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マーケット構造が複雑化する現代において、新規事業開発をリードする人材とは

Aricata株式会社
代表取締役
早稲田大学卒業。株式会社アイ・エム・ジェイ(現:アクセンチュア株式会社)・株式会社博報堂DYデジタルにて、デジタル領域を主軸にマーケティング事業の戦略立案~実行運用、博報堂DYグループ企業のデジタル広告事業を統括推進。株式会社リクルート・ITスタートアップ企業にて、新規事業開発、事業企画、営業推進に従事し、スタートアップでは執行役員として戦略立案推進・アライアンス・マーケティングを含め管掌。その後独立・起業し、新規事業開発・デジタルマーケティング改善・営業マーケ組織DXなどのテーマを中心に、数多くの企業の課題解決を支援。
百瀬琢麻

昨今では、社会構造や消費者行動の変化、テクノロジーの急激な進歩、SDGsの浸透などによって、ビジネスモデル改革のニーズが高まっています。

しかし、成長戦略として新規事業開発に取り組む企業が多い反面、課題も山積みになっている状態です。

  1. 「新規事業アイデアの発案方法や絞り方が分からない」
  2. 「現状から新規事業開発の方向性をどのように考えるべきか分からない」
  3. 「仮説検証方法や事業評価基準を含めて、新規事業の妥当性が判断できない」
  4. 「曖昧な上流の構想を、どのように新規事業として具現化すれば良いか分からない」
  5. 「サービスのKGI・KPI設計が正しくできておらず、事業計画が絵に描いた餅になってしまう」

そもそも新規事業に取り組むこと自体が初めてで、「何から取り組むべきか分からない」という状態に陥っている企業も、少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、幅広い業界の新規事業開発を支援する百瀬氏に、新規事業開発に重要な考え方を伺いました。

新規事業開発のプロとして、事業戦略立案を含め多種多様な業界を支援

――独立し、専門家としての活動を始めたきっかけについて、教えていただけますか?

以前から自分自身が事業オーナーとなって、事業開発をしたいと考えていました。加えて、今まで間接的にしか関われていなかったファイナンスの領域も、身を持って理解したいと考えていました。

しかし、ちょうど起業したタイミングでコロナ禍に突入し、福利厚生×法人カードの領域で考えていた事業が、当初構想していた前提要件で進められなくなってしまいました。そのため、キャッシュエンジンや顧客接点強化を目的に、企業投資や他の規模が小さい新規サービスを立ち上げたりしつつ、稼働量を抑えて企業支援をしていました。

そして、起業して1年が経つ頃から、これまでのキャリアと企業支援の実績が活きてきて、ご相談いただく案件数が増えていきました。

――コロナ禍で案件を獲得していくのは大変だったかと思いますが、これまでの支援実績についてお伺いしてもよろしいですか?

企業支援の稼働量が大きくなってから2年弱で、20社ほどご支援しています。各社につき、6ヶ月〜1年間単位でご支援するケースが多くなっている状況です。

ご支援した業界は、金融、IT・通信、SIer、広告・メディア、人材、小売・EC、メーカー、物流、建設、商社、医療、教育など、多岐にわたります。

――かなり幅広い業界をご支援されていますが、得意な課題領域はありますか?

新規事業開発に絞ってお話しすると、アーリーフェーズからグロースフェーズまで、事業戦略含めたビジネスモデル立案や策定を得意としています。

BtoB/BtoCを問わず、数多くのIT・データを中心としたビジネスモデル(SaaS、FinTech、Sales Tech、EdTech、マッチングプラットフォーム、顧客データプラットフォーム/CDP、人材紹介、ECなど)で、事業者側・支援側として携わり、トライ&エラーを繰り返してきました。

また、事業会社在籍時にサービス責任者として、営業、マーケティング、カスタマーサクセス、プロダクト開発、オペレーション構築を統合的に現場でリードし、事業戦略も立案するポジションにいたので、各領域を俯瞰して何が優先対応でありイシューなのか仮説立て、具体的なアクションプランに落とし込み、スピードを上げて伴走することができます。

サービスがコモディティ化するスピードが速い昨今、単に新規事業を立ち上げるだけでなく、マーケットにおけるSTP策定や営業戦略なども同時に見立てて構築できることもご評価いただいています。

顧客のビジネス価値を最大化するために、いかに舵を取るか

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――専門家としての支援実績について、特に印象に残っている案件はありますか?

新規サービスをゼロから立ち上げる案件も複数携わっていますが、今回は骨太の既存サービスがある大企業を中心に発生する、イノベーションのジレンマ関連の課題テーマの案件に言及します。

具体的には、大手ITベンダー様の案件です。

課題は、今まで参入障壁を築き、安定した収益モデルで成り立っていた既存事業が、プラットフォーム台頭などの競争環境変化により、弱体化していることです。当初の顧客の解決策は、既存プロダクトのエンハンス軸で新規サービスを開発する意向で、大枠ではMAやCDPを実装することでした。

そこで私は、顧客のビジネスモデル、ケイパビリティ、顧客接点、データ整備状況などを分析した上で、「成長戦略の骨子に、ケイパビリティが不足しているマーケティング領域のCDPを置くことは正しいのだろうか?」という問いを立てました。

同時に、中長期マイルストーンとして掲げていた「プラットフォーム型の新事業」に対するビジネスモデルを機能させるために、当初計画していた新サービスでは必要なケイパビリティが得られないと考え、サービスの対象スコープやエコシステム形成も含め、事業戦略の解像度を上げることに注力しました。

よくあるケースとして、一見実装すれば価値になりそうなHOWの話(この場合はCDP)を論点の中心に置き、「どうすれば実行できるのか」などの実行プランを起点として、与件が成り立っている場合があります。ですが、実際重要なのは、そのHOW=手段による、顧客ポジショニングや獲得できるソリューションやデータの中身であり、最終的に自社のコアバリューや参入障壁に接続するストーリーとマネタイズ案が描けているかどうかだと考えます。

結果、その考え方を軸にプロジェクトを推進し、データ利活用ビジネスモデルを軸とした新サービスの対象スコープを定義して、役員層に合意形成しました。現在は、新サービスの基盤として、コアターゲットの業務プロセスのペイン解決をするソリューションを開発しています。

――百瀬さんが成果を出すために、大切にしていることはありますか?

私が心掛けていることは、主に2つあります。

1つ目は、事業のアップサイドを見据えて推進していくことです。

顧客との知識やリテラシーの差のGAPを埋めることや、課題解決における-1を0にする底上げや改善に関しては、プロであれば当たり前の提供価値だと考えています。私は仮説創出・マーケットフィット検証・サービスグロースなどを含め、「いかにビジネス価値を最大化していけるか」が本丸というスタンスで支援しています。

さらに、大きなゴールを達成していくためには、自社だと小さく収まるところを、「いかにストレッチした難題に対してチャレンジしたいと思っていただけるか」という部分も、重要なディレクションポイントだと考えています。

2つ目は、ビジネス課題解決と同時に、顧客のカウンターパートへのホスピタリティ精神をもつことです。

カウンターパートの多くは事業責任者・役員、首都圏外であれば社長になり、組織課題対応などに稼働やマインドシェアが取られています。それらのもやもやを解消すべく、プロジェクトのアウトプットにおける信頼を積み重ねて、腹を割って対話できる心理的安全を確保し、課題感を共有いただいています。過去の経験から解決できる課題がある場合は、組織/人材開発領域までご支援することもあります。

また、組織開発をした過去の経験から、5~10人前後のチームに対応する場合は、「同じ釜の飯を食う」「チームとして汗をかく」をキーワードに、目線を合わせることを重視しています。

マーケットが目まぐるしく変化するからこそ、新規事業開発のプロは欠かせない

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――専門家の立場からみて、企業が外部人材(新規事業開発)を活用することには、どのようなメリットがあると思いますか?

1つ目のメリットは、特にBtoBの新規事業開発の場合、一定再現性のあるメソッドがあり、事前理解を深めることで、事業開発の質を担保しつつ、推進スピードを上げることに繋がる点です。

新規事業は常にマーケット変化に紐づくので対応スピードやリリースタイミングが重要ですし、仮説検証サイクルを質高く、早く回すことが推進のドライバーになります。それに対応するには、例えば「課題の中でペインを特定していない」「顧客要望が多いから機能開発したのに、お金を払うほどの価値がなかった」など、新規事業開発の初歩の留意点でつまずくことは避けたいはずです。

2つ目のメリットは、採用するより、新規事業開発のプロの方に依頼したほうが、知見を応用できる可能性が高い点です。

そもそも企業の中で新規事業開発を経験する人材母数は少なく、さらに経験による知見が1業界セクターだけに閉じていたり、1サービスのみの携わり方の場合には、事業成長ステージにおいて各フェーズ1回しか経験していないケースもあります。

一方、新規事業開発のプロは、業界・事業ドメイン・事業開発フェーズにとらわれず、繰り返し幅広く経験を積んでいることで、基礎強化はもちろん、アナロジーにより応用できる課題解決力や仮説構築力を備えることができます。

新規事業開発は採用が長期化することも多いので、ビジネスチャンスを逃すリスクを軽減するためにも、まずは新規事業開発のプロと共に、ビジネス化できる兆しを一緒に検討するなどの、最初の一歩を踏み出すことも有用なのではと思います。

――最後に、百瀬さんの今後のキャリアや目標についてお聞かせください。

しばらくは有意義な企業支援を続けていきたいと考えています。顧客の課題が解決され次のステージへと進むと同時に、サービスが成長して価値創造されることや、ビジネスという切り口から社会や人間の生態系・メカニズム・進化を考え体感することに対してやりがいを感じているので。今後の企業支援で、産業のパラダイムシフト/先端テクノロジーを扱う新しいマーケットや、深い課題が潜むニッチマーケットに対峙することを楽しみにしています。

一方で、起業して事業開発推進をする中で、事業を長く続けていく原動力および自分の優先順位として、「信念や熱量」が重要であることを改めて実感しました。事業内容に関して、いままでは四の五の言わずに勝ち筋や出口戦略ありき起点のスタンスでしたが、いまは自分が本当に解きたい課題や創りたいビジョンに対して、腰を据えて長期間向き合えるテーマを探していきたいと考えています。

取材後記
会社に所属した場合、どうしても事業開発以外の業務に追われたり、事業ドメインの制限を受ける可能性があります。その点、専門家として活躍することは、事業ドメインや新規事業開発のフェーズにとらわれず、事業開発に時間を集中投資できる魅力があり、転職市場では味わえない経験ができるでしょう。対応工数とアウトプットバランスにおけるマネジメントや、再現性のあるかたちで新規事業開発を支援する難しさはあるものの、新規事業開発に専念できる働き方を求めている方にとって、専門家としての活動はユニークなキャリア形成にもつながると感じました。
and HiPro編集部
パーソルキャリア株式会社
and HiPro(アンドハイプロ)は、「『はたらく』選択肢を増やし、多様な社会を目指す」メディアです。雇用によらないはたらき方、外部人材活用を実践している個人・企業のインタビューや、対談コンテンツなどを通じて、個人・企業が一歩踏み出すきっかけとなる情報を発信してまいります。

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