佐賀 株式会社観光ホテル千代田館

おもてなしの継承を目指す創業73年の観光ホテル。
課題の本質を見極め、現状分析や組織改革に着手。
改善に向けた仕組みづくりが前進。

株式会社観光ホテル千代田館

Profile

企業

社名:株式会社観光ホテル千代田館
所在地:佐賀県佐賀市
業務内容:宿泊・宴会・レストラン等の運営
従業員数:50名未満

プロ人材

名前:Iさん(フリーランス)
居住地:沖縄県
経歴:大手ホテル入社。宿泊部門、情報システム部門や営業部門で経験を重ねた後、営業部販売企画課支配人を経て、2017年リゾートホテルの総支配人に就任。
<プロ人材としての活動>
業務内容:経営課題の抽出と改善に向けたPDCAサイクルの定着支援、組織再編の支援
活動頻度:月20時間程度
活動方法:オンライン

  • 「千代田館らしいおもてなし」の継承に課題。
  • 14名の応募から選んだのは、日本屈指の名門ホテルで培った経験と、
    課題に寄り添う姿勢を持つプロ人材。
  • 「おもてなしの教科書作成」から、
    課題の本質を探るプロジェクトへ方向転換。
  • 部門ごとの現状分析と見える化で課題を整理し、
    改善への道筋を描く。

1)プロ人材活用の背景

「千代田館らしいおもてなし」の継承に課題。

 当社は、創業から70年以上にわたり、宿泊をはじめ、宴会やレストラン施設の運営を通じ、地域に根ざしたサービスを提供してきました。当社が拠点を置く佐賀には、古くから大切にされている「ほとめく」という言葉があります。大切な人をお迎えする前に気持ちを高鳴らせ、相手が喜ぶ姿を常に思い浮かべながら準備をし、心からのおもてなしで歓待する姿勢を表した言葉です。当社も「ほとめくこころ」を何よりも大切にしてきました。

 しかし、新型コロナウイルスの流行で大きな転機を迎えました。宿泊客や宴会の激減により、売り上げが落ち込み、コロナ禍が明けてからも以前の水準への回復には至りませんでした。コロナ禍の影響に加え、ベテラン従業員の退職もありました。その従業員は、マニュアル通りの接客に留まらず、お客様との会話内容や好みを細やかに記録し、接客に活かすようなおもてなしをしていました。お客様の中には従業員の名前を覚え「元気にしている?」と声をかけてくださる方もいらっしゃるなど、温かな信頼関係が築かれていました。しかし、現在はその技術や心配りが十分に引き継がれず、当社らしいおもてなしの継承に課題を感じていました。
 そこで、今一度「千代田館らしいおもてなし」を根本から見つめ直し、そのクオリティを底上げすることで、お客様の満足度向上と売り上げ回復につなげていきたいと考えるようになりました。

株式会社観光ホテル千代田館

2)応募状況・決め手

14名の応募から選んだのは、日本屈指の名門ホテルで培った経験と、
課題に寄り添う姿勢を持つプロ人材。

 「千代田館らしいおもてなし」を見つめ直したいと考えていた中で、県のプロフェッショナル人材戦略拠点より「プロ人材活用」という選択肢を教えていただきました。話を伺った当初は、一般的なノウハウの提供に留まらず、二人三脚で取り組んでくれる方に出会えるか不安がありました。そのため、同じ目線で寄り添ってくれる方であることを条件に検討することにしました。
 依頼内容は、今後も社内で活用し続けられる「千代田館らしいおもてなしの教科書を作ること」です。募集を開始したところ、14名のさまざまなプロフェッショナルの方々から応募いただきました。ホテルでの経営経験・現場経験の有無を重視し、面談を重ねた結果、最終的にIさんへ依頼することに決めました。日本を代表する名門ホテルでの豊富な経験も魅力でしたが、最終的な決め手となったのは、面談時のやりとりです。Iさんは、私たちの話を一つひとつ丁寧に受け止めた上で、「それであれば、このような方法も考えられます」と、建設的な提案をしてくださいました。一方的に答えを示すのではなく、私たちに寄り添いながら課題解決を考えてくださる姿勢に、この方なら一緒に取り組んでいけるという安心感を持ちました。
 Iさんとの面談を通じて、当初抱いていた不安感も払拭され、プロジェクトをスタートさせることができました。

3)依頼した業務、業務を進める上での工夫

「おもてなしの教科書作成」から、
課題の本質を探るプロジェクトへ方向転換。

 まず、Iさんから当社の組織体制や経営方針、今後の展望に至るまで、多岐にわたる質問が寄せられました。質問に答えていく中で、当初考えていた「おもてなしのレベル向上」だけでは本質的な課題解決にはつながらないことに気づかされました。私たちは、おもてなしの質が低下したことが売り上げ回復の妨げになっていると考えていましたが、Iさんとの対話を重ねる中で、課題は接客そのものではなく、現状を分析し改善につなげる仕組みや組織体制にあることが見えてきたのです。
 そこで改めてIさんと協議した上で、テーマを「おもてなしの教科書作成」から、宿泊部門、レストラン部門、宴会部門、調理部門における課題の抽出と改善へと大きく転換しました。

部門ごとの現状分析と見える化で課題を整理し、
改善への道筋を描く。

 まずは各部門長とIさんを中心とした話し合いで、各部門が抱える課題の洗い出しに着手しました。その後、洗い出した課題の解決に向け、目標やタスクを細分化した上で、Iさんから具体的な行動を促す「宿題」を提示いただきました。
 宿題は部門ごとに異なりましたが、共通していたのは「現状を分析すること」でした。宴会部門では売り上げ構成や顧客情報の整理、宿泊部門では予約経路や利用状況の分析など、それまで感覚的に把握していた情報を整理し、見える化。各部門が分析結果をもとに課題を整理し、改善策を検討することで、課題解決に向けた取り組みを進めていきました。
 Iさんとのミーティングは週一で実施。そこで宿題の結果を報告し、振り返り、新たな宿題をもらうというサイクルで進めました。日々の業務と並行して慣れない分析や資料作成に取り組む必要があり、大変さもありましたが、Iさんからは「わからないことがあればいつでも何でも聞いてください」と言っていただいたため、担当者ごとに個別で相談をしたり、チャットツールで質問したりしながら取り組みました。
 進捗はスプレッドシートで一元管理し、他部門も状況を把握できる環境を整備。日々の業務がある中でも、お互いの進捗を確認しながら取り組めるよう工夫しました。

4)得られた成果

各部署の改善アクションと組織再編を推進。
営業活動にも手応え。

 今回のプロジェクトを通じて、各部門や全社を通してさまざまな変化が得られました。
 たとえば宴会部門では、顧客管理が属人化しているという課題がありましたが、営業状況や売り上げの内訳などを分析し、情報を整理・共有することで、その情報をもとにチームで営業活動を行えるようになりました。また、毎月の売り上げ報告が中心だった会議も見直しました。数か月先の予約状況を把握した上で、目標達成に向けて何を実行するのか、具体的な行動計画まで共有する場へと転換。Iさんが作成したシートを活用しながら、目標設定から振り返りまでを継続的に行うPDCAの仕組みづくりを進めました。

 さらに、各部門の課題解決と並行して、組織体制そのものの見直しも行いました。営業課長を総支配人に登用し、一部のフロントスタッフを営業部門へ異動。さらに営業部門を「インサイドセールス」と「フィールドセールス」に分け、営業活動を支える担当者と実際に顧客先を訪問する担当者で役割分担するなど、営業力を最大化する体制へと再構築しています。
 組織再編により、これまであまり関わりのなかった部署同士で連携する機会も増え、ホテル全体の一体感も生まれつつあります。組織変革を行ってからまだ数か月ですが、営業では徐々に実績も出てきています。

株式会社観光ホテル千代田館

PDCAの定着とおもてなしの研修で、
「千代田館らしさ」を磨く。

 Iさんからは「人に頼るのではなく、仕組みをつくることが大切」とアドバイスをいただきました。人材不足が続く中でも安定して成果を出せるよう、個人の経験や勘だけに頼らず、組織として動ける仕組みづくりの重要性を学びました。その考え方をもとに、組織として成果を生み出せる体制づくりを進めています。
 Iさんには引き続き伴走していただいています。現在の課題は、この改善サイクルを社内文化として定着させ、自律的にPDCAを回し続けることです。経営基盤の整備を進めつつある今、当初の目的であったおもてなしの研修にも本格的に取り組みたいと考えています。
 改めて当社が大切にしてきた「ほとめくこころ」を見つめ直し、「千代田館らしさ」を磨いていきます。