローバル化やはたらく環境の変化にともない、時代にそぐわなくなっています。終身雇用制度は年功序列による給与体系であり、能力の高い人材が適切な評価を受けにくい点がデメリットでした。

また、人材の流動性が低く、必要なタイミングに人材を集中できず海外企業との競争において不利になるケースも少なくありません。

そもそも終身雇用制度は、企業や経済が成長することを前提とした制度設計です。雇用が保証される点は従業員にとってメリットといえますが、企業にとっては固定費が大きな重荷にもなります。

このように終身雇用制度は、めまぐるしく変化する社会に対応するにはそぐわない点が多く、ジョブ型人事制度へ移行する理由の一つとなりました。

コロナ禍以降のはたらき方の変化

人々のはたらき方を見つめ直す大きなきっかけは、新型コロナウイルス感染症の流行です。テレワークや在宅勤務が爆発的に増加し、本来「働き方改革」で見直されるはずだった長時間労働やワーク・ライフ・バランスが、コロナ禍という外的要因により一気に具現化したといえます。

はたらき方の多様化が進んだ一方、リモートワーク下における業務管理の難しさや、対面によるコミュニケーションの不足などの課題も生まれました。しかし、ジョブ型であれば職務内容や範囲が明確であるため、リモートワークや在宅勤務とも相性が良いとされています。

少子高齢化による企業のダイバーシティ化

少子高齢化による労働力不足解消のために、ダイバーシティ化に取り組む企業が増えている点もジョブ型人事制度が注目され始めた要因の一つです。ダイバーシティとは多様化を指し、ここでは「はたらき方の多様化」を意味します。

ジョブ型人事制度は、ジョブディスクリプションやスキルをもとに採否を決定するため、国籍や年齢などに捉われません。家事や育児をしながらはたらく人や、外国人労働者をはじめとした多種多様な価値観の人を採用する際は、ジョブ型人事制度のほうが受け入れやすいでしょう。

ジョブ型人事制度のメリット

ジョブ型人事制度の導入で企業にどのようなメリットがあるのか確認していきましょう。

即戦力の人材を採用できる

ジョブ型人事制度では求めるスキルを明確化して採用活動を行うため、専門分野に特化した人材を採用しやすいメリットがあります。また、能力に応じた給与設定をすることで待遇が良くなる傾向にあるため、採用活動における競争力も高まるでしょう。

求人を出す際は、業務内容や業務遂行に必要なスキル・経験を明示しておくことが重要です。求職者があらかじめ業務内容を把握でき、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。

業務の効率化につながり生産性が向上する

ジョブ型人事制度は、業務内容や責任範囲が明確化されており、ジョブディスクリプションに記載のない業務を依頼されることはありません。従業員は自身の業務に専念できることで効率化しやすくなり、結果的に組織全体の生産性が向上する点もメリットです。

リモートワークの勤務体制に合っている

リモートワークは自由な就業場所ではたらけるという利点がある一方で、チームや部下の勤務実態が見えにくい側面があります。

しかし、ジョブ型人事制度はジョブディスクリプションに業務内容や評価基準が明記され、成果やスキルに応じて評価する制度です。常に目に見える範囲にチームや部下がいなくても問題になりにくく、リモートワークの勤務体制にマッチしているといえます。

リモートワークを導入する企業が増えるにつれ、ジョブ型の人事制度を導入する企業も今後増加していくでしょう。

ジョブ型人事制度のデメリット

ジョブ型人事制度にはデメリットもあります。ジョブ型人事制度導入の妨げとなっているデメリットについて詳しく解説します。

人材雇用が難しい

ジョブ型人事制度が進んでいる欧米では、専門性の高い人材が豊富で、流動性も高いのが特徴です。一方、長らくメンバーシップ型人事制度を導入してきた日本は、ジョブ型人事制度の認知度は高くなく、適した人材も欧米に比べて少ないといえます。したがって、求めるスキルによっては、人材獲得が困難になることがあります。

また、せっかく優秀な人材を獲得しても、他社に魅力的な募集があると容易に引きぬかれてしまうリスクも懸念材料です。

柔軟な配置転換ができない

ジョブ型人事制度の場合、ジョブディスクリプションで業務内容や就業場所が定められており、基本的に部署異動や転勤ができません。したがって、繁忙期や閑散期の人員増減や優秀な人材を配置転換するといった、柔軟な対応をしにくいことがデメリットです。

スキルが広範囲にわたるゼネラリストが育ちにくい

ジョブ型人事制度では専門性が磨ける反面、企業全体を把握して経営判断できる幹部候補の育成が困難です。

幹部候補を育成したい場合、企業は早い段階で人材を選抜・育成していくことが重要です。本人の希望を聞きながら個別でジョブローテーションを実施するなど経験の場を設け、自社でゼネラリストが育成できる体制を整える必要があります。

ジョブ型人事制度の給与体系

ジョブ型人事制度ではスキルの高さや成果に対して報酬が発生するため、能力が高ければ年齢に関係なく昇格する可能性があります。一方、職務が遂行できないといった場合は減給の可能性も否定できません。前述のとおり、勤続年数で一律に給与が増えるわけではなく、個人の評価で昇給が決まります。

さらに、家族手当や住宅手当など、職務と関係のない報酬をカットする企業も多くあります。ジョブ型人事制度を導入することで「給与を上げるためには、職務で成果を出す」というシンプルな構造になるでしょう。

ジョブ型人事制度の導入方法

ジョブ型人事制度をスムーズに取り入れるためには、何から始めればよいのでしょうか。導入の流れを紹介します。

適応範囲を検討し業務内容を洗い出す

ジョブ型人事制度の導入は企業全体に混乱が生じる恐れがあるため、計画的に進めていくことが重要です。まずは、どのポジションに対してジョブ型人事制度を導入するのか、適応範囲を慎重に決めましょう。

その後、業務内容の具体的な洗い出しを行います。洗い出しの方法には、従業員に記述してもらう方法と、面談でのヒアリング方法があります。自社に合った方法で、漏れのないように洗い出してください。

ジョブディスクリプションの作成

業務内容の洗い出しが終わったら、ジョブディスクリプションにその内容を記載します。従来の雇用制度でいう「募集要項」と混同されがちなジョブディスクリプションですが、募集要項とは異なり、職務内容や求められる資質、スキルなどを詳細に記載しなければなりません。

ジョブディスクリプションに記載する項目の例は以下のとおりです。

  • 職種
  • 役職
  • 所属
  • 上司、部下の数
  • 職務内容
  • 目標
  • 評価方法
  • 必要なスキル
  • 給与・待遇
  • 勤務体系

ジョブディスクリプションは雇用契約を結ぶときだけでなく、職務に就いた後の評価にも使用するため、後々齟齬がでないよう慎重に作成してください。

ジョブディスクリプションをもとに評価・給与の検討

ジョブディスクリプションが完成したら、評価基準や等級、給与を設定します。給与は、職務内容や等級に見合ったものにしましょう。

また、他社より条件が劣っていると、引き抜きにあうリスクが高まります。自社の基準ではなく、競合調査などで市場の相場を知り、業務内容に適した報酬を設定しましょう。

社内通知・定期的な制度の見直し

ジョブ型人事制度を導入する際、ジョブ型雇用の社員と既存制度が適用される社員の間で不公平感が生まれないよう注意しましょう。ジョブ型人事制度を導入する目的や制度の内容は、既存制度が適用される社員へ丁寧に説明する必要があります。

導入後、検討を重ねて定期的に制度を見直すことも大切です。社員全体がはたらきやすくなるように配慮しましょう。

ジョブ型人事制度導入の失敗を防ぐ方法

メンバーシップ型人事制度を採用している企業がジョブ型人事制度を導入することは、容易ではありません。スムーズに導入するためのポイントを紹介します。

一部の職種・ポジションから段階的に始める

職種・ポジションによっては、メンバーシップ型人事制度の方が適しているケースもあります。そのため、社内の混乱を避けるためにも、いきなり全社員にジョブ型人事制度を適用するのではなく、段階的に導入すると良いでしょう。

たとえば、専門職は職務内容がわかりやすくジョブ型人事制度に適しています。職責がわかりやすいため、管理職でも導入しやすいでしょう。

ジョブ型人事制度を必要としているのはどの職務・ポジションなのか検討し、徐々に導入していくと効果も得られやすくなります。

メンバーシップ型人事制度と掛け合わせたハイブリッド型で運用する

ジョブ型人事制度の導入の際に、メンバーシップ型人事制度と完全に入れ替える必要はありません。どちらもメリット・デメリットがあるため、双方のメリットを享受できるようハイブリッドで運用している企業もあります。

新卒や若い社員はメンバーシップ型人事制度によって、部署異動など多様な経験を積むことが可能です。一方、経験豊富な中高年層や管理職には、ジョブ型人事制度を導入することで専門性を上げやすくなるかもしれません。

場合によってはジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度を併用して、より良い組織運営を実現しましょう。

ジョブ型人事制度を採用している大手企業と導入事例

ここからは、ジョブ型人事制度を導入した企業の事例を紹介します。

ITソリューション会社/A社の事例

A社はまず幹部を対象にジョブ型人事制度を導入しました。トップダウン方式で社長から本部長に思いを伝える機会を多数設け、現場にジョブ型人事制度を導入する意義や理由を説明することで、徐々に理解が深まっていったそうです。

その後、一人ひとりの成長や挑戦を後押しするため、一般社員もジョブ型人事制度へ移行しました。

総合家電メーカー/B社の事例

B社は10年ほどまえにグローバル路線に舵を切ったことがきっかけとなり、ジョブ型人事制度を導入し始めました。グローバル企業として国や地域をまたいで事業に取り組むにあたって、同じ場所・時間で一緒にはたらくことを求められる「メンバーシップ型」では通用しないためです。

キャリア形成のサポートやはたらきやすさの創出にも力を入れており、ジョブ型人事制度を導入することで従業員が能動的に自身のキャリアを築きやすい体制構築に努めています。

また、新卒でも職種別のジョブ型採用を導入している点も注目です。

まとめ

ジョブ型人事制度を導入することにより、生産性の向上が見込めるだけでなく、即戦力の人材が確保できる効果も期待できます。ただし、従来のメンバーシップ型人事制度が浸透している日本企業では、導入するうえでの課題があるのも現状です。

ジョブ型人事制度を取り入れた日本企業の多くは、一部の職種・ポジションから導入を始めています。ジョブ型人事制度の導入に失敗しないためにも、対策を講じたうえで慎重に進める必要があるでしょう。

コロナ禍以降のはたらき方の変化により、従来のメンバーシップ型人事制度を見直す時代に突入しています。本記事を参考に、ジョブ型人事制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。導入の際は、人事領域の専門家の支援を受けることも有効です。

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