シナリオプランニングとは?必要な理由や具体的な進め方を解説

シナリオプランニングとは?必要な理由や具体的な進め方を解説
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近年、世界情勢や物価の高騰など、企業をとりまく外部環境が急激に変化し、不確実性の高いものになっています。

こうした状況から、企業は中長期的な視点で企業戦略や施策を立案し、外部環境の不確実性に備えることが必要です。シナリオプランニングは、中長期的な戦略を立てるうえで欠かせない手法のひとつです。

本記事では、シナリオプランニングの概要や進め方を解説します。シナリオプランニングを理解し、将来起こりうる危機的状況を脱するための計画を立てておきましょう。

シナリオプランニングとは

シナリオプランニング

シナリオプランニングとは、5〜10年以上の中長期的な将来に起こりうる未来を複数描き、その結果を企業戦略や施策の立案に役立てる手法です。

未来を正確に予測するのではなく、幅広い可能性を探ることで、経営層の意思決定の質を高めることが、シナリオプランニングの目的になります。

シナリオプランニングが注目される背景

現代は、将来の予測が困難なことから「VUCAの時代」と言われています。VUCAは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、あらゆるものを取り巻く環境が複雑化し、想定外のことが発生しやすい状態を指します。

新型コロナウイルスによる社会経済の変化は、まさにVUCAの時代を象徴しているといえるでしょう。こうした時代を迎えていることから、企業は中長期的な視点で複数のケースを想定し、対処法や自社の目指す世界観を固めることが求められます。

シナリオプランニングを活用するメリット

シナリオプランニングには、以下の2つのメリットがあります。

  • 変化に対応しやすくなる
  • 組織体制の最適化

変化に対応しやすくなる

シナリオプランニングを導入した企業は、中長期的な視点で複数の将来を予測するため、予想外の状況を迎えても柔軟に対応しやすくなります。

一方、何も対策をしなかった企業が予期せぬ事態に陥った場合、その場しのぎの対応となってしまうでしょう。あらかじめ将来発生する事象を想定しておけば、状況に応じた適切な対応ができるでしょう。

組織体制の最適化

シナリオプランニングで将来の予測をし、現状の組織体制に不十分な点があるとわかれば、人材の育成や体制の構築を事前におこなえます。

日々の業務が問題なく行えていると体制の見直しをおこなわず、そのままの状態で運営されることが多いかもしれません。しかし、実は体制に潜在的な課題を抱えている可能性もあるのです。

シナリオプランニングによって、不確実な未来に備えるべき人材や体制がわかれば、現状と比較しながら組織体制を最適化できます。

シナリオプランニングの進め方

シナリオプランニングは、以下の手順で進めると効率的です。

  1. 目的の明確化
  2. 外部環境の洗い出し
  3. 自社への影響度を整理する
  4. シナリオの作成
  5. シナリオと自社のビジネスモデルを紐づける
  6. 定期的な振り返り

1.目的の明確化

まずは、企業の現状を把握する必要があります。自社がおこなっている事業の課題を洗い出し、競合他社と比較して自社の優位性を明確にしましょう。

その後、どの時点のシナリオを作成したいのか定める「時間軸」と、市場の対象が国内と海外のどちらか設定する「地域軸」を検討します。時間軸は、身近すぎても長期的すぎても信憑性が薄くなる ため、10年後を目安に設定しましょう。

地域軸に関しては、日本国内の情報収集や予測はそれほど難しくありません。しかし、アジアや世界という 括りで分析すると難易度は高まります。これらの点を踏まえたうえで、シナリオプランニングの最終的な目標を明確にします。

2.外部環境の洗い出し

時間軸と地域軸をもとに、PESTLE分析を活用し、企業に影響を与える外部環境を洗い出します。PESTEL分析は、以下の観点で外部環境を分析するフレームワークです。

  • 政治(Political):政府が打ち出す政策など
  • 経済(Economic): 景気、インフレ率など
  • 社会(Sociological): 人口の変化、収入の変化、ライフスタイルの変化など
  • 技術(Technological):政府や市場全体の取り組みなど
  • 環境(Environmental):環境問題に関する世論、SDGsなど
  • 法律(Legal):労働関連法、規制緩和など

外部環境の洗い出しは、これまで意識してこなかった分野を掘り下げる作業にもなるため、シナリオプランニングのなかでも特に手間のかかる部分です。

しかし、今までより視野を広げて物事を考えられるため、新たなビジネスチャンスにつながる可能性があります。

ここでは、洗い出した外部環境の精査はせず、可能な限り情報を集めてください。

3.自社への影響度を整理する

洗い出した外部環境が自社の事業に与える影響を、インパクトと不確実性の観点で整理します。

インパクトとは、外部環境が自社へ与える影響度合いのことで、インパクトが大きいほど自社への影響も大きくなります。

不確実性とは、この先起こるかもしれないし、起こらないかもしれない度合いのことで、起こりにくい物事は不確実性が高いです。

整理するときには、インパクトと不確実性の観点から以下の4つに分類しましょう。

_ 不確実性が高い 不確実性が低い
インパクトが高い 売上への影響は大きいが、不確実性も高いことから、競合他社が認知している可能性は低い 売上への影響は大きいが、不確実性の低さから、競合他社がすでに認知している可能性は高い
インパクトが低い 売上への影響は少なく、不確実性は高いことから、競合他社が認知している可能性は低い 売上への影響は少なく、不確実性も低いことから、競合他社がすでに認知している可能性は高い

4.シナリオの作成

外部環境が与える自社への影響度を整理できたら、その結果をもとにシナリオを作成します。

新型コロナウイルスを例に考えてみます。今回のように、新型のウイルスが蔓延することで、自宅からの外出が減り、テレワーク/リモートワークが加速するというシナリオが作成できます。ウイルスが蔓延する前は、認知度が低く、売上に与える影響が大きいシナリオでした。

できあがったシナリオは、自社にとって影響が大きく、不確実性の高い内容から検討すると効果的です。

5.シナリオと自社のビジネスモデルを紐づける

シナリオの作成が完了したら、最初に洗い出した課題や、他社と比較した自社の優位性などを補完できるような形で、シナリオと自社のビジネスを結びつけましょう。

実際にシナリオが発生したとき、自社はどの部分で関係し、シナリオプランニングを完結できるか考えるのです。

例えば、チャットやオンライン会議などのコミュニケーションツールを提供している企業が、今回のような新型のウイルスが世界で蔓延するシナリオを作成したとします。ウイルスの蔓延によって外出の機会は減り、普段の業務を自宅で行いたいという 要望が出ると予想できるでしょう。

つまり、テレワーク/リモートワークが加速するため、オフラインよりもオンラインの重要性が高まり、連絡手段としてコミュニケーションツールが利用されるので、自社の事業が大きく売上を伸ばすと紐づけられます。

6.定期的な振り返り

シナリオプランニングは計画したら終わりではなく、定期的な振り返りによって精度を高めることが大切です。もし、1年後にシナリオプランニングを実施すると、1年前とは違った観点で施策を立案できる可能性が高いです。

また、施策を立案してから1年が経つと、自社や社会の状況が変化していることも多いです。半年〜1年の定期的なスパンで振り返りをおこなうとよいでしょう。

シナリオプランニングを進めるときの注意点

シナリオプランニングを進めるときは、以下の点に注意が必要です。

  • 短期的な視点で考えない
  • 実施したらそのままにしない

短期的な視点で考えない

シナリオプランニングは、短期的な視点で考えるのではなく、5年以上を目安にシナリオを作成することが大切です。2〜3年後の短期的な未来は予想がしやすく、わざわざシナリオプランニングを する必要性が低いからです。

5〜10年後に企業が目指したい姿を描き、それまでに達成すべきことをシナリオにまとめることが重要です。

実施したらそのままにしない

シナリオプランニングには、定期的な見直しが欠かせません。数年後は状況が大きく変化している可能性が高く、変化にあわせてシナリオの内容も修正する必要があるのです。

PDCAサイクルを回すイメージで、一度立案した施策でも定期的に振り返り、半年〜1年のスパンでブラッシュアップすることが大切です。

まとめ

シナリオプランニングは、5〜10年の中長期的な将来に起こりうる未来を複数描き、その結果を企業戦略や施策の立案に役立てる手法です。VUCAの時代と呼ばれる現代は、想定外のことが発生しやすい状態といえます。だからこそ、シナリオプランニングを活用し、急激な変化に柔軟に対応すべく、組織体制を最適化しておく必要があります。

外部環境の不確実性に備えるべく、今回紹介した手順でシナリオプランニングを進めていきましょう。

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