CRM戦略とは?サブスクリプションビジネスに必須のビジネス戦略を解説
購買行動がオンラインへとシフトする現代において、サブスクリプション事業によるサービス提供価格の低廉化が話題となっています。 利用者の初期利用コストを抑えつつ、収益安定化を実現するサブスクリプション事業は、メリットばかりに目を奪われがちです。しかし、デメリットが全くないわけではありません。それは常にサービス解約の危機に晒されているという点です。 企業がサブスクリプション事業で安定的な収益を得ていくためには、顧客の潜在的なニーズを理解し、サービス体験価値を高めていく必要があります。 そして、それを実現するために欠かせないのが、CRM戦略です。 本記事では、CRM戦略の定義や求められる理由、メリットや策定のポイントをご紹介します。 CRM戦略とは? ここではCRMの定義と戦略の概要について解説します。 CRM(Customer Relationship Management)とは? CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客関係管理と訳される言葉です。顧客情報の統合的な管理を通じて、顧客ロイヤリティを高め、業績拡大や収益性を改善することが目的となっています。 この顧客関係管理を実践するため、「業務の効率化」「分析の高度化」「連携の迅速化」という3つのポイントを網羅したのがCRMツールです。 CRM戦略はリピーター戦略 CRM戦略では、企業や担当者の属性情報、アポイント・商談履歴、取引・購買履歴、収益性、クレーム履歴、アクセス履歴など、あらゆる情報を収集し、コミュニケーションの基盤を作ることが大前提となります。 そして、その情報が活かされるのは、新規顧客の獲得だけではありません。顧客の行動履歴を記録し、成功・失敗のパターンを分析することは、リピーターの獲得にも適しています。 つまり、CRM戦略とは、新規顧客の獲得という短期施策ではなく、顧客化に成功した後も継続的にデータを収集・分析し、リピート購入を促進するための長期的な取り組みを指します。 CRMが求められる背景・必要な理由 CRMが重要視される背景には、主に3つの理由があります。 消費者行動の変化 1つ目は、消費者の購買行動の起点がオンラインに移行した点です。 今までは消費者の購買行動は、リアル店舗が中心になっていました。しかし、インターネットの普及によって越境ECが台頭したことで、現在は自宅に居ながら世界各国の製品・サービスを購入できるようになっています。 さらにインターネット上に情報が入り乱れることで、ユーザーは自身の購買行動を慎重に検討するようになりました。特にデジタルネイティブと呼ばれる若者世代はこの傾向が強く、無駄な消費を行いません。 だからこそ、ユーザーに選ばれるためには、製品・サービスの好感度・信頼度をいかに高めていくかが重要です。 そして、ユーザーの好感度・信頼度を獲得するために、戦略的なリピート化を狙う手段として、CRMによる情報の収集・分析が活用されています。 新規顧客の獲得コストの増大 2つ目は、新規顧客の獲得が難しくなり、コストが増大している点です。具体的には1:5の法則という用語もあるように、新規顧客は獲得コストに対して利益率が低いという問題を抱えています。 従来はテレアポや訪問販売など、いわゆるプッシュ型の営業手法が一般的でした。しかし、インターネットの普及によってユーザーが自発的に情報を探せる環境が整備されたことで、営業手法はインサイドセールスなどのプル型にシフトしていきます。 一方、選択肢が増えたことで、ユーザーによる製品・サービスの比較検討が簡単にできるようになり、選ばれる難易度は高まりました。これにより、新規顧客の獲得コストはさらに増大する傾向にあります。 だからこそ、経営資源の最適化を考慮した際、一度でも自社の製品・サービスを選んでくれている既存顧客の対応を手厚くしたほうが、結果的に売り上げの安定化が期待できるのです。 そして、クロスセルやアップセルを通じて、LTV(顧客生涯価値)を戦略的に高めていくために、CRM戦略が注目されています。 製品・サービスのコモディティ化 3つ目は、コモディティ化によって価格面・機能面での差別化が難しくなった点です。 これまでの製品・サービスは、「低価格」あるいは「高品質」というどちらかに特化することで、差別化を図っていました。 しかし、現在ではサブスクリプション事業によるサービスの低廉化に加え、テクノロジーの飛躍的な進歩で品質の区別が付きにくくなっています。 さらにビジネスの参入ハードルが下がり、新たな商材が続々と生まれていく環境下では、製品・サービスのライフサイクルの短期化は避けれません。 そのような事態に対して、製品・サービスの注力ポイントを、従来の機能的価値から、感情的価値にシフトする企業が増えています。 価格や機能での差別化が難しくなった現代において、ユーザーの潜在的な欲求に対して価値を定義することは、極めて重要です。そして、価値観や行動原理など、ユーザーの感情を分析するために、CRM戦略が活用される傾向にあります。 CRM戦略を立てるメリット ここではCRM戦略を立てる3つのメリットをご紹介します。 顧客に合わせたアプローチ CRMによる情報の収集・分析は、顧客単位でのニーズの可視化を実現します。何に悩んでいるのか、何を必要としているのかが把握できれば、その分アクションも立てやすいでしょう。 ニーズの多様化が進む現代において、細かな情報把握が欠かせません。CRM戦略では、収集した顧客のニーズを分析し、取るべき行動をパーソナライズ化することで、1人ひとりに寄り添ったソリューションの提供が可能になります。 顧客満足度の向上 顧客単位でのニーズに対応できることは、それぞれの顧客に対して特別感を抱いてもらいやすくなります。これにより好転を期待できるのが、顧客満足度です。 現在はニーズに対して素早く、柔軟な対応が求められています。CRMによるニーズの可視化を通じて、顧客の悩み・課題を特定し、先手を打っていくことで、顧客の要求を越えるソリューションの提供が可能です。 CRM戦略を通じて顧客のニーズに応え続けることで、関係性が深まり、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。 データドリブンなビジネスを行える 近年は購買行動の複雑化により、収集・分析するデータ群が増え、ビッグデータと呼ばれるまでになりました。この膨大なデータを適切に処理し、ビジネスを客観的に捉えたうえでの意思決定を推進する手法が、データドリブンです。 データドリブンによる事業戦略の実践は、従来の勘や経験則からくる判断よりも妥当性が高く、ステークホルダーの同意を得やすいというメリットもあります。そして、このデータドリブンを支える存在がCRMです。 CRMを戦略的に活用することは、データドリブンによる意思決定力を高め、関係各所との連携強化にも役立てられるでしょう。 CRM戦略策定のポイント CRM戦略の策定には、主に6つのポイントが存在します。 目標を明確に設定する まずはCRM戦略を通じて成し遂げる目標を設定しましょう。曖昧な目標を掲げてしまうと、ステークホルダーの認識がズレてしまうこともあるため、注意が必要です。 例えば、リピーターの囲い込みという目標を掲げたとしても、「アップセル・クロスセルを強化する」「休眠顧客を掘り起こす」「顧客の休眠化を抑制する」「定期的なリピート購入を促進する」など、人によって異なる認識が生まれてしまいます。 目標の認識が異なると、達成に向けた行動が分岐してしまい、期待した成果が得られません。そのため、定性的な目標は具体化しつつ、定量面での目標も設定することで、関係者が一丸となって目標達成に取り組めるでしょう。 KPIを設定する 定量的な目標を決める際に使われるのが、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)です。 タッチポイント数 商談設定数 顧客獲得数 受注金額/期間 顧客単価 リピート率 これらのKPIを設定することで、目標のゴールだけでなく、進捗把握にも役立てることができます。 もし進捗が芳しくない場合は、原因を特定し、現実的なKPIへの変更や業務プロセスの改善などを実行して、次の施策につなげていきましょう。 ターゲット層を決定する 自社の商材ターゲットを特定することは、CRMでの関係構築において重要なポイントです。既存顧客の属性や購買履歴などのデータ分析を通じて、「顧客化しやすいターゲット層」「リピート化しやすいターゲット層」を特定していきましょう。 商材のターゲット層が明確になることで、CRMを活用した戦略的なアプローチを練ることができます。特に新規顧客の獲得については、バリュープロポジションやUSP(Unique Selling Proposition)などを活用して、自社だけが提供できる価値を理解することも大切です。 カスタマージャーニーマップを作成する カスタマージャーニーマップとは、顧客の動きを予測し、購入アクションに至るまでの態度変容を可視化した資料です。見込み顧客との接点を可視化し、感情・思考の遷移や状況ごとの行動原理を把握するために活用されます。 カスタマージャーニーマップは、仮説検証を実践するためのツールです。顧客の行動予測をどれほど熟考しても、実際に試してみなければ答えは分かりません。当初の予想が外れることも十分にあり得ます。 だからこそ、暫定的にでもカスタマージャーニーマップでペルソナやフレームを設計し、情報を収集・マッピングしていくことで、顧客像の修正が行いやすくなり、施策の精度向上が期待できるでしょう。 理想の顧客体験を実現するビジネスプロセスを設計する 近年では、製品・サービスの利用時における顧客視点での体験が重視されています。これを概念として落とし込んだのがCX(Customer Experience)です。 そして、CXを向上させるためのビジネスプロセス設計には、サービス・ブループリントというフレームワークが活用されます。 サービス・ブループリントとは、顧客がサービスを利用するまでのプロセスにおいて、チャネルや従業員との接点を可視化したものです。このフレームワークの活用により、自身の業務がビジネス全体とどのようにつながり、顧客に関与しているのかが明確になります。 特に現代ではニーズの多様化に対応するため、プロダクトに対して複数の部門が関与していることも珍しくありません。しかし、関与者の拡大によってビジネスの全体像の把握が困難になっています。 理想の顧客体験を実現するためには、CRM戦略での情報分析に加え、従業員同士の連携が重要です。その連携を強化するためにも、サービス・ブループリントを活用したビジネスプロセスの設計・改良が効果的であるといえるでしょう。 CRMツールで情報を蓄積・管理する カスタマージャーニーマップやビジネスプロセスを改良していくためには、CRMツールによる情報の蓄積・管理が不可欠です。 顧客の個人情報の分析に加え、商談記録の共有によるフィールドセールスとインサイドセールスの連携強化、トッププレイヤーのノウハウ蓄積による営業組織のパフォーマンス向上など、CRMの戦略的な活用で実現できることは数多くあります。 自社の利益を高めていくためにも、組織に適した機能を持ったCRMに投資していくことが重要となるでしょう。 まとめ 本記事では、CRM戦略の定義や求められる理由、メリットや策定のポイントをご紹介しました。 オンラインでの購買行動が活発化し、機能・価格面でのプロダクト差別化が難しくなった現代において、CRM戦略による顧客情報の収集・分析は必要不可欠です。CRMを戦略的に活用し、ニーズに沿った施策を立てることで、自社だけが提供できるソリューションが明確になり、収益性の改善にも貢献できるでしょう。 ブランドの好感度・信頼度を高めていくためにも、ぜひCRM戦略の策定を検討してみてください。