
【複数名募集】北海道の大学発スタートアップで副業CXO!(応募期限:2/28中)

北海道内にある大学などから「研究開発型スタートアップ」を創出し、地域の経済活性化を図ろうと、道内の大学や高専、専修大学が参画している創業支援プラットフォームが「北海道未来創造スタートアップ育成相互支援ネットワーク」(略称:HSFC/エイチフォース)です。ここには「叡智の力」という意味も込められています。 本記事では、2025年から運営メンバーに加わり、プログラム共同代表を務める北海道大学の工学研究院教授・永田 晴紀さんに、HSFCの特色や目指すところ、北海道でスタートアップに携わる魅力などについて話を伺いました。

北海道大学工学研究院 教授/北海道大学スタートアップ創出本部(HSFC)共同代表永田 晴紀 氏
航空宇宙工学を専門とし、特にハイブリッドロケット推進システムの研究で国内外を牽引する研究者として知られる。東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了後、日産自動車宇宙航空事業部を経て北海道大学に着任し、長年にわたり航空宇宙推進・燃焼現象の基礎から応用に至る研究を展開。CAMUI型ハイブリッドロケットの開発やノズル浸食メカニズムの解明等、多数の実機・実験的研究を通じて宇宙技術の小型化・高効率化に貢献。JAXAの「革新的超小型衛星」プロジェクト推進班代表として小型宇宙機の推進系研究にも携わるなど、宇宙開発領域での国際共同研究と社会実装への橋渡し役を担っている。産学連携・地域連携の推進者として、研究者と産業界・ベンチャーとの協働を促進し、大学発スタートアップ支援にも力を注いでいる。
HSFCは、道内大学・高専からのスタートアップ創出を通じて、北海道の産業構造転換と持続可能な地域社会の実現を目指すため2021年に立ち上がった全道規模のプラットフォームです。科学技術振興機構(JST)のSCORE事業を契機として始動し、その後START事業等の採択を受けながら発展してきました。現在は、北海道大学・小樽商科大学を主幹機関に、道内21大学・4高専・1専修大学が参画しています(2026年1月時点)。
HSFCでは、大学の研究成果と事業化の間のギャップを埋める「GAPファンド(※1)」を中核とした研究成果の事業化支援があり、研究者や起業支援人材、事業化推進機関が連携した伴走型支援体制を整えています。
さらに国際市場を視野に入れた成長型スタートアップ(ユニコーン型)と、地域課題解決を担う定着型スタートアップ(ゼブラ型)の2つを併存させている点が大きな特色となります。研究から起業、事業成長までをエコシステムとして継続的に回す仕組みづくりを目指しています。
※1研究成果を事業として成立させるためのギャップを埋めるため、具体的な中間目標を設定し、ビジネスモデルの構築や試作品製作、仮説検証に向けたデータ整備等を進める支援プログラム
HSFCの基本思想は、「北海道を“課題先進地域”から“世界的課題解決先進地域”へ転換すること」です。北海道の地域経済の活性化はもちろん、日本全体、ひいては地球規模の社会課題解決に貢献できる大学発スタートアップの創出をビジョンに掲げています。
その実現に向け、「アグリ・フード」「環境・エネルギー」「創薬・ヘルスケア」の3重点領域を設けています。最終的には、人材、知、資金が循環する「北海道発スタートアップ創出モデル」を構築し、基金事業終了後も自走が可能なプラットフォームとなることを目標としています。

まずは、北海道のローケーションに優位性があります。ロケットを打ち上げるには東側か南側に海がひらけている必要があります。専門的な話になりますが、もともと打ち上げには静止軌道(※2)を使う事例が多かったのですが、最近は北極や南極の上の極軌道(※3)を使う事例が増えています。気象衛星など全球の観測用途の増加に伴い、地球の全体を見ることができる極軌道の需要が増えました。
極軌道を使う場合、真南に打つのですが、自転を打ち消すため少しだけ西側に向けて打ちます。そして、緯度の高いほうが打ち上げには適しており、トータルで考えると実証や実験を行うには北海道の立地がベストなのです。
もう一つは土地の広さです。まだまだ使える土地がたくさんあり、フィールド実験がしやすい恵まれた環境です。
※2 静止軌道:地球の自転と同じ周期(約24時間)で周回し、地表から見て常に同じ位置に見える軌道。
※3 極軌道:地球の北極と南極付近の上空を通る軌道。地球の自転により、時間とともに地球全体をくまなく観測できる。
私がHSFCを通じて生まれてほしいと考えているソリューションは「宇宙からの地球観測データの利活用とマネタイズ」です。
現在、宇宙でデータを収集する技術そのものは確立していますが、そのデータを農業や水産業など具体的な産業の課題解決に結びつけ、価値として引き出す取り組みは、まだ十分に進んでいません。
たとえば、衛星データを活用することで、農産物の生育状況や収穫量の予測、作物の疫病の広がりの把握が可能になるでしょう。こうした活用は、今後さまざまな分野へと広げていけるはずです。
ですので、地球観測データという技術や研究を用いて、「誰の、どのような課題を、どの産業分野で解決するのか」を明確にし、具体的なソリューションとして社会実装までつなげるスタートアップが生まれることを期待しています。そのようなスタートアップであれば、宇宙データのマネタイズも十分に実現できると考えています。
やはり、農業をはじめ一次産業の基盤が極めて充実していることではないでしょうか。北海道大学をはじめとする道内の各大学は、恵まれた環境に研究所や実験場を設け、長年世界的にも有数の規模を持つフィールドサイエンス基盤を活用した研究に携わってきました。特に酪農や畜産業の研究フィールドは他地域に比べ、群を抜いていると思います。
こうした実証フィールドや研究者層の厚みを生かし、スマート農業やフードテック、環境再生型農業といった分野における技術開発が可能なのは強みだと考えます。
農林水産業の担い手不足や高齢化、食料需要増大と環境負荷の両立、地域産業の付加価値向上といった点が、大きな社会課題だと考えています。アグリ領域の研究成果を事業化することで、持続可能な食料生産システムの構築や、地域に根差しつつグローバル展開できるスタートアップの創出、環境と経済が両立する新たな産業モデルの実現を目指します。
個人的には、北海道には素晴らしい原材料が豊富にある一方で、そのポテンシャルを十分に生かし切るための六次産業化(※4)や付加価値づくりは、まだ伸びしろが大きいと感じています。
だからこそ、北海道という「実証可能な現場」を生かして、新たな技術やビジネスモデルを生み出し、原材料の価値を高めていくことが重要です。HSFCを通じて、こうした取り組みを推進するスタートアップが育っていけば、北海道の農林水産業に留まらず、食料問題や環境問題といった地球規模の課題に対しても、解決モデルを提示していけると考えています。
※4 六次産業化:一次産業(生産)に、加工(二次)や流通・販売(三次)を組み合わせることで、1×2×3=6の「六次」ととらえる考え方。農家自らが加工品づくりや直販まで行い、付加価値を高める取り組み。

私が積極的に立ち上げを主導したわけではなく、もともとは海外からのインターン生が「ベンチャー企業を立ち上げるべきだ」と言い始めたのがきっかけです。当初は、そのインターン生が海外で会社を立ち上げ、私たちが日本で作った会社で製造したハイブリッドエンジンを卸す構想でした。しかし、安全保障の問題などさまざまな障壁があり、その話は立ち消えになり、結果的に日本側の会社だけが残る形になりました。
とはいえ、せっかく設立した会社ですから、今度は私たち自身の手でハイブリッドエンジンを販売していこうという話になりました。研究室内で一緒に取り組むメンバーを募ったところ、これまでの研究を社会実装したいという思いを強く持っていた2名の研究者が集まり、共同代表を引き受けてくれました。
私と共同代表2人はいずれも研究者で、もちろん経営経験はありません。そのため当時は、北海道大学の産学・地域協働推進機構に起業や経営面で大変お世話になり、同機構に勧められた公募事業にもいくつか挑戦しました。その中でも、2021年に行われた内閣府主宰の宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」への参加は、大きな学びの機会になりました。
書類審査を経て選抜されたファイナリストには、ベンチャーや投資界隈のプロがメンターとして伴走し、ビジネスプランの作り方やプレゼンテーションの方法などを、最終プレゼンに向けて徹底的に指導してくれる仕組みです。
メインで動いていたのは共同代表の2人で、私は横で話を聞いていることが多かったのですが、それでも勉強になる点は非常に多く、事業化にあたっては起業や経営のプロに伴走してもらうことの重要性を強く実感しました。

仕事というのは社会づくりです。会社に就職するにしても、自身で起業するにしても「仕事をする=社会づくりに関わっている」のだと思います。社会づくりにおいて一番大事な姿勢は、社会に足りないものを自分で見つけ、課題解決へ向けて活動することです。ですから「社会に足りないものを見つけてくれる」方に参画していただきたいと思っています。
我々としては「これをやってほしい」という要望はなく、逆に「こういうのが必要ですよね?」と提案し、気付かせてくれるような方、そしてより良い社会づくりのために「やってあげたい」というマインドを持っている方を歓迎します。そうしたマインドを持つ方が増えてこそ、社会は発展していくのだと思います。
それぞれの研究分野や事業フェーズで求める、細かなスキルやキャリアは異なるでしょうが、一番大切なのはそこだと思います。ただ、「やってあげたい」というマインドや熱意は、自分にできること(能力)がなければ湧いてきません。そういう意味ではさまざまな経験を積み、何かしらの能力が備わっている方というイメージはありますね。
好きなことは能力を伸ばしますが、好きなことと仕事を混同しないことが大切です。これはLetaraでの経験からですが、研究者は自分の好きなことを研究しているので、自分の研究や技術に対してこだわりがあるんです。
でも、事業化においてのトッププライオリティーは、より良い世の中を実現することなので、もっといいソリューションがあるなら、そこにこだわってはいけません。ですから、今回募集するCxO人材はその辺りを客観的かつ俯瞰で捉えられる方であることは大事だと思います。
北海道は海外の研究者らにも人気のエリアです。収入が下がっても北海道で暮らしたいという欧米の優秀な研究者がLetaraにもたくさんいます。雪質の良いフィールドでウインタースポーツが楽しめるほか、暮らしやすいという印象があるようです。そこも北海道の強みなのかもしれません。
先ほど話した内容と重なりますが、経営側の人材に求められるのは、まず「こういう社会を作りたい」という思いです。そして北海道に足りないものを見つけ出して課題解決し、事業化することが、将来的には日本全体、地球全体のためにもなっていくと思います。そもそも日本のためにも、北海道が率先してやらなければならない課題もあります。
それが、HSFCが掲げる「医・食・環境」の重点領域です。北海道の地域特性を生かしたスタートアップを創設し、北海道からより良い未来を創造するために自身の能力を生かしたいという方をお待ちしています。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。