ビジネスアジリティとは?変化の早いVUCA時代に求められる背景
変化の激しい時代に対応しようと、さまざまな企業がビジネスアジリティに注目しています。
本コラムでは、ビジネスアジリティの意味やメリット、ビジネスアジリティを高める方法などを解説します。これからビジネスアジリティを高めたい企業の参考になれば幸いです。
ビジネスアジリティとは?
まずは、ビジネスアジリティの言葉の意味を解説します。
機敏さ・素早さ
アジリティ(Agility)は、「機敏さ、素早さ、機敏な」という意味の単語です。スポーツの世界では以前から使われてきた言葉ですが、近年ビジネスの現場でも使われるようになりました。
同じく機敏さや素早さという意味を持つ言葉に、スピード(speed)やクイックネス(quickness)があります。それぞれの違いは以下の通りです。
- スピード…速度の速さ
- クイックネス…物事に反応し動き出す速さ
- アジリティ…状況を判断する速さ
アジリティは特に正確性も含めた速さ、即座の判断と行動の有無を表す場合に使用します。速度や反応だけではなく、状況に応じた適切な判断が素早くできると「アジリティが高い」とされます。
環境変化に柔軟に対応する力
ビジネスシーンのアジリティは、ビジネスアジリティと呼びます。具体的には、企業が外部環境の変化に合わせて柔軟かつ俊敏に対応する組織力のことです。
現代は、顧客に対するニーズや企業を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした環境下で生き残るには、周辺環境の変化に臨機応変に対応していくことが求められるでしょう。
自社が提供するサービスや商品に何か問題が生じたらすぐに判断して対応する、顧客のニーズに合わせた新商品の開発に迅速に着手する、といったものが具体例です。
近年IT領域でアジャイル開発という言葉をよく耳にするようになりました。アジャイル(agile)は「俊敏な」「機敏な」という意味を持つ形容詞で、その名詞形がアジリティ(agility)です。
アジャイル開発は「開発は変更が起きるもの」という考えを前提にしており、顧客ニーズや環境変化に応じて柔軟に開発できる特長があります。つまり、アジャイル開発は「アジリティが高い開発手法」と言い換えられるのです。
ビジネスアジリティが注目されている背景
ビジネスアジリティは、以下の2つの理由で注目されています。
- 企業を取り巻く環境変化のスピード増加
- VUCA時代に合わせた組織づくりが求められる
ここでは、ビジネスアジリティが注目される理由と、関連する用語の意味について説明します。
企業を取り巻く環境変化のスピード増加
ビジネスアジリティが脚光を浴びるようになった背景には、企業を取り巻く環境変化のスピードが以前に比べて速くなったことが関係しています。
ここ10年ほどでIT技術は大幅に変化し、技術革新はまだ発展途上です。それゆえ技術は陳腐化しやすく、製品・サービスのライフサイクルも短縮化されています。また、顧客や市場のニーズも多様化し、移りゆくスピードも速まっています。
このように企業を取り巻く環境が急速に変化するなかで、柔軟に対応できる組織作りが重要です。
VUCA時代に合わせた組織づくりが求められる
次に、VUCAの時代に合わせた組織づくりが求められている点です。
VUCAとは、Volatility(激動)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(不透明性)の頭文字をとった用語で「予測が困難な状況」という意味を表します。もともとアメリカでは1990年代後半に軍事用語として用いられ、やがて徐々にビジネスシーンにも活用されるようになりました。
感染症の大流行やサイバー攻撃などにより、企業がいつ不測の事態に直面するか予測できない時代です。だからこそ、ビジネスアジリティを高めて、どのような状況下でも迅速かつ柔軟に対応できる組織作りが求められています。
ビジネスアジリティを高めるメリット
ビジネスアジリティを向上させるメリットは、大きく以下の3点です。
- 変化する環境やニーズに順応できる
- 素早い経営判断で関係企業と信頼関係を築ける
- 速いPDCAで成功確率を上げる
それぞれ具体的に説明します。
変化する環境やニーズに順応できる
まずは、変化する環境やニーズに順応しながら対応できる点です。特に高いビジネスアジリティを備えているアジャリティ組織は、新しい技術や変わりゆくビジネス環境や顧客のニーズを迅速に汲み取り、事業や商品の開発・営業施策などに活かしています。
素早い経営判断で関係企業との信頼関係を築ける
ビジネスアジリティが高い企業や組織は、判断・決断のスピードが早いです。そのため、現場で働く従業員はもちろん取引先企業の印象も良く、信頼関係も築け、業務や交渉をよりスムーズに遂行できるでしょう。
PDCAサイクルを高速で回し成功確率を上げる
ビジネスアジリティを高めると、PDCAサイクルをより高速で回せます。事前に綿密に計画していても、事業が確実に成功するとは限りません。目新しい内容であればなおさらです。
時間をかけて準備・分析した施策よりも、仮説をもとに変更ありきでひとまず施策を実行し、見えてきた問題点を改善しながら実情に合わせてブラッシュアップするほうが成功確率を上げられます。
ビジネスアジリティを高めてPDCAサイクルを速く回すことが、結果的に事業を成功へと導く近道になるでしょう。
ビジネスアジリティの高い組織の特徴
ビジネスアジリティの高い組織の特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- 組織の方向性が明確で社員にも浸透している
- 情報収集の感度が高い
- ニーズや環境の変化に対応できる柔軟性がある
- 現場の社員がある程度の決定権を持っている
- 社員同士などのコミュニケーションが円滑におこなわれている
組織の方向性が明確で社員にも浸透している
急速な変化や不測の事態に直面した際、組織の方向性が不確かであると、どのように行動すべきか判断できません。
アジリティが高い組織は、成し遂げたいことや方針が明確に定められており、かつ社員一人ひとりに浸透しています。組織の方針が明確であれば、臨機応変に方針に即した対応がとれます。
情報収集の感度が高い
顧客のニーズや企業を取り巻く環境は日々変化し続けています。こうした変化に企業が対応していくには、情報収集の感度を高く持ち、幅広く情報収集することが重要です。
アジリティの高い組織では、社員一人ひとりが情報収集に努めており、また社内共有も積極的に行います。それにより市場やニーズの変化に素早く気づき、変化に対応する施策を実行できるのです。
ニーズや環境の変化に対応できる柔軟性と応用力がある
課題にぶつかった際、過去の成功体験に固執してしまう、失敗を恐れて新しい挑戦ができないという組織も少なくありません。しかし、これまでの常識が通用しないといわれるVUCA時代では、旧態依然とした考え方では社会や市場の変化についていけません。
アジリティが高い組織では、変化に対して常に柔軟な姿勢を持ち、変化を受け入れる応用力があります。たとえば新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークへの移行も、変化に柔軟に対応した一つの例といえるでしょう。
現場の社員がある程度の決定権を持っている
課題に直面した際、経営層などの判断を待つトップダウンの組織はアジリティが高いとは言えません。アジリティが高い組織では、現場の社員がある程度の決定権を持ち、率先して対応にあたります。
また、人材育成の方針としても、自主性やリーダーシップを重視する傾向にあります。
社員同士などのコミュニケーションが円滑に行われている
社内のコミュニケーションが円滑でなければ、課題や変化への対応もスムーズに進みません。
アジリティが高い組織では、社員同士のコミュニケーションが日頃から円滑に行われています。また、経営陣が社員一人ひとりの声に耳を傾けるなど現場の声を大切にしており、コミュニケーションに時間を割く傾向にあります。
ビジネスアジリティを高める方法
ここでは、実際にビジネスアジリティを高める以下の4つの方法を解説します。
- 企業のビジョンやミッションを明確にする
- 現場の社員に決定権を渡す
- ツールを導入する・IT整備を行う
- 意識改革や組織改革を行う
企業のビジョンやミッションを明確にする
先述の通り、企業のミッションや方向性など、目指す方向性や判断軸を従業員がそれぞれ把握していないと、判断に迷うことがあるかもしれません。
まだ企業のミッションが明確ではない、あるいは社内に浸透していないようなら、ミッションの決定と浸透から始めましょう。
現場の社員に決定権を渡す
ビジネスアジリティを高めるため、現場の社員に決定権を渡すことも検討しましょう。経営者が従業員に方向性を示し、実務に際して必要な判断を担当者に委ねるイメージです。
個人の裁量が広がると社員はさまざまな仕事を任されるようになり、成長の機会や、やりがいの向上にもつながります。
ツールを導入する
コミュニケーションを円滑にするという点に付随して、情報共有やコミュニケーションに関するツールの導入を進めることも、ビジネスアジリティを高める方法です。
たとえば、ビジネスシーンでよく使用されているチャットツールは、業務に関連する報告・連絡・相談など各種伝達事項の共有以外に、社員間のコミュニケーション促進にも活用可能です。
また、チャットツールを用いることで報告・連絡・相談やコミュニケーションにかかる工数の削減にもつながり、業務効率向上にも寄与できるでしょう。
意識改革や組織改革を行う
ビジネスアジリティをより高めるには、社員それぞれの行動や意識を変えることが必要です。企業の経営陣だけがビジネスアジリティを高めたいと考えていても、社員が意識していなければなかなかうまくいきません。したがって、ビジネスアジリティの向上を実現できるような意識改革や組織改革も重要です。
ビジョンや方向性の共有と浸透に力を入れる、スキルアップに向けた環境の整備、アジリティに基づいた評価の実施などに、長期的な視点で取り組んでいくとよいでしょう。
まとめ
本コラムでは、ビジネスアジリティの概要、ビジネスアジリティを高めるメリットや具体的な方法などを解説しました。さまざまな環境変化が起こるなかで、企業には素早く行動できる組織力が重要視されています。
ビジネスアジリティを高めることは、PDCAサイクルの加速を期待できるだけではなく、売り上げへの貢献や関係企業との信頼関係を高めるなど、企業にとってメリットが多くあります。ビジネスアジリティの高い組織を目指し、企業としてさらに成長していきましょう。
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