新規事業で誕生した「長尺広告幕」。
プロ人材と協業して広告のテンプレートを制作。
わずか1か月で初年度年間売上の4割超を達成。
企業
社名:有限会社興和化学工業所
所在地:福井県福井市
業務内容:プラスチック加工業
従業員数:50名未満
プロ人材
名前:Oさん(フリーランス)
居住地:神奈川県
経歴:メーカーにて営業・企画を経験後、デザインの道を志し、デザイン専門学校に入学。デザイン会社にてデザイン開発・企画に従事。その後デザイン事務所を設立し、ロゴ・ブランドマーク制作、会社案内やパンフレット、WEBサイトを中心に、広報・広告やパッケージなど販売促進に関連するデザイン制作業務を行う。
<プロ人材としての活動>
業務内容:「パトミル」用のデザインテンプレートの制作
活動頻度:月20時間程度
活動方法:リモート
- 自社開発の長尺広告幕の事業拡大に必要なテンプレート制作を担うデザイン人材が不足。
- デザインスキルだけではない。技術と事業への理解度を重視して人選。
- 需要の高い利用シーンを想定し、多種多様な汎用テンプレートの制作を依頼。
- 120種類以上のテンプレートが営業活動を後押し。初年度年間売上の4割超を1か月で達成。
1)プロ人材活用の背景
自社開発の長尺広告幕の事業拡大に必要な
テンプレート制作を担うデザイン人材が不足。
当社は、不織布・フィルム・繊維・紙などのロール素材に対し、印刷・コーティング・ラミネートなどの加工・製造を手掛けています。
これまで培ってきたノウハウや技術を活かし、約2年前に立ち上げた新規事業が、独自開発の長尺広告幕「パトミル」です。企業のロゴやイベント名、メッセージなどを幕に繰り返し配置することで、広範囲にわたって情報を効果的に訴求できる製品です。遠くからでも視認性が高く、認知拡大や販売促進が期待できるほか、一般的な横断幕と比べて3割ほどコストを抑えて導入できる点も強みとなっています。
「パトミル」の展開にあたっては、お客様により手軽に利用いただけるよう、イベント会場での「立ち入り禁止」表示など、用途ごとに活用できるテンプレートの整備を進めたいと考えていました。テンプレートを制作するためには、文字の大きさや配色、ピクトグラムの配置などを検討し、視認性や訴求力を高めるデザイン設計が欠かせません。しかし、当社にはデザインの専門人材がおらず、社内だけで対応することは難しい状況でした。
また、社内でデザイナーを一から育てようとすれば時間もコストもかかります。加えて、新規事業の立ち上げ段階だったため、専任のデザイナーを社員として雇うほどの業務量があるわけでもありません。そのため、これまでは地元のデザイナーへ制作を依頼していましたが、今後さらにテンプレートの種類を増やし、事業を拡大していくためには、新たな方法を検討する必要があると感じていました。
そうした中、取引のあった地元の金融機関から紹介されたのが「プロ人材活用」という選択肢です。当社としては「パトミル」の事業成長を加速させたいという思いがあり、テンプレートの充実は重要なテーマでした。そのため「都市部を含む幅広いエリアから専門性の高いデザイナーと出会えるのでは」と期待し、プロ人材の活用を決めました。
2)応募状況・決め手
デザインスキルだけではない。技術と事業への理解度を重視して人選。
「パトミルの広告幕のデザイン・レイアウト作成」をテーマに募集したところ、10人のプロ人材から応募をいただきました。その中から2人と面談を行い、最終的に依頼を決めたのがOさんです。人選にあたっては、デザインスキルや実績だけでなく、それ以上に重視したのは「当社の製造工程や印刷機の特性を理解した上で対応いただけるか」という点です。というのも、「パトミル」は輪転印刷機を用いて製造するため、デジタルプリンターやインクジェットプリンターとは異なる制約があります。デザインや配置の仕方によっては、実際に印刷・施工した際に見え方が変わってしまうこともあるため、印刷機の特性を踏まえたデザイン設計が欠かせません。どれほど優れたデザインでも、こうした条件を理解していなければ、製品として成立しないためです。面談では、輪転機ならではの制約やデザイン上の注意点について説明しましたが、Oさんはその内容をすぐに理解し、的確に受け止めてくださいました。専門性だけでなく、当社のものづくりへの理解力の高さに安心感を覚えました。
さらに、Oさんの事業への関心と共感も大きな決め手となりました。面談後、正式なご依頼をお伝えする前の段階で、Oさんは「パトミル」が掲出されているイベントの会場まで足を運び、実物を見に来てくださったのです。その際「このビジネスはとても面白いですね」と声をかけていただきました。製品そのものだけでなく、価格の優位性や使いやすさ、市場での可能性についても高い関心を持ってくださり、事業に深く共感していただけていることが伝わってきました。単に制作業務を引き受けるだけではなく、当社の技術やサービスの価値を理解し、共に事業を育てていこうという姿勢を感じられたことで、「ぜひこの方と一緒にパトミルを成長させていきたい」と確信し、依頼を決めました。
3)依頼した業務、業務を進める上での工夫
需要の高い利用シーンを想定し、多種多様な汎用テンプレートの制作を依頼。
協業開始後は、まず当社側で「どのような場面でパトミルの需要が見込まれるか」を整理するところから始めました。その内容をOさんに共有し、需要の高い用途を想定した汎用テンプレートの制作を依頼しました。対象となったのは、花火大会やマラソン大会などのイベント、駐車場での案内表示、商業施設のセール告知案内など多岐にわたります。当社では利用シーンの洗い出しに加え、制作の優先順位付けまで行い、Oさんには実際のデザイン制作を担っていただきました。
制作したテンプレートは「駐車場はこちら」「バス乗り場はこちら」などの案内表示や、「立ち入り禁止」などの注意喚起、「〇〇セール中」といった販促向けのものまで幅広く、多様な利用シーンを想定して制作を進めました。Oさんには「屋外の広い空間や人が集まる場所で、誰にでもわかりやすく情報を伝える」という視点で、利用者目線のデザインを提案いただきました。
また、制作にあたっては、Oさんに実際に福井の工場までお越しいただき、印刷機械や製造・印刷工程を直接見ていただく機会を設けました。現場をご覧いただくことで、「印刷が切り替わるピッチの境目には複雑なデザインを配置しない」といった技術的な制約についても理解を深めていただき、「パトミル」の製造条件を踏まえた提案につなげていただくことができました。
コミュニケーション面では、当社の代表、営業担当者、Oさんで、2〜3週間に1回のペースでオンラインミーティングを実施しました。Oさんは一つのテーマに対して毎回3案ほどのデザインを提案してくださったため、各案の意図や工夫を説明いただきながら社内で検討し、最終案を決定していきました。
4)得られた成果
120種類以上のテンプレートが営業活動を後押し。
初年度年間売上の4割超を1か月で達成。
まず大きな成果として挙げられるのが、120種類以上のデザインテンプレートを制作できたことです。当社が市場ニーズや製造面の知見を提供し、Oさんがデザインの専門性を発揮するという役割分担をしたことで、短期間でここまで多くのテンプレートを制作できました。
また、テンプレートの制作によって営業活動が格段に進めやすくなったことも大きな成果です。以前は「パトミル」をどのように活用できるのかを示す具体的なサンプルが少なく、お客様に製品価値をイメージいただきにくい状態でした。しかし、イベント向け、商業施設向けなど、多様な利用シーンに対応しテンプレートを用意できたことで、営業担当は提案先の業種や用途に合わせて具体的な活用例を提示できるようになりました。その結果、お客様との商談も進めやすくなり、「パトミル」の利用イメージを持っていただきやすくなったと感じています。
こうした提案力の向上は、売上にも表れています。プロジェクト開始後、「パトミル」の売上が大幅に拡大し、事業立ち上げ初年度の年間売上と比較すると、わずか1か月間でその4割以上に相当する売上を達成しました。「パトミル」は自社で加工・製造する高付加価値製品であるため、売上拡大は利益率の向上にもつながっています。
プロ人材との協業で得た学びを力に、
「パトミル」を全国、そして世界へ。
今回の取り組みを通じて、プロ人材の専門知識を活用することで、自社だけでは実現が難しかったスピードで事業を成長させられることを実感しました。また、もともと当社にはデザインに関する専門的なノウハウがありませんでしたが、今回の協業を通じて、印刷機械の制約を踏まえながら情報をわかりやすく伝える方法など、プロならではの視点や考え方を学ぶことができました。
近年はデジタル広告が主流となってきていますが、一定時間、繰り返し視野に入る広告幕には、デジタルにはない訴求力があると感じています。「パトミル」には見る人の記憶に残りやすいアナログならではの価値があり、その可能性をさらに広げたいと思っています。また、市場調査を進める中で、海外市場においても十分な可能性を感じています。今後は国内市場にとどまらず、新たな市場への展開にも挑戦していく考えです。
プロ人材との協業によって生まれた新たなアイデアや学びを活かしながら、デジタル時代だからこそ価値を発揮するアナログ広告の魅力を、「パトミル」を通じて全国、そして世界へ届けていきたいと考えています。