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価値観の変化がトリガーに。副業・フリーランス市場の今後と、求められるサービスとは

弥生株式会社、パーソルキャリア株式会社

近年「働き方の多様化」という言葉が定着し、個人も企業も働き方の見直しを迫られています。

働き方の多様化と聞くと、リモートワークや労働時間の減少といった、ワークスタイルの自由化を想像されるのではないでしょうか。しかし「働く機会を増やしたい」「本業とは異なる場所で経験やスキルを発揮したい」というニーズに応えることも、実は働き方の多様化の一種。近年注目を集める副業・兼業、フリーランスとしての働き方もその一端です。

多様な働き方を希望する個人の数は、どのように推移しているのでしょうか。また、そうした変化に伴い、副業やフリーランスのマーケットには、どのようなサービスが求められているのでしょうか。

今回は中小企業や個人事業主をはじめ副業者やフリーランスの方も活用できる多くのサービスを展開する弥生株式会社の土屋さん(写真右)と、パーソルキャリア株式会社の鏑木さん(写真左)をお招きし、お話しを伺いました。

価値観の変化と、政府の後押し。成長が見込まれる副業・フリーランスのマーケット

――近年、働き方の多様化の一つとして、個人の方が副業・兼業を始めたり、社員からフリーランスに転換する動きが見られます。副業や、フリーランスという働き方を選ぶ個人の数はどのように推移しているのでしょうか。

鏑木:個人事業主をはじめ、フリーランスとして活動していたり、副業や兼業をされたりする方は、以前から一定数いらっしゃいました。しかし、新型コロナウイルスの流行によって働く個人を取り巻く環境や、働き方に変革が起き、副業・フリーランスを目指す個人は急速な増加傾向にあると見られています。

たとえば、リモートワークの浸透によって、自分でコントロールできる時間が増え「もう一つ仕事をやってみよう」と考える方が増えました。また、不安定な環境下にある会社を案じ「正社員という働き方を見直そう」と考える方も出てきました。そうした個人の価値観の変化がトリガーとなって、副業や兼業を始めたり、フリーランスに転換する動きが拡大しているのだと思います。

土屋:弥生でも、企業や開業を検討している個人のお客さまからのお問い合わせ数は確実に増えてきていますね。お客さまの声を聴いていると、やはり働き方の多様化の流れを受けて、実際に副業やフリーランスで仕事を始めて、起業や開業するケースが増えているのだと実感します。

鏑木:「副業の始め方」や「個人事業主になるにはどうしたらいいか」といった、問い合わせが多いのですか。

土屋:弥生の場合は、すでに個人事業主として活躍されている方からの問い合わせが多いですね。たとえば「想定より売上が出てしまったので、税務に関する相談をしたい」といって税理士の紹介を求めているものや、確定申告の方法で「青色申告と白色申告、どちらが適しているか教えてほしい」といったご相談もあります。

鏑木:仕事を始めて生まれる、リアルな悩みですね。私も副業をしていますが、確かに税務処理などは本当に複雑。すべて自分でやろうとすると大変だと思います。弥生さんはそうした側面から「働き方の多様化」を支えていらっしゃるんですね。

土屋:企業側の受け入れ体制は、どうご覧になっていますか。

鏑木:副業やフリーランスを希望する個人が増加する一方で、企業側の受け入れ体制は整っているとはいえません。日本の労働力不足は深刻な課題でありながら、副業・フリーランスに業務を依頼する企業は、現時点では一部の企業に留まっているため、市場には、副業・フリーランスとして働きたい個人の数に対して、仕事が足りていない状態です。はたらき方の変化に対して企業が追い付いていない状況ですね。一方で、自社の社員の副業を解禁する企業も増えてきているため、副業やフリーランスのマーケットは今後、成長していくのではないかと見込んでいます。

事業課題の解決に、プロ人材という新たな選択肢を

鏑木陽二朗

――パーソルキャリアでは、副業者やフリーランスと企業をつなぐサービスを展開されています。改めてサービス内容や、サービスを立ち上げた経緯をお伺いさせてください。

鏑木:我々が展開するのは、副業やフリーランスといったプロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」です。

HiProブランドの傘下にあるのは、経営支援サービスの「HiPro Biz(ハイプロ ビズ)」。企業と副業・フリーランス人材のマッチングプラットフォームサービスの「HiPro Direct(ハイプロ ダイレクト)」。IT・テクノロジー領域特化型エージェント「HiPro Tech(ハイプロ テック)」です。2011年に立ち上げた、プロ人材活用で企業が抱える事業課題を解決に導く「i-common(アイコモン)」が、HiProの前身です。

土屋:10年以上も前から取り組まれていたのですね。

鏑木:そうなんです。当時、採用競争が年々激化しており、中小企業やスタートアップ・ベンチャー企業は人材確保が難しい状態が続いていました。経営を揺るがす問題にぶつかっても相談できる相手がおらず、新しいことを始めたくて、人材を採用したくてもなかなかうまくいかない。そのような状況を目の当たりにしていました。一方で、当時は“35歳転職限界説”などと言われていて。どんなに高い専門性やスキルがあっても年齢を重ねると転職先がない、なんてことが当たり前に起きていたのです。

課題を抱える企業を支援する仕組みと、個人のスキルを活かせる仕組みをつくれないだろうか。その二つの課題を考えていくなかで辿り着いたのが、個人の経験や専門性を活かして事業課題を解決する「i-common」サービスでした。

土屋:実は弥生でも過去にHiPro Bizを活用させていただいているようです。社内報の企画や、研修講師紹介、開発本部におけるビックデータ解析の専門家など多岐にわたります。企業側の直面する課題も複雑化していますし、そういった高いスキルを持つ人材獲得も容易ではありません。プロ人材を提案いただけるのは大変魅力的ですね。実際、プロジェクトがスムーズに立ち上がり、成果が得られる良さを実感しているそうです。ところで、プロ人材として登録されている個人に傾向はありますか。

鏑木:HiPro全体で考えると、業界・業種問わず、幅広く、多くの方に登録いただいています。役職でいうと、元役員・取締役といった経営層はもちろん、CTOをはじめとするテック領域のデジタルに精通した方、また実際にワークすることを得意とする方もいらっしゃいます。支援領域では、トレンドテーマであるDXやESG関連に対応できる方も増えていますね。

土屋:幅広い方が登録されているんですね。話は変わりますが、弥生も社員の副業を推奨しています。弥生は個人事業主向けのサービスも提供していますし、社員が副業することでユーザーの立場で自社製品を利用したフィードバックができるという期待もあります。ただ、副業するといっても、すぐに仕事案件を得ることも難しいと思いますので、HiProのようなサービスは、これから副業を始める人にとって有難い存在ですね。

鏑木:ありがとうございます。私も副業をしている一人ですが、おっしゃるとおり仕事を探すのは簡単ではなく、副業・兼業者、フリーランスの方の8割強が人脈経由で仕事を獲得しているとも言われています。役職があると人脈が作りやすくなることもあり、現在、副業・フリーランスとして活躍されている方は役職を持った方に偏る傾向がありますが、若い方でも、役職がない方でも優秀な方は多くいますよね。

副業したい、フリーランスとして活動したいと考える個人に、平等に機会が与えられる環境をつくることは、HiProの使命の一つだと考えています。

「事業コンシェルジュ」として、スモールビジネスの発展を支える

土屋 貴幸

――弥生では、個人事業主をはじめとしたスモールビジネス向けのサービスを展開されています。改めて、ビジョンやサービス内容をお聞かせください。

土屋:弥生は、長年「弥生会計」をはじめとする、業務効率化のためのソフトウェア提供を中心に事業展開してきました。ですが、近年は「スモールビジネスの困りごとを解決する事業コンシェルジュ」を会社のビジョンとして掲げ、サービスの提供領域を拡大して、価値ある新たなサービスの提供を開始しています。

「事業コンシェルジュ」とは、事業者の皆さまが事業を立ち上げ、運営し、そして広げていく上で直面する様々な課題やお悩みにお応えできるように、より広い領域でお客様のお手伝いをする存在です。

このビジョンを実現するために、近年特に注力しているのが、「事業支援サービス」と呼んでいるものになります。私のチームが担当するのは、「起業・開業ナビ」「税理士紹介ナビ」「事業承継ナビ」という3つのサービスになりますが、ご紹介させていただきますね。

副業・フリーランスとして活躍する個人の方に一番親和性が高いのが「起業・開業ナビ」です。こちらは起業構想から事業開始後までを5つのステージに分け、それぞれに合わせたサービスを提供しています。たとえば起業構想のステージでは「起業・開業あんしんガイド」として、起業するまでに必要な手続きやお金に関する基礎知識などを提供しており、税金のシミュレーションなどもできます。設立・開業のステージでは、画面に沿って操作するだけで、ユーザー自身で企業の設立に必要な定款などの書類を作成できて、登記申請もできる「弥生のかんたん会社設立」というサービスを提供しています。もちろん、ご自身でやるのは難しいという場合には、専門家に依頼する「弥生の設立お任せサービス」もご用意しています。

鏑木:反響はいかがですか。

土屋:「弥生のかんたん会社設立」はサービスを立ち上げて2年半ほどですが、有難いことにユーザー数は右肩上がりで増え続けている状況です。会社を作るために必要な定款などの書類を自分で作れたり、自宅から申請できたりと、手続きが安く気軽にできる点が、起業を目指す方に受け入れられているのだと感じています。

鏑木:私も法人化について調べたことはありますが、かなり複雑だと感じました。その分かりにくさにメスを入れて、難しい手続きが身近になるサービスをつくられたのは、非常に価値のあることだと思います。

土屋:続いて「税理士紹介ナビ」ではその名の通り、中小企業や個人事業主の方に弥生のパートナー会計事務所(弥生PAP会員)をご紹介するサービスです。冒頭でもお話ししましたが、税金や経費処理に関するお問い合わせは本当に多くありますが、税理士や公認会計士でないと対応できない内容もあります。そうした課題に対して会計事務所をご紹介するものです。

鏑木:「この経費は計上できるのだろうか」といった小さな疑問を始め、経費処理に関しても悩むことは多いですよね。簡単に税理士とつながれて問題が解消されるというのは、かなり魅力的なサービスなのではないでしょうか。

土屋:直近でいえば、電帳法対応やインボイス制度が話題になっていますよね。そのようなご相談にも対応しております。ちなみに、弥生では個人事業主向けのコンテンツなども多数ご用意していますので、是非ご活用ください。

最後の「事業承継ナビ」ですが、事業承継に課題を抱える中小企業に、事業承継についてご案内するサービスです。日本では経営者も高齢化しており、廃業を考える企業も少なくありません。そうした企業に対して、事業継承に関する情報や、M&Aでの取引をサポートしています。最近では、個人の方がM&Aで事業を買いたいというニーズも多く、副業や事業を始める方法として、スモールビジネスを承継するケースも増えてくると思います。

鏑木:個人M&Aは、少し前に話題になりましたよね。良い技術を持っていても事業継承できずに廃業されてしまった企業は、有名なところでもいくつもありました。情報提供やサポートを通して事業継承の流れを生み出していくのは大切なことだと思います。

土屋:事業継承していただいて、会社を大きく育てていって、そしてまた引き継いで…。事業承継サービスは、まだ立ち上がって間もないサービスですが、そうして途切れることなくビジネスが循環していく世界をつくりたいと考えています。

伸びゆくマーケットを、けん引する存在へ

――両サービスとも、現在、成長期にあるかと思います。今後の展望をお聞かせください。

鏑木:個人がもつスキルや経験が1社に留まることなく、広く社会に解き放たれること。解き放たれたスキルが企業の課題解決に活かされること。そうした「“雇用によらない働き方”が浸透した社会」をつくることが、HiProの成すべき使命だと考えています。そのためにもまずは、個人には新しい働き方を、企業には新しい人材活用のあり方を、一つの選択肢として受け入れていただけるようアプローチし続けなければなりません。お客さまに価値あるサービスだと感じていただき、マーケットをけん引する存在を目指していきたいですね。

土屋:ビジネスには、事業を立ち上げて、軌道に乗せて、大きく育て、次に引き継いでいくという一連のライフサイクルがあります。そのいずれの段階においても、お客さまを強力に支援できる体制を構築したいというのが、弥生の想いです。「弥生会計」や業務ソフトは高いシェア率を誇りますが、周辺領域を支援するサービスとしてはまだまだこれからです。個人の働き方が多様化すれば、支援のあり方も変わっていきます。多くのお客さまに選んでいただけるようなサービスを目指して、サービス開発に取り組んでいきたいと思います。

副業・フリーランス人材を含む、スモールビジネスは日本の事業者の9割近くを占めており、日本経済の根幹を担っているといっても過言ではありません。「事業コンシェルジュ」としてスモールビジネスを営む皆さまの発展を支えることは、ひいては日本経済に貢献することだと考えています。

鏑木:HiProのサービスを介して個人がスキルを発揮し活躍できるようになった先には、起業や会計処理・税務といった課題が待っているのだと思います。そうした悩みを抱えたときに、弥生さんが「事業コンシェルジュ」として受け止めてくださるのは頼もしい限りです。個人事業主をはじめ、副業・フリーランスの方の活躍を支える企業同士、今後も協力していきましょう。

and HiPro編集部
パーソルキャリア株式会社
and HiPro(アンドハイプロ)は、「『はたらく』選択肢を増やし、多様な社会を目指す」メディアです。雇用によらないはたらき方、外部人材活用を実践している個人・企業のインタビューや、対談コンテンツなどを通じて、個人・企業が一歩踏み出すきっかけとなる情報を発信してまいります。

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