電子制御の課題にプロ人材を活用。
設備制御システムの設計を見直し、
生産性向上のための取り組みが前進。

企業
社名:株式会社TOKO
所在地:福井県鯖江市
業務内容:イスターカーテン、エクステリア、住宅商品の開発、製造、販売
従業員数:100〜300名未満
プロ人材
名前:Kさん(副業)
居住地:埼玉県
本業の業種:コンサルティング会社
本業の仕事:コンサルタント
本業の従業員数:100~300名未満
<プロ人材としての活動>
業務内容:生産設備における制御システムの見直し・設計に関する提案、製品の電動化における電子制御機能の設計・開発に関するアドバイスなど
活動頻度:月10~20時間程度
活動方法:対面・リモート
- 製品開発と生産設備、いずれも“制御領域”に課題。
- プロ人材の圧倒的かつ幅広い知識が決め手。
- 設備制御システムの安定稼働を妨げる根本原因を追究、最適解を見つける。
- 設備制御システムの見直しは実装フェーズへ。製品の電動化も着実に前進。
1)プロ人材活用の背景
製品開発と生産設備、
いずれも“制御領域”に課題。
当社は福井県鯖江市に本社・工場を置く、建材メーカーです。主力商品のアルミ製折れ戸の他、住宅や工場の車庫に使われるカーテンゲートなどを製造・販売しています。近年、さまざまな業界でDXが進められていますが、建材業界にもその波がきています。IoT技術を組み込んだ「スマート建材」と呼ばれる製品の需要が高まっている他、生産現場においても、自動化による生産性向上が求められています。
当社の課題は大きく二つありました。一つは、製品の電動化、とりわけ電子制御をどのように進めていくかという問題です。折れ戸を始めとする、いわばハードウェアの専門家、そしてソフトウェアの専門家は社内に在籍しています。しかし、ハードウェアとソフトウェアをつなぐ電子制御の専門家はおらず、開発担当者が独学をもとに検討している状態でした。今ある開発のアイデアを形にするにあたり、自分たちで考えているやり方が本当に正しいのかという疑問もあり、一度、専門家の意見を聞いてみたいと考えたのです。
もう一つは、生産設備の制御システムについてです。当社では工場の自動化に取り組んでおり、PLC(設備や機器を自動制御するための小型コンピューター)と産業用パソコンの連携によって設備を制御しています。しかしながら時々、制御の安定性が揺らぐ事象が発生していました。設備制御システムを見直すことで安定性を高め、生産性向上を図るためにも、ぜひ専門家の力を借りたいと考えていました。

2)応募状況・決め手
プロ人材の圧倒的かつ幅広い知識が決め手。
これらの課題を、ふくいプロフェッショナル人材総合戦略拠点の担当者に話したところ、紹介されたのが「HiPro」でした。ふくいプロフェッショナル人材総合戦略拠点は福井県の事業として行われているため、プロ人材の活用自体は初めてでしたが、行政からの紹介であるという安心感がありました。
最終的に依頼を決めたKさんは、知識やスキルが圧倒的だったこと、また、面談で直接話をし、「この人なら大丈夫、課題が解決できる」と思えたことが決め手でした。Kさんの本業は技術コンサルタントです。特に自動車の製造領域に詳しいのですが、それだけでなく「ITを生産にどう活かすか」についても広く精通されています。また、コンサルタントとして自動車業界だけでなく幅広い分野のサポートをされているという点も、心強く感じました。
3)依頼した業務、業務を進める上での工夫
設備制御システムの安定稼働を妨げる
根本原因を追究、最適解を見つける。
契約後は、まず当社の工場へ来ていただき、丸一日、生産現場や製品を見てもらいました。その後は、月2回程度のペースでオンラインミーティングを行い、プロジェクトを進めています。
最初に力を入れて取り組んだのは、生産設備における制御システムの安定性向上です。安定的な稼働を妨げる原因として、PLCと産業用パソコンの相性があるのではないかと考えていました。たとえば、産業用パソコンのOSやメーカーが変わると、うまく稼働しないという事象が起きていたためです。これまでは、トライアンドエラーでOSやメーカーなどの組み合わせを試し、一時的に解決してやり過ごしてきましたが、もちろんそれでは根本的な解決にはなりません。そこで、Kさんに現状のシステムの詳細をお伝えし、考え得る根本的な原因と、それに伴う解決案をメリット・デメリットと共に複数提示いただきました。その後、自社にとっての最適解を判断するためにディスカッションをし、新たなシステムの設計を決めていきました。私たちの知見だけでは、トライアンドエラーを繰り返すしかありませんでしたが、Kさんに支援いただいたことで、「安定性を高めるには」という課題に対し、ロジカルにアプローチする術を学ぶことができたと感じています。
開発者に向けたワークショップも開催。
Kさんは開発出身ということもあり、これまでの経験をもとに「開発者にとって必要なものとは」をテーマにしたワークショップを開催してくれました。参加者は当社の開発メンバーです。日々開発に向き合っている彼らですが、外部の専門家の話を聞く機会はなかなかないため、とても貴重な機会でした。参加したメンバーからはとても好評で、多くの学びがあったと聞いています。当初想定していた依頼業務の中にワークショップはありませんでしたが、大きな意義があったと受け止めています。

4)得られた成果
設備制御システムの見直しは実装フェーズへ。
製品の電動化も着実に前進。
設備制御システムの見直しは実装フェーズにたどり着き、ようやく解決の目途が見えてきました。あと1~2か月もすればより安定した稼働を実現し、生産性向上にも寄与できると見込んでいます。
もう一つの課題であった製品の電動化については、現在要件定義まで完了しました。サプライヤーとの調整などの影響を受け、予定よりも遅延していますが、近々試作も始める予定です。製品の電動化は「外注」という選択肢もありました。しかし、それでは自社にノウハウが蓄積されません。今回、プロ人材活用という手段を選んだことによって、Kさんから知見やノウハウを得ながら、プロジェクトを着実に進められていると感じています。
今回をきっかけに、
社内でプロ人材活用の機運が高まる。
自社だけでこれだけのナレッジを得ようとすると、少なくとも相当の年月が必要になります。あるいは、Kさんのような専門性の高い人材を正社員として雇用するならば、人件費として相応の予算を確保しなければならず、現実的ではないでしょう。そう考えると、必要なときに必要なスキルを持ったプロ人材に支援いただけることは、とても魅力的だと感じています。
今回二つのプロジェクトが前進しましたが、課題はまだいくつもあります。特に生産設備については、「誰でもできる化」を当社のテーマとして掲げています。知識や経験が求められる工程も多いため、自動化などに取り組むことによって、そのような工程を一つでも減らし、生産性向上をさらに前進させたいと考えています。
プロ人材の活用は初めてでしたが、今回をきっかけに社内でプロ人材活用の機運が高まり、東京支社でも活用が始まりました。今後もKさんを始めプロ人材の力を借りながら、よりよい製品の開発と生産性向上を目指していきます。