グループ横断の生成AI活用推進プロジェクト。
プロ人材からの学びをベースに展開し続けた
取り組みが評価され、「生成AI大賞2024」を受賞。

企業
社名:名古屋鉄道株式会社
所在地:愛知県名古屋市
業務内容:鉄軌道事業、不動産事業
従業員数:2,000~5,000名未満
プロ人材
名前:Iさん(フリーランス)
居住地:神奈川県
経歴:連続起業家として計8社を創業、4回のM&A(Exit)を経験。 UXコンサルタントやリモートワークにおける組織マネジメントの経験も有する。 生成AIのビジネス活用方法にも詳しく、生成AI/ChatGPTのビジネスへの導入支援、プロダクト開発、研修・ワークショップなどを数十社以上に実施。
<プロ人材としての活動>
業務内容:生成AIを業務で活用するための実践型研修(ワークショップ)の企画と実施
活動頻度:月2回
活動方法:対面
- 人材育成×デジタル推進で、
組織課題の解決を目指す。 - より高度な生成AIの業務活用を目指し、
プロ人材の活用を決定。 - 基礎知識のインプットから業務への活用まで、
充実のワークショップ。 - 取り組みが評価され、
「生成AI大賞2024」を受賞。
1)プロ人材活用の背景
人材育成×デジタル推進で、
組織課題の解決を目指す。
当社は愛知県・岐阜県を基盤に鉄軌道事業と不動産事業を展開しており、お客様には「名鉄」の愛称で親しまれてきました。当社を中核にした「名鉄グループ」は、連携子会社・持分法適用会社合わせて118社(2024年3月末現在)で構成されています。
当社では現在、各部署やグループ会社の課題解決に主眼を置き、人材の育成に力を入れています。その一つとして、業務知識を持つ人材にデジタル技術の知見を学ばせることで、デジタル技術を活用し組織に新たな価値を生み出せる人材を育てていきたいという想いがあり、これまでも、デジタル推進部を中心にデジタル技術の業務活用に積極的に取り組んできました。

より高度な生成AIの業務活用を目指し、
プロ人材の活用を決定。
ChatGPTが世間で大きな話題になった2022年秋以降、担当部署のデジタル推進部には、当社やグループ各社から「現場で活用したい」という問い合わせが相次ぎました。まずは安全に利用できる環境を整備しようと、生成AIの利用に関するガイドラインを策定。その後、SaaSソリューションである法人向けChatGPTツールの試験導入をしたところ、業務効率化に対する有効性が明らかになり、利用者間で活用アイデアを共有できる環境も構築していきました。
一方、社内では、生成AI/ChatGPTへの期待がさらに高まっていきました。文書作成や情報収集といった汎用的な使い方を超え、たとえば財務や人事など特定の職種、あるいはバス事業やホテル事業といった業種に特化した使い方など、より高度でクリエイティブな使い方を見つけていきたいと考えたのです。しかし、生成AI/ChatGPTは新しい技術ということもあり、当時のデジタル推進部では知見が足りておらず、自分たちで行うのには限界がありました。そこで、プロ人材の力を借りようと判断しました。
2)応募状況・決め手
世の中に専門家が少ない状況でも、
複数名のプロ人材がすぐさま候補に。
プロ人材の依頼にあたっては、他部署で既に取引があった「HiPro」の担当者に相談しました。依頼したいと考えていたのはChatGPTに関するワークショップです。単に知見を得るだけではなく、「既存業務の延長に留まらない柔軟な思考で活用方法を検討できる人材」を育成したかったため、実践型の研修がよいだろうと考えていました。当時はまだ、日本語に対応したChatGPTがリリースされてから日が浅かったこともあり、基礎知識に加えて応用までを教えられる人材はそれほど多くなかったと認識していますが、すぐに複数のプロ人材が候補に挙がりました。
面談した方は、どの方も新しい技術に対して積極的に追求されている印象を持ちました。知識・情報量の多さでは選び難く、最終的に当社やグループ会社の雰囲気に合いそうな方という判断軸で決定しました。
ご依頼したIさんは、シリアルアントレプレナー(連続起業家)であり、ChatGPTの解説書も刊行されているプロ人材です。自分のチャンネルを持つYouTuberでもあり、面談の中でも自身の意見をしっかりと持たれている印象を受けました。ワークショップでは、優れたファシリテーターになることが期待できましたし、問い合わせに対するレスポンスが非常に早かったため、ビジネスコミュニケーションの面からも安心感がありました。
3)依頼した業務、業務を進める上での工夫
基礎知識のインプットから業務への活用まで、
充実のワークショップ。
Iさんには、このプロジェクトが人材育成の一環であること、得た知見を業務に活用することがゴールであることをお伝えし、そこに寄与する「ワークショップ」として企画内容を提案してもらいました。実施されたのが、基礎編と応用編を組み合わせた全4回(月2回、2か月間)のワークショップです。参加者は、若手・中堅社員の22名。当社の各部署と、グループ会社から参加者を募りました。
ワークショップの最初の2回は基礎編。参加者は既にChatGPTを業務で使い始めている人から、名前を知っている程度の人まで、スタートラインはさまざまです。まずは「生成AI/ChatGPTとは何か」「どのように使うものか」といった基礎知識やプロンプト(質問、指示)の作り方などを丁寧に教えてもらったり、業務における活用例や成功事例の共有を受けたりしました。後半の2回は応用編です。各自の業務フローを書き出した上で、どこに取り入れるとよいか、参加者全員に活用アイデアを出してもらい、実際に生成AIを使いながら検証していきました。たとえばバス事業を統括するグループ会社からは、月次資料の作成に生成AIを活用するという案が出るなど、「業務活用」という目標に着実に近づけていると実感できるワークショップとなりました。
グループ横断プロジェクトを後押しする、
プロ人材のファシリテーションスキル。
生成AIの業務活用推進のロードマップには当初よりグループ会社も含まれており、名鉄グループ全体で生産性向上や業務効率化を始めとする課題の解決を図りたいと考えていました。ワークショップの参加者にグループ会社が含まれていたのもそれが理由です。
ワークショップでグループワークを行う際は、異なる会社や異なる部署のメンバーとグループを組ませ、日ごろはあまり接点のない人たちとも自然と交流が生まれるよう工夫しました。それぞれの業務経験をもとに意見交換を活発化させ、各自の発想の枠を広げられたことは、グループ横断のプロジェクトとして見てもとてもよい経験だったと思います。
ともすると漫然と終わりがちなワークショップが成功したのは、Iさんが当社に寄り添い丁寧に教えてくれたこと、また、ビジネス経験も豊富なIさんのファシリテーションスキルによるものだと思います。ワークショップ終了後、参加メンバーはそれぞれが所属する組織において生成AI/ChatGPTに精通する人材として活躍しています。
4)得られた成果
ワークショップの参加者がグループ内の講師に。
生成AIの活用推進をけん引。
ChatGPTを中心に生成AIの多角的な活用はさらに進み、ワークショップを実施したときと比べても、より幅広い場面での業務活用がグループ全体で広がっていると感じています。
ワークショップに参加した社員の一人は、グループ内に生成AI活用を広める講師としても活躍しています。グループ向け「生成AI活用促進セミナー」と題したウェビナーを、1回あたり30分~1時間弱、月1回のペースで開催しており、毎回100人以上が参加しています。加えて、より実務に寄り添うカリキュラムで業務適用のワークショップも開催。こちらは1回2~4時間、月に1~3回実施しています。Iさんによるワークショップで教えていただいた内容をブラッシュアップして、生成AIの活用推進をけん引してくれています。

取り組みが評価され、
「生成AI大賞2024」を受賞。
2024年12月、「生成AI大賞2024」(主催・一般社団法人Generative AI Japan/共催・日経ビジネス)において、当社が最高位のグランプリを受賞しました。グループ内で生成AIの活用を広める中、デジタル推進部では3段階の活用レベルを設け、それぞれにツール整備と活用支援をしつつ、ガバナンスも確保してきました。それらの取り組みが評価された受賞だと受け止めています。Iさんから学んだことをベースにしながら、デジタル推進部内で生成AIへの向き合い方を模索し、展開させていったことがこうした当社独自の取り組みにつながったと考えています。そういう意味では、Iさんとのつながりが生まれたことは、当社やグループ会社において生成AIの活用が拡大する、大きなきっかけだったと思います。
プロ人材の力を借りながら、
新たなツールを積極的に取り入れていく。
プロ人材の活用によって当社の生成AI活用は大きく進み、業務効率化が図られました。今後はさらに活用幅を広げながら、売上向上といった新たな施策にも取り組んでいきたいと考えています。
Iさんは、支援終了後も当社のアドバイザー的な立場でつながってきましたが、近々、新たな生成AIツール「Gemini for Google Workspace」に関するワークショップをお願いすることが決まりました。日々の業務もある中で、新しい技術やツールを学び取り入れることは容易ではありません。だからこそ、十分な知見や経験を有したプロ人材の力を借りることがとても有効だと思います。今後もこうした機会を設けながら、積極的に新たなツールを取り入れ、業務に活用していくことで、組織の課題解決を図っていきたいと考えています。