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フリーランスによくあるトラブルは?対処法や予防策・相談窓口を徹底解説

フリーランストラブルのイメージ

「クライアントから一方的に報酬を減額された…どう対処すればいいのだろうか」
「契約範囲外の業務を次々と依頼され、断れずに困っている」

フリーランスとして専門性を武器に活動する上で、上記のようなトラブルは避けたいものです。実力や実績があっても、クライアントとの力関係や契約内容の不備から、不利な状況に立たされてしまう可能性があります。

本記事では、フリーランスが直面するトラブルの実態を分析し、予防方法や問題解決の方法を解説します。相談窓口や新たに整備された法的保護についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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フリーランスのトラブルの現状

近年、フリーランスをめぐるトラブルの件数が増加しており、その状況に注目が集まっています。まずは、客観的なデータを通じてフリーランスを取り巻く問題の現状を確認し、その重要性について理解を深めていきましょう。

フリーランスの46.6%が何らかのトラブルを経験している

フリーランスというはたらき方が広まる一方で、その契約や取引におけるトラブルは決して少なくありません。フリーランスとしてはたらく人々の約半数が、何らかのトラブルを経験しているというデータがあります。

日本労働組合総連合会が実施した「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2024」によると、調査対象のフリーランス1,000人のうち、46.6%が「仕事上でトラブルを経験したことがある」と回答しました。

出典:フリーランスとして働く人の意識・実態調査2024(日本労働組合総連合会)

トラブルの具体的な内容で最も多かったのは「不当に低い報酬額の決定」(28.8%)、次いで「報酬の支払いの遅延」(25.8%)です。

これらの結果は、フリーランスという立場が、依然として報酬面で不安定かつ不利な状況に置かれやすい現実を浮き彫りにしています。

高い専門性を持つ人材であっても、契約や交渉の段階で適切な対価を得られていないケースが多いことがわかるでしょう。

フリーランス・トラブル110番の相談件数は増加傾向

公的な相談窓口の利用状況からも、トラブルの増加が見て取れます。

事実、厚生労働省が運営する「フリーランス・トラブル110番」に寄せられる相談件数は年々増加しています。令和3年度の4,072件に対し、令和4年度は6,884件、令和5年度には8,986件と増加傾向にあるのが現状です。

さらに令和6年度は、年間で12,323件に達しました。

出典:フリーランス・トラブル110番の相談及び和解あっせん件数(厚生労働省)

相談件数の増加から、フリーランスとしてはたらく人々が直面する問題が多様化・深刻化していると考えられます。同時に、泣き寝入りせずに専門機関へ助けを求めるフリーランスが増えているという側面も示しています。

トラブルが顕在化し、社会的な課題として認識されつつあるのが現在の状況です。

フリーランスの約3割が「支援が必要」と回答

トラブルに直面した際、多くのフリーランスが第三者によるサポートを求めていることも明らかになっています。

HiProが発表した「副業・フリーランス人材白書2025」によれば、相談窓口や専門家によるサポートといった何らかの支援を必要と感じている人の割合は、ハイクラス層で30.5%、メンバークラス層で33.3%にのぼりました。

出典:副業・フリーランス人材白書2025(HiPro)

このデータは、スキルレベルに関わらず、10人に3人は自力での解決に限界を感じ、外部の支援を必要としている実態を表しています。

高度な専門性を持つハイクラス層であっても、法律や契約に関する専門知識や交渉を円滑に進めるための客観的な視点を求めているのが現実です。

フリーランスによくあるトラブル

フリーランスが遭遇するトラブルは多岐にわたりますが、ここでは特に発生頻度が高い7つのトラブル事例を解説します。

自身の経験と照らし合わせながら、どのようなリスクが存在するのかを具体的に理解していきましょう。

報酬・支払いに関するトラブル|未払い・減額・遅延

報酬をめぐるトラブルは、フリーランスが安定した事業運営を行う上で重要な課題の一つです。具体的には、業務完了後に報酬が支払われない「未払い」や、一方的な理由で報酬が引き下げられる「減額」が挙げられます。また、支払期日を過ぎた入金の遅れ「遅延」も見られるケースです。

たとえば、経営コンサルタントが提出した事業戦略レポートに対して、「期待通りの成果が得られなかった」といった主観的な理由で報酬減額を求められる場合があります。成果の定義や支払条件を十分に確認せずに業務を始めると、こうしたトラブルに巻き込まれる可能性が高まることが考えられます。

契約内容に関するトラブル|業務範囲の超過・一方的な内容変更

契約時に定めた業務範囲(スコープ)を超えた作業を求められることが原因で問題が発生するケースがしばしば見られます。これは「スコープクリープ」とも呼ばれる現象です。

たとえば、マーケティングアドバイザーとして契約したにもかかわらず、具体的な広告運用実務やSNSコンテンツの制作まで無償で求められるといったケースが該当します。善意で対応しているうちに業務量が予想以上に増える可能性もあります。

このような問題を防ぐためには、契約書の中で業務範囲を具体的に明示し、追加業務には別途報酬が発生するという条件を双方で確認しておくことが重要です。

納品物に関するトラブル|一方的な検収不合格・過度な修正要求

納品物に対するクライアントの評価が原因で問題に発展することがあります。具体的には、「イメージと違う」「クオリティが求める水準に達していない」といった理由で検収が承認されなかったり、修正依頼が繰り返し行われるケースです。

たとえば、新規事業のコンサルティングで作成した市場分析レポートが、担当者の意向に応じて何度も手直しを求められる状況も考えられます。

このようなトラブルを避けるためには、事前に検収基準や修正回数の上限を明確に設定し、書面による合意を交わしておくことが必要です。

コミュニケーション・人間関係のトラブル

クライアント担当者とのコミュニケーションがうまく進まないことで、人間関係がぎくしゃくし、トラブルの一因となる場合があります。これには、やや強い言動や深夜・休日を問わない頻繁な連絡など、過度な対応が含まれることがあります。

フリーランスの立場上、クライアントに対して強く意見を伝えることが難しく、精神的な負担を感じることも考えられます。この状況が続くと、プロジェクトの進行が滞ったり、心身の負担が増したりする恐れがあります。

こうした問題を回避するためには、冷静で適切な対応を心がけるとともに、やり取りの記録を残しておくことが有効です。

突然の契約解除・発注取り消しに関するトラブル

クライアントの都合による一方的な契約解除や発注の取り消しも、フリーランスが直面しやすいトラブルの一例です。

たとえば、長期的なアドバイザリー契約を結んでいたにもかかわらず、「社内の体制変更」を理由に、翌月からの契約を突然打ち切られるといったケースが考えられます。

特定のクライアントへの依存度が高い場合、収入が途絶え、事業継続そのものが困難になるリスクもあります。契約書に中途解約に関する条項(解約予告期間、違約金の定めなど)を盛り込み、複数の収入源を確保しておくリスクヘッジも並行して行うとよいでしょう。

損害賠償請求に関するトラブル

フリーランスの業務遂行に起因してクライアントに損害が発生したとして、損害賠償を請求されるリスクも存在します。たとえば、納品したシステムに欠陥があった、提供した情報に誤りがあり損失を被った、といったケースが挙げられます。

また、知的財産権の侵害も大きなトラブルの原因です。コンサルタントが作成した事業計画書を、クライアントが契約範囲を超えてグループ会社で無断利用した場合、著作権侵害にあたる可能性があります。

成果物に関する権利の帰属や、二次利用・再利用の範囲を契約で明確にしておかないと、意図せず著作権や守秘義務の侵害・債務不履行といった責任を問われる可能性もあります。そのため、契約段階でリスクの所在を明確にしておくことが重要です。

競業避止義務・秘密保持契約(NDA)違反のトラブル

フリーランスのトラブルには、競業避止義務や秘密保持契約(NDA)に関するものも少なくありません。

競業避止義務とは、契約終了後、一定期間にわたり競合他社での業務を禁じる契約を指します。この義務が不当に広範かつ長期間である場合、フリーランスのキャリア形成を著しく阻害する可能性があります。

また、NDAに違反してクライアントの機密情報を漏洩したとみなされれば、高額な損害賠償請求に発展しかねません。

契約内容を十分に精査し、自身の業務に与える影響を正確に把握することが不可欠です。

フリーランスのトラブルを未然に防ぐための予防策

トラブルは、発生してから対処するよりも、未然に防ぐ方がはるかに建設的です。ここでは、フリーランスが自身の身を守り、健全な事業活動を継続するための4つの基本的な予防策を紹介します。

書面で契約を締結する

いかなる取引であっても、書面で契約を締結することが重要です。口約束や簡易的な発注書のみで業務を開始するのは避けましょう。

契約書には、主に以下の条件を記載します。

  • 業務内容と範囲
  • 報酬額と支払条件(支払期日、支払方法)
  • 検収基準
  • 納品物の権利(著作権など)の帰属
  • 秘密保持義務
  • 契約解除の条件

曖昧な表現をなくし、双方の認識を完全に一致させることが大切です。近年は電子契約サービスも普及しており、迅速かつ効率的に契約を締結できます。

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【弁護士監修】フリーランスの契約書ガイド|作成の流れや記載項目・注意点を解説

取引前にクライアントの調査を徹底する

契約を結ぶ前に、クライアント企業や担当者について可能な限り調査することも重要です。

企業の公式ウェブサイトやIR情報、業界での評判、SNSでの発信内容などを確認し、信頼に足る取引相手かを見極めましょう。特に、新規の取引先や実績が不透明な企業に対しては、慎重な姿勢が求められます。リスクを回避するためには「誰と仕事をするか」を主体的に選択することが大切です。

コミュニケーションの記録を残す

クライアントとのやり取りは、記録として残す習慣をつけましょう。

メールやビジネスチャットツールでのコミュニケーションを基本とし、電話や対面での打ち合わせで決定した事項も、必ず議事録や確認メールとして文書化することが大切です。

これらの記録は、万が一トラブルが発生した際に、契約内容の解釈や事実関係を証明する客観的な「証拠」となります。自身の主張の正当性を担保するために、日頃から証拠保全を意識したコミュニケーションを心がけることが大切です。

フリーランス向けの保険に加入する

予期せぬトラブルによる経済的損失に備え、フリーランス向けの保険に加入することも有効なリスクヘッジです。

代表的なものに「フリーランス賠償責任保険」があります。この保険は、情報漏洩や著作権侵害、納期遅延などによってクライアントに損害を与え、賠償請求された場合に補償を受けられるものです。

また、自身が病気やケガではたらけなくなった際の収入を補償する「所得補償保険」も効果的です。金銭的な備えであると同時に、安心して業務に集中するための精神的な支えにもなるでしょう。

トラブル発生時の対処法

予防策を講じていても、残念ながらトラブルに巻き込まれてしまう可能性はゼロではありません。重要なのは、その際に冷静さを失わず、適切な手順で対処することです。

ここでは、トラブル発生時の対処法を4ステップで紹介します。

ステップ1:証拠を整理して事実関係をまとめる

トラブルが発生したら、まずは慌てずに関連する証拠をすべて整理することから始めましょう。契約書・発注書・メールやチャットの履歴・請求書・納品物・作業記録などを時系列に沿ってまとめ、何が起きたのかを客観的に把握します。

たとえば報酬未払いであれば、契約書に記載された支払期日、請求書を送付した日付、督促の連絡内容などを明確にすることが大切です。

この事実整理が、その後の交渉や法的措置における土台となるため、漏れなく適切に整理するよう心がけましょう。

ステップ2:冷静に状況を整理して相手と交渉する

事実関係の整理ができたら、クライアントとの交渉に臨みます。感情的な非難は避け、あくまで契約書や客観的な証拠に基づき、問題点を具体的に指摘しましょう。

この際、交渉の経緯もメールなどで記録に残すことが重要です。

ステップ3:解決しない場合は第三者機関に相談する

当事者間の交渉で解決が見込めない場合は、速やかに第三者機関へ相談しましょう。問題を一人で抱え込まず、専門的な知見を持つ機関の力を借りることが、事態の打開に繋がります。

後述する「フリーランス・トラブル110番」といった公的な相談窓口は、無料で専門家のアドバイスを受けられるため、最初の相談先として適しています。

状況を客観的に評価してもらい、次のステップについて助言を得ることが賢明です。

ステップ4:法的措置を検討する

第三者機関への相談を経てもなお解決しない場合は、法的措置の検討も視野にいれることになります。手続きには費用や時間がかかるため、弁護士などの専門家と相談の上、得られる利益と負担を比較衡量し、慎重に判断する必要があります。

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フリーランスのトラブルを相談できる窓口

トラブルに見舞われた際、頼れる相談窓口を知っておくことは大きな安心材料になります。

状況やトラブルの内容に応じて、適切な窓口を選択することが重要です。ここでは、フリーランスが利用できる主要な相談窓口を紹介します。

フリーランス・トラブル110番

厚生労働省の委託事業で、弁護士が無料で相談に応じてくれます。報酬の未払いや契約上のトラブルなど、幅広い相談に対応しており、必要に応じて和解あっせん手続きも利用可能です。

法テラス(日本司法支援センター)

国が設立した法的なトラブル解決の総合案内所です。経済的に余裕がない場合には、無料の法律相談や弁護士費用の立替え制度を利用できることがあります。

弁護士・税理士などの専門家

具体的な法的措置を検討する場合や、税務に関するトラブルの場合は、直接弁護士や税理士に相談しましょう。初回無料相談を実施している事務所も多くあります。

トラブル防止には2024年施行「フリーランス新法」への理解も重要

フリーランスの権利保護を強化するため、2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス新法」が施行されました。

の法律は、発注者に対して取引内容の明示や報酬の適正な支払いなどを義務付けるもので、フリーランスが安心して業務を行うための重要な法的基盤となります。内容を正しく理解し、自身の権利として主張できるように備えておくことが大切です。

フリーランス新法により、発注者には以下のような内容が義務付けられます。

  • 業務内容・報酬額等の書面等による明示
  • 発注後60日以内の報酬支払期日の設定・期日内の支払い
  • 1か月以上の業務を委託した場合の報酬の減額や受領拒否の禁止
  • 募集情報における虚偽または誤解を生む表示等の禁止

これらの規定に違反する行為は、国による助言、指導、勧告、命令の対象となります。法律の存在を知っているだけでも、クライアントとの交渉を有利に進められる可能性があります。

出典:2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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フリーランスのトラブルに関するよくある質問FAQ

フリーランスのトラブルに関してよくある質問とその回答をまとめました。具体的な疑問を解消し、いざという時の判断材料として参考にしてください。

Q1.契約書がない場合、報酬の未払いは請求できない?

契約書がない場合でも、報酬の請求は可能です。日本の法律では、契約は口頭での合意でも成立します。したがって、契約書が存在しなくても、業務を受託し、納品した事実があれば報酬を請求する権利は存在します。

民法第522条
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

出典:民法(e-Gov 法令検索)

ただし、契約書がない場合、業務範囲や報酬額といった契約内容を証明することが難しくなるのが現実です。そのため、メールのやり取りやチャットの履歴、納品物の控えなど、契約の存在と内容を推認させる証拠をできるだけ多く集めることが重要になります。

契約書がある場合に比べて、交渉や法的手続きが煩雑になる可能性は高いといえるでしょう。

Q2.フリーランスは労働基準監督署に相談できる?

原則として、労働基準監督署に相談することはできません。

労働基準監督署は、労働基準法に基づき「労働者」を保護するための機関です。フリーランスは、クライアントと対等な立場で業務委託契約を結ぶ事業者であり、「労働者」には該当しないため、労働基準法の保護対象外となります。

ただし、契約形態が業務委託であっても、実態としてクライアントから具体的な指揮命令を受けていたり、時間的な拘束を受けていたりと、「労働者」と判断される場合は例外です。

このようなケースでは、労働基準監督署が相談に応じてくれる可能性もあります。

弁護士に相談するとどれくらいの費用がかかる?

弁護士費用は、事案の複雑さや依頼する業務の範囲によって異なりますが、一般的には以下の4つで構成されています。

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 実費

相談料は、30分5,000円〜1万円程度が相場です。着手金は、交渉や訴訟を依頼する際に支払う費用で、20〜30万円が目安となっています。

報酬金は、トラブルが解決し、経済的利益を確保できた場合に支払う成功報酬で、確保できた金額の10〜20%程度が一般的です。

まずは、多くの法律事務所が実施している初回無料相談を活用し、費用の見積もりを確認することをおすすめします。

出典:市民のための弁護士報酬ガイド(日本弁護士連合会)

フリーランスとして安心してはたらけるよう、トラブル対応への知識を身につけよう

本記事では、フリーランスが直面するトラブルの実態、予防策、そして対処法について網羅的に解説しました。

万が一トラブルが発生した際は、証拠を整理して冷静に交渉しましょう。少しでも不安や疑問を感じる点があれば放置せず、専門家に相談することが大切です。

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