山形 株式会社ホテルシンフォニー

地元の魅力を発信する企画立案。社内からもアイデアが出る好循環に。

Profile

企業

社名:株式会社ホテルシンフォニー
所在地:山形県寒河江市
業務内容:ホテル
従業員数:50名未満

プロ人材

名前:片桐さん(副業)
居住地:大阪府
本業の業種:コンサルタント業、IT業
本業の仕事:マーケティング、商品開発、DX支援
本業の従業員数:約10名
<プロ人材としての活動>
業務内容:地元の魅力を発信する企画立案支援
活動頻度:週4時間程度
活動方法:リモート(100%)

  • コロナによる売上の落込みの回復に向けて、
    企画と実務のできる人材確保が急務。
  • 応募総数72件。
    決め手は「一緒に協力し合える関係を築ける方」。
  • 地元の魅力を発信する企画立案。
    リモートミーティングはテーマを絞って効率的に。
  • リモートでも結局は「人対人」、
    得意・不得意を見極めて柔軟に対応。

1)プロ人材活用の背景

コロナによる売上の落ち込みの回復に向けて、
企画と実務のできる人材確保が急務。

 当ホテルは、駅近の本館と、最上川を望むアネックスの2館、それぞれビジネス層と観光層をターゲットに運営してきました。売上のベースとなっていたのは「宿泊」よりも「宴会」です。ところがこのコロナ禍で、ウエディング、法事、企業の講演会といった「宴会」需要が激減。コロナ以前を100とすると、5〜10のレベルまで落ち込んでしまいました。
 ようやくコロナが開けたとはいえ、「宴会」需要がすぐに以前のレベルに戻るかというと、まだまだ時間がかかるだろうと思っていました。そこで、政府のGo To トラベルキャンペーンなども後押しとなって、比較的順調に需要が回復していた「宿泊」を伸ばしていくことで、立て直しを図ろうという戦略を立てたのです。
 ところが、タイミングの悪いことに担当者が退職することになってしまいました。新たな社員を採用するにも、なかなか難しい状況です。ほんとうに藁にもすがる思いで、山形県企業振興公社に相談したところ、プロ人材活用の仕組みを紹介していただいたのです。

2)応募状況と決め手

応募総数72件。
決め手は「一緒に協力し合える関係を築ける方」

 まず希望したのは即戦力。広報戦略の企画立案ができて、かつ実務もできる方。正直、そんな人材がきてくれるのかと最初は半信半疑でした。結果、応募数は72件。びっくりしました。私たちの気持ちが伝わったのだと個人的には思っています。最終的には10名に絞り、その中から2名の方と2次面談をしました。お二方とも、「当社のことを思ってくれる方だな」というのがリモートの画面からもよくわかりました。
 実は2次面談にあたって事前にお二人には、企画書をつくってみてほしいとお願いしていました。すると一人の方は、 さまざまな質問をしてくれて、短い期間にもかかわらず当社への深い理解がある企画を提案してくれました。それが、今回お願いすることにした片桐さんです。未来に向かって一緒に協力し合える関係を築ける方だな、そう感じたのが決め手です。

3)依頼業務と業務進行上の工夫

地域の魅力を掘り起こし、発信していくことで、集客につながるプランニングを

 依頼を決めた後、片桐さんには1泊2日で現場に来てもらいました。まずは私たちの施設を見てもらいたい、それから周辺地域にどんなものがあるのかも一緒に見てもらいたかったのです。今回、私たちのテーマは(ホテルの集客に的を絞るのではなく)地元の魅力をもっと発信していくことでした。寒河江温泉は山形県全体でみると認知度が高くありません。近隣には、銀山温泉、蔵王温泉、あるいは庄内エリアなど、ブランド力のある温泉エリアが数あるなかで、寒河江を選んでもらうにはどうしたらいいのか。それが喫緊の課題です。そのためには寒河江独自の魅力を発信しなくては!それを、片桐さんと一緒に進めていきたい。そのためには、一度足を運んでもらう必要があったのです。

テーマを絞ったミーティングで
限られた時間を有効に

 片桐さんとの通常のミーティングは、毎週1回1時間、リモートで行なっています。時間内に効率よく進められるように、事前に3つぐらいのテーマである程度の〝アジェンダ〟を作っておきます。この日はこれについて話そう、とポイントを絞っておく。時間の制限があることで、逆に生産性が上がっていると思います。
 とは言っても、毎回1時間でアイデアが出るわけではないので、LINEなどで「こういう課題があるんですけど、どうしたらいいですか?」みたいなやりとりはしています。

4)得られた成果

夏休み、子供をターゲットにした
ユニークな企画で着実にPR

 片桐さんと活動する以前、私たちは地元の食材、とくにフルーツを訴求していこうと考えていました。6月はさくらんぼ、9〜10月はシャインマスカット、11月はラ・フランス、1月には雪中いちごと年間通してたくさん採れます。こうした地元の食をテーマに、シーズンごとの展開を考えてもらいたいと、片桐さんにもお願いしました。プロジェクトは直ぐに動き出しました。トウモロコシをテーマに企画を考えていたのですが、「トウモロコシ狩り×宿泊プランは面白いけれど、生産地として有名なわけではないので訴求力がない。もうひとつなにか付加価値がほしい」ということになり、片桐さんが考えてくれたのが、「夏休みに合わせて、トウモロコシ狩りを子供たちの自由研究の題材に」というプランです。この企画が大ヒットしたというわけではありませんが、20名以上の方にご参加いただきました。出だしとしては好評だったと思っています。
 また、このとき当ホテルとして初めてプレスリリースを出しました。無料のネット媒体や県内の記者クラブにプレスリリースを送るという広報活動を初めて実行した、ということは大きかったと思います。

地元企業とのコラボで新商品開発に発展

 さらにこの話には続きがあって、農家さんから「今年は干ばつでなかなか不揃いのトウモロコシしかできなくて困っているんです」と相談を受けたのです。これも片桐さんに相談したところ「トウモロコシを使った何か新しいレシピを考案してみたら?たとえばトウモロコシのかき氷なんかどうでしょう」と。そこで、地元のお菓子屋さんに相談してみたところ、かき氷ではなく「トウモロコシのブラマンジェ」というオシャレなスイーツを作ってくれました。これを県内のテレビ局に連絡したところ、「干ばつというテーマがあるので面白い、取材させください」と、話が広がっていきました。
 この件が話題になっても、私たちに直接のメリットはないのかもしれません。でも、当ホテルのSNSなどで一緒に発信していくことで、地元のために頑張っています、という姿勢をアピールすることができました。SNSの「いいね」の数も増えましたし、フォロワーも着実に増えています。

外部からの視点が若手を刺激、
社内からもアイデアが出る好循環

 片桐さんのアイデアは、私たちよりマクロな視点で、まったく違う方向から見てくれるので、面白いですね。社内の人間だとどうしても、ホテルはこうあるべきとか、もっと有名なものでなければ集客できないんじゃないかとか凝り固まってしまいがちです。片桐さんに入ってもらうようになって、社内でも空気が変わってきていると思います。とくに、食材をテーマにしているので厨房は刺激を受けているようで、「朝食バイキングのパンの種類が少ない。今度こんなパンを使ってみたい」などの意見が若手からあがったり、好循環が生まれているように感じます。

リモートでも結局は「人対人」、
得意・不得意を見極めて柔軟に対応。

 実は募集のときには「実務ができる方」をマストに考えていたのですが、ほとんど実務をお願いしていません。というのは、片桐さんは〝業界の仕組み〟に精通しているわけではないからです。
 しかし、それはデメリットではなく、むしろメリットと考えるようにしました。片桐さんの得意なところを活かして、私たちに不足している部分を補ってもらおうと、マインドチェンジしたのです。もしも最初に求めていたことにこだわっていたら、なかなか先に進まず、生産性のない展開になっていたかもしれません。それよりもお互いの不足しているところを、カバーできるような関係を築くことで、うまくいったのだと思います。
 リモートとはいえ、結局は「人対人」です。今回やってみて、実績が作れましたし、また、進行しているプランがいくつもあります。やっぱりまずは行動してみるということが大事だなと改めて思いました。