and HiPro [アンド ハイプロ]

企業に聞く、副業・フリーランス人材活用の今

スズキ株式会社
次世代モビリティサービス本部 モビリティサービス基盤部 部長 立田 憲広
TIS株式会社
執行役員 人事本部 副本部長 兼 人事部長 山田 幸男

プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」は、2025年5月22日(木)に事業方針発表会を開催しました。

第一部では、「HiPro」事業責任者の鏑木 陽二朗が登壇。「採用」と「副業・フリーランス人材活用」の垣根を超えた、スキル起点で企業と個人がつながる社会の実現に向けた、新たな取り組みについて発表しました。

取り組みの詳細は、特設サイトをご覧ください。
https://hipro-job.jp/brand/action1/ 

第二部では、「スキル起点での人材獲得の現在地」と題して、日本の人的資本経営、HRテクノロジー領域研究の第一人者である、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 講師、山形大学 客員教授の岩本 隆氏を迎えてお話を伺いました。

第三部では、実際に副業・フリーランス人材を活用している、スズキ株式会社の立田 憲広氏、TIS株式会社の山田 幸男氏をゲストに迎え、副業・フリーランス人材の活用に関するトークセッションを開催。スキル起点で人材を獲得することの有効性や課題について意見が交わされました。

本記事では、第三部トークセッションの内容をご紹介します。

企業の課題解決の即戦力となり、事業成長にスピード感をもたらす副業・フリーランス人材。

司会:まず登壇者の皆様から簡単に自己紹介をお願いします。

立田:スズキ株式会社の立田 憲広です。主に新規事業を取り扱う、次世代モビリティサービス本部にいます。本日はよろしくお願いいたします。

山田:TIS株式会社の山田です。当社グループは、国内外のさまざまなお客様にITサービスを提供しています。現在、私はグループ全体の人事戦略を統括する立場にいます。よろしくお願いいたします。

司会:では最初に、どのようなテーマで副業・フリーランス人材を活用されてきたのかについてお伺いします。採用ではなく、なぜ副業・フリーランス人材の活用を選択されたのか、あわせてお話いただければと思います。

立田:スズキ株式会社は1920年に創業し、現在は全世界で事業展開し、実績をあげる会社に成長しました。ただ、この先100年間生き残っていくためには、メーカーとしてだけではなく、さらに新しいことに挑戦しなければならないと、新しいインフラモビリティを目指すことを掲げています。そういった中で、私たちの次世代モビリティサービス本部があります。すでにリリースした新しいモビリティサービスもありますし、これからリリースを予定しているものもあります。

新しいサービスを取り扱うときには、ユーザー様からの問い合わせの対応やお困りになった時のケアを行う窓口(コンタクトセンター)が必要です。それぞれのモビリティサービスで一つひとつ窓口を作るわけにもいかないため、質の高い、かつ効率的な統合コンタクトセンターを立ち上げることになりました。

当社には、もともとお客様相談室という自動車や二輪車など製品を取り扱う別の窓口がありました。しかし、新しいモビリティサービスを取り扱うにあたって、いかにお客様の顧客体験を上げていくか、満足していただくかを考えなければなりません。また、お客様の声を適切に拾い上げ、次の商品・サービスにどう活かしていくのかという意味でも、これからの時代、コンタクトセンターは非常に重要な役割を担います。その点を理解しつつも、当社の中には、本当に価値のある、顧客体験を向上させるコンタクトセンターを作っていける知見を持つ人材はいませんでした。

そこで今回、「HiPro」を通して、コンタクトセンターに携わって30年というプロの方にお願いすることになり、去年、コンタクトセンターを立ち上げるまでに至りました。採用の場合、適する人を探してから採用に至るまで時間がどうしても掛かりますが、スピーディに、確実に新しい組織を立ち上げるために、「HiPro」を活用してプロの方に参画いただくのが最適でした。

司会:知見が不足する中、素早く、重要な役割を担う組織を立ち上げるために活用されたということですね。続きまして山田様、お願いいたします。

山田:当社はITを使ってシステム開発などを行うシステムインテグレーターですが、他にもさまざまなビジネスを行い、新規事業、新領域の立ち上げにもチャレンジしています。私は今、全社の人事の統括をしていますが、数年前まで金融を担当する事業部で、ブロックチェーンを使った証券サービスの立ち上げにチャレンジしていました。当社にはブロックチェーン技術はあるものの、許認可が必要な規制産業である証券業界には人脈もなく、金融庁にどのようにアプローチすればよいのかなど、業界の特殊事情に関してはさっぱりわからない状態でした。この部分を補う形で、「HiPro」に紹介いただいたフリーランスの方に参画してもらいました。私はその後、人事部に異動になりましたが、フリーランスの方には長期にわたってご支援いただいたと聞いています。現在は、無事にサービスも立ち上がりました。

このように当社の中では新事業・新領域に対して、高いスキルを持つ副業・フリーランスの方に参画いただいています。スキルもそうですが、スピードを補うというような考え方で入っていただく場合が多いのではないかと思っています。

司会:TIS様全体でも、副業・フリーランス人材の活用は進んでいらっしゃいますか。

山田:そうですね。今、私は自分の事業部での経験を話しましたが、それ以外にもさまざまなサービスの立ち上げに参画いただいたり、また、かつては他社で部長や事業部長のポジションにいたファシリテーション能力のある方に参画いただくケースも多くあります。多様なパターンで副業・フリーランスの方に関わっていただいています。

司会:ありがとうございます。各社での活用についてお伺いしました。鏑木さんにお聞きします。2社に共通するポイントはなんでしょうか。また、副業・フリーランス人材活用においてニーズの多いテーマがあれば、教えてください。

鏑木:共通しているテーマは、やはりスピードと即戦力。ただ人材を求めるのではなく、明確に解決したい課題があり、課題に対してアプローチされていたところが共通点だったと思います。

最近ご相談が多くなっているテーマとしては、新規事業開発が挙げられます。自社にノウハウがない部分や足りない部分を経験のある方からしっかり吸収していく、そのための取組みとして活用いただくことが非常に増えています。加えて、最近は人事関連のニーズも多くいただきます。たとえば、既存の人事制度や管理の仕組みを今の時代に合うようにアップデートしたり、変えていきたいというご相談も増えています。

スキル起点での人材獲得は、内部人材の成長を促し、組織の多様化にも寄与する。

司会:続きまして、スキル起点で人材を獲得することの意義・有効性、活用における課題について教えていただきたいと思います。

立田:繰り返しになりますが、スピード感を持って、質の高い新しいものを確実に作っていく場合には、非常に有効だったと思っています。また、先ほどお話したコンタクトセンターの事例では、フリーランスの方に一年お世話になりましたが、目指すところはまだ先にあります。今後も、フリーランスの方にある意味で先生になっていただきながら進んでいくことが必要です。それ以外の新規事業でも、別分野のプロ人材にお世話になる予定です。

一方で、参画いただいた副業・フリーランスの方に頼り過ぎてしまうところがあるかなとも思っています。当社では一人ひとりの成長、内部の成長も大事にしているため、副業・フリーランス人材の方に頼っているだけにならないよう、その方から多くのことを学ぶための取り組み方やチームの作り方、一人ひとりのマインドセットが課題だと思っています。私の立場から言えば、チームのあり方、日々のコミュニケーションの仕方、成果の出し方などに注意をして進めているところです。

司会:頼りきってしまうのではなく、いずれ自分たちが成長していくための投資であるという考え方ですね。

立田:そうです。それがまた次の循環につながっていく。会社の中だけでなく、外に波及していくことを目指しています。

司会:まさに鏑木さんが考えているところですね。

鏑木:はい、非常にありがたく思います。

司会:立田様、ありがとうございます。続いて山田様、TIS様ではいかがでしょうか。ぜひ人事部としての視点でもお話いただけましたら幸いです。

山田:スキル起点で人材を獲得する意義としては、人材の多様性という点が挙げられます。これまで直接雇用と業務委託の2パターンで人材獲得を進めてきましたが、技術的にも人材のスキル的にも、画一的で多様性の幅がない状態が続いていました。「HiPro」を通じてスキル起点で人材を獲得し、当社のビジネスに参画してもらえれば、多様なバックボーンの方がプロジェクトに入ることにつながります。副業であったりフリーランスであったり、さまざまな人材を活用していくことで、人材の幅が厚くなると考えています。

司会:一方で課題は何かありますでしょうか。

山田:日本の大手企業はどこもそうだと思うのですが、副業・フリーランス人材の直接契約に関して、事務的な問題、労務管理的な問題で及び腰なことです。かつて当社も、直接契約の副業の受け入れは行っていませんでした。しかし「HiPro」を使って、副業・フリーランスの方にもご活躍いただけることが分かってきましたので、新たな扉が開いたと言いますか、新たな活用方法が見出せました。

その後は当社でも徐々に副業・フリーランスの方を受け入れることが進んでおり、人材の多様性もどんどん進展していると思います。

司会:ありがとうございます。課題の声も少し聞こえてきましたが、鏑木さん、お二人のコメントを受けて、「HiPro」として取り組んでいきたいことはありますか。

鏑木:今のお話でも、やはりスピードと人材の幅の広がりが、意義・有効性として挙げられました。実際、人材獲得が難しくなってきている中で、選択肢をより増やし、獲得するスピードを速める。それによって企業が課題に対してアプローチできる手段を確保できるようにする。そこは、当社が不断の努力で取り組んでいくべきところだと思いますので、引き続き頑張っていきます。

変革を目指す企業にとって、スキル起点での人材獲得は有効。

司会:最後に、これから副業・フリーランス人材の獲得に取り組みたいという企業に向けてメッセージを頂戴したいと思います。

立田:どの企業も新規事業やイノベーションなど、新しいことに取り組んでいかなければならない時代になっていると思います。そういった中で、スピード感を持って着実に事業を立ち上げる、プロジェクトを進めるには、副業・フリーランス人材の活用は有効な手段だと思っています。

もう一つ、多様性という言葉が出てきましたが、内部の多様性もさらに広げていかなければなりません。その点で言うと、採用も引き続き必要です。両輪で人材を獲得し、人材の循環やスキルの循環につなげていけばよいのではと考えています。

山田:当社もさまざまな変革や新規事業などにチャレンジしています。私たち人事部としては、当社の理念に共感していただいて、一緒に変革を起こしていく仲間を増やしていきたいと思っています。その仲間の定義は、社員だけではないと考えます。当社のビジネスに、何らかの形で関わっていただける方を増やしていきたいです。

人材の多様性を高めたい、幅を広げたいと思っていらっしゃる企業にとっては、副業・フリーランス人材の活用は効果的な選択になると思います。

司会:ありがとうございます。スキル起点での人材獲得を実践されている企業ならではのお話が伺えました。鏑木さん、第三部を通していかがでしたでしょうか。

鏑木:副業・フリーランス人材を活用している企業は、まだ3割程度という中、有効性を評価していただけてありがたく思いました。活用しようかどうか迷っている方の背中を押すことに少しでもつながれば嬉しいですし、当社も有効なサービスを引き続き作っていきます。ありがとうございました。

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