IoTプラットフォームとは?機能やメリット、選び方を解説!
情報通信技術の発展は、社会の成長を著しく押し上げました。その中のひとつに「IoT技術」があり、さらにはIoT技術をより利便化する「IoTプラットフォーム」があります。言葉自体は耳にしたことのない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はすでに、「IoTプラットフォーム」はあらゆる産業から日常生活まで浸透しており、私たちが現代を生きるうえで、切っても切り離せないものとなっています。
当コラムでは、IoTプラットフォームの概念から機能・メリットなど、基本的な情報について解説していきます。
IoT プラットフォームとは?
一言で表すならば、複数のIoTデータを接続・集約する基盤、もとい プラットフォーム(クラウドサービス) ですが、この概念を理解いただくために、まずは「IoT」とは何か、を説明することとします。
IoT(Internet of Things)とは?
直訳すると「モノのインターネット」。家電からロボットまで、あらゆるモノ(IoTデバイスと呼ばれる)と情報をインターネットでつなぎ、交信させる仕組みのことです。
身近な例として、電子レンジを挙げてみます。電子レンジにIoTが組み込まれるまでは、ある程度決まったメニュー向けのボタンはあるものの、それ以外のメニューは、あたため時間を自分で考えて調節することしかできませんでした。
しかし、IoTが組み込まれることによって、ボタンの機能は画一的ではなく、より柔軟なものとなりました。自分の好みやライフスタイルに合わせて、選んだレシピに最適な焼き加減や温め度合いの情報をインターネットからキャッチアップすると、自動で電子レンジのプログラムが書き変わり、そのレシピ通りに温めてくれます。
そして、逆もまた然りです。IoTが組み込まれた電子レンジは、ユーザーに使われるほどに、あらゆる調理のデータをインターネット経由で蓄積することができ、新たなレシピや活用法をメーカー側が見出すこともできるのです。
IoT プラットフォームとは?
先述の通り、IoTには、インターネットを経由してIoTデバイスからデータを収集できるメリットがあります。たとえば、IoTの家電なら「どのボタンがよく使われているか」、IoTのロボットや設備なら「よく発生しているロスの種類」といった具合です。
こうしたデータを蓄積することで、どのような機能がユーザーにとって価値のあるものなのかが分かるだけでなく、蓄積したデータを他データと組み合わせることで、新しいサービス・価値の創造にも大いに役立ちます。
IoTプラットフォームは、まさしく「データを収集する」「データを蓄積する」「新たな価値・サービスを創造する」ためのプラットフォーム(クラウドシステム)であり、IoTデバイスから得られる膨大なデータを、有効的に活用するためのツールなのです。
IoTプラットフォームの市場・動向
当項では、総務省が発表した「令和2年版情報通信白書(※)」をもとに、解説を進めます。
※出典: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd114230.html
・IoT プラットフォームの市場
IoTプラットフォームの市場規模とともに、ITプラットフォームを提供するベンダーの数が年々増えていることが示されており、IoTプラットフォーム自体のニーズは増え続けているといえます。
<世界のIoTプラットフォーム市場規模の予測(プラットフォーム利用料等の収益合計)>
(出典)IoT Analytics Researchを基に作成
<世界のIoTプラットフォーム市場における提供事業者の推移>
(出典)IoT Analytics Researchを基に作成
ただし、ベンダーの数は増えているものの、市場シェア自体の割合は概ねトップ層が占めており、各種中小ベンダーは生き残りをかけて、熾烈な技術競争を繰り広げているといえます。
<IoTプラットフォームの市場シェアの推移>
(出典)IoT Analytics Researchを基に作成
・IoTプラットフォームの動向
上述の市場遷移を受け、海外では各社同士の相互連携が主流となっています。というのも、海外のベンダーはターゲットごとに製品特性が異なる分すみ分けができており、かつ互いの製品に備わっている強みとデータを連携させることによって、サービスの品質を向上させるだけでなく、今までにない新たな価値を生み出すことができるのです。その一方、国内では提携の動きはまだ弱く、結果として飽和状態となっています。今後の市場競争の命運を分けるカギは、対立ではなく協力にあると言えそうです。
役割や機能
各ベンダーが提供するIoTプラットフォームによって、それぞれ機能は異なりますが、ここでは代表的な機能をご紹介します(下記機能の中で、ひとつに特化した製品もあれば、複合的に活用できるものもあります)。
IoTデバイスの接続
異なるIoTデバイスをクラウド経由で接続する機能で、双方のデータ・操作連携を可能とします。もっともオーソドックスな機能です。
IoTデバイスの管理・監視
クラウド上に集約したデータを一元管理するほか、データの暗号化やデジタル署名などのセキュリティ技術によって、不正アクセスや情報漏洩を防ぐ機能も付随しています。
データの収集・蓄積
IoTデバイスから得られるデータを、クラウド上のデータベースに蓄積・保存する機能です。また、IoTデバイス外で発信されているデータも併せて活用したい時に、連動して蓄積できる機能が備わっている製品もあります。
データの可視化・分析
先項「データの収集・蓄積」で得られる大量の情報(ビッグデータ)を解析・分析する機能です。現状の可視化、多角的な情報の複合によるIoTデバイスの稼働を最適化します。
セキュリティ対策
各IoTデバイスのモニタリング(自動監視)を行う機能です。不具合の自動検知やアラート機能などが該当します。
遠隔・リモートでの制御
直近では、スマートスピーカーがイメージしやすい好例でしょう。IoTに接触せずとも、遠隔で操作を実現します。また、AIを活用した稼働予測によって、操作をせずとも自動制御を行うものもあります。
自動アップデート
データ蓄積や分析・解析で得た情報をもとに、環境に合わせたプログラムや、不具合修正などを自動で実行する機能です。
IoTプラットフォームのメリット
IoT活用最適化の時間短縮
イメージしやすい例として、製造業における「スマート工場化(すべての設備・工程をネットワークによって一元管理すること)」をもとに解説します。
「スマート工場化」において、課題のひとつとして挙げられやすいのが「各工程の接続」です。各ラインにおけるデータの収集・可視化はできていても、工場全体を最適化するとなる場合、個々のデータを結合することが必要不可欠です。かつ、情報量は膨大ですから、既存のシステムだけでは対処しきれないケースも多く、この段階で足踏みしてしまう企業も少なくありません。
この課題を解消する手段として、各データを一挙に集約し、接続を図れるIoTプラットフォームは注目を浴びました。とくにビッグデータを扱う領域で、IoTプラットフォームは役立ちます。
新たなシナジーと価値の創出
先項でも少しお伝えしましたが、情報を多角的に組み合わせることにより、個々の情報管理だけでは気づけなかった価値を創出できる点もメリットと言えます。IoTプラットフォームだけでなく、データをもとに自動で最適解を導くAIの活用によって、シナジー創出はより強力に推進されることでしょう。
プラットフォームの種類
IoTプラットフォームをカテゴライズする概念として、汎用型か特化型か、の観点があります。前者はさまざまな業界・業務に転用できるもの、後者は特定の業界に特化したもの、という考え方です。
当項では上記の観点をもとに、各プラットフォームの種類を解説します。
汎用型プラットフォーム
製品としてはクラウド基盤ですが、その基盤をもとにカスタマイズすることで、あらゆる業種に適用できる形態です。その名の通り、汎用性の高さが他にない魅力といえます。
特化型プラットフォーム(機能網羅形態)
特定の業種に特化し、基本ツール(基盤、アプリケーション、ネットワークなど)から、これらを用いた開発〜導入〜運用支援までを一挙に行う形態です。
特化型プラットフォーム(ツール提供形態)
先ほどの機能網羅の形態から、開発〜導入〜運用支援を差し引いたものです。
特化型プラットフォーム(ピンポイント形態)
ツール提供形態よりもさらに機能を絞り、特定の目的(例:遠隔操作、画像解析、予防保全など)のみに特化した形態です。
選び方
セキュリティ面での安全性
基本はクラウド上で管理が行われるため、「ネットワーク技術」「暗号化技術」「認証技術」などソフト面のセキュリティ体制は判断軸のひとつとなります。また、中には処理の一部をIoTデバイスそのものに行わせ、IoTプラットフォームからの漏洩リスクを分散させる製品もあります(エッジコンピューティングと呼ばれる)。
接続の容易性・安定性
ネットワークの「安定稼働」「送受信スピード」や、IoTデバイスの容量が増えても、接続パフォーマンスを落とさない「ネットワーク容量」も着目すべきポイントです。
デバイスの拡張性
IoTプラットフォームの導入以降、新たにIoTデバイスを追加するケースも往々にしてあります。予めこのようなシチュエーションを見込む場合、工数・負荷(カスタマイズ性、統合後のデータ処理・管理方法など)もひとつの判断軸となりえます。
代表的なIoTプラットフォームベンダー
最後に、主要ベンダーと呼ばれる企業および製品名、特性についていくつかご紹介します。
1:AWS IoT
- 提供元:Amazon.com,Inc
- 特徴: 他AWSサービスと統合可、MTQQ(通信プロトコル)に対応
2:Azure IoT
- 提供元:Microsoft Corporation
- 特徴:AI・機械学習機能あり、Microsoft365との連携が可能
3:Watson IoT Platform
- 提供元:IBM Corporation
- 特徴:AI解析機能あり、ブロックチェーンによるセキュリティ管理体制
4:Google Cloud IoT
- 提供元:Google LLC
- 特徴:機械学習、テキスト分析機能あり
5:Vieureka
- 提供元:パナソニック株式会社
- 特徴:画像解析に特化、カメラとの連動が可能
まとめ
アナログでは決して知りえなかった有益かつ膨大なデータを、まとめて集約・分析できるIoTプラットフォーム。あらゆる産業の成長を後押しし、日々の生活を豊かにする役割を持ち合わせています。
しかしながら、すでに提供側のベンダー数は飽和状態にあり、新規参入でサービスそのものに差別化を図ることが難しい市場でもあります。これからも選ばれ続けるためには、既存のIoTプラットフォームから新たな価値を見出すことが最低条件となってきますが、今後各社がどのような動きを見せるのかも注目したいところです。
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