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【税理士監修】副業の必要経費はどこまで可能?計上できるもの・できないものを一覧で解説

副業の確定申告の

「副業で使ったこの費用、必要経費にできるのかな?」
「プライベートの支出と事業の支出の区別が難しい…」

副業を始めると、どこまでが必要経費として認められるのか、判断に迷う場面が多くあります。必要経費を正しく計上することは、節税に直結する重要な知識ですが、その範囲やルールは複雑で分かりにくいものです。

本記事では、副業における必要経費の基本的な考え方から、必要経費にできるもの・できないものの一覧を紹介します。また、プライベートと兼用する場合の按分計算、注意点まで解説します。

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そもそも副業の必要経費とは?基礎知識を解説

副業の利益(所得)を正しく計算する上で、必要経費の概念を理解することは不可欠です。経費を漏れなく計上できれば、課税対象となる所得を抑え、結果として税金の負担を軽減できます。

ここでは、必要経費の定義と、経費が認められる所得の種類について基本から確認しましょう。

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必要経費とは|収入を得るために直接要した費用

必要経費とは、端的に言えば「収入を得るために直接かかった費用や販売費、一般管理費など」のことです。所得税法第37条では、以下のように定義されています。

所得税法第37条

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

出典:所得税法第37条(e-Gov法令検索)

重要なのは、その支出が「事業の収益に直接的・間接的に貢献しているか」という客観的な事実です。

一方で、会社員として受け取る給与から天引きされる所得税や住民税などは、給与所得を得るための必要経費とは認められていません。経費計上は、あくまで副業で得た所得に対してのみ適用される点を理解しておきましょう。

必要経費が認められる所得の種類

所得税法では、所得を10種類に分類していますが、このうち必要経費の計上が認められているのは主に以下の3つの所得です。

事業所得

農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業、その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得

不動産所得

土地や建物などの不動産の貸付け、地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け、船舶や航空機の貸付けなどによる所得

雑所得

他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得

副業の場合、活動が継続的・安定的に行われ、社会的な職業として認知されるレベルであれば事業所得、それ以外の場合は雑所得に分類されるのが一般的です。

どちらの所得に該当する場合でも、収入を得るためにかかった費用は必要経費として計上できます。自身の副業がどの所得に該当するかを把握し、適切に必要経費を管理することが重要です。

出典:No.2210 必要経費の知識(国税庁)

【一覧】副業で必要経費にできるものの代表例

副業の活動において、どのような支出が必要経費として認められるのでしょうか。ここでは、コンサルタントやマーケターといった職種を例に、経費計上できる代表的な勘定科目とその具体例を一覧で解説します。

自身の活動と照らし合わせながら確認してみてください。

消耗品費(文房具・インクなど)

消耗品費とは、使用可能期間が1年未満か、取得価額が10万円未満の物品を購入した際の費用のことを指します。業務を遂行する上で消費される、比較的少額な備品が該当すると考えると分かりやすいでしょう。

たとえば、クライアントへの提出資料を印刷するためのプリンターインクやコピー用紙、打ち合わせで使用するボールペンやノートなどの文房具がこれにあたります。

その他、業務で使用するデスクや椅子なども、10万円未満であれば消耗品費として一括で経費計上することが可能です。事業に必要な備品は、領収書を保管し、消耗品費として適切に処理しましょう。

新聞図書費(書籍・雑誌・有料メルマガなど)

新聞図書費は、業務に関連する情報収集のために購入した書籍・雑誌・新聞・有料メールマガジンなどの費用を計上する際に使用します。変化の速い業界で活動するコンサルタントやマーケターにとって、最新の知識やトレンドを仕入れるための支出は不可欠です。

具体的には、マーケティング戦略の参考にするための専門書、業界動向を把握するためのビジネス誌、競合分析に活用する業界新聞などが該当します。

電子書籍の購入費用や、専門情報が配信される有料オンラインサロンの会費なども、事業に関連するものであれば新聞図書費として認められます。

通信費(インターネット料金、サーバー代など)

通信費は、事業を運営するために必要なインターネット回線やスマートフォンの利用料金、サーバー代、ドメイン代などを指します。現代のビジネスにおいて、オンラインでのやり取りは不可欠であり、これらの通信インフラにかかる費用は重要な経費です。

たとえば、オンラインミーティングに使用するインターネットプロバイダー料金や、ポートフォリオサイトを公開しているレンタルサーバーの費用などが該当します。

プライベートと共用している場合は、後述する「家事按分」によって事業利用分のみを計算して計上する必要があります。

旅費交通費(打ち合わせの移動費・取材のための交通費など)

旅費交通費は、業務上の目的で移動した際にかかる電車代、バス代、タクシー代、飛行機代、宿泊費などを計上するための勘定科目です。クライアント先への訪問や、遠方でのセミナー参加など、事業活動に伴う移動はすべて必要経費の対象となり得ます。

具体例としては、近隣のクライアント企業へ打ち合わせに行くための電車賃、遠隔地の顧客へコンサルティングを提供するための新幹線代や宿泊費が挙げられます。また、業務に必要な駐車場代や高速道路料金も旅費交通費に含まれます。

移動の目的や経路、日付などを記録しておくと、税務調査の際にもスムーズに説明することが可能です。

接待交際費(取引先との飲食代など)

接待交際費とは、事業を円滑に進めるために、取引先や潜在顧客などをもてなす際にかかる飲食代やお中元・お歳暮などの費用のことです。良好なビジネス関係を築くための支出は、必要経費として認められます。

たとえば、プロジェクトの打ち上げでクライアントと食事をした際の費用や、新規顧客を紹介してもらったお礼として渡す手土産代などが該当します。

ただし、個人的な友人との食事や、事業に関係のない相手との飲食代は必要経費にできません。誰と、どのような目的で会食したのかを明確に説明できるように、領収書の裏などに相手方の氏名や会社名をメモしておきましょう。

広告宣伝費(Web広告出稿費・チラシ作成費など)

広告宣伝費は、自社のサービスや商品を不特定多数の人に知ってもらうために支出した費用です。新規顧客を獲得し、事業を拡大していく上で、広告宣伝活動を行う場合もあるでしょう。

マーケティングコンサルタントであれば、自身の専門性をアピールするためのリスティング広告出稿費や、SNS広告の運用費用が考えられます。また、セミナーを開催する際の告知チラシの作成費や、自社のWebサイトの制作を外部に依頼した場合の費用も広告宣伝費として計上できます。

効果的な広告活動への投資は、将来の収益につながる重要な必要経費です。

外注工賃(デザイナーへの依頼費用・ライターへの執筆料など)

外注工賃(または業務委託費)は、自社の業務の一部を外部の個人や業者に委託した際に支払う報酬です。自分の専門外の業務や、手が回らない作業をアウトソーシングすることで、事業の効率化を図れます。

たとえば、コンサルティング資料に掲載する図版の作成をデザイナーに依頼した場合の費用や、運営するオウンドメディアの記事執筆をライターに委託した際の原稿料などが該当します。

外部の専門家の力を借りることで、より質の高いサービスを提供できるため、事業成長に不可欠な経費といえるでしょう。契約書や請求書を保管し、支払いの事実を証明できるようにしておくことが大切です。

なお、外注工賃は、依頼する仕事の業態によっては源泉徴収の支払いが求められる可能性があります。

副業で必要経費にできないものの代表例

副業の支出がすべて必要経費になるわけではありません。中には、事業との関連性が認められず、必要経費として計上できないものも存在します。誤って計上すると、税務調査で指摘される可能性もあるため、注意が必要です。

ここでは、必要経費にできないものの代表例を解説します。

生計を同一にする家族への支払い

配偶者や子ども、親など、生計を一つにして暮らしている家族に対して給与や報酬を支払っても、原則として必要経費にはできません。家計内での資金移動に過ぎず、事業上の純粋な費用とは見なされないためです。

たとえば、マーケティング業務を手伝ってくれた妻に「給与」として金銭を支払ったとしても、その支出を必要経費に算入することは認められません。

ただし、青色申告者で一定の要件を満たす場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで、家族への給与を必要経費にできる特例があります。白色申告の場合は、事業専従者控除として一定額の控除が受けられます。

出典:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除(国税庁)

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事業に関係ないプライベートな支出

当然のことながら、事業とは無関係の個人的な支出は必要経費になりません。税務における必要経費は、あくまで「収入を得るために直接要した費用」に限定されます。

たとえば、家族との旅行費用、友人との食事代、趣味の道具の購入費用などは、いくら高額であっても必要経費として計上することはできません。もし、事業用のクレジットカードで個人的な支払いをしてしまった場合は、帳簿上で「事業主貸」として処理し、必要経費から除外する必要があります。

事業とプライベートの支出は、明確に区別して管理する意識が重要です。

所得税や住民税

所得税や住民税は、副業で得た所得(利益)に対して課される税金です。利益が出た結果として支払うものであり、利益を生み出すためにかかった費用ではありません。そのため、必要経費として計上することはできません。

同様に、国民健康保険料や国民年金保険料も、個人の生活保障に関わる社会保険料であり、事業上の必要経費とは性質が異なります。

ただし、これらの社会保険料は、確定申告の際に「社会保険料控除」として所得から差し引けるため、節税効果がある点では同じです。勘定科目が異なる点を理解しておきましょう。

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交通違反などの罰金

業務中に発生した駐車違反の罰金や、スピード違反の反則金なども、必要経費として計上できません。これらの罰金は、法令違反に対するペナルティであり、事業活動を遂行する上で通常発生すべき費用とは認められないためです。

もし、社用車で交通違反を犯し、罰金を支払った場合でも、その支出は必要経費には算入できません。帳簿上は「租税公課」として処理しますが、確定申告の際には必要経費から除外する必要があります。

法令を遵守して事業を行うことが大前提であり、違反によるペナルティは自己責任として負担すべきものとされている点が特徴です。

プライベートと兼用している場合は家事按分が必要

自宅を事務所として利用している場合や、プライベート兼用のスマートフォンを業務でも使用している場合、その費用はどのように経費計上すれば良いのでしょうか。

このようなケースでは、「家事按分」という考え方を用いて、事業で使用した分だけを合理的に算出し、必要経費として計上します。

家事按分とは

家事按分(かじあんぶん)とは、家賃や水道光熱費、通信費など、一つの支出の中に事業用と私用の両方が混在している費用を、一定の基準に基づいて事業用の必要経費と私用の支出に分ける会計上の手続きです。

たとえば、自宅の一室を仕事部屋として使っている場合、家賃の全額を必要経費にすることはできません。仕事部屋が家全体に占める面積の割合など、客観的で合理的な基準を用いて事業利用分を算出し、その金額のみを必要経費として計上します。

ただ、税務署に説明を求められた際に、その算定根拠を明確に答えられるようにしておく必要がある点には注意が必要です。

家事按分の計算例

家事按分の計算方法は、費用の種類によって異なります。ここでは、代表的な家事関連費である「家賃」「水道光熱費」「通信費」「車両費」の計算例を紹介します。

自身の状況に合わせて、最適な按分基準を見つける参考にしてください。

家賃

自宅兼事務所の家賃を按分する場合、一般的なのは「床面積の割合」で計算する方法です。

事業専用で使っているスペースの面積が、家全体の面積に対してどれくらいの割合を占めるかを基準にします。計算式は、以下のとおりです。

家賃×(事業用スペースの面積÷自宅全体の面積)=必要経費

たとえば、家賃15万円のマンション(全体面積60㎡)のうち、15㎡の部屋を仕事専用で使っている場合の経費額は以下の通りです。

150,000円×(15㎡÷60㎡)=37,500円

 この場合、月々37,500円を「地代家賃」として経費計上できます。

水道光熱費

電気代やガス代、水道代などの水道光熱費は、「使用時間の割合」や「コンセントの数」などを基準に按分することが考えられます。特に電気代は、事業での使用実態を反映しやすい「使用時間」で計算するのが合理的です。

1か月の電気代×(1日の事業での使用時間÷24時間)×(1か月の仕事日数÷30日)=必要経費

たとえば、月の電気代が12,000円で、1日平均2時間、月に20日間副業で電気を使用した場合の経費額は以下のようになります。

12,000円×(2時間÷24時間)×(20日÷30日)≒666円

このように、実態に即した基準で計算することが大切です。

通信費

インターネット回線やスマートフォンの料金などの通信費も、家事按分の対象となります。こちらは「使用日数の割合」や「使用時間の割合」で計算するのが一般的です。

1か月の通信費×(月の事業での使用日数÷30日)=必要経費

たとえば、月額5,000円のインターネット料金を、週5日(月20日)副業で使用している場合の経費額は以下の通りです。 

5,000円×(20日÷30日)=3,333円

業務内容によっては、より詳細な使用時間の記録に基づいて計算することも可能です。

車両費

プライベート兼用の自動車を業務で使用した場合、ガソリン代や駐車場代、自動車税、保険料などの車両関連費も家事按分できます。この場合は、「走行距離の割合」で計算するのが合理的です。

車両関連費の合計×(業務での走行距離÷総走行距離)=必要経費

たとえば、年間の車両関連費が50万円で、年間の総走行距離が10,000km、そのうちクライアント訪問などで業務使用した距離が2,000kmだった場合の経費額は以下です。

500,000円×(2,000km÷10,000km)=100,000円

日頃から業務で車を使う際には、行き先や目的、走行距離を記録しておく習慣をつけましょう。

副業で経費を計上する際の注意点

必要経費を正しく計上することは節税につながりますが、ルールを誤ると追徴課税などのペナルティを受けるリスクもあります。

ここでは、特に気をつけるべきポイントを5つ解説します。

クレジットカード決済は「利用日(決済日)」で計上する

クレジットカードで必要経費を支払った場合、帳簿に計上するのは「カードの引き落とし日」ではなく、「実際にカードを利用した日(決済日)」です。会計の原則として、費用は取引が発生した時点で認識する必要があります(発生主義)。

たとえば、12月20日に業務用のPCソフトをクレジットカードで購入し、その代金が翌年の1月27日に引き落とされたとします。この場合、必要経費として計上するのは12月20日です。

年をまたぐ取引では、計上する年が変わってしまうため注意が必要です。クレジットカードの利用明細を確認し、利用日ベースで正しく記帳しましょう。

取得価額が10万円以上のものは「減価償却」が必要

取得価額が10万円以上の高額な備品を購入した場合、その費用は購入した年に一括で経費計上するのではなく、「減価償却(げんかしょうきゃく)」という手続きが必要です。

減価償却とは、固定資産の取得費用を、その資産が使用できる期間(法定耐用年数)にわたって分割して経費計上していく会計処理のことです。たとえば、30万円のパソコン(耐用年数4年)を購入した場合、毎年7万5千円ずつ4年間にわたって必要経費として計上します。これにより、単年度の所得が不当に低くなるのを防ぎ、より正確な損益計算が可能になります。

ただし、青色申告で確定申告をすることで、少額減価償却資産の特例を利用可能です。取得価額が10万円以上30万円未満であれば、減価償却をすることなく一時に必要経費にできます。減価償却する際は、上記も頭に入れておきましょう。

出典:No.2100 減価償却のあらまし(国税庁)

経費の証拠となる領収書・レシートは保管義務がある

必要経費を計上する際には、その支払いを証明する領収書やレシート、請求書などの証拠書類(証憑)を保管しなければなりません。これらの書類は、税務調査が入った際に、その支出が本当に事業のために使われたものであることを証明するための重要な証拠となります。

法律により、白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は原則として7年間の保管が義務付けられています。感熱紙のレシートは印字が消えやすいため、スキャンして電子データで保存するなどの対策も有効です。日頃から整理してファイリングする習慣をつけ、いつでも提示できるように準備しておきましょう。

出典:帳簿の記帳・保存義務(国税庁)

副業の経費が収入より多い場合は「損益通算」が可能

副業を始めたばかりの時期など、必要経費が収入を上回って赤字(損失)になってしまうこともあります。この赤字は、他の所得と相殺できる場合があります。この仕組みを「損益通算(そんえきつうさん)」と呼びます。

損益通算が可能なのは、「事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得」の場合です。これらの所得で生じた赤字は、本業の給与所得など他の黒字の所得から差し引けます。

結果として、全体の課税所得が減り、納めすぎた所得税が還付される可能性があります。ただし、「雑所得」に分類される副業の赤字は損益通算できないため注意が必要です。

申告の際は按分・減価償却の計算ミスや二重計上がないか確認する

確定申告書を作成する際には、最終的なチェックを怠らないようにしましょう。

特に、家事按分や減価償却の計算は複雑になりがちで、ミスが発生しやすいポイントです。計算の根拠となる面積や使用時間、耐用年数などが正しいか、再度確認することが重要です。

また、必要経費の二重計上にも注意が必要です。請求書で一度経費を計上し、その後銀行口座からの引き落とし時にもう一度計上してしまう、といったケースが考えられます。

会計ソフトを利用すると、このようなミスを減らせますが、最終的には自分の目で一つひとつの項目を確認する慎重さが求められます。

副業の必要経費についてよくある質問

ここでは、副業の必要経費に関して多くの人が抱きがちな疑問をQ&A形式で回答します。確定申告への理解をさらに深めるために、ぜひ参考にしてください。

Q1.会社員は副業の経費を年末調整で申請できる?

会社員は、副業で使用した費用を必要経費として年末調整で申請できません。年末調整は、あくまで本業の給与所得に関する税金の過不足を精算する手続きです。副業で得た所得や、それにかかった必要経費は年末調整の対象外となります。

副業の所得(収入から必要経費を引いた金額)が年間で20万円を超える場合は、個人で確定申告を行わなければなりません。確定申告の際に、副業の収入と必要経費を正しく申告し、納税額を確定させる流れになります。会社の年末調整とは別に、自分自身で手続きを進める必要があると覚えておきましょう。

出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)

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Q2.副業が赤字の場合も確定申告は必要?

副業の所得が赤字(マイナス)になった場合、確定申告の義務はありません(給与所得者は年間所得20万円以下の場合)。しかし、前述の「損益通算」のメリットを享受するためには、確定申告をすることをおすすめします。

副業が「事業所得」に該当し、赤字を本業の給与所得と損益通算すれば、給与から源泉徴収された所得税の一部が還付される可能性があります。

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Q3.雑所得でも必要経費は上限なく計上できる?

雑所得であっても、必要経費の金額に上限はありません。収入を得るために直接必要であったと合理的に説明できる費用であれば、金額にかかわらず必要経費として計上することが可能です。ただし、事業所得とは異なり、雑所得で赤字が出ても他の所得との損益通算はできません。

また、2022年分の確定申告から、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合、現金預金取引等関係書類の保存が義務付けられています。

経費の範囲に上限はありませんが、所得区分による税務上の取り扱いの違いは正しく理解しておく必要があります。

出典:個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について(国税庁)

Q4.領収書がない場合は必要経費にできない?

領収書やレシートをもらい忘れたり、紛失してしまったりした場合でも、支払いの事実を客観的に証明できる他の書類があれば、必要経費として認められる可能性があります。

たとえば、クレジットカードの利用明細、銀行の振込明細、交通系ICカードの利用履歴などが代替書類として有効です。また、どうしても証明書類がない場合は、出金伝票を自分で作成する方法もあります。

その際は、「日付」「支払先」「金額」「内容」を具体的に記載し、支払いの事実を記録として残しておくことが重要です。ただし、領収書の方が証拠能力は高いため、日頃から受け取る癖をつけ、保管するよう心がけましょう。

副業の必要経費を正しく理解し、適切に確定申告をしよう

本記事では、副業における必要経費の基本から、計上できるもの・できないものの具体例、家事按分の計算方法、注意点までを詳しく解説しました。

副業の必要経費とは「収入を得るために直接要した費用」であり、正しく計上することで課税所得が減って節税につながります。一方で、プライベートな支出や税金などは経費にできず、自宅兼用の費用は家事按分が必要です。

また、領収書の保管義務や減価償却のルールも理解し、適切な会計処理を心がけなくてはなりません。まずは、過去数か月の支出を見返し、どれが必要経費に該当するかを仕分けてみることから始めてみましょう。

(監修日:2025年9月12日)

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山本 聡一郎氏

山本聡一郎税理士事務所(https://nagoya-soutax.com/)|税理士

山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。

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