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都市そのものが“実験場”になる。ビジネス創造拠点「LiSH」で研究と実証がつながり、100年先の事業が動き出す

都市そのものが“実験場”になる。ビジネス創造拠点「LiSH」で研究と実証がつながり、100年先の事業が動き出す

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JR山手線の品川と田町の間、49年ぶりに新設された高輪ゲートウェイ駅は、従来の再開発とは一線を画す新しい街「TAKANAWA GATEWAY CITY」への入口でもあります。駅周辺約10haの土地に広がる街全体を「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置付け、先端技術の実証やビジネス・文化交流を促進させる試みを展開しています。 その中心となるのは、ビジネス創造拠点「LiSH」*です。広域スタートアップエコシステムの核として有力なスタートアップを支え、大企業の新規事業部を含む約150の会員が入居しています。 LiSHとはどんな魅力を持ったビジネス空間なのか、その全体像について運営母体であるJR東日本の中島 悠輝さんに伺いました。さらに実際にLiSHの会員となってビジネスチャンスを広げているスタートアップ 株式会社メタジェンの李 哲揆さんを加え「なぜLiSHに来るとビジネスが加速するのか」を双方の視点からお話しいただきました。 *LiSH:TAKANAWA GATEWAY Link Scholar’s Hub。「Link Scholar’s Hub」は、多様で先端的な知や技術を持つ人(Scholar)をつなげ、かけあわせる(Link)ことで新たなビジネス・文化を想像することを目指した名称。頭文字をとったLiSHを愛称としている。

中島 悠輝

東日本旅客鉄道株式会社中島 悠輝 氏

マーケティング本部 まちづくり部門品川ユニットチーフ。新卒入社後、不動産領域の業務に従事し、エキナカシェアオフィス「STATION WORK」を社内提案し、POC・ローンチ・スケール・事業売却を実行。2025年より高輪ゲートシティ内のビジネス創造オフィス「LiSH」を担当。

李 哲揆

株式会社メタジェン李 哲揆 氏

株式会社メタジェン 東京R&Dセンター センター長。腸内デザイン®に関わる新規ビジネス創出を目的とした研究開発プロジェクトを統括。博士(農学)。

次世代都市開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、100年先を見据えた実験場

2025年3月に「まちびらき」し、未開業施設の開業とともに2026年3月にグランドオープンを迎えるTAKANAWA GATEWAY CITYのコンセプトをお聞かせください。

中島さん:まず街づくりの一番大きなテーマが「100年先の心豊かなくらしのための実験場」です。100年先という未来を目標に掲げ、都心の一等地約10ヘクタールを「実験場」と位置づけています。街全体を実験のフィールドとして、さまざまな社会課題に取り組み、新しいビジネスを起こすことを目指しています。「実験場」ですから、試行錯誤を重ね、失敗をしながらも100年先を見据えて進もうという都市構想は、とてもユニークだと思っています。

このエリアは、150年前は海でした。日本で初めての汽車を走らせるために石垣(高輪築堤)を築いた地で、私たち鉄道会社にとって鉄道の原点ともいえる重要なレガシーが刻まれた場所です。そうした背景も、TAKANAWA GATEWAY CITYの長期的な展望につながっています。

TAKANAWA GATEWAY CITY(来街者10万人規模)の街全体が「実験のフィールド」であることをイメージできる例はありますか?

中島さん:たとえば私たちの会社はSuicaのデータを持っています。一方でTAKANAWA GATEWAY CITYの中にはさまざまなセンシングデバイスが設置されていて、人の動態データが収集できます。どこから来た方が、この街でどういう行動をして去っていくのかを把握できるプラットフォーム(都市OS)があり、Suica×都市OSの圧倒的なデータベースを構築できます。

このデータを活用すると、たとえば人流によってその街の微生物構成がどう変わるかを研究できます。実際に、その成果を都市デザイン(微生物多様性を促すランドスケープ提案など)に落とし込むスタートアップもLiSHで活動しています。

これは一例ですが、実証実験を存分にできる環境がTAKANAWA GATEWAY CITYにはあり、実験のタネを持っているスタートアップが、ビジネス創造拠点「LiSH」に集まってきているのです。

「TAKANAWA GATEWAY CITYは、鉄道開通の歴史を伝える場所です。遺構から掘り出された石垣は歩道の一部に使っていますし、築堤を再現したエリアも今後オープンします」と中島さん。

交通至便、駅直結のビジネス創造拠点「LiSH」。ビジネスのタネと人が交差するところ

ビジネス創造拠点と呼ばれる「LiSH」は、コワーキングスペースとシェアラボを備えた複合施設ですが、その狙いや構想について教えてください。

中島さん:街全体が実証実験の場であると言っても、それを活かすには、実験のタネを持っているスタートアップが必要です。100年先を見据えてビジネスのタネを生み、優れた技術力で大きく育てていくスタートアップの発信基地としてLiSHを構想しました。

「100年先の心豊かなくらし」を実現するために、TAKANAWA GATEWAY CITYは「環境」「モビリティ」「ヘルスケア」「地域創生」と4つの重点テーマを掲げていますが、LiSHに入居するスタートアップの事業領域もおおよそこの4つに該当しています。数年先には更新されてしまうような技術ではなく、100年後のビジョンを描いた時でも世の中に必要とされるテーマ、世の中を大きく変えるかもしれない技術を持ったスタートアップを迎え入れたいと考えています。

LiSHの特色はどんなところにありますか?

中島さん:一つ目の特色は、やはり街全体を実証実験のフィールドとして活用できることです。都市OSをベースにしたデータを収集できる利点だけでなく、街には数多くの大企業のオフィスや大型商業施設等があり、実験の被験者を募集するとすぐに集まる環境があります。実証実験に理解のあるプレーヤーが大勢いて、LiSHの実験が街のコミュニティに広がっていくイメージです。

二つ目は、大規模なウエットラボ設備があり、バイオ系の実験ができることです。都心におけるシェア型のウエットラボは希少です。共同エリアと専用エリアがあり、共同エリアでは他者と共同研究がしやすいですし、専用エリアでは知財をしっかりと保全しながら研究活動をしていただけます。息の長い研究テーマである「ヘルスケア」「環境」領域を重視しいていたことから、「LiSH」の構想にウエットラボの設備は必須のものでした。

三つ目は、専門家(法務・会計など)によるサポート体制です。スタートアップが大企業と協業する際、契約書の精査などのご相談がよくあります。また、高輪地球益ファンドによるファイナンス面での支援も行っています。

なぜLiSHに来るとビジネスが加速するのか?スタートアップがLiSHに入居するメリット

では、ここからはLiSHに入居されているスタートアップの方を加えてお話を伺います。

李さん:株式会社メタジェンの李です。LiSH内にある東京R&Dセンターのセンター長をしています。腸内細菌の研究成果をもとに、腸内環境の改善を通じて健康向上を目指している会社です。食品等が腸内環境に与える影響の研究をはじめ、一人ひとり異なる腸内細菌叢のタイプに基づいた「パーソナライズ腸活商品」の共同開発や開発支援、監修などをしています。

先ほど、TAKANAWA GATEWAY CITYのテーマとして「100年先の心豊かなくらし…」という言葉が出ましたが、私たちも「100年後に病気をゼロにする」というビジョンを描いています。

中島さん:メタジェンが専門領域にされている「ヘルスケア」や「環境」は、永遠のテーマとも言えるもので、一緒にLiSHを盛り上げてくださっている企業です。

メタジェンの実証実験として実施されているのが、ワーカー向けのランチスペースでメタジェン監修のランチメニューを展開し、食べた方々の腸内環境をトレースしていくプログラムです。

李さん:実証実験は、被験者集めが大変という制約があるのですが、中島さんたちがLiSHに入居するさまざまな企業に呼びかけてくださり、多くの方の協力を得られて大変助かっています。実証実験がスムーズに運ぶのはLiSHの大きなメリットです。

また、それ以上に私が強く感じていることは、これまで、まったく出会う場のなかった企業と接する機会が増えたことです。LiSHには、スタートアップだけでなく大企業の新規事業開発部なども入っているため、ヘルスケア領域に興味を持っている企業とお繋ぎいただき、そこから実際に進みつつあるコラボ企画もあります。

中島さん:LiSHには、さまざまな強みをもったスタートアップに入居いただいていますが、大企業の新規事業開発を手掛ける部署も多く集まっています。大企業における新規事業開発部署は、スタートアップに対する関心は非常に高いと思います。

個別の声掛け以外に、企業同士を結び付けるための施策はありますか?

中島さん:LiSHのような施設には、日々会員同士の距離を近づける「お節介役」が大事です。施設運営にはJRの社員が10名程度関わっていますが「お節介役」となる人を充実させるため、外部の企業にも入ってもらっています。

オープン以来、さまざまなテーマで毎日のようにイベントを開催し、会員同士が近しくなるお手伝いをしています。仕事に直接関係のないテーマのイベントでも、好奇心や人脈を広げる意味で参加される方も多くいます。

李さん:私たちの企業も単独主催でイベントを開くことがあります。参加した皆さんからは、「LiSHに来てみたかった」という声が上がります。特に反響があるのが、地方の企業の方々で、利便性のある場所に拠点となるラボを持つことは、ビジネス推進の力になると感じています。

ビジネスを進めるためにアクセスの差は大きいですか?

李さん:もちろんです。以前、ラボがあった場所は都外の最寄り駅からも遠いところで、テレワーク希望のメンバーがほとんどでした。LiSHに移り、出社が増えてコミュニケーションの質もパフォーマンスも上がりました。人材募集時も以前は場所がネックになりましたが、今は首都圏から広く専門人材を募れるようになりました。

中島さん:やはりさまざまな情報や技術、人・モノ・金は東京に集まってくるので、都心にスタートアップの拠点があることは、ビジネス展開上、大きなメリットになります。一方で、まだまだそういった施設は少ないので、私たちがここ高輪でLiSHを作ったわけです。

「高輪ゲートウェイ駅直結のため、地方にある企業も足を運んでくれます。利便性のある場所に拠点となるラボを持つことは、ビジネス推進の力になると感じています」と李さん。

未来志向の会社がLiSHに集まる。失敗の先にある新しいビジネスとは

LiSHに入居する会社の特徴や共通点はありますか?

中島さん:「100年先の心豊かなくらし」を掲げているので、未来志向で新しいビジネスを作っていこうという思いが強い点は、企業の規模に関わらず共通していると思います。

また、ウエットラボがあることによってライフサイエンス系、バイオ系のスタートアップの比率が高いです。バイオ、ライフサイエンス系のスタートアップが集まることによって、そういうスタートアップと協業したいという大企業の方も集まってくるという、よいスパイラルになっています。

李さん:スタートアップのうち半分くらいがライフサイエンス系でしょうか。こんなに入っている施設は他に聞いたことがありません。しかも、研究の方向性がバラバラで、共同ラボを使っていると「この会社はこんな研究をしているのか」と知ることもできます。「面白そうだから一緒にできないかな」と協業の可能性を考えたりします。

中島さん: 最近は自治体の会員も増えています。単なる東京事務所という位置づけではなく、自治体や自治体がご支援している企業さんがやりたいことをサポートしています。地方のスタートアップも面白いビジネスのタネを持っています。あるいは自治体が抱えている社会課題について、LiSHの会員企業をご紹介してソリューションにつなげるといったこともしています。

最後にLiSH入居スタートアップの支援を検討しているプロ人材にメッセージをお願いします。

中島さん:LiSHはマス向けの広告は打っていないので知る人ぞ知る存在だと思います。会員の企業と私たちは、未来志向というビジョンを共有しています。この街で、失敗を恐れずたくさんの実験を重ね、ビジネスのタネを育てていきたいと考えています。「どうやら高輪に来ると、さまざまなことができるらしい」という街にしていきましょう。

お節介役のチームLiSHとして、スタートアップの成長課題を応援していきます。スタートアップの挑戦を支援したいという想いをお持ちの方は、ぜひHiPro Directに掲載している案件に応募してみてください。

李さん:LiSHは、常に誰かが声をかけてくれるシェアオフィスです。様子を聞いてくれたり、新しい情報を持ってきてくれたりします。会員同士の交流を促すイベントでは、想像もしなかったシナジーの可能性を感じたりできます。

LiSHは仕事場であり、交流を楽しめる場でもあるので、一緒に楽しみ尽くしましょう。

100年先の豊かなくらしを形づくる挑戦は、すでに動き始めています。研究と実証が連動するこの街で、未来をつくる事業にあなたの力を届けませんか。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

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