福井 松文産業株式会社

織物メーカーが目指す“CO2の見える化”。
「スコープ3」の知見を持つプロ人材の活用で、
知見の習得と説得力のあるシナリオが完成。

松文産業株式会社

Profile

企業

社名:松文産業株式会社
所在地:福井県勝山市
業務内容:ハイファッション・クリエイター(テキスタイル素材・産業資材・新素材加工)
従業員数:100〜300名未満

プロ人材

名前:Yさん(フリーランス)
居住地:兵庫県
経歴:複数の製造業にて、経理・財務、経営企画、法務・コンプライアンス、内部監査および品質管理等など、主に管理・企画部門の領域を幅広く経験。
<プロ人材としての活動>
業務内容:「スコープ3」の算定に関するサポート
活動頻度:月2回程度
活動方法:リモート

  • 業界で求められる環境対応。「スコープ3」算定への取り組みが必要に。
  • 豊富な実績・経験に加え、「会社との相性」を重視。
  • プロ人材のアドバイスのもと、会社の実情に合わせた算定・シナリオ作成方法を確立。
  • 説得力のあるシナリオの完成と、社内の環境意識向上を実現。

1)プロ人材活用の背景

業界で求められる環境対応。
「スコープ3」算定への取り組みが必要に。

 当社は、130年以上の歴史を持つ織物メーカーとして、アパレルメーカーからの受注を受け、テキスタイル素材や産業資材などを供給しています。顧客の約7割が海外企業であるため、グローバルなビジネス環境の中で、常に変化に対応していくことが求められています。
 そうした中、当社は二つの課題を抱えていました。一つは、海外のアパレルメーカーが実施する監査への対応です。年に何回か実施される監査では、英文での質問に対応する必要があるものの、翻訳や内容の正確な理解に苦労していました。
 もう一つは環境負荷への対応です。近年この業界においても環境意識の高まりが見られ、将来的には取引先企業から、事業活動に関するCO2排出量の算定・提示を求められる可能性があります。そこで、サプライチェーン全体で発生する間接的なCO2の排出を指す「スコープ3」の算定に取り組んでいました。しかし、算定範囲が広範囲なこと、また推測に基づいて計算しなければならない部分が多く、難しさを感じていました。
 しかし、社内にはこれらの課題に対応する専門的な知識やノウハウを持つ人材がおらず、解決が困難な状況でした。これまでにハローワークで求人を出したこともありましたが、課題解決につながる方との出会いには至りませんでした。そのような中、取引先である金融機関から「HiPro」のことを教えてもらう機会がありました。プロ人材を活用するのは初めてでしたが、専門的な知識と経験を持つ人材の力を借りられるならばぜひお願いしたいと、募集してみることにしました。

2)応募状況・決め手

豊富な実績・経験に加え、
「会社との相性」を重視。

 当初、依頼内容の中心として考えていたのは、英文メールの翻訳や監査対応です。合わせて、「スコープ3」に関する知見の提供も想定していました。募集後2週間ほどで20名もの方から応募をいただき、その中から最終的に2名のプロ人材に依頼することに決めました。面談ではこれまでの実績や経験に加え、「当社と合うか」という、人対人としての相性を重視しました。特に、話し方や雰囲気などの第一印象が、一緒にはたらいていけるかを判断する要素となりました。
 よいプロ人材との出会いがあったものの、想定外なことに契約期間中に監査が入ることはありませんでした。契約した2名のプロ人材のうち、一人は海外での経験や監査に関する豊富な知識があったため、監査対応のサポートを中心にお願いする予定でしたが、残念ながら具体的な業務を依頼する機会はありませんでした。
 もう一つの課題であった「スコープ3」について支援をいただくことになったYさんは、サステナビリティ推進やリスク管理、内部統制・ガバナンス強化、コンプライアンス推進などの支援を多数手がけてこられた方です。熱心にお話しされる姿勢と豊富な知識から、当社の課題を解決してくれるのではないかと期待を抱き、依頼を決めました。

3)依頼した業務、業務を進める上での工夫

「スコープ3」の全体像を段階的に把握。

 「スコープ3」は、大きく15のカテゴリに分類され、1〜8は上流カテゴリ(購入した製品やサービスに関連する活動)、9〜15は下流カテゴリ(販売した製品やサービスに関連する活動)に分けられます。8か月の契約期間中、上流カテゴリの算定と「どのような工程を経て、どの程度のCO2が排出されるのか」というシナリオ作成に約3か月、残りの期間で下流カテゴリにおける算定とシナリオ作成を行うというスケジュールでプロジェクトを進めました。
 Yさんにはリモートでプロジェクトに参画いただきました。コミュニケーション方法は、当社の担当者が外出していることも多いため、対応しやすいメールを主な連絡手段としました。しかし、テキストだけでは伝わりにくい部分、特に下流カテゴリには詳細な検討が必要だったため、毎回1時間程度のWeb会議を実施し議論を重ねました。

プロ人材のアドバイスのもと、
会社の実情に合わせた算定・シナリオ作成方法を確立。

 特に課題となっていたのは、下流カテゴリの算定です。これは、当社の製品が顧客にわたった後の使用段階や廃棄段階で発生するCO2排出量を算定するものですが、当社で直接確認できない部分の排出量を想定で計算する必要があるため、算定方法に悩んでいました。そこでYさんには、それぞれのカテゴリにおける算定方法や事例の調査・共有に加え、当社の実情に合わせたシナリオ作成のアドバイスをいただきました。たとえば、「社員の通勤によるCO2排出量」を算定するにあたって、日数を単位とすべきか、利用する交通機関ごとに算定すべきか、といった疑問に対するアドバイスもその一つです。最初は、その専門性の高さに、担当者がついていけるか不安がありましたが、Yさんは豊富な経験をもとに私たちの習熟度に合わせた説明や対応をしてくれました。
 また、私たちが持つ知識だけでは「どこまで細かく算出するべきか」の判断ができず、必要以上に時間や手間をかけてしまうこともありましたが、Yさんから“加減”も教えていただきました。やはりこれは、経験豊富なY さんだからこそ教えられることだと思いますし、大変大きな学びでした。

4)得られた成果

説得力のあるシナリオの完成と、
社内の環境意識向上を実現。

 Yさんの豊富な経験に基づいたアドバイスや念入りなリサーチのおかげで、説得力のあるシナリオを完成できました。Yさんの支援により、「スコープ3」の算定という、これまで当社だけでは解決が困難だった課題に対し、大きく前進できたと感じます。また、CO2の排出量が見える化されたことで、当社として、CO2削減に向けた次の一歩を具体的に検討できるようになりました。Yさんとの協働を通じて、知識や視野が大きく広がり、また、環境問題への意識が社内でより一層高まったことは大きな成果だと思います。

プロ人材活用で得た知見を活かし、
CO2削減に向けた取り組みを加速。

 現在、工場で使用する電力を全てCO2フリーの電力に切り替えていますが、今後は太陽光発電の導入も視野に入れるなど、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に向けて、具体的なアクションを計画しています。
 今回の経験を通じて、プロ人材の活用は単なる業務の委託にとどまらず、社内の知識や意識を向上させるための有効な手段であると実感しました。今後も、変化する社会のニーズや環境課題に対応しながら、企業として成長し続けたいと考えています。

松文産業株式会社