福井 株式会社志保重

創業200年を超える老舗菓子店。
リブランディングと店舗リニューアルに取り組み、
店舗売上が120%強に伸長。

株式会社志保重

Profile

企業

社名:株式会社志保重
所在地:福井県小浜市
業務内容:和菓子、洋菓子の製造・販売
従業員数:50名未満

プロ人材

名前:Uさん(副業)
居住地:愛知県
本業の業種:メーカー
本業の仕事:新規事業
本業の従業員数:50,000名以上
<プロ人材としての活動>
業務内容:新たなブランド戦略策定のための調査・分析、戦略策定、戦略に基づいた店舗リニューアルプランの構築、商品パッケージのデザイン提案、シンボルロゴの提案
活動頻度:月20~40時間程度
活動方法:リモート

  • 課題は、ブランド戦略の見直しと店舗のリニューアル。
  • 大企業に勤め、1,000名ほどのグループリーダーを担うプロ人材を起用。
  • 店舗リニューアル後、売上が120%強伸長。ロゴやパッケージもリニューアル。
  • アドバイス・提案だけではない、自ら行動するプロ人材の力が成果を生む。

1)プロ人材活用の背景

地域に愛される、創業200年超えの
老舗和洋菓子店。

 当社の創業は文化3(1806)年、江戸時代から続く老舗の菓子店です。和菓子と洋菓子の両輪があることを強みに、地域の皆さまにご利用いただいてきました。
 2つの直営店の他、市内小売店や道の駅などへの卸し、EC販売も行っています。近年はECでの購入をきっかけに、お取り寄せだけでなく実店舗を訪れてくださるお客様も増えてきました。

課題は、ブランド戦略の見直しと
店舗のリニューアル。

 2024年3月に北陸新幹線の金沢~敦賀間が開通し、観光客の増加なども見込まれる中、当社には大きく二つの課題がありました。一つは、旗艦店とも言える「にしづ店」が築30年を迎え、古さが気になりはじめていたことです。併設していた喫茶室をコロナ禍で閉じてしまったこともあり、店舗のリニューアルは重要な課題でした。
 もう一つの課題は、志保重のブランディングです。200年を越える歴史、そして厳選した材料を使って丁寧に作る和洋菓子の味には自信があります。しかしながら、あくまでも「普段づかいのお菓子」の域を超えていないという認識が、私たちにはありました。店舗のデザインやロゴは、過去、その時々の事情に合わせてつくっていたため、統一したブランドイメージを打ち出せていません。今後、志保重の価値を高め、新たなお客様を獲得するためには、ブランド戦略から見直す必要がありました。

2)応募状況・決め手

大企業に勤め、1,000名ほどの
グループリーダーを担うプロ人材を起用。

 志保重の新たなブランド戦略を立て、それに基づいた店づくりをしたい。それが私たちの考えでしたが、社内にブランディングの知見や経験を持つ人材はいません。地域内に依頼できそうな会社もなく、福井市まで範囲を広げてみても、なかなかよい出会いはありませんでした。困っていたときに、取引先である金融機関にご提案いただいたのが、プロ人材の活用です。市内でプロ人材を活用している会社があるという話も聞き、出会いがあるなら試してみようと決断しました。
 驚いたのは、当社の募集に対し、約20名ものエントリーがあったことです。誰もが知る上場企業に勤務されている方や、大規模な広告企画を手がけた方など、肩書も経験も予想以上のレベルでした。その中から、より当社の商品や事業に興味を持ってくださっていると感じた5名の方と面談。迷いながらも「この人と一緒に仕事をしたら、新しいステージに行けるかもしれない」と思わせてくれた、大手メーカー勤務のUさんにご依頼することにしました。Uさんは大企業にお勤めで、1,000名ほどのグループのリーダーを担っています。異業種ではあるものの、そのような実績のある方の知見を取り入れてみたいと思いました。また、Uさんのご実家が商売をされており、Uさん自身も経営に強い意欲があるといった点も決め手になりました。

3)依頼した業務、業務を進める上での工夫

3~4か月かけて課題の洗い出し、
調査・分析を実施。納得度の高い戦略を策定。

 主に依頼した業務は、新たなブランド戦略の策定と、それに伴う顧客調査と分析、新たなブランド戦略に基づいた店舗のリニューアルです。週に一度のリモート会議を中心に、プロジェクトを進めていきました。
 最初のリモート会議で、依頼したい業務や相談したいことについてお話したところ、Uさんから「まずは課題点を洗い出しましょう」と提案がありました。そこで、売上などの各種資料をUさんに送付し、共にデータを見ながら課題を一つひとつ確認。肌感はあっても明確になっていなかった問題点を洗い出し、改善方針を考えていきました。地元では志保重が支持されていても、人口が減少していく中では新規顧客の獲得には限界があるため、改めて外販拡大を重点的に行おうと決めたことは、その一つです。
 課題を洗い出し、対策方針が定まると、続いて顧客調査を実施しました。顧客調査では、EC利用者を中心にアンケート調査とインタビュー調査を行い、顧客インサイトの発見と分析に取り組みました。
 また、店舗のリニューアルに向けては、Uさん自ら京都に出向き、当社の理想を体現している店舗の調査や、分析、提案をしてくれました。課題の洗い出し、調査、分析だけで3~4か月かかりましたが、その分、志保重として目指すべき方向が明確になり、納得して次のステップに移れたと感じています。

4)得られた成果

店舗リニューアル後、売上が120%強伸長。
ロゴやパッケージもリニューアル。

 「にしづ店」は、2025年1月に無事リニューアルが完了。「和モダン」をテーマに掲げたデザインは、当初想定していたものとは少し異なるものに着地しましたが、私たちだけのアイデアではたどり着けなかったであろうデザインに面白さを感じました。お客様からの評判も上々で、「久しぶりに店舗の前を通ったら、思わず立ち寄ってしまった」という嬉しい声もいただきました。リニューアル後、売上は昨年対比120%強で伸長しており、さっそく成果が表れ始めていると感じています。また、店舗リニューアルのタイミングに合わせて、シンボルロゴも変更。江戸時代から愛され続け、私たちにとっても大切な商品である酒饅頭の焼印を起用しました。
 さらには、新たなブランド戦略に合わせて、ECの売れ筋商品であるプリン、生チョコサンド、チーズテリーヌのパッケージデザインをリニューアル。ECサイトはリピート率の低さが課題としてあった一方で、顧客調査では味に対する高い評価を得ていました。そのため、商品のパッケージを変え、志保重の中でも上位ブランドのような扱いにすることで、「普段づかい」の枠を超え、より多くの方に手に取っていただけるように、新たな価値を届けたいと考えています。

アドバイス・提案だけではない、
自ら行動するプロ人材の力が成果を生む。

 当社がプロ人材を活用するのは初めてのことで、正直、活用開始前は実情が把握しきれない面もありました。しかし、今回のプロジェクトを通して、企業に伴走し、行動し、成果を出すのがプロ人材だと認識しました。顧客調査もUさんが中心となって動いてくれましたし、店舗デザインやパッケージの見直しにも直接関わってくれました。また、もともと依頼業務として想定していなかった商品開発やSNSの投稿にも協力いただき、「必要だと思うことは何でもやる」といった姿勢で寄り添ってくれたことは、本当にありがたかったです。

自社にはないスキルを活用できることが、
プロ人材のメリット。

 プロ人材活用の最大のメリットは、課題解決に向けたアプローチ方法や実行計画など、プロ人材が培ってきたスキルを当社のために使っていただけることだと考えます。そうした高いスキルを持つ人材を育てようと思っても、そもそも当社にそのスキルや経験がなければ、教えることも育てることもできません。今回ご支援いただいたUさんのような人材に出会うことは、課題を持つ企業にとって現状打破の大きな力になってくれます。

 Uさんとは今も月に一度ミーティングを行い、現在企画中の新たなブランドの立ち上げなどについて、壁打ち相手になってもらっています。古きよき伝統は活かしつつも、「福井県の小浜市にすごいお菓子屋さんがある」と全国で話題になるようなお店を目指し、プロ人材の力も借りながら、より魅力的なブランドに育てていきたいです。

株式会社志保重