LTV(ライフタイムバリュー)とは?マーケティングで重要視される理由や計算方法を解説
データ活用を経営に取り入れる企業が増える中、「LTV(ライフタイムバリュー)」の活用に、市場の注目が集まっています。 しかし、LTVという用語は見聞きしたことがあっても、言葉の定義や計算方法につき、詳細までご存知の方は多くないと思います。 そこで本コラムでは、LTVの用語解説をはじめ、注目されている理由や計算方法、向上させるための方法につき、詳しく解説します。 LTVとは LTVとは「Life Time Value」の略称であり、顧客生涯価値(ある顧客が生涯の購買活動を通して企業にもたらす利益)と呼ばれるマーケティング指標です。 計算式は後述しますが、製品・サービスにおいて熱烈なファンやリピーター顧客が多いほど、LTVは高まる傾向にあります。 LTVの活用を通して、企業は顧客の傾向を分析でき、利益の最大化を図れることから、LTVは重要なマーケティング指標の一つになっています。 LTVが注目されている理由 LTVが注目されている理由として、以下の3つが挙げられます。 市場の飽和 先端技術を活用したトレンド市場などを除き、多くの市場は成長段階を過ぎ、成熟段階にあるといわれています。そのような成熟市場では、限られた市場シェアと顧客を巡り、企業間競争が激化するため、企業にとって新規顧客の獲得以上に、いかにして既存顧客に長期間製品・サービスを購入してもらえるかが重要になります。市場が飽和状態にある中で競合他社に顧客を奪われた場合、事業利益に与える影響が大きいことから、安定経営の指標になるLTVに企業の注目が集まっています。 データドリブンマーケティングの浸透 LTVを算出する際、顧客行動の分析が不可欠ですが、近年、データ活用を事業運営に取り入れる「データドリブンマーケティング」に注力する企業が増えています。データドリブンマーケティングが浸透する前と比べ、LTVを容易に算出できるようになったことも、企業の注目を集める理由の一つです。 サブスクリプションの普及 音楽や映画配信はじめ、月や年単位で料金を支払い、対象期間内に無制限でサービスを享受できるサブスクリプションサービスの普及も、LTVの注目度を上げる要因に考えられています。サブスクリプションサービスを企業が推進する場合、いかに長期間、既存顧客にサービスを継続利用してもらえるかが、ビジネス成功の鍵を握ります。 その指標として用いられるのがLTVとなるため、今後LTVをマーケティング指標に活用する企業の増加が見込まれています。 LTVの計算方法 基本的な計算方法 LTVは、さまざまな計算方法で算出できますが、以下が基本的な計算方法になります。 LTV=購入単価×購入回数・頻度×購入期間 仮に単価が10万円の製品・サービスを年に6回、合計3年間購入した場合のLTVは180万円になります。 LTV=購入単価(10万円)×購入回数・頻度(6回)×購入期間(3年)=180万円 上記の計算式より、購入単価が低い場合であっても、購入回数・頻度が多く購入期間が長いほどLTVは高くなります。LTVの計算式には、収益率や解約率を考慮したものなどがあるため、事業形態にあったものを選択するようにしましょう。 商材ごとのLTVの計算方法 商材ごとに上述のLTVの計算式に要素を変更・追加する場合があります。代表的な例を、以下に3つご紹介します。 リピート商材 メーカーや小売業が販売するリピート商材のLTVの計算方法は、以下になります。 LTV=顧客の平均購入単価×年間の平均購入回数・頻度×平均契約期間(年) 仮に、リピートで購入する飲料水セットの単価が3千円、年間の平均購入回数・頻度が12回×平均購入期間が2年だった場合、LTVは7万2千円になります。なおリピート商材の場合、全体の平均値をもとに計算するのが特徴です。 B to B商材 B to B商材のLTVの計算方法は、以下になります。 LTV=顧客一人あたりの年間取引金額×収益率×顧客一人あたりの継続年数 B to B商材は、収益率の大きさによって、取引に与える影響度が大きいことから、収益率を計算式に盛り込むのが一般的です。仮に収益率50%の商材を、年間100万円で10年間継続取引してもらう場合のLTVは500万円になり、収益率60%の商材を、年間90万円で10年間継続取引してもらう場合のLTVは540万円になります。 年間取引金額は前者の方が大きい一方、LTVは後者の方が高いことがわかります。このようにB to B商材のLTVでは収益率が占める要素が高いため、収益率の事前算出が欠かせません。 サブスクリプション型商材 サブスクリプション型商材のLTVの計算方法は、以下になります。 LTV=顧客の平均単価×粗利÷解約率(チャーンレート) サブスクリプション型商材では「月額○○○○円」や「年間契約の場合、さらに月額○○%オフ」など、顧客との契約後に一定期間の利益が見込める一方で、途中解約の可能性があるのが特徴です。 解約率がLTVに占める割合が高いため、対象商材の解約率を正確に算出する必要があります。以下が解約率の計算手法になるため、参照の上、正しい数値を算出するようにしましょう。 解約率の算出方法=解約した顧客数÷解約前の顧客数 ※1か月間の解約率を算出する場合の計算手法は「今月解約した顧客数÷前月の顧客数」となり、仮に今月解約した顧客数が100名、前月の顧客数が1000名の場合、月次の解約率は10%になります。 LTVを高める方法 LTVを高めるためには、どのような方法があるのでしょうか。以下にご紹介します。 顧客の購入単価を上げる 前段でご紹介した計算式の通り、顧客の購入単価が上昇する分、LTVは向上します。しかし製品・サービスを値上げする際には、多くの顧客が納得のいく理由を提示する必要があります。安易な値上げは、顧客離れや競合他社への切り替えを加速させる恐れがあるため、充分に検討の上、進めるのが得策です。 購入頻度を上げる 購入頻度も、LTVに占める割合が大きいファクターです。購入頻度を高めるためには、顧客に自社製品・サービスの魅力をPRし、興味関心を喚起する必要があります。SNSを活用したPR活動や、適切なタイミングでのメルマガ・DM配信などを通し、購入頻度の向上を図りましょう。 収益率を改善する 収益率の改善も、LTVの向上に直結します。収益率の改善には、原価の低減が即効性のある施策となります。ただ、実現が難しい場合は、上位の製品・サービスへの移行を促すアップセルや、関連製品・サービスの購入を促すクロスセル施策などの推進が効果的です。 解約率を下げる 最後に、解約率の減少もLTVの向上につながります。とりわけサブスク型のビジネスの成功には、解約率の減少が欠かせません。解約率を下げるための施策として、自社ブランドイメージの向上に寄与するブランディング施策の推進や、長期の利用顧客を優遇するポイントプログラムの導入などがあります。費用対効果を検討の上、積極的に施策を推進しましょう。 まとめ 本コラムではマーケティング指標の一つであるLTVが、企業の安定成長や収益性確保に欠かせない点などについて、詳しく解説しました。 まだLTV指標をマーケティングに取り入れていない企業さまにおかれましては、自社利益の最大化に向け、LTVの積極的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。









