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【社労士監修】フリーランスの年金はどうなる?受給額や会社員との違いを解説

フリーランスの年金のイメージ画像

フリーランスは、自由なはたらき方を得られる一方、将来の年金に対する不安を抱えている方は少なくありません。会社員とは異なるフリーランスの年金制度は、自身で正しく理解して主体的に行動しなければならない重要な課題です。

本記事では、フリーランスが加入する国民年金の基礎知識から、会社員との具体的な違い、将来の受給額を増やすための方法を解説します。年金について相談する場所も紹介しているので、将来の年金に不安を抱えるフリーランスの方はぜひ参考にしてください。

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フリーランスが加入する「国民年金」の基礎知識

フリーランスとして活動する上で、年金制度の根幹をなすのが「国民年金」です。日本の公的年金制度の1階部分にあたり、日本国内に住む20歳以上60歳未満全員が加入を義務付けられています。

出典:国民年金はどのような人が加入するのですか。(日本年金機構)

フリーランスが年金対策をするなら、まずは国民年金の仕組みを理解することが大切です。

国民年金の加入者区分|フリーランスは第1号被保険者

国民年金の加入者は、はたらき方や立場によって3つの区分に分けられます。

フリーランスや個人事業主は「第1号被保険者」に分類されます。この区分には、自営業者のほか、農業者・学生・無職の方なども含まれるのが特徴です。

会社員(第2号被保険者)や被扶養配偶者(第3号被保険者)と異なり、第1号被保険者は年金保険料の納付や各種手続きを自ら行う必要があります。

自己責任である点は、会社員時代との大きな違いであり、フリーランスが年金について理解しておくべき理由の一つです。

国民年金で受け取れる年金の種類

国民年金は、老後の生活資金のためだけのものではありません。実は、万が一の事態に備えるための3つの保障がセットになった総合的な保険制度です。

老齢基礎年金

原則として65歳から生涯にわたって受け取れる、いわゆる「老後」の年金です。受給するためには、保険料を納めた期間や免除された期間などを合算して10年以上あることが必要です。

障害基礎年金

病気やけがによって、法令で定められた障害等級1級または2級の状態になった場合に受け取れる年金です。現役世代であっても、万が一の際には生活を支える重要な保障となります。

遺族基礎年金

被保険者が亡くなった際に、その方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」か「子」に支給される年金です。

フリーランスは会社の団体保険のような保障がないため、国民年金が提供する制度の重要性は会社員以上に高いです。保険料を納めることは、老後だけでなく今のリスクに備えることでもあるといえるでしょう。

フリーランスが加入する「国民年金」の保険料

フリーランスが納める国民年金の保険料は、収入にかかわらず一律の金額です。令和7年度の保険料は、月額17,510円です。

「定額制」は、フリーランスの年金制度を考える上で極めて重要な特徴です。収入が低い時期には負担が重く感じられる一方、収入が高い人にとっては負担割合が軽くなります。

しかし、納める保険料が一定であるため、将来受け取る基礎年金の額も、収入に関わらず納付月数によって決まります。

高収入のフリーランスであっても、国民年金だけでは現役時代の生活水準に見合った老後資金を十分に確保するのは難しい場合があります。

出典:国民年金保険料(日本年金機構)

フリーランスが加入する「国民年金」の受給額

フリーランスが国民年金から将来いくら受け取れるのかを確認することは重要です。ここで示す金額が、すべての年金対策の基準点となります。多くの方がイメージする「満額」は、実は誰もが受け取れる保証された金額ではありません。

老齢基礎年金の一般的な受給額

20歳から59歳までの40年間(480か月)保険料を納付した場合に受け取れる老齢基礎年金の「満額」は、年額831,700円(68歳以下の方の場合)です。月額に換算すると69,308円となります(令和7年度時点情報)。

この金額が、フリーランスの年金の土台となります。

出典:令和7年4月分からの年金額等について(日本年金機構)

学生納付特例を利用した場合の受給額

学生時代に「学生納付特例制度」を利用して保険料の納付を猶予されていた方も多いでしょう。特例期間は、年金の受給資格を得るために必要な10年間の期間には算入されますが、将来の年金額の計算には含まれません。

つまり、特例を受けた期間の保険料を10年以内に「追納」しなければ、その分だけ生涯受け取る年金額が減額されてしまいます。

過去の利用状況は、自身の年金計画を立てる上で必ず確認すべきポイントです。

出典:国民年金保険料の学生納付特例制度(日本年金機構)

保険料免除制度を利用した場合の受給額

フリーランスは収入が不安定になりがちで、所得が低い時期には保険料の納付が困難になることもあります。その際に利用できるのが「保険料免除制度」です。この制度を利用すると、保険料の全額・4分の3・半額・4分の1のいずれかが免除されます。

免除を受けた期間は、将来の年金額に一定割合で反映されます。たとえば、全額免除の期間は、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)として計算されます。

未納のまま放置すると年金額はゼロですが、免除手続きをすれば税金で賄われる分が加算されるため、申請することが重要です。ただし、満額に比べると受給額は減るため、可能であれば10年以内に追納することが望ましいでしょう。

出典:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構)

会社員とフリーランスの年金はどれくらい違う?

フリーランスの年金制度を語る上で、会社員との比較は避けられません。違いを明確に理解することで、フリーランスが取るべき対策が具体的に見えてきます。

保険料の違い:国民年金と厚生年金

保険料の負担方法には、主に2つの大きな違いがあります。

第一に、負担の割合です。フリーランスは国民年金保険料を100%自己負担します。一方、会社員が加入する厚生年金では、保険料を会社と本人が半分ずつ負担する「労使折半」という仕組みが採用されています。つまり、会社員は保険料の半分を会社に負担してもらっているのです。

第二に、保険料の計算方法です。国民年金が収入にかかわらず「定額」であるのに対し、厚生年金は給与や賞与の額に応じて決まる「定率」です。収入が高いほど多くの保険料を納める仕組みになっています。

受給額の違い:フリーランスはどれくらいもらえる?

日本の公的年金は、2階建て構造となっています。1階部分が全国民共通の国民年金、2階部分が会社員や公務員のための厚生年金です。

この構造が、受給額に決定的な差を生みます。フリーランスが受け取るのは原則として1階部分の国民年金(老齢基礎年金)のみだからです。

対して会社員は、1階部分に加えて、現役時代の収入や加入期間に応じた2階部分の厚生年金(老齢厚生年金)が上乗せされます。

具体的な年金受給額を見ると、差は歴然です。

厚生労働省によると、自営業や専業主婦など国民年金のみの平均受給額が月約5万6,000円です。一方、会社員や公務員など厚生年金も利用できる人の平均受給額は月約14万5,000円となっています。

上記の結果からも、フリーランスは老後資金を自分で準備する必要があることがわかります。

出典:令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省年金局)

会社員からフリーランスになったら「国民年金の第1号被保険者」に切り替えが必要

会社を退職してフリーランスになる際、年金制度は自動的に切り替わりません。

会社員時代に加入していた厚生年金(第2号被保険者)から、フリーランスが加入する国民年金(第1号被保険者)への種別変更手続きを、自分自身で行う必要があります。

この手続きは、会社を辞めたという事実を公的に届け出て、国民年金の被保険者として登録し直すための重要なプロセスです。会社は厚生年金の資格喪失手続きは行いますが、その後の国民年金への加入手続きまではしてくれません。

手続きを怠ると、保険料の未納期間が発生して将来の年金額が減るだけでなく、万が一の際の遺族年金や障害年金が受け取れなくなるリスクもあります。

フリーランスになって国民年金に切り替える際の注意点

国民年金への切り替えは、会社員からフリーランスとして活動を始めるうえで欠かせない手続きです。スムーズに進めるために、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。

ここからは、フリーランスになって国民年金に切り替える際の注意点を解説します。

自身で切り替えの手続きをする必要がある

国民年金への切り替えは、自分で行わなければなりません。会社員時代は給与から天引きされ、意識することのなかった年金ですが、フリーランスになった瞬間から、管理責任はすべて自分自身に移ります。

手続きは、お住まいの市区町村役場の国民年金担当窓口で行うことが可能です。必要な書類を持参し、窓口で「国民年金第1号被保険者」への加入手続きを行いましょう。

退職後14日以内に手続きが必要

国民年金への切り替え手続きは、原則として退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。この期限は法律で定められており、厳守することが重要です。

万が一、期限を過ぎてしまっても加入手続きは可能ですが、手続きが遅れるとその間の保険料が未納扱いとなる可能性があります。未納期間は、将来の年金額に影響するだけでなく、その期間に病気や事故にあっても障害年金などを受け取れません。

退職後は多忙な時期ですが、最優先で手続きを済ませるように心がけましょう。

出典:国民年金に加入するための手続き(日本年金機構)

フリーランスが将来の年金額を増やすための方法

ここまで見てきたように、フリーランスが国民年金だけで老後を迎えるのは十分ではない場合があります。公的制度には、フリーランスが自らの手で年金を「2階建て、3階建て」にできる、上乗せ制度が用意されています。

ここからは、フリーランスが将来の年金額を増やすための方法を解説します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)|節税と老後資金のWメリット

iDeCo(イデコ)は、任意で加入する私的年金制度で、フリーランスにとっての資産形成方法の一つです。

拠出した掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。また、投資信託などで得た運用益も非課税です。税金の負担を抑えながら、効率的に老後資金を蓄えられます。

フリーランスの場合、月額最大68,000円まで拠出可能です。節税をしながら積極的に資産を増やしたい方に適した制度といえるでしょう。

出典:iDeCo(イデコ)をはじめるまでの4つのポイント(iDeCo公式サイト)

国民年金基金|第二の年金で受給額アップ

国民年金基金は、フリーランスなど第1号被保険者のために作られた公的な年金上乗せ制度です。会社員の厚生年金(2階部分)の代わりと位置づけられており、老齢基礎年金にプラスして終身で受け取れる年金を準備できます。

iDeCoが運用成果によって受給額が変動する「確定拠出年金」であるのに対し、国民年金基金は加入時の予定利率に基づいて将来の受給額が確定する「確定給付年金」です。

将来受け取る金額が決まっているため、安定・安心を重視する方に向いています。掛金はiDeCoと合算で月額68,000円が上限で、全額が所得控除の対象となります。

出典:iDeCoの概要(厚生労働省)

付加年金|月額400円で効率よく年金を増やす

「いきなりiDeCoや国民年金基金はハードルが高い」と感じる方に適切なのが、付加年金です。毎月の国民年金保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めることで、将来の年金額を増やせます。

上乗せされる年金額は「200円×付加保険料を納付した月数」で計算されます。つまり、1年間(12か月)納付すると、4,800円の保険料で年額2,400円の年金が一生涯上乗せされます。わずか2年で元が取れる計算になり、極めて効率のよい制度です。

ただし、国民年金基金に加入している方は利用できないため注意が必要です。

出典:付加年金(日本年金機構)

フリーランスの70%以上が「困りごとを相談できる窓口が必要」と回答

フリーランスは、はたらき方の自由度が高い一方で、会社という組織に守られていない孤独や不安を伴います。特に、契約トラブルや将来の生活設計といった専門的な課題について、気軽に相談できる相手がいないという悩みは深刻です。

悩みの深刻さを示すデータとして、「副業・フリーランス人材白書2025」の調査結果があります。調査によると、フリーランスの70%以上が「困りごとを相談できる窓口」を必要としていることがわかりました。

出典:副業・フリーランス人材白書2025(HiPro)

上記のデータから、フリーランスが信頼できる専門的な相談窓口を求めている傾向が見て取れます。

フリーランスで将来の年金について相談できる場所

フリーランスが年金に関する不安や疑問を解消するためには、適切な相談窓口を知っておくことが不可欠です。

相談内容に応じて、公的な窓口と民間の専門家を使い分けるのが賢明です。公的窓口は制度のルールを正確に教えてくれ、民間の専門家は個人に合わせた戦略を立ててくれます。

ここからは、それぞれの特徴を解説します。

年金事務所

日本年金機構が運営する年金事務所は、年金に関するあらゆる手続きの公式な窓口です。自身の年金加入記録の確認、各種届出書類の提出、制度に関する正確な情報の入手など、事実に基づいた相談に適しています。

全国各地に設置されており、対面での相談が可能です。ただし、あくまで制度のルールを説明する立場であり、個人の状況に合わせた「どうすべきか」というコンサルティングは行いません。

街角の年金相談センター

「街角の年金相談センター」は、日本年金機構から委託を受けた全国社会保険労務士会連合会が運営する相談窓口です。年金の専門家である社会保険労務士や経験豊富な職員が、無料で対面相談に応じてくれます。

年金事務所と同様に制度に関する相談はもちろん、年金請求の手続きなどもサポートしてくれます。駅の近くやショッピングセンター内など、アクセスしやすい場所に設置されていることが多いのも特徴です。

ねんきんダイヤル(電話相談)

日本年金機構が設けている公式の電話相談窓口が「ねんきんダイヤル」です。年金事務所や相談センターに行く時間がない場合や、一般的な質問をしたい場合に役立ちます。

基礎年金番号がわかる年金手帳などを手元に用意して電話すると、スムーズに相談が進みます。ただし、電話が混み合って繋がりにくい場合がある点には注意が必要です。

社会保険労務士・FP(ファイナンシャルプランナー)

より踏み込んだ個人的なアドバイスを求めるなら、民間の専門家への相談が有効です。

社会保険労務士(社労士)は、年金を含む社会保険制度の唯一の国家資格者です。複雑な年金請求の手続き代行や、個人の状況に合わせた受給方法など、専門的かつ法的なアドバイスを提供してくれます。

FP(ファイナンシャルプランナー)は、年金だけでなく、保険・投資・税金など、家計全体の視点から総合的なライフプランニングを提案してくれます。iDeCoやNISAといった資産運用と絡めて、老後資金全体をどう構築していくか相談したい場合に適しているでしょう。

フリーランスの年金に関するよくある質問

ここでは、フリーランスの方々から寄せられる年金に関する代表的な質問にお答えします。多くの人が抱く疑問を解消し、より深い理解へとつなげましょう。

Q1.フリーランスでも厚生年金に入れるケースはある?

原則として、個人事業主であるフリーランスは厚生年金に加入できません。厚生年金は、法人(株式会社など)や常時5人以上の従業員がいる個人事業所などに雇用される人が対象だからです。

ただし、例外として、自身で会社を設立し(法人化)、法人から役員報酬を得る形にすれば、厚生年金の被保険者になれます。この場合、自身が事業主兼従業員という立場になり、保険料は法人と個人で折半して負担することになります。

Q2.年金を払わないことのペナルティはある?

年金を払わないことのペナルティはあります。国民年金保険料を納付期限までに納めないと、まず電話や文書による納付勧奨があり、それでも納付されない場合は「催告状」が届きます。催告状を無視し続けると「督促状」が送付され、指定された期限を過ぎると延滞金が発生します。

それでも納付しない場合は、預貯金や不動産、自動車などの財産が差し押さえられる「強制徴収」の対象です。

金銭的なペナルティ以上に深刻なのが、万が一の際に障害年金や遺族年金を受け取れなくなるリスクです。保険料の支払いが困難な場合は、放置せずに免除・猶予制度の活用を検討するとよいでしょう。

Q3.年金受給者がフリーランスになった場合はどうなる?

年金を受け取りながらフリーランスとしてはたらいても、事業収入によって老齢基礎年金が減額されたり、支給停止されたりすることはありません。

年金が減額される可能性があるのは「在職老齢年金」という制度で、会社員として厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合に適用されるものです。

フリーランス(国民年金の第1号被保険者)は、この制度の対象外です。したがって、いくら稼いでも老齢基礎年金は満額受け取れます。

Q4.年金と健康保険の支払いはまとめられる?

年金と健康保険の支払いは、まとめられません。国民年金と国民健康保険は、根拠となる法律も管轄も異なる全く別の制度です。そのため、保険料の請求や納付は別々に行われます。

なお、国民年金保険料については、6か月分・1年分・2年分をまとめて前払いする「前納制度」があります。前納すると保険料が割引されてお得になるため、資金に余裕がある場合は活用を検討するとよいでしょう。

フリーランスの年金について理解し、年金対策を始めよう

本記事では、フリーランスの年金制度について、基礎や会社員との違い、具体的な対策を解説しました。

フリーランスは「国民年金(第1号被保険者)」に加入し、保険料は全額自己負担です。受け取れるのは原則「老齢基礎年金」のみで、会社員の「厚生年金」のような2階部分がないため、受給額に大きな差が生まれます。構造的な差を埋めるためにも、iDeCo・国民年金基金・付加年金といった上乗せ制度の利用を検討しましょう。

用意された制度を主体的に活用することで、画一的な会社員の年金プランを上回る手厚い老後資産を築くことは可能です。会社員との差を悲観するのではなく、「自分の未来を自分で設計する機会」と捉えて行動することが大切です。

(監修日:2025年8月8日)

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菅田 芳恵

グッドライフ設計塾(https://goodlife21.com/)|社会保険労務士

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(1級FP技能士、CFP)キャリアコンサルタントの資格を持ち、幅広い知識を保有。開業して17年目で実務経験も豊富。全国社会保険労務士会連合会からの委託で全国の社労士対象のテキストを執筆したほか、協会けんぽのメルマガ記事の連載、日経新聞での退職年金ナビ連載などの実績あり。

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