兼業とは?副業との違いやできる条件・やるべきことを解説
会社員としてはたらきながらも、「ほかのスキルも獲得したい」「もっと収入をアップさせたい」と考えている人もいるでしょう。
新たなはたらき方として、兼業や副業が挙げられます。近年は国も兼業や副業を推進しており、広がりつつあります。 本記事では、兼業と副業の違いや、メリット・デメリットを解説します。また、兼業に必要な条件や、就業規則で禁止されている場合の対応についても紹介します。ぜひ最後までお読みください。
【定義】兼業と副業の意味の違いを解説
兼業と副業は、いずれも「本業以外に仕事を持っている状態」を指す言葉です。
一般的な使い分けとして、兼業は、本業を複数持ち業務に従事するようなはたらき方を意味することが多くで、つまり同等の仕事をかけ持ちするときに使われる言葉です。一方で副業は、本業とは別に仕事を持つことをいい、本業のかたわらで仕事をしているときに使われます。
兼業をするメリット・デメリット
兼業にはメリットとデメリットがあります。ここでは、はたらく人(雇用される側)の立場から見たメリットとデメリットを解説します。
兼業をするメリット3選
兼業のおもなメリットは以下です。
・収入が増加する
収入の増加は、兼業で得られる大きなメリットです。
日本の企業は勤務年数に応じて給与が上がる傾向にあるため、そのような企業に雇用される立場では月収を増やすことは容易ではないでしょう。しかし、兼業をすれば単純に収入元が増えるほか、兼業先の報酬形態によっては自身が遂行した業務の分だけ収入を増やせるケースもあります。
生涯賃金がアップするだけでなく、兼業で得た収入を貯蓄や余暇活動に充てることも可能で、生活の質の向上につながります。
・スキルを向上できる
スキルの向上が見込める点も、兼業のメリットです。
企業に雇用される立場では、自社の業務が最優先となるため、自分の望むようなスキルアップが必ずしもできるとは限りません。しかし、兼業の場合は、自身が成長させたいスキルや新たに習得したいスキルに応じた兼業先を選ぶことができ、新しい知識や経験、スキルの習得がより容易になる可能性があります。
兼業を始める目的の中にスキルアップがあるのなら、「この能力を習得する」という具体的な目的を持って兼業に取り組むようにしましょう。
・新たなキャリア形成ができる
兼業により、新たなキャリア形成を見込むことも可能です。
本業では、必ずしもやりたい仕事や得意分野に関われるとは限らないため、物足りなさを感じることもあるでしょう。一方、兼業では、自分のスキルや目的に合わせた仕事を選び従事することができます。その結果、新たなキャリア形成の可能性も生まれるかもしれません。
兼業をするデメリット3選
兼業をする際のおもなデメリットは以下です。
・長時間労働になる恐れ
兼業のデメリットの一つが、労働時間の問題です。
本業に加えてはたらくことになるため、必然的に労働時間が増えます。兼業に意識が過度に傾くと、睡眠不足などの影響により本業に支障をきたす可能性もあります。本業の仕事がおろそかになれば、社内外からの評価も低下してしまうことが考えられます。
兼業をする際には、労働時間が長くなりすぎないよう、適切なスケジュール管理が必要です。
・義務や責任により負担が増える
兼業による義務や責任による負担は、本業と同様に存在する可能性があります。特に、本業とは異なる分野の業務を担当する場合には、新たな負荷が生じる可能性もあります。
兼業で業務を行う際には、個人の状況や能力に合わせて、自身に適した業務内容や業務量を、あらかじめ考慮することが重要です。収入アップやスキルアップを目指す際に、無理をしすぎないように注意しましょう。
・余暇が少なくなる
兼業は基本的に、本業の業務の前後か、もしくは休日を利用して行ないます。また、兼業でまとまった収入を得たい場合、例えば高度な資格やスキルがあるなどでなければ、労働時間を増やすことが一般的です。
このようなことから、兼業を頑張りすぎると、余暇が少なくなります。ストレスや疲労から回復する時間が取りにくくなるため、余暇も意識したスケジュール管理をおすすめします。
国も推進!ガイドラインからみる兼業や副業の条件とは
近年は国を挙げて、兼業や副業を推進しています。例えば厚生労働省は、平成29年の「働き方改革実行計画」を踏まえ、企業やはたらく人が安心して兼業・副業が行なえるようガイドラインを作成しました。
ガイドラインは令和4年7月に改訂され、労働者が希望するはたらき方に応じて、幅広く兼業や副業を行なえる環境の整備が重要であると指摘しています。
参照:副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月8日改訂版)厚生労働省
就業規則で兼業や副業が禁止されていた場合
国が兼業や副業を推進している一方で、就業規則により兼業や副業を禁止している企業も少なくありません。就業規則には法的効力があるため、違反した場合は懲戒処分の対象になる恐れもあります。 兼業や副業により、懲戒処分を受ける可能性のある事例を紹介します。
・本業に支障をきたした場合
例えば、本業の勤務時間中に兼業をしたり、兼業が原因で本業に影響をおよぼしたりした場合には、職務専念義務違反とみなされる恐れがあります。
・同業他社での兼業
同業他社での兼業は、本業(企業)への利益侵害につながりかねず、企業によっては就業規則などで、競業避止義務が定められていることがあります。このような定めがある企業の場合には、規則違反とみなされる恐れがあります。
・情報漏えいなどがあった場合
本業の企業秘密や営業機密を漏えいした場合、故意か過失かにかかわらず、秘密保持義務違反に該当する恐れがあります。
・企業の信用などを毀損した場合
違法行為をともなう兼業など、本業(企業)の名誉や信用を損なう行為や、本業との信頼関係を損なう行為があった場合は、懲戒処分などの罰則を受ける可能性があります。
国家・地方公務員は許可制で一部兼業が可能
国家公務員や地方公務員は、国家公務員法(第103条、第104条)や地方公務員法(第38条)により、営利企業への従事等が制限されています。 具体的には、許可なく次の行為を行えません。
- 営利を目的とする団体の役員等の職を兼ねること
- 自ら営利企業を営むこと
- 報酬を得て事業または事務に従事すること
しかし多様で柔軟なはたらき方へのニーズが高まるなか、一部の自治体では兼業や副業が解禁されつつあります。
例えば兵庫県神戸市では平成29年4月より、「地域貢献応援制度」を導入しています。この制度は、公益性の高い継続的な地域貢献活動に、市の職員が報酬等を得て従事する場合の取り扱いを定めたものです。具体的な活動内容として、須磨海岸での障害者支援活動や、手話通訳活動などが行なわれています。
参照:国家公務員の兼業について(概要)平成31年(2019年)3月 内閣官房内閣人事局
_ _ _ _ _地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について 令和元年(2019年)11月22日 総務省
兼業をしようと決めたときにすべきこと3選
兼業をしようと決めた際には、以下の3つを確認してください。
1.企業のルールを確認する
兼業や副業が可能かどうか、自身の労働契約や企業の就業規則を確認します。企業のルールによっては手続きが必要な場合もあるため、併せて確認をしておきましょう。
2.兼業や副業の内容を検討する
兼業や副業のメリットは、自身のスキルやキャリアの向上のほか、充実感につながる点などです。ただし、自身の許容範囲を超える業務になると、ストレスや疲労を招きかねないため、兼業を行う際は、内容についてよく検討する必要があります。
3.上司や人事担当者と話し合っておく
兼業を始める際には、必要な手続きをするだけでなく、上司や人事担当者ともよく話し合っておくことが、兼業を円滑に進めるポイントです。
事前に上司や人事担当者に話すことで、兼業先が自社の競合であるというトラブルが防げるだけでなく、年末調整などの手続きも円滑に行うことができます。
兼業を始めた人がすべきこと3選
最後に、兼業を始めたあとにすべきことを3つ紹介します。
1.就業時間や健康を自己管理する
心身の健康を保ちながら兼業を続けるためには、自己管理が重要です。
兼業に関しても始業時間や終業時刻などを記録し、労働時間の把握をするとともに、健康管理に役立てましょう。
2.無理なく仕事を両立できているか判断する
本業の業務と兼業の業務を適切に把握し、問題なく両立ができているか常に自問自答する必要があります。
本業や兼業にかかわらず、業務中にミスが増えることや、疲労や睡眠不足が健康に悪影響を及ぼす場合には、兼業の継続について検討してみてください。
3.確定申告や住民税の申告をする
ほとんどの給与所得者は、企業(給与の支払者)が行なう年末調整によって、所得税額の確定と納税が完了します。しかし兼業などで給与所得以外の所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
確定申告の詳細については、国税庁のホームページ「No.1900_給与所得者で確定申告が必要な人」などを参考にしてください。
参考:国税庁ホームページ
また、住民税に関しては、兼業や副業による雑所得が20万円以下であっても、自治体への申告や納付が必須です。忘れずに手続きをしましょう。
まとめ
一般的に兼業とは、本業とそれ以外の事業を並行してかけ持ちすることを言います。一般的に、本業のかたわらで行なう副業と比べて、兼業は、双方の仕事をほぼ同等に行なう意味合いで用いられます。
兼業のメリットは、収入が増え、スキルアップやキャリアアップが期待できる点です。一方でデメリットとして、長時間労働に陥りやすいことが挙げられます。兼業に意識が過度に傾くとストレスや疲労を招いてしまい、本業に支障をきたすことになるため、徹底した自己管理が求められます。
また、兼業や副業で一定の収入を超えた場合には、個人での確定申告が必要です。 近年は「働き方改革」を踏まえ、国も兼業や副業を推進しています。しかし企業によっては、就業規則等により無断での兼業や副業を禁止しています。兼業を始める際には勤務先の就業規則を確認し、必要な手続きを行ないましょう。
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