HiPro Direct Logo
ビジネスの力が医療を変える。アジアへ繋がる医療系スタートアップエコシステム「QUICK」が目指す新薬・医療機器等開発の未来

ビジネスの力が医療を変える。アジアへ繋がる医療系スタートアップエコシステム「QUICK」が目指す新薬・医療機器等開発の未来

対象の案件はこちら

2024年9月、基礎研究の成果を実用化に向けて橋渡しする文部科学省の支援事業「大学発医療系スタートアップ支援プログラム(橋渡し研究プログラム)」に、九州大学が採択されました。この事業下で立ち上がったのが、九州・沖縄・西日本を拠点にアジア、そして世界へと繋がる医療系スタートアップエコシステム「QUICK (Quantum University Innovation Cycle from Kyushu)」。 QUICKは日本医療研究開発機構(以下AMED)の基金を利用して、革新的な医薬品・医療機器等を開発する研究者・スタートアップを支援していきます。スタートアップという特性上、医薬関係者のみならず、CEOやCFO、CTOなど、開発戦略や資金・事業計画などを立案できる高いスキルや経験を持つ「CxO人材」が欠かせません。 本記事ではQUICKを統括する戸高 浩司さんのほか、スタートアップ創出の実務を担う「生命科学革新実現化拠点」の塩﨑 真さん、原田 佑佳さんを交えて、QUICKが目指すものや求める人材について聞きました。

戸高 浩司

九州大学病院ARO次世代医療センター 教授・センター長/QUICK統括戸高 浩司 氏

心不全の基礎研究後に九州大学病院、済生会福岡総合病院、国立循環器病センター等に循環器専門医として勤務後、厚労省の医薬品医療機器審査センターに臨床医学審査官として出向し新薬、医療機器等の承認審査に従事。九大病院 循環器内科に帰任後、同院ARO次世代医療センターの設置に伴い准教授、教授としてARO基盤を整備すると共に、アカデミア発新薬・医療機器等開発に注力。2022年から現職。

塩﨑 真

九州大学 生命科学革新実現化拠点 橋渡研究推進部門 特任教授塩﨑 真 氏

30年以上にわたり製薬会社で創薬研究に従事。2025年に九州大学内で産学官連携を先導する九大OIP株式会社に入社。現在は九州大学 生命科学革新実現化拠点へ出向中。製薬会社での経験を生かし、アカデミア発シーズの発掘から起業支援を手掛ける。EIR(Entrepreneur in Residence:客員起業家)を兼任。専門はメディシナルケミストリー(創薬化学)。

原田 佑佳

九州大学 生命科学革新実現化拠点 橋渡研究推進部門 助教/一角創生室室長原田 佑佳 氏

前職では、中枢領域における薬効・薬理評価、新規事業部で企画立案の業務に従事。統括課長としてマネジメントを担ったのち、2022年より現職の生命科学革新実現化拠点に参画。医薬品・医療機器開発の非臨床PMとしてアカデミア発のシーズの実用化支援を担当している。

「日本で生まれた革新的新薬・医療機器等を世界に届ける」ことが我々の願い

2024年に九州大学が採択を受けた「大学発医療系スタートアップ支援プログラム」とは、どのようなものですか。

戸高さん:日本ではノーベル賞受賞者をはじめとする優秀な研究者がいて、医療に関わる貴重な発見をしてきました。しかし、そうした研究成果に基づいた新薬や医療機器等の実用化は少ないのが現状です。

その背景には、基礎研究によるシーズ発掘から実用化(医薬品・医療機器等の開発)への〝橋渡し〟が十分に機能していないという課題がありました。その橋渡し支援を行う拠点をアカデミアに整備すべく、2007年に文部科学省の「橋渡し研究支援推進プログラム」が開始されました。

「橋渡し」の取り組み自体はすでに18年前から始まっていたのですね。

戸高さん:18年間の取り組みで成果も少しずつ出ていますが、画期的な発見をしても、その実用化は創薬分野で圧倒的な強みを持つアメリカを中心に行われます。日本で「種」を発見しても「実」は海外で形になるケースが多いのです。莫大な投資に見合う収益を得るためには、「種」を「実」にするための研究開発資金を自ら調達するスタートアップを立ち上げ、実用化後にライセンス販売等でリターンを得る仕組みづくりが必要です。

こうした経緯を経て、2024年度に「橋渡し研究プログラム」の一環として「大学発医療系スタートアップ支援プログラム」が始動しました。九州大学は、5年間で30億円という大きな基金を活用する本プログラム拠点に選ばれました。

2026年1月にはインキュベーション施設「エフラボ九大病院」も開設されますね。

戸高さん:1階にインキュベーション施設、2~3階には我々九州大学や病院のARO/橋渡し研究支援機関が入居するインキュベーション・シェアラボです。たとえばアメリカではボストン近郊にハーバード大学やマサチューセッツ工科大学等の大学・研究機関が集結して切磋琢磨しながら研究開発が盛んに行われているように、技術開発を進めるスタートアップ企業と学術機関の距離が近く、連携しやすい環境を作ることで、高い相乗効果が生まれることを期待しています。

エフラボ九大病院の完成イメージ。ライフサイエンス特化型拠点として、シェアラボやコワーキングスペースを提供し、グローバルに活躍する創薬プレイヤーの育成を目指しています。

西日本のアカデミア、アジアの医療関係者と強固な連携

医療系スタートアップエコシステム「QUICK」には、どんな特徴や強みがありますか。

戸高さん:掲げたテーマは「九州・沖縄・西日本を挙げてアジアへ繋がる医療系スタートアップエコシステム」です。このエコシステムを、「QUICK( クイック) 」と名付けました。

九州大学には西日本の29大学が加盟する「WAT-NeW」という橋渡し研究ネットワークの拠点があり、さまざまなシーズが集まる土壌があります。また、学内の「アジア・オセアニア研究教育機構」は各地域でフォーラムを開催する等、海外の組織や人材を巻き込んだ研究に取り組んでいます。西日本からアジア・オセアニア地域に及ぶ広域なネットワークを活用できるのが、QUICKの強みです。

海外とネットワークを構築することで、どんなメリットがありますか?

戸高さん:その地域でしか開発できないような薬の研究ができます。熱帯地域は特に感染症の課題が大きいのですが、たとえばデング熱の薬を開発しようと思っても患者のいない日本では臨床試験ができません。海外ネットワークがあれば、その地域で臨床試験も実施できるのです。

九州大学・病院における一連の橋渡し事業のキーマンとなっている戸高さん。

「WAT-NeW」との連携はどのような利点がありますか?

戸高さん:「WAT-NeW」の加盟大学にはさまざまなシーズがあり、QUICKには研究費と開発を支援する人材リソースがあります。QUICKの研究費と専門家を活用できるため、各大学の研究者が持つ有望なシーズが集まってきやすい環境にあります。有望な研究には国としてしっかり予算をつけるべきで、その一部を我々がお預かりしているわけです。

QUICKの取り組みが始まって1年が経ちましたが、進捗状況はいかがですか。

原田さん:QUICKの活動開始から1年が経ち、研究者コミュニティにおいて、QUICKの取り組みが徐々に広がりつつあると実感しています。

現在、九州大学の拠点全体では、実用化に向けて支援しているシーズが約150件あります。そのうちQUICKの採択シーズは11件です。これらのシーズに対しては、CxO人材のマッチング、薬事・知財戦略の策定等、研究開発と事業化の両面からプロジェクトマネージャー(PM)が伴走型の支援を行っています。

支援を開始したばかりの段階ではありますが、今後、着実に実績を積み重ねていくことで、QUICKが提供する支援がシーズの実用化を一層加速させ、研究者やベンチャーキャピタル(VC)からも注目される拠点に成長していきたいと思っております。

QUICKは九州大学を起点に、シーズ発掘からCxO人材マッチング、起業支援等を通して革新的な医薬品・医療機器等の実用化を推進します。

ビジネス的観点で事業性を見極め、企業価値を算定できるCxO人材に期待

医療系スタートアップの立ち上げに向けて、どのような課題がありますか。

塩崎さん:人的リソースが圧倒的に不足しています。製薬会社では研究者だけで400~500人がはたらくケースもざらで、加えて外部CRO*との連携も活発です。一方、九州大学拠点では臨床試験に携わるスタッフも含めて約100人前後です。研究者だけでなく医師や特殊技能を持った人材が集う強みを活かす上でも、さらに多くの人材獲得が必要です。

*CRO=コントラクト・リサーチ・オーガニゼーション。医薬品開発業務の受託機関

求めるCxO人材については、どのような役割をイメージしていますか?

戸高さん:まず想定しているのが経営人材です。スタートアップという、ただでさえ非常に難しい時期の舵取りをしなければならない上、新薬開発の成功確率は大変低く、成果が見えるまで時間もかかります。事業の見極めをするためには、経営に知見のある人材に入ってもらうことが必要です。

原田さん:役職でいえばCEOやCFO(最高財務責任者)といった経営層に相当する役割を想定しています。例えば、TPP*を設定する段階でビジネス的な観点から助言を行ったり、ベンチャーキャピタルの見解をヒアリングし、研究者と共有したりすることで、研究シーズの実用化に向けた具体的な課題が明確になります。

「どのような課題設定が適切か」、「どのようなデータを取得すべきなのか」といった点について経営人材、PM、研究者がそれぞれの立場から議論を重ねることで、研究計画の精度が高まり、実用化に近づくと思います。

*TPP=ターゲット・プロダクト・プロファイル。医薬品開発において開発する製品が目指すべき具体的な目標や特徴

塩﨑さん:市場や新薬開発の将来予測等も踏まえ、スタートアップの10年後、15年後の価値を見積もるには、極めて高度なスキルが必要です。そうしたスキルを持つ人材は医薬業界でもレアだと思います。企業価値判断という意味では、分野は異なりますが、金融機関、商社でM&Aや投資の経験のある人等が、実は適任ではないかと思います。

CxO人材は関東・関西に集中している傾向にありますが、九州でスタートアップに関わりたいという方へメッセージをお願いします。

原田さん:医薬品開発の業務経験がなくても、日々の暮らしの中で、医療や健康に触れ、関心をもたれた方もいらっしゃると思います。医薬品開発は、多様な専門家が必要です。これまで培ってこられた経験を生かしてスタートアップ創出のメンバーとして活躍してもらえると嬉しく思います。

また、今回のプロジェクトではCxO人材には基本的にリモートで対応いただき、必要な場合は出張という形で直接打合せを行う形を想定しています。QUICKが目指す姿に共感いただける方には、まずはぜひエントリーいただければと思います。

「仕事として医薬の分野に関わったことがなくても、関心があるという方は大歓迎です」と語る原田さん。

塩﨑さん:アメリカでは、バイオテクノロジー関連の企業、大学、研究機関等が東海岸(ボストン、ニューヨーク)、西海岸(サンディエゴ、サンフランシスコ)に分かれて存在し、切磋琢磨しながらアメリカ全体の創薬エコシステムを支えています。

一方で、日本は実質的に東京への一極集中型といえるでしょう。日本のモノづくり力復活には複数の技術創出拠点が、競争を通じて継続的にレベルアップすることが不可欠です。私が福岡に移ってきた理由の一つもそこにあります。私と同じような思いを持つ人に日本の西海岸ともいえる九州に是非来ていただきたいです。

「医薬も含め、日本のモノづくり復活のためには地方に産業を興すことが大切」と語る塩﨑さん。

戸高さん:QUICKでは医療系スタートアップを創出し、資金調達からリターン獲得に向けた支援を行いますが、最終的な目標は「治療法がなくて苦しんでいる患者さんに、新薬や医療機器等を届けること」です。

営利目的の民間企業は、大きなリターンの見込めない発展途上国で薬を開発することは少ないでしょう。そうした部分をカバーするのが私たちアカデミアの役割です。QUICKは医療分野の研究成果を社会実装しビジネスとして成立させつつ、アジアをはじめとして全世界のアンメット・メディカル・ニーズ*に対応して行きます。

*アンメット・メディカル・ニーズ=現在の医療技術や薬剤では対応できない疾患に対する医療ニーズ

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

SNS Link

facebookxlinkedinline

対象の案件はこちら