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【弁護士監修】副業のNDA(秘密保持契約)とは?確認すべき事項や違反のリスクを専門家が解説

副業のNDAのイメージ

企業の根幹に関わるプロジェクトに参画する副業人材にとって、秘密保持契約(NDA)の重要性は気になるところです。

本記事では、副業におけるNDAの法的な意味合いから、契約時に確認したい7つの重要ポイント、そして万が一違反してしまった場合のリスクまで解説します。

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そもそもNDA(秘密保持契約)とは?

NDA(秘密保持契約)とは、取引を通じて知った相手方の「秘密情報」を、許可なく第三者に漏らしたり、契約で定められた目的以外に使用したりしないことを約束する法的な契約です。

企業は、顧客情報・技術情報・財務情報・新規事業計画といった外部に漏れると競争力を失いかねない重要な情報を数多く保有しています。そのため、業務を外部の専門人材に委託する際には、これらの情報資産を守るためにNDAの締結を求めるのが一般的です。

特に経営戦略などの情報に触れる機会の多い職種では、締結が求められるでしょう。

副業でNDA(秘密保持契約)が必要な理由

なぜ副業において、NDAは重要視されるのでしょうか。ここでは、NDAが副業に不可欠である4つの本質的な理由を解説します。

クライアントの重要情報を守り、良好な信頼関係を築くため

クライアントが副業人材に業務を依頼する際、 懸念することの一つが情報漏洩のリスクです。

HiProが発表した「副業・フリーランス人材白書2025」によると、副業人材を活用する企業のうち約10%が情報漏洩に不安を感じているというデータもあります。

出典:副業・フリーランス人材白書2025(HiPro)

NDAの締結は、このようなクライアントの不安を解消し、安心して機密情報を開示してもらうために重要です。契約内容を誠実に遵守する姿勢を示すことは「私は情報の価値を理解し、厳格に管理できるプロフェッショナルです」というメッセージになります。

責任や義務内容を明確にすることでトラブル発生の抑止力になるため

曖昧な口約束は、後々のトラブルの火種になりかねません。

NDAを締結すると、何が秘密情報にあたるのか、それをどのように扱うべきかといったルールを「契約書」という共通言語で明確にすることが可能です。

  • 会議で聞いた話はどこまで口外して良いのか
  • 業務で利用したデータはいつまでに破棄すべきなのか

上記のような細かな取り決めを書面で合意しておくことで、お互いの認識のズレを防げるでしょう。

契約違反が発生した際に適切な対応を取るため

どれだけ注意を払っていても、ヒューマンエラーや予期せぬ事態によって情報漏洩が起きてしまう可能性はゼロではありません。万が一、契約違反が発生してしまった場合、NDAはその後の対応を定める重要なルールブックとして機能します。

違反が発覚した場合の報告義務、漏洩拡大を防ぐための協力義務、そして損害賠償の範囲など、有事の際の行動指針が定められています。

これにより、感情的な対立や混乱を避け、契約に基づいた冷静かつ秩序ある対応が可能です。

成果物やノウハウの権利関係を明確にするため

副業、特にコンサルティングやアドバイザリー業務では、業務の過程で新たな分析フレームワークや事業戦略といった知的財産(成果物)が生まれることがあります。この成果物の所有権や利用権が誰に帰属するのかを明確に定めておくことは、極めて重要です。

NDAやそれに付随する業務委託契約書において権利の帰属を定めておかなければ、あなたが苦心して生み出したノウハウが、意図せずクライアントのものになってしまう可能性があります。また、その成果物をあなたが別の業務で活用(ポートフォリオへの掲載を含む)できるのかどうかも、契約条項によって決まります。

あなたの知的財産を守り、キャリアにおける資産として正当に活用するためにも、権利関係の明確化は不可欠です。

副業でNDA(秘密保持契約)を締結する際に確認しておきたい7つのポイント

クライアントからNDAを提示された際、内容を確認せずにサインするのは危険です。一方的に不利な条項が含まれている可能性も否定できません。ここでは、NDAにサインする前にチェックしたい7つのポイントを具体的に解説します。

➀「秘密情報」の範囲は具体的で限定されているか

重要なのが、何を「秘密情報」とするかの定義です。この範囲が曖昧だと、あなたの行動が不必要に制限されてしまう恐れがあります。「クライアントから開示された一切の情報」といった包括的な定義には注意が必要です。

理想的なのは、「『秘密』と明記された書面、または口頭で開示され、かつ開示後一定期間内に書面で内容が特定された情報」のように、秘密情報が客観的に特定できる形で定義されていることです。

これにより、何を守るべきかが明確になり、意図しない違反のリスクを減らせます。不当に広い定義になっている場合は、範囲を限定するよう交渉しましょう。

②秘密情報の取り扱いに関する規定を自分が順守できるか

秘密情報の管理方法について、契約書で指定されている場合がありますが、副業の場合、その方法を自分が守れるかは必ず確認しましょう。クライアントによっては、事務所の鍵のかかるロッカー等で保管するなど、PCのセキュリティについても規定がある場合があります。

しかし、現実的には、そもそも副業なので事務所が無かったり、PCについても会社支給だったりと、対応が不可能な場合もあります。そのため、秘密情報の取り扱いについて、現実的に自分が順守できるかを確認しましょう。

③秘密保持義務を負う「期間」は適切か

秘密保持義務がいつまで続くのか、契約期間の定めは確認が必要です。この義務が「永久に」と定めがある契約書も見受けられますが、これは現実的ではありません。契約終了後、2年から5年程度が秘密保持義務の存続期間としては一般的です。もちろん、扱う情報の性質によってはより長期の期間が設定されることもありますが、不当に長期間の義務が課されていないかは慎重に判断すべきポイントです。

期間の定めがない、あるいは永久となっている場合は、合理的な期間を設定するよう交渉しましょう。

④過度な「競業避止義務」が含まれていないか

副業者にとって特に注意が必要なのが、競業避止義務に関する条項です。これは、契約期間中や契約終了後、一定期間にわたってクライアントと競合する事業を行ったり、競合他社ではたらいたりすることを禁じるものです。

競業避止義務が課されること自体は珍しくありませんが、その範囲(競合の定義)、期間、地域などが合理的でなければ、キャリア形成が難しくなる可能性があります。競合の定義が曖昧で広すぎると、他の案件を一切受けられなくなるリスクもあります。

自身の専門性や今後のキャリアプランと照らし合わせ、許容できない制限であれば、条項の削除や緩和を求めましょう。

⑤「損害賠償」の範囲や金額が一方的に不利でないか

万が一、NDAに違反してしまった場合の損害賠償に関する条項も重要なチェックポイントです。損害賠償の範囲が「クライアントに生じた一切の損害」とだけ規定されている場合、予期せぬ高額な請求を受けるリスクがあります。

対策としては、賠償額に上限(受け取った業務委託料の総額など)を設定することが考えられます。また、あなたの「故意または重過失」によって漏洩した場合にのみ賠償義務を負う、といった形で責任の範囲を限定することも有効です。

リスクを予見可能な範囲にコントロールするため、一方的に不利な内容になっていないかを確認してください。

⑥成果の公表が禁じられていないか

コンサルティング業務などで作成したレポートや提案書といった「成果物」の知的財産権(著作権など)が誰に帰属するのかは、必ず明確にしておく必要があります。

一般的には、業務委託契約では「報酬の支払いと引き換えに、成果物の権利はクライアントに移転する」と定められることが多いです。しかし、その場合でも、その成果を実績としてポートフォリオに掲載できるか、といった利用許諾を別途交渉する余地はあります。

また、著作者の意思に反する改変を禁じる「著作者人格権」を不行使とする特約が含まれているかも確認することが大切です。不当に扱われないよう、権利の帰属先を正確に把握しましょう。

⑦契約の「管轄裁判所」が遠方になっていないか

契約に関して万が一トラブルが発生し、裁判になった場合に、どの裁判所で審理を行うか(合意管轄)を定める条項も確認しておきましょう。

この管轄裁判所が、クライアントの本社所在地など、あなたにとって著しく遠方になっている場合、実際に訴訟を起こしたり、対応したりする際の身体的・金銭的負担が非常に大きくなります。

これにより、事実上、法的な権利主張をすることを諦めざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。あなたの住所地を管轄する裁判所や、東京地方(簡易)裁判所などを第一審の専属的合意管轄裁判所とするのが一般的です。

副業におけるNDA(秘密保持契約)締結までの基本的な流れ

NDAの締結は、クライアントとの信頼関係を構築する上での最初の重要なステップです。ここでは、契約締結に至るまでの基本的なプロセスを4つのステップに分けて解説します。

STEP1:クライアントから契約書のひな形を提示される

通常、業務委託契約の開始に先立ち、クライアント側からNDAのひな形が提示されます。これはクライアントが自社の法務部や顧問弁護士と連携して作成した、自社を守るためのフォーマットであることが一般的です。

STEP2:契約書の内容を確認する

提示された契約書のドラフトを隅々まで読み込み、内容を精査します。特に、前章で解説した「7つのチェックポイント」に該当する条項は、重点的に確認してください。

「自分にとって不利な点はないか」「曖昧で解釈の余地がある表現はないか」「自身の業務実態にそぐわない義務が課されていないか」など、当事者意識を持って慎重に確認しましょう。

STEP3:疑問点や懸念点があれば修正・交渉を行う

内容を確認した上で、少しでも疑問や懸念を感じる点があれば、決して遠慮せずにクライアントに質問し、必要であれば条文の修正を申し入れましょう。

あなたはクライアントと対等な立場のビジネスパートナーです。不利な条件を一方的に受け入れる必要はありません。修正を希望する箇所とその理由を論理的に説明し、交渉しましょう。

STEP4:双方が内容に合意した上で署名・捺印をする

交渉の結果、双方が契約内容に完全に合意できたら、最終版の契約書に署名・捺印(または電子署名)を行います。紙の契約書の場合は、双方が1部ずつ保管するのが一般的です。

この署名・捺印をもって、契約は法的な効力を持ちます。締結した契約書は、大切に保管しておきましょう。

副業のNDA(秘密保持契約)に違反するとどうなる?知っておきたいリスク

NDA違反は、キャリアや人生に深刻な影響を及ぼすリスクを秘めています。軽い気持ちでの情報漏洩が、取り返しのつかない事態を招きかねません。

ここでは、NDA違反がもたらす3つの具体的なリスクについて解説します。

クライアントから損害賠償請求を受ける可能性がある

NDAに違反し、クライアントに損害を与えた場合、契約に基づき損害賠償を請求される可能性があります。損害額は、漏洩した情報の内容やそれによってクライアントが被った逸失利益などによって算定され、場合によっては数百万、数千万円といった高額になるケースも考えられます。

副業で得た収入をはるかに上回る金銭的負担を負う可能性があることを、肝に銘じておく必要があります。

契約解除と業界内での信用を失墜する恐れがある

情報漏洩は、クライアントとの信頼関係を損なう可能性がある行為です。コンサルティング業界や特定の専門分野など、ハイクラス層が活躍するコミュニティは意外と狭いものです。「あの人は秘密を守れない」という評判は、業界内での評判にも影響する可能性があります。

一度失った信用を取り戻すのは極めて困難であり、将来にわたってあなたのキャリアに深刻な悪影響を及ぼすことになりかねません。

本業の会社に影響して懲戒処分を受けるリスクがある

副業でのNDA違反は、本業の会社における立場をも危うくします。

多くの企業では、就業規則において従業員に「会社の信用を傷つける行為」を禁じています。副業での情報漏洩トラブルが報道されたり、クライアントから本業の会社にクレームが入ったりした場合、この就業規則違反とみなされる可能性があるでしょう。

その結果、譴責・減給・出勤停止といった懲戒処分の対象となることも十分に考えられます。最悪の場合、会社の信用を著しく毀損したとして、懲戒解雇に至る可能性もあります。

副業での軽率な行動が、あなたの安定した本業の基盤さえも揺るがしかねないというリスクを、常に意識しておくべきです。

副業のNDAでよくあるトラブル事例

NDAの重要性を頭では理解していても、実際のビジネスシーンでは意図せず違反してしまうケースもあります。ここでは、副業者が陥りがちなNDA違反の典型的なトラブル事例を3つ紹介します。

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ポートフォリオへの実績掲載でトラブルに発展するケース

自身のスキルや実績をアピールしたいという思いから、過去の成果をポートフォリオに掲載する際にトラブルが起きるケースです。たとえば、あるマーケティングコンサルタントが、「A社の売り上げを6か月で200%向上させた新規顧客獲得戦略」といった具体的なクライアント名や数値を実績として公開したとします。

これは、クライアントの非公開情報である経営数値やマーケティング戦略を漏洩したとみなされ、NDA違反に該当する可能性がある行為です。実績を公開する際は、十分な注意が求められます。

SNSでの何気ない業務に関する投稿が情報漏洩と見なされるケース

SNSでの気軽な投稿が、思わぬ情報漏洩につながるケースもあります。

「新しいプロジェクト、大変だけどやりがいある!」といった投稿に添えた写真の背景に、未公開製品の資料が写り込んでしまう。あるいは、同僚への愚痴のつもりで「〇〇の案件、クライアントの意思決定が遅くて進まない」と投稿した内容が、プロジェクトの内部情報を示唆してしまうなどのケースです。

本人に悪意はなくても、これらの投稿から機密情報が第三者に推測されれば、NDA違反を問われる可能性があります。業務に関する内容、特にクライアントが特定できるような情報の投稿は控えるのが無難です。

業務で得た知識や人脈を利用してしまい義務違反を指摘されるケース

副業を通じて得た専門知識や人脈は、あなたにとって貴重な資産です。

しかし、その利用方法を誤ると、義務違反を指摘されることがあります。A社のアドバイザー業務を通じて得た、非公開の市場分析データや独自の顧客インサイトを、別のB社のコンサルティング業務にそのまま流用してしまうケースです。

これは、秘密情報を目的外で利用したことになり、NDA違反となる可能性があります。同様に、A社の業務で知り合ったキーパーソンに、A社と競合関係にあるC社のための営業活動としてアプローチすることも、信義則に反する行為と見なされる可能性があります。

あるクライアントの業務で得た固有の情報や人脈は、そのクライアントのためだけに利用するのが原則です。

副業のNDA(秘密保持契約)に関するよくある質問

ここでは、副業におけるNDAに関して、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で解説します。

Q1.契約書を電子契約で締結しても問題ない?

契約書を電子契約で締結しても問題ありません。電子契約サービスを利用して締結された電子契約は、電子署名法に基づき、紙の契約書への署名・捺印と同様の法的効力が認められています。

むしろ、郵送の手間や印紙代(課税文書の場合)が不要になる、契約書の保管・管理が容易になるといったメリットも多く、近年のビジネスシーンでは主流になりつつあります。クライアントから電子契約を提案された場合も、安心して応じて問題ありません。

NDAを正しく理解して、副業のキャリアを安全に構築しよう

本記事では、副業におけるNDA(秘密保持契約)の重要性から、契約時に確認すべき具体的なポイント、違反した場合の深刻なリスクまでを網羅的に解説しました。

NDAは、内容を正しく理解し、誠実に遵守する姿勢を示すことで、あなたのプロフェッショナリズムを証明し、より責任ある、価値の高い仕事を呼び込むために有効な手段となります。

監修日:2025年10月2日

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【監修者】河野 冬樹 法律事務所アルシエン|弁護士

法律事務所アルシエン(https://www.kawano-law.net/ )|弁護士

弁護士として、主にクリエイターの方をメイン顧客とし、著作権、フリーランス法務、エンターテイメント法務などを取り扱っております。 情報発信にも力を入れており、Xのフォロワー数は1万人を超えております(@kawano_lawyer)。

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