副業から起業するには?個人事業主・法人の違いと法人化のタイミングを解説

副業から起業することは可能です。会社員として収入を確保しながら事業を始めれば、顧客のニーズや適正価格、継続受注の可能性を確かめたうえで、独立や法人化を判断できます。
ただし、起業するからといって、必ずしも会社を設立する必要はありません。副業から起業する方法には、個人事業主として開業する方法と、株式会社や合同会社などの法人を設立する方法があります。
本記事では、副業から起業する方法やメリット・デメリット、法人化を検討するタイミング、必要な手続き、起業につなげやすい副業の職種例について解説します。
そもそも副業から起業はできる?

副業から起業することは可能です。起業とは新しく事業を始めることであり、法人設立だけを指すものではありません。会社員が副業でサービスを提供し、個人事業主として開業する場合も起業に含まれます。
副業のうちに顧客や実績、ノウハウといった事業の基盤を育てておけば、退職後すぐに起業する場合よりも収入が途切れるリスクを抑えられます。本業の収入を確保しながら準備を進められる点も、副業からの起業ならではの強みといえるでしょう。
次の章では、副業から起業する2つの方法(個人事業主・法人)、法人化を判断するタイミング、起業に必要な手続きまでを順に解説します。
副業から起業する2つの方法。「個人事業主」と「法人化」
副業から起業する方法は、個人事業主として開業する方法と、株式会社や合同会社などの法人を設立する方法に大きく分けられます。
手続きや費用を抑えて事業を始めたい場合は個人事業主、従業員の採用、資金調達などを見据える場合は法人が選択肢になります。現在の収入だけでなく、事業を今後どのように成長させたいかを踏まえて選びましょう。
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個人事業主として起業する
個人事業主は、法人を設立せず、個人で事業を営む形態です。開業時の手続きや費用を抑えやすいため、副業から事業を始め、収益性や継続性を確かめたい人に向いています。
個人事業を始めた場合は、税務署へ開業届を提出します。青色申告を希望する場合は、青色申告承認申請書も期限内に提出しましょう。
なお、副業所得が年間20万円を超えるかどうかは、一定の給与所得者における所得税の確定申告要否に関する基準であり、個人事業主になる基準ではありません。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。
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法人を設立して起業する
法人で起業する方法には、最初から株式会社や合同会社を設立する方法と、個人事業主が新たに法人を設立し、資産や契約などを法人へ引き継ぐ「法人成り」があります。
法人は、商号、本店所在地、事業目的、資本金、役員や社員などの基本情報を登記します。法人格を取引条件とする企業との契約や、人材採用、資金調達を進めるうえで、法人であることが有利にはたらく場合があります。また、株式会社では株式、合同会社では持分を用いた事業承継も検討できます。
一方、法人化すると、設立登記や法人税の申告、社会保険などの手続きが必要になります。登記事項を変更した場合には変更登記も必要です。また、赤字の場合でも、原則として法人住民税の均等割が発生します。
そのため、節税効果だけで法人化を決めるのではなく、継続的な利益を見込めるか、取引先から法人格を求められているか、採用や資金調達を予定しているかを踏まえて判断しましょう。
出典:商業・法人登記申請手続(法務局)/法人住民税(総務省)
個人事業主と法人はどう違う?
個人事業主と法人では、事業開始時の手続きだけでなく、税金、社会保険、会計・申告の負担なども異なります。
主な違いは次のとおりです。
比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
事業開始の手続き | 税務署への開業届などを提出する | 定款の作成や出資、設立登記などを行う |
開始時の費用 | 法人のような設立登記費用はかからない | 登録免許税などの設立費用がかかる。株式会社では原則として定款認証も必要 |
会計・税務 | 所得税の確定申告を行う。法人と比べると手続きは簡素 | 法人税などの申告が必要。会計・申告手続きは複雑になりやすい |
税金 | 事業所得などに所得税・住民税等がかかる | 法人の所得に法人税・法人住民税・法人事業税等がかかる |
社会保険 | 副業か独立後か、従業員数などによって扱いが異なる | 法人事業所は事業主のみの場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となる |
契約 | 個人名義で契約する | 法人名義で契約し、法人格が条件となる案件にも対応できる |
資金調達 | 融資などを利用できる | 融資に加え、会社形態に応じて株式や持分による出資を受けられる |
事業上の責任 | 原則として事業上の債務を個人が負う | 出資者の責任は原則として出資額の範囲。ただし、融資の個人保証などは別 |
適しているケース | 費用を抑えて始め、収益性や継続性を確かめたい場合 | 法人取引、採用、資金調達、事業承継などを見据える場合 |
副業の売上や利益がまだ安定しておらず、まず事業として継続できるかを確かめたい場合は、個人事業主から始める方法が選択肢になります。
一方、取引先から法人格を求められている場合や、従業員の採用、資金調達、事業承継などを予定している場合は、法人化を検討する意義があります。
出典:適用事業所と被保険者(日本年金機構)/事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき(日本年金機構)
副業を法人化するタイミングは?5つの判断基準
副業を法人化するタイミングは、早すぎると設立・維持コストが負担になる一方、遅すぎると得られたはずの利益を逃す可能性があります。法人化を検討する際は、事業がいくつかの転換点に達したときが目安となります。
ここでは、判断の参考となるポイントを5つ紹介します。
副業の年間所得が500万~800万円程度になったとき
副業の年間所得が500万~800万円程度に達したら、法人化後の手取りを試算する目安の一つです。ここでいう所得は売上ではなく、売上から必要経費を差し引いた金額です。
個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がりますが、法人化すれば必ず負担が軽くなるわけではありません。法人税等に加え、本人へ支払う役員報酬の所得税・住民税、社会保険料、法人住民税、会計・申告費用が発生するためです。
この段階では「法人化すべき」と即断せず、今後の利益見込みと希望する役員報酬を置いて、個人事業と法人の手取りを比較します。単年ではなく2~3年分を試算すると、一時的な好業績に左右されにくくなります。
引用:No.2260 所得税の税率(国税庁)/No.5759 法人税の税率(国税庁)(2026年10月時点情報)
課税売上高が1,000万円を超えたとき
課税売上高が1,000万円を超える見込みになったら、消費税を含めた収支と価格設定を見直すタイミングです。原則として、個人事業者は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になるからです。しかし、インボイス登録などにより、売上高にかかわらず課税事業者となっている場合もあります。
重要なのは、1,000万円を「法人化の基準」と捉えないことです。法人成りした新設法人は基準期間がないため免税となる場合がありますが、資本金、特定期間の売上、インボイス登録などによっては設立当初から課税されます。免税期間だけを目的に法人化すると、社会保険料や維持費を含めた総負担がかえって増える可能性があります。
まず、消費税を価格へ転嫁できるか、取引先がインボイスを必要としているかなどを確認します。そのうえで、税負担の変化だけでなく、法人化の必要性をほかの判断基準と合わせて検討しましょう。
出典:No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき(国税庁)
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法人格が取引条件になる案件が増えたとき
事業が成長すると、取引先の与信管理や購買規程の都合から、法人とのみ契約する企業に出会うことがあります。法人名義の口座・契約、従業員の採用、金融機関からの融資、外部投資家からの出資が必要になったときは、利益額だけではなく事業拡大の条件として法人化を検討する段階です。
ただし、法人化すれば自動的に信用や受注が得られるわけではありません。実績、財務状況、情報管理体制、契約履行能力も見られます。法人化によって獲得できる見込み案件と、年間の維持費を具体的に比較しましょう。
採用や外部資金によって事業を拡大したいとき
受注が増え、一人での対応が難しくなった場合は、従業員の採用とあわせて法人化を検討するタイミングです。個人事業主でも従業員を雇えますが、法人化すると、契約や資産、人員を法人単位で管理しやすくなります。
また、外部投資家から出資を受けたい場合は、会社の設立が必要です。特に株式会社は、株式を発行して資金を調達できるため、外部資本を活用して事業を拡大したい場合に適しています。
ただし、採用するだけであれば法人化は必須ではありません。組織として事業を運営したいか、出資を受けて成長を加速させたいかを基準に判断しましょう。
家族の参画や事業承継を具体的に考え始めたとき
家族が継続的に事業へ参加する、将来は別の人へ経営を引き継ぐ、M&Aを検討するといった場合も法人化を考えるタイミングです。法人では、役員・従業員の役割を定め、株式や持分を通じて事業承継を設計できます。
家族へ役員報酬や給与を支払う場合は、実際の職務と報酬額の妥当性が必要です。所得分散だけを目的にせず、誰が何を担い、将来どのように経営を引き継ぐかを明確にしましょう。
まだ法人化を急がない方がよいケース
次のような場合は、個人事業主のまま事業性を確かめる方が合理的なことがあります。
- 副業収入が一時的で、継続受注の見通しが立っていない
- 法人の設立費や維持費を負担できる利益がない
- 取引先から法人格を求められていない
- 採用や資金調達を予定していない
- 節税以外の法人化目的が明確になっていない
- 法人化後の手取りや資金繰りを試算していない
法人は、事業を行わない状態でも申告や届出が必要になる場合があります。事業を終了する際には、解散や清算の手続きも必要です。法人化する前に、今後の売上、利益、資金繰りを試算し、法人を継続して維持できるかを確認しましょう。
副業から起業する3つのメリット
副業から起業するメリットは、収入を増やせることだけではありません。会社員としての基盤を維持しながら、事業の可能性を検証できる点に大きな意味があります。副業から起業するメリットは以下のとおりです。
- 本業以外の収入源を育てられる
- リスクを抑えながら事業性を検証できる
- 経営者に必要な視点を身につけられる
それぞれ解説します。
本業以外の収入源を育てられる
そもそも副業には、本業以外で収入を得られるメリットがあります。
たとえば、ITエンジニアが受託開発や技術顧問、コンサルタントが経営支援、マーケターが集客支援など、それぞれ本業の専門領域でサービスとして提供するイメージです。本業で培った知識やスキルをそのまま事業に変えられるため、未経験の分野でゼロから始めるよりも立ち上げがスムーズに進みます。
そのうえで副業が安定軌道に乗った状態で起業すれば、事業のスケールを高めながら、収入を上げていくこともできるでしょう。これは総収入が上がるだけでなく、将来的に本業を超える収入源を生み出すことにもつながります。
リスクを抑えながら事業性を検証できる
副業から起業するメリットは、リスクを抑えながら事業性の検証が可能な点です。
副業なら本業の収入を得ながら、顧客ニーズ、適正価格、集客方法、継続受注の可能性を試せます。独立前に「売れるか」だけでなく、「無理なく続けられるか」を確認できる点が大きな利点です。
経営者に必要な視点を身につけられる
起業をすると、売上やコストの管理、マーケティングやセールス、請求書の発行などの事務作業といった、経営のためのさまざまな業務を行う必要があります。自身でビジネスの全体像を把握し、業務を管理する経験を通じて、経営者としての視点やスキルを身につけることができます。
経営者としての視点は、本業にも還元されます。HiProの「副業が会社員のやりがいやモチベーションに与える影響についての調査」によると、副業でモチベーションが上がった理由として「新しい視点が生まれた・視野が広がった」が51.3%と最も多く挙げられました。
スモールスタートできる副業での起業は、経営者として成長するための有効な手段といえるでしょう。
出典:副業が会社員のやりがいやモチベーションに与える影響についての調査(HiPro)
副業から起業する前に知っておきたい3つのデメリット
副業からの起業は、メリットだけではありません。起業のデメリットを理解し、対策を講じておくことが重要です。ここからは、副業から起業するデメリットについて解説していきます。
オーバーワークとなる可能性がある
副業から起業し、本業と両立する場合は、オーバーワークに注意しましょう。会社員が副業する場合は、土日や業務後の時間にはたらくことになります。副業や起業の準備、本やセミナーでの勉強など、時間がかかります。
副業は活動すればするほど収入が増えるため、キャパシティを超えた仕事を受けてしまい、オーバーワークとなりかねません。
また、本業と両立しながら登記の手続きや株式会社の設立、起業における人材集めなど多くのことを行わなければならないことも、オーバーワークとなる可能性のひとつです。
オーバーワークになると最悪の場合、大きく体調を崩してしまうリスクもあります。対処法としては、副業が本業に影響が出ないように適度に休息を取りつつ、自分の稼働可能な業務量を把握することです。
会社の規程に違反する可能性がある
副業はすべての会社で全面的に禁止されているわけではありません。しかし、起業を進める前に勤務先の就業規則や副業規定を必ず確認することが前提です。副業が許可制や届出制になっている場合は、定められた手続きを踏む必要があります。
あわせて、競業避止義務や秘密保持義務にも注意しましょう。本業と同じ領域で事業を行うと、これらの義務に抵触するおそれがあります。
なお、法人を設立すると代表者の氏名が登記情報として公開されます。登記は誰でも確認できるため、勤務先に法人設立が判明する可能性がある点もふまえておく必要があります。隠れて進めるのではなく、許可や届出の手続きを正しく行い、勤務先のルールに沿って起業を進めることが大切です。
初期費用がかかる
一般的な起業方法では、手続きやオフィス代、人件費などの費用がかかります。その額が多い場合、資金調達が必要な場合もめずらしくありません。
主な資金調達の手段として、次の出資元から融資を受けることができます。
- 日本政策金融国庫
- クラウドファンディング
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
- 地方銀行
- メガバンク
- 補助金、助成金、支給金
それぞれ融資の条件が異なるため、自分自身の事業内容に合うものを選ぶことが重要です。副業の種類によって、初期投資の金額は変わります。初期投資に多額のお金がかかるような事業を選んでしまうと、初期の段階でうまくいかずに破綻してしまう恐れがありますので、注意しましょう。
副業から個人事業主として起業する流れ
個人事業として事業を始める場合、法人のような設立登記は必要ありません。ただし、副業の規模や継続性などによって所得区分が事業所得または雑所得となり得るため、実態に応じた税務手続と記帳が必要です。
1.開業届などの必要書類を提出する
個人事業を始めた場合は、税務署へ開業届を提出します。
青色申告を利用したい場合は、開業届とは別に青色申告承認申請書を期限内に提出します。青色申告では、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除や純損失の繰越しなどを利用できます。
都道府県や市区町村への事業開始等申告が必要になる場合もあるため、事業所の所在地を管轄する自治体の案内も確認しましょう。
2.事業用のお金と書類を管理する
副業であっても、事業用の銀行口座やクレジットカードを用意し、生活費と事業のお金を分けると管理しやすくなります。
顧客との契約書、見積書、請求書、領収書、口座の入出金明細などを整理し、売上と経費を帳簿へ記録します。
自宅の通信費や家賃など、私生活と事業の両方に関係する支出は、事業で使用した分を合理的な基準で分けます。確定申告の直前にまとめて処理するのではなく、月ごとに記帳する習慣をつけましょう。
3.確定申告と事業の見直しを行う
会社員が副業として個人事業を行う場合、本業の給与とは別に、副業の所得について確定申告が必要になることがあります。
ここでいう所得は売上ではなく、売上から必要経費を差し引いた金額です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
確定申告のためだけに帳簿を作るのではなく、売上、経費、利益、継続顧客数を定期的に確認し、事業が成長しているかを把握しましょう。利益の増加や法人取引の拡大など、事業環境が変化した場合は、法人化も検討します。
副業を法人化するまでの流れ
法人化を決断したら、次は具体的な設立手続きに進みます。一見複雑に見えますが、一つ一つのステップを確実に進めれば、誰でも会社を設立することは可能です。
ここでは、株式会社の設立を例に、その全体像を6つのステップで解説します。
1.会社形態を選択する
まず、設立する会社の形態を決定します。主な選択肢は「株式会社」と「合同会社」の2つです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
設立費用 | 高め | 株式会社より低め |
社会的信用 | 高い | 一般的には株式会社より低いと認識される場合がある |
資金調達 | 株式発行で調達できる | 出資者中心 |
向いている人 | 外部出資・事業拡大を見据えている人 | スモールスタート・意思決定を早くしたい人 |
株式会社は、株式を発行して資金調達ができ、社会的信用が高い反面、設立費用も高めです。将来的に外部からの出資を受けたい、事業の規模を大きくしたい場合に適しています。
一方、合同会社は設立費用が安く、経営の自由度が高いのが特徴です。出資者(社員)自身が経営を行うため、迅速な意思決定が可能です。まずはスモールスタートを切りたい場合に適した形態と言えるでしょう。
外部投資家から株式による出資を受ける予定がある場合は株式会社、設立費を抑えて小規模に運営したい場合は合同会社が候補になります。
出典:株式会社の設立手続(発起設立)について(法務省)/合同会社の設立手続について(法務省)
2.法人用の印鑑を作成する
会社を運営していく上で、いくつかの印鑑が必要になります。
最低限、以下の3つは作成しておきましょう。
代表者印(会社実印) | 法務局に登録する、会社にとって最も重要な印鑑です。契約書など公式な書類に使用します。 |
銀行印 | 法人名義の銀行口座を開設する際に、金融機関に届け出る印鑑です。 |
角印(社印) | 請求書や領収書など、日常的な業務で会社名を示すために使用する認印です。これらの印鑑は、登記申請前に準備しておく必要があります。 |
3.定款を作成する
定款(ていかん)とは、会社の組織や運営の基本的なルールを定めた重要な書類です。定款には、以下の3つの項目があります。
- 必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」
- 記載しなければ効力が生じない「相対的記載事項」
- 任意で定められる「任意的記載事項」
特に絶対的記載事項に漏れがあると定款自体が無効になるため、注意が必要です。また、株式会社の場合、作成した定款は公証役場で認証を受ける必要があることも覚えておきましょう。
4.代表者名義の銀行口座に資本金を払い込む
定款の作成と並行して、資本金の払込みを行います。
資本金は1円からでも会社を設立できますが、事業の元手となる資金であり、会社の信用度を示す指標でもあるため、適切な額を設定することが重要です。
払込みは、発起人(会社設立の企画者)個人の銀行口座に、各発起人が出資額を振り込む形で行います。
そして、その通帳のコピーなどを添付した「払込証明書」を作成し、登記申請の際に提出します。
5.登記書類を作成・提出する
設立準備の最終段階が、法務局への登記申請です。
登記申請書をはじめ、定款、役員の就任承諾書、印鑑証明書、資本金の払込証明書など、これまで準備してきた書類一式を揃え、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出します。
書類に不備がなければ登記が完了し、会社が法的に成立します。この登記申請日が、会社の設立日となります。
6.必要書類を税務署・自治体等に提出する
登記が完了しても、それで終わりではありません。
速やかに税務署・都道府県税事務所・市区町村役場へ「法人設立届出書」を提出する必要があります。
従業員(役員1名でも)を雇用する場合は、年金事務所へ健康保険・厚生年金保険の新規適用届が必要です。また、労働基準監督署やハローワークへ労働保険関係の届出も必要になります。
これらの手続きを怠ると、税制上の優遇措置が受けられなくなったり、罰則の対象となったりする可能性があります。必ず忘れずに行いましょう。
副業を法人化する際に必要な書類一覧
法人設立の手続きには、多くの書類が必要となります。抜け漏れなく準備を進めるために、株式会社(内国普通法人)を設立する場合の主要な必要書類を一覧にまとめました。
【必ず提出が必要な書類】
書類名 | 提出期限 |
法人設立届出書 | 設立の日から2か月以内 |
源泉所得税関係の届出書 | - |
消費税関係の届出書 | - |
【必要に応じて提出する書類】
書類名 | 提出期限 |
青色申告の承認申請書 | 設立第1期目から青色申告の承認を受ける場合 |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 設立第1期の事業年度の確定申告書の提出期限まで |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 設立第1期の事業年度の確定申告書の提出期限まで |
有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書 | 有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで |
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書 | 適用を受けようとする事業年度終了の日まで |
事前確定届出給与に関する届出書 | 設立の日以後2か月を経過する日まで |
これらの多くは、法務局のウェブサイトでテンプレートが提供されています。必要な項目を漏れなく記入し、適切に提出しましょう。
副業での起業を成功させるポイント
本業がありながら副業での起業を成功させるには、どうすればよいのでしょうか?ここでは、副業での起業を成功させるためのポイントを紹介します。
事前に勤務先の就業規則や副業規定を確認する
副業で法人設立を考える際に、まず確認しておきたいのが勤務先の就業規則です。多くの企業では副業に関する規定が設けられており、許可が必要な場合や、特に競合する事業を制限しているケースがあります。
就業規則に反してしまうと、注意や処分を受ける可能性も考えられます。法人を設立すると代表者の氏名や住所は登記情報として公開されるため、本業の会社に知られる可能性は高いといえるでしょう。
こうした点を理解したうえで、自社の就業規則を事前に確認することが重要です。許可制なのか届出制なのか、禁止されている業種があるかどうかを把握してから動くと安心です。
本業を疎かにしない
副業での起業を成功させることに力を入れるあまり、本業が疎かにならないように気を付けましょう。
本業での評価が下がると、副業にも悪影響を及ぼす可能性があります。本業で高いパフォーマンスを維持することで、安定した収入を確保し、精神的な余裕を持って副業に取り組むことができます。
目標を立て、計画的に副業を行う
具体的な目標を設定し、計画的に副業を行うことが成功への鍵となります。目標を細分化し、達成するための具体的なアクションプランを立てることで、ビジネスの成功率が高まります。例えば、短期、中期、長期の目標を設定し、それに基づいた行動計画を作成することが効果的です。
また、時間が限られる副業での起業は、スケジュール管理も大切です。毎日のタスク管理や休憩時間を含むスケジュール管理を徹底し、無理なく達成できる目標設定を心掛けましょう。
起業や経営の相談ができる人を見つける
起業は一人で行うよりも、経験者や専門家に相談することでスムーズに進みます。ビジネスのアドバイスを受けられる人を見つけ、定期的に意見を交換することが重要です。例えば、同業者の勉強会に参加する、インキュベーション施設を利用するなどして人脈を広げ、信頼できる相談相手を持つことで、事業を発展させやすくなるでしょう。
起業を見据えた副業の職種例
本業にすることを見越して、副業を選ぶことも大切です。具体的に起業を見据えた副業として、どのようなものがあるのかを紹介していきます。
営業マネジメント
営業マネジメントの専門家は、単に商品を売る代行をするのではありません。クライアント企業の売り上げ目標達成のために、市場分析から営業戦略の立案、具体的な営業プロセスの設計、人材育成までを包括的に支援します。
業務を遂行するには、以下の能力が必要です。
- 市場や競合を分析する論理的思考力
- チームを牽引して実行するプロジェクト推進能力
- 経営層や現場の営業担当者と円滑に連携するコミュニケーション能力
営業マネジメントは、法人として契約することでクライアントからの信頼を得やすくなります。大規模なプロジェクトの受注につながりやすくなるでしょう。
経営コンサルタント
経営コンサルタントは、企業が抱えるさまざまな経営課題を解き明かし、解決へと導く専門家です。
まず、クライアントへのヒアリングや詳細なデータ分析を通じて、課題の真因を特定します。その後、論理的な思考に基づいて具体的で実行可能な解決策を策定し、経営陣に対して説得力のあるプレゼンテーションを行います。
必要とされるスキルは多岐にわたりますが、特に重要なのは以下の3つです。
- 複雑な事象を構造化して本質を見抜く「論理的思考力」
- 実現可能な解決策を導き出す「問題解決能力」
- 自らの提案をクライアントに理解・納得させる「プレゼンテーション能力」
企業の経営という機密性の高い領域を扱うため、信頼関係が欠かせません。法人として起業すれば、クライアントからの信頼を得られやすくなるでしょう。
業務改善コンサルタント
業務改善コンサルタントは、企業の日常業務に潜む「ムリ・ムダ・ムラ」を発見し、業務プロセス全体を最適化する専門職です。
現場の従業員へのヒアリングや業務フローの可視化を通じて現状を分析し、非効率な作業やボトルネックとなっている工程を特定します。
その上で、新しい業務フローの設計や、それを実現するためのITツールの導入提案、導入後の定着支援までを一貫して行うのが特徴です。
業務改善コンサルタントに必要なスキル・知識は、主に以下の3つです。
- 物事を筋道立てて考える「ロジカルシンキング」
- 改善プロジェクトを計画通りに推進する「プロジェクトマネジメント能力」
- 適切な解決策を提案するための「ITソリューションに関する知識」
業務プロセスという企業の中心部分に関わるため、クライアントとの信頼関係が重要です。法人としてアプローチできると、信頼性を築きやすいでしょう。
講師
語学やITのスキルがある人は、講師として誰かに教えることも副業にできます。今はオンライン授業なども主流になってきており、在宅で自分のスキルを活かして講師などをする選択肢もあります。
英語の講師として独立・起業する場合は、ブログやSNSで英語に関する情報を発信し、集客しましょう。また、法人化して拠点を増やしたい場合は、フランチャイズビジネスにチャレンジするという選択肢もあります。
趣味やスキルを活かした職業
自分の趣味や本業で培ってきたアイデアやビジネスの人脈など、どのようなスキルや経験が副業に活かされるか分かりません。たとえばスポットコンサルティングは、特定のプロジェクトや課題に対して、限られた回数や期間でコンサルティングを行う仕事です。営業やマーケティングなど、自分が本業で培ってきた経験やスキルを活かして取り組めます。
副業に興味があれば、自分のスキルを見つめ直すことも重要です。スキルを洗い出し、やりたい仕事が見つかったのであれば、クラウドソーシングサイトを使ってみるのもひとつの手です。初心者でも可能な副業が多く掲載されています。
副業で起業を考えている人によくある質問
法人化を検討する際には、多くの方が共通の疑問を持つものです。ここでは、特に相談が多い3つの質問について、整理しました。
Q1.副業から法人化すると本当に節税できる?
必ずしも「全員が」「すぐに」節税できるわけではありません。所得が低い段階で法人化すると、法人税や社会保険料の負担が増え、かえって手取りが減る可能性があります。
一方で、課税所得がおおむね800万円を超えるあたりからは、節税効果が見込めるケースも出てきます。法人から自分へ支払う役員報酬には、個人事業主にはない「給与所得控除」が適用されるためです。
この仕組みによって個人の課税所得を抑えられる可能性があります。また、会社に残した利益(内部留保)には個人の所得税率より低い法人税率がかかるため、事業の成長資金を効率的に積み上げやすい点も特徴です。
そのため、状況に応じて適切なタイミングで法人化を検討することが、節税につながる場合があります。
適切なタイミングで法人化することで、節税は可能です。
Q2.税理士にはいつから相談・依頼すればいい?
税理士に相談する理想的なタイミングは、「法人化を決断する前」といえます。多くの方が設立手続きの後に税理士を探しますが、その場合は有利な選択肢を逃してしまうこともあります。
法人化を検討し始めた段階で税理士に相談すれば、具体的な収支状況に基づいた詳細なシミュレーションを行ってくれます。これにより、本当に今が法人化すべきタイミングなのか、客観的なアドバイスを得ることが可能です。
さらに、株式会社と合同会社のどちらが向いているか、定款にどのような事業目的を記載するかといった部分から税務上のサポートを受けられます。
法人設立後の申告や会計処理は複雑になるため、税理士は頼れるパートナーといえるでしょう。費用はかかりますが、それ以上のメリットを得られる場合も多いです。
Q3.個人事業主・法人は赤字になったら税金を払わなくていい?
赤字の際の税金には、個人事業主・法人で明確な違いがあります。
個人事業主の場合、事業が赤字(純損失)であれば、所得税と住民税の所得割、個人事業税は課税されません。
一方、法人の場合、赤字であっても「法人住民税の均等割」という税金を支払う義務があります。これは、会社の資本金や従業員数に応じて課されるもので、事務所を構えているだけで発生する税金です。
ただし、法人にはメリットもあります。青色申告をしている法人は、その年の赤字(欠損金)を翌年以降10年間繰り越し、将来の黒字と相殺することができます(欠損金の繰越控除)。
個人事業主の青色申告でも繰越制度がありますが、原則3年間と期間に違いがあります。
事業立ち上げ期など赤字が想定されるビジネスモデルでは、この制度を活用することで将来のリスクを軽減できる可能性があります。
出典:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(国税庁)
出典:No.2070 青色申告制度(国税庁)
Q4. 副業禁止の会社でも起業できますか?
まずは勤務先の就業規則や副業規定を確認することが必要です。副業が許可制や届出制になっている場合は、定められた手続きを踏めば起業を進められるケースがあります。
確認の際は、競業避止義務や秘密保持義務にも配慮しましょう。本業と競合する事業や、業務上知り得た情報を使う事業は、これらの義務に触れるおそれがあります。
なお、法人を設立すると代表者の氏名が登記情報として公開され、勤務先に把握される可能性があります。会社に隠して進めるのではなく、許可や届出といった正しい手続きを行うことが大切です。
副業から適切に起業できるよう準備を整えよう
副業から起業することについて解説しました。社会的に副業を推進している今こそ、副業を始めてみるチャンスでしょう。
起業と聞くと身構えてしまうイメージがあります。しかし、副業を始めて気付いたら本業より収入が多くなり、副業が本業になった人など、思わぬことが人生を変えることも多々あります。
副業の収入が安定化し、事業として拡大できる見込みを見いだせたなら、起業を検討してみると良いでしょう。
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