副業の税金はいくら?収入別のシミュレーション例を紹介

副業での収入が順調に増えてくると、「税金は一体いくら払うのだろう?」「確定申告ってどうやるの?」など、新たな疑問や不安が生まれてくるのではないでしょうか。
本業の給与とは別に収入がある場合、税金の計算は少し複雑になります。しかし、仕組みを正しく理解し、事前に納税額の目安を把握しておけば、慌てることなく計画的に資金を準備可能です。
本記事では、副業を始めた会社員の方が抱える税金の悩みを解消します。税金の基本的な仕組みから、収入別の納税額シミュレーション、節税テクニック、そして確定申告のルールまで、網羅的に解説します。(2025年7月時点)
副業の税金計算の基本と仕組みをわかりやすく解説

まず、副業の税金を理解する上で欠かせない基本的な知識と、税金計算の仕組みについて見ていきましょう。これらを把握することが、正確な税金計算への第一歩です。
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給与所得がある場合の副業での所得が事業所得になるのか雑所得になるのか
副業で得た所得は、その内容によって「事業所得」か「雑所得」に分類されます。どちらに分類されるかで、確定申告の方法や受けられる控除が変わるため、非常に重要です。
| 所得の種類 | 概要と具体例 | 
| 事業所得 | 独立・継続・反復して行われる事業から得られる所得。 ・Webライター、プログラマー、個人経営のネットショップなど ・青色申告が可能 | 
| 雑所得 | 他のどの所得にも分類されない所得。 ・フリマアプリでの単発的な販売、アフィリエイト収入、講演料など ・青色申告は不可 | 
一般的に、副業が継続的かつ安定した収入源であり、時間や労力をかけている場合は「事業所得」と見なされる可能性が高くなります。一方で、一時的な収入や片手間で行っている場合は「雑所得」に分類されることが多いです。
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副業にかかる税金は「所得税」と「住民税」の2種類
副業で得た所得に対してかかる税金は、主に以下の2種類です。
- 所得税
- 個人の所得に対してかかる国の税金です。
- 1年間の所得から各種控除を差し引いた金額に、所得額に応じた税率をかけて計算されます。
- 住民税
- 住んでいる都道府県や市区町村に納める地方の税金です。
- 前年の所得をもとに計算されます。
会社員の場合、本業の給与にかかるこれらの税金は、会社が年末調整や給与天引き(特別徴収)で手続きしてくれます。しかし、副業で得た所得については、自分で計算して納税する必要があります。
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「収入」と「所得(儲け)」の違いとは?
税金を計算する上で、「収入」と「所得」の違いを理解しておくことは必須です。この2つはよく混同されがちですが、意味は全く異なります。
- 収入:売り上げや報酬として受け取った金額そのものを指します。
- 所得:収入から、その収入を得るためにかかった「必要経費」を差し引いた金額、つまり「儲け」の部分を指します。
| 用語 | 読み | 意味 | 計算式 | 
| 収入 | しゅうにゅう | 売り上げや報酬の総額 | - | 
| 所得 | しょとく | 収入から必要経費を引いた儲けの部分 | 収入 - 必要経費 = 所得 | 
税金は「収入」ではなく、この「所得」に対して課税されます。
たとえば、Webライターとして100万円の収入があっても、取材費やPC購入費などの必要経費が30万円かかっていれば、税金の計算対象となる所得は70万円です。
本業と副業の所得を合算する「総合課税」の仕組み
会社員が副業で所得を得た場合、原則として本業の「給与所得」と副業の「事業所得」または「雑所得」を合算して、合計所得金額を算出します。この仕組みは「総合課税」と呼ばれています。所得税は「累進課税」を用いているため、所得が多くなるほど税率が高くなるのが特徴です。そのため、本業と副業の所得を合算した結果、適用される税率が上がる可能性も考慮しておきましょう。
所得税の計算方法
所得税は、1年間の収入から必要経費や所得控除額を差し引いた課税所得に、所定の税率を掛けて求められます。具体的な計算方法は以下の通りです。
課税所得×所得税率-控除額
税率や控除額は、課税所得の額によって異なります。以下はその詳細です。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 | 
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 | 
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 | 
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 | 
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 | 
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 | 
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 | 
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 | 
住民税の計算方法は?いつ、どうやって支払うのか
住民税は、所得税の確定申告を行えば、その情報が市区町村に連携されるため、別途申告する必要はありません。
計算方法は以下の通りです。
- 所得割:前年の所得金額に対して、約10%(都道府県民税4% + 市区町村民税6%)が課税されます(政令指定都市は道府県民税が2%、市区町村民税が8%)。
- 均等割:所得に関わらず、定額で課税されます。税額は4,000円(道府県民税が1,000円、市町村民税が3,000円)とされていますが、自治体によって異なるため、お住まいの地域に問い合わせましょう。令和6年度からは森林環境税として年額1,000円も追加されました。
支払い方法には以下の2つがあり、確定申告の際に選択できます。
| 納付方法 | 読み | 概要 | 
| 特別徴収 | とくべつちょうしゅう | 本業の給与から天引きされる方法です。会社の給与担当者が税額の変動に気づき、副業が発覚する可能性があります。 | 
| 普通徴収 | ふつうちょうしゅう | 自宅に送られてくる納付書を使って、自分で金融機関やコンビニで納付する方法です。副業分の住民税を本業と分けて納付できます。 | 
出典:個人住民税(総務省)
副業の税金はいくら?副業所得別にシミュレーション
副業収入が多くなり、税金をどのくらい払う必要があるのか不安な方は多くいるでしょう。
そこで、「結局、自分の場合はいくら税金が増えるの?」という疑問にお答えするため、具体的な所得額に応じた税額をシミュレーションしてみましょう。
以下の共通条件で計算します。
- 本業の年収(給与収入):500万円
- 所得控除:社会保険料控除(75万円)+ 基礎控除(48万円)= 123万円
- 副業:雑所得(収入から必要経費を引いた儲け)として計算
- 復興特別所得税、住民税の調整控除は計算に含まない
※あくまで概算であり、個人の状況によって実際の納税額は変動します。
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副業所得が月5万円の場合
年間の副業所得は60万円です。
- 本業のみの場合の課税所得額:233万円
- 副業所得合算後の課税所得額: 293万円
- 所得税の増加額:6万円
- 住民税の増加額:6万円
- 合計納税額の増加:12万円
副業収入が月10万円の場合
年間の副業所得は120万円です。
- 本業のみの場合の課税所得額:233万円
- 副業所得合算後の課税所得額:353万円
- 所得税の増加額:14万3,000円
- 住民税の増加額:12万円
- 合計納税額の増加: 26万3,000円
副業収入が月30万円の場合
年間の副業所得は360万円です。
- 本業のみの場合の課税所得額:233万円
- 副業所得合算後の課税所得額:593万円
- 所得税の増加額:62万3,000円
- 住民税の増加額:36万円
- 合計納税額の増加:98万3,000円
認められる経費と節税テクニック
税額のシミュレーションを見て、想定より多いと感じた方もいるかもしれません。
しかし、正しく必要経費を計上したり、節税制度を活用したりすることで、納税額を抑えることが可能です。
経費にできるもの・できないもの一覧
副業の所得は「収入 - 必要経費」で計算されるため、必要経費を漏れなく計上することが節税の基本です。
「その支出が副業収入を得るために直接必要であったか」を客観的に説明できるようにしておきましょう。
| 分類 | 経費にできるものの例 | 経費にできないものの例 | 
| 消耗品費 | ペン、ノート、プリンターのインク代など | 個人的な趣味の物品 | 
| 通信費 | インターネット回線費用、スマートフォンの通信料(事業使用分) | プライベート用のスマートフォンの通信料 | 
| 水道光熱費 | 自宅兼事務所の電気代、ガス代(事業使用分) | 事業に関係ない部分の光熱費 | 
| 旅費交通費 | 取材や打ち合わせのための電車代、バス代、駐車場代 | 家族旅行の費用 | 
| 新聞図書費 | 副業に関連する書籍、雑誌、新聞の購入費用 | 娯楽目的の漫画や雑誌 | 
| 接待交際費 | 取引先との打ち合わせでの飲食代 | 友人との食事代 | 
自宅で副業している場合の「家事按分」という考え方と計算例
自宅を仕事場として利用している場合、家賃や水道光熱費、通信費などの一部を経費として計上可能です。これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。
按分する際は、事業で使っている割合を合理的な基準で算出しなければなりません。
家賃の計算例
- 全体の床面積:50平方メートル
- 仕事部屋の面積:10平方メートル
- 事業使用割合:10 ÷ 50 = 20%
- 家賃が月10万円の場合、10万円 × 20% = 2万円が経費になります。
電気代の計算例
- 1日の労働時間:8時間
- 事業使用割合:8時間 ÷ 24時間 ≒ 33%
- 電気代が月1万円の場合、1万円 × 33% = 3,300円が経費になります。
最大65万円控除できる節税効果が高い「青色申告」とは?
副業が「事業所得」に該当する場合、「青色申告」と呼ばれる方法で確定申告を行うと、節税効果があります。
青色申告の主なメリット
- 青色申告特別控除:最大で65万円を所得から差し引けます(電子申告または電子帳簿保存が必要など条件あり)。
- 赤字の繰越し:副業で出た赤字を翌年以降最長3年間にわたって繰り越せます。
- 家族への給与:生計を共にする15歳以上の家族への給与を経費にできます(青色事業専従者給与。事前に税務署に届出が必要)。
- 貸倒引当金:事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として貸倒引当金に繰り入れた場合、必要経費として認められます(貸金の帳簿価額の合計額の5.5%、金融業は3.3%以下の金額)。
ただし、青色申告を行うには、事前に税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、原則として複式簿記で帳簿をつけなければなりません。会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても比較的簡単に対応可能です。
副業で青色申告をすべきかは、主に以下の基準で判断できます。
まず、あなたの副業が事業所得に該当するかどうかです。単発ではなく、継続的に行われ、利益を目的としているかが重要になります。事業所得として認められるためには、一定の規模や継続性が必要です。趣味の延長や一時的な収入は雑所得とみなされ、青色申告はできません。
青色申告の大きなメリットは、最大65万円の青色申告特別控除や赤字の3年間繰り越しといった節税効果です。
年間所得が20万円を超える見込みがあり、継続的に副業を行う意思があるなら、節税メリットが大きい青色申告を検討する価値は大いにあります。
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副業の確定申告は必要?「20万円ルール」と申告しない場合のリスク
副業を始めた人は、「確定申告は必要なのか?」という点も気になるのではないでしょうか。ここでは、その判断基準となる「20万円ルール」と、申告しなかった場合のリスクについて解説します。
副業所得が年間20万円を超えたら確定申告は必須
会社員の場合、副業で得た所得(収入から必要経費を引いた金額)が年間で20万円を超えると、所得税の確定申告が義務付けられています。
確定申告の要否を判断する一つの大きな目安となるため、必ず覚えておきましょう。
医療費控除やふるさと納税の寄附金控除などを受ける場合は確定申告が必要
年間の医療費が基準額を超えた場合に受けられる「医療費控除」や、「ふるさと納税」を行った際の寄附金控除などを適用したい場合、副業所得が20万円以下であっても確定申告が必要です。
その際、20万円以下の副業所得も合わせて申告しなければなりません。
住民税の申告が必要な場合は確定申告が必要
所得税の確定申告が不要な「副業所得20万円以下」の場合でも、住民税の申告は別途必要です。
所得税の確定申告を行えば、情報が市区町村に共有されるため住民税の申告は必要ありません。確定申告をしない場合は、お住まいの市区町村の役所で住民税の申告手続きを忘れないようにしましょう。
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確定申告をしないとどうなる?無申告加算税・延滞税のペナルティを解説
確定申告の期間は、原則として、2月16日から3月15日まで(開始日または終了日が土日祝の場合はその翌日)です。
もし確定申告が必要なのにもかかわらず期限内に行わなかった場合、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして重い「追徴課税」が課せられます。
| ペナルティの種類 | 概要 | 税率など | 
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかったことに対する罰金 | 原則、納付すべき税額の15%(50万円超の場合は20%、300万円超えの場合は30%) 税務署から指摘を受ける前に、自主的に期限後申告した場合は納付すべき税額の5% | 
| 延滞税 | 納税が遅れたことに対する利息 | 納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される | 
| 重加算税 | 意図的に所得を隠蔽するなど悪質と判断された場合の罰金 | 納付すべき税額の40% 法定申告期限までに申告した場合、納付すべき税額の35% | 
「バレないだろう」と安易に考えるのは避けましょう。税務署はさまざまな情報から個人の所得を把握しており、突然調査の連絡が来る可能性もあります。
必ず期限内に正しく申告・納税しましょう。
副業の税金に関するよくある質問
ここでは、副業の税金に関して多くの人が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q.1 無許可で副業をするリスクは?
税金とは別に、会社の就業規則で副業が禁止または制限されている場合があります。無許可で副業を行うと、懲戒処分の対象となる可能性があるため、副業を始める前に必ず自社の就業規則を確認しましょう。
Q2. 副業の所得は「事業所得」と「雑所得」どっちで申告すべき?
前述の通り、所得の区分は「継続性」や「費やしている労力」「営利性」などから総合的に判断されます。
継続的に収入を得ており、事業として取り組んでいる実態があれば「事業所得」として申告できます。事業所得で申告することで、節税効果の高い「青色申告」が選択可能です。ただ、素人目で判断するのは難しい可能性が高いため、専門家に相談するようにしましょう。
Q3. 副業で赤字になった場合、確定申告はした方がいいですか?
副業が「事業所得」で赤字になった場合は、確定申告をすることをおすすめします。
事業所得の赤字は、本業の給与所得と相殺(損益通算)が可能です。結果、本業の給与から源泉徴収された所得税の一部が還付される可能性があります。ただ、過度に必要経費を計上するなど、安易な損益通算による還付は税務調査になる恐れがあるため注意が必要です。
なお、「雑所得」の場合は損益通算ができないため、このメリットはありません。
副業の税金は確定申告前に把握しておこう
副業で得た収入に対する税金は、一見すると複雑に感じるかもしれません。しかし、基本的なポイントを押さえれば難しいものではありません。
納税は国民の義務であり、申告漏れは重いペナルティにつながります。計画的に資金を準備し、期限内に正しく手続きを済ませることで、安心して副業からの収入を自身の資産として築いていけます。
(監修日:2025年7月3日)

山本聡一郎税理士事務所(https://nagoya-soutax.com/)|税理士
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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