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地方副業とは?注目されている背景、個人や企業が取り組むメリットとデメリットを解説
政府が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表したことなどを受け、近年、副業を解禁する企業が増えてきています。また、それに伴い、副業に興味を持ち、実際に取り組む個人も増えてきましたそうしたなかで、近年注目を集めているのが「地方副業」です。地方副業は、地方に所在する企業などから案件を受け、副業として業務に取り組むことです。コロナ禍を経てリモートワークが普及したことなどにより、都市部に住みながら地方副業に取り組みたいと考える個人が増えてきました。本記事では、地方副業とは何か、注目される背景や個人と企業それぞれにとってのメリットやデメリットなども含めて解説します。地方副業に興味がある個人の方、副業解禁や副業人材の活用に興味がある企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
セルフ・キャリアドックとは?注目されている背景や導入メリット、事例を紹介
少子高齢化に伴う人手不足の深刻化やはたらき方の多様化など、人材採用を取り巻く環境は大きく変化しています。そのなかで近年注目されているのが、社員による主体的なキャリア開発を促す「セリフ・キャリアドック」です。セルフ・キャリアドックを導入することで、社員個人のはたらきがい向上やモチベーションアップにつながるのはもちろん、企業としても組織活性化などのメリットを享受できます。 本記事では、セルフ・キャリアドックの概要や注目されている背景、導入メリット、具体的な事例をまとめてご紹介します。セルフ・キャリアドックの導入に興味のある経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。 セルフ・キャリアドックとは 厚生労働省の資料では、セルフ・キャリアドックを以下のように定義しています。 企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に社員の支援を実施し、社員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のこと 出典:「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開(厚生労働省) 具体的には、自社の社員に対してキャリア研修やキャリアコンサルティングの機会を提供し、フォローアップまで行うことで、主体的なキャリア形成を支援する取り組みです。キャリアにおける目標が具体化されることで、若手社員の離職率低下や中堅社員のモチベーション維持や向上などにつながるとされています。 セルフ・キャリアドックが注目されている背景 近年セルフ・キャリアドックが注目されている背景としては、以下の3点が挙げられます。 少子高齢化による人手不足 ビジネスを取り巻く環境変化の激しさ 政府による職業能力開発の促進 少子高齢化による人手不足 生産年齢人口の減少に伴い、はたらく人がより能力を発揮できる環境が必要とされています。労働人口が限られるなかで企業が成長し続けるためには、個人がより能力を発揮する必要があるためです。個人の主体的なキャリア開発が不可欠であり、企業はセルフ・キャリアドックに取り組むことでその実現を目指しています。 ビジネスを取り巻く環境変化の激しさ 技術革新やグローバル化などの影響により、ビジネスを取り巻く環境変化は激しさを増しています。企業としてビジネス環境の変化に対応するため、主体的に考えて行動できる人材の重要性が高まっているといえるでしょう。セルフ・キャリアドックによってキャリアの目標を設定し、日々の業務に取り組むよう促すことで、自社社員の成長を目指しています。 政府による職業能力開発の促進 政府も職業能力開発を積極的に推進しています。2016年度の改正職業能力開発促進法では「職業生活の設計とそのための能力開発」において、はたらく一人ひとりに当事者意識とキャリアデザインを行う責任を求め、同時に組織にその支援の提供を義務づけました。つまり、企業としても、社員の職業能力開発には積極的に取り組んでいくことが求められているのです。 セルフ・キャリアドックを導入するメリット それでは、セルフ・キャリアドックを導入することには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、企業と個人に分けてそれぞれご紹介します。 企業にとってのメリット 企業がセルフ・キャリアドックを導入する主なメリットは、以下の5つです。 社員の成長につながる 社員の定着率が高まる 社員のモチベーションが向上する 休業後の職場復帰率を改善できる シニア社員のキャリア形成を支援できる 順番に見ていきましょう。 社員の成長につながる セルフ・キャリアドックを通じて社員が主体的にキャリアを考え、必要な知識やスキルを身につけて成長することは、企業にとって大きなメリットです。既存の業務におけるパフォーマンスが向上したり、対応できる業務の幅が広がったりすることで、これまで以上の活躍が見込めるでしょう。 社員の定着率が高まる セルフ・キャリアドックによって、仕事に取り組むためのマインドセットが形成されたり、今後のキャリアパスがイメージできたりすることから、社員の定着率向上も見込めます。目標とするキャリアの形成に向けて現在の仕事の意義を改めて認識する機会となり、社員の離職防止につながると考えられます。 社員のモチベーションが向上する 社員が自身のキャリアについて主体的に考え、目標を定めることでモチベーションが向上する点も大きなメリットです。特に中堅社員においては、ある程度キャリアの先行きが見えることでモチベーションの維持や向上が難しいケースもあります。セルフ・キャリアドックを通じて自身の能力を棚卸しし、今後どのように発揮すべきかを整理すれば、モチベーションの回復につながるでしょう。 休業後の職場復帰率を改善できる 育児や介護などによる休業者に対して、セルフ・キャリアドックを活用することで、復帰後の不安を軽減したり、事前に復帰後のキャリアプランを作成したりすることができます。これにより、職場復帰率の向上が期待できます。多様なはたらき方が増えている現代において、自社に必要な人材を確保するためには重要な取り組みだといえます。 シニア社員のキャリア形成を支援できる 人生100年時代と言われ、仕事をする期間や会社に勤める個人のキャリアが長期化するなかで、セルフ・キャリアドックはシニア社員のキャリア形成支援にもつながります。シニア社員がいかに成長を続け、モチベーションを維持したまま業務を続けられるかは企業の成長を左右する重要なテーマです。 個人にとってのメリット セルフ・キャリアドックの導入は、企業だけでなく個人にとってもメリットがあります。自身がキャリアについて主体的に考えることで、将来のキャリア目標を明確にできます。具体的な目標が明確になることで、必要な経験やスキルが見えてきます。そして、それに向けた行動も起こしやすくなります。また、キャリア目標やそのプロセスが明確になることで、日々の業務に対するモチベーション向上や充実感の増加などの効果も期待できます。 セルフ・キャリアドック導入の流れ セルフ・キャリアドックを導入する際は、以下5つのステップで進めましょう。 人材育成の方針を定める 実施計画を策定する 社内インフラを整備する セルフ・キャリアドックを実施する フォローアップや振り返りを行う 各ステップについて順番に解説します。 1.人材育成の方針を定める まずはセルフ・キャリアドックの導入にあたって人材育成の方針を明確にする必要があります。社員にどのような人材になることを期待するのか、そのために人材をどう育成していくのかを整理しましょう。策定した人材育成の方針は、セルフ・キャリアドックの各プロセスのなかでも随時社員に対して発信していくものとなります。 2.実施計画を策定する 人材育成の方針に基づき、具体的なセルフ・キャリアドックの実施計画を策定します。 内容としては、キャリア研修とキャリアコンサルティング面談の2つがメインになるでしょう。キャリア研修では、現在または近い将来にキャリア形成上の課題に向き合うことが想定される社員を対象とし、能力の棚卸しやキャリア開発の目標設定を行います。キャリアコンサルティング面談では、事前に面談にかける時間を設定し、面談はキャリアコンサルタントが対応します。 3.社内インフラを整備する セルフ・キャリアドックの内容が決まったら、実施に必要な社内インフラを整備します。具体的には、セルフ・キャリアドックを統括する責任者の決定や社内規定の整備、キャリアコンサルタントの育成や確保などです。キャリアコンサルタントは、公的資格である「キャリアコンサルタント国家資格」「キャリアコンサルティング技能検定(1級・2級)」のいずれかを保有していることが原則必須とされており、対応可能な人材を社内または社外にて確保する必要があります。 4.セルフ・キャリアドックを実施する 社内インフラを含めて準備が整ったら、セルフ・キャリアドックを実施します。具体的には、以下4つの工程が想定されます。 対象社員に対する説明会 キャリア研修 キャリアコンサルタント面談 振り返り セルフ・キャリアドックの効果を引き出すためには、事前に目的や実施内容を適切に説明することが重要です。また、実施後にはアンケートやヒアリングによって効果を評価しましょう。 5.フォローアップや振り返りを行う セルフ・キャリアドックの取り組みが一段落した後には、全体としての結果の振り返りや改善策の検討、個別社員へのフォローアップを行います。 個別社員との面談結果および全体の活動結果について、キャリアコンサルタントから人事部、人事部から経営層への報告が必要です。個別社員に対してフォローアップが必要な場合は、追加面談や当該社員の上司への相談、関連部署との連携などを行います。組織全体としての課題が出てきた場合は、企業としての改革が必要になるでしょう。 セルフ・キャリアドックの取り組みは一度で終わるわけではありません。より良い仕組みにしていくために、継続的に改善を図ることが大切です。 セルフ・キャリアドックの導入事例 セルフ・キャリアドックは、多くの企業において「キャリア研修」「キャリアコンサルティング面談」「フォローアップ」という構成で導入されています。ここでは、実際にどのような社員を対象に実施されているのか、以下3つの事例を見ていきましょう。 グローバル化の推進を見据えたキャリアコンサルティング ミドルマネージャー層向けのキャリアワークショップ 50歳代の社員を対象としたキャリア開発研修 グローバル化の推進を見据えたキャリアコンサルティング 食品業界のA社では、グローバル化のさらなる推進を見据え、社員の成長を促すためにセルフ・キャリアドックを導入しました。若手社員とのキャリアコンサルタント面談では「具体的なキャリアイメージがない」「目標とするキャリアにどう辿り着けばよいかわからない」といった声があり、その原因分析と解決策の提案を行いました。セルフ・キャリアドックの実施により、若手社員が職場における自身の役割を改めて理解し、将来の目標に向かって必要なキャリアを設計できる状態になったとされています。 ミドルマネージャー層向けのキャリアワークショップ 飲料業界のB社では、組織の中核であるミドルマネージャー層を対象にキャリアワークショップを実施しました。自身のキャリアはもちろん、マネージャーとして部下のキャリア設計を支援する方法についても学ぶ機会としたことで、自身のキャリアに留まらず、メンバーのキャリア形成を支援する力の向上につながりました。 50歳代の社員を対象としたキャリア開発研修 製薬会社のC社では、50歳代の社員を対象にキャリア開発研修を実施しました。キャリアコンサルタントへの相談内容からは、「停滞感」や「定年までのはたらき方への悩み」といった50歳代特有の課題が浮き彫りになりました。はたらき方について改めて振り返ることで自身のあり方を見直し、モチベーションが高まるきっかけになったとされています。 まとめ 本記事では、セルフ・キャリアドックの概要や注目されている背景、導入メリット、具体的な事例をまとめてご紹介しました。 社員の主体的なキャリア開発を促すセルフ・キャリアドックは、政府の後押しもあって企業への導入が進んでいます。実施には手間やコストがかかるものの、社員の離職率低下やモチベーションアップなど、組織体制の維持や改善に向けて大きな効果が見込める取り組みだといえるでしょう。 また近年、政府の後押しもあり副業や兼業が推進されています。セルフ・キャリアドック自体が副業や兼業を推進しているわけではありません。しかし、個人が副業や兼業を始めることは、スキルアップの機会や「主体的なキャリア開発」を考える一つのきっかけとなり、成長につながる可能性があると考えられます。 パーソルキャリア株式会社では、企業と副業・フリーランス人材をつなぐマッチングプラットフォームサービス「HiPro Direct」を展開しています。「主体的なキャリア開発」の一環として副業を考えている方は、ぜひご検討ください。
周囲と自らの成長を持続するために多くの人とのつながりを大事にしたい
※FUTURE GATEWAY公式サイトに掲載された記事です。許可を得て転載しています。「FUTURE GATEWAY」は、先進的なライフスタイルを実践する人々を中心に、多様なパートナーとこれからのスタンダードをつくる共創イニシアチブです。この連載では、FUTURE GATEWAYに関わる人々の価値観に迫り、一緒に未来を考えていきたいと思います。今回登場するのは、人材サービス企業 パーソルキャリア株式会社で「副業やフリーランスといった人材活用が当たり前となる社会」の実現を目指すタレントシェアリング事業に携わる傍ら、オフィス家具メーカーにて「モノと場所のシェアリング」の新規事業にも挑戦する働き方を実践している江本匠弥さん。周囲と自らが成長し続けるために、多くの人とつながり続けながら、先進的な事業やプロジェクトに関わる幅広い活動をされています。江本さんの具体的な活動内容、その活動に至った経緯や思い、これからの目標などについてお話を伺いました。
はたらき方にはどんな種類がある?雇用形態や勤務時間による違いを解説
働き方改革が進み、ワークライフバランスの見直しやリモートワークが普及してきたことで、自分に合ったはたらき方を選べる環境が徐々に整備されてきました。子育てや介護、自己実現などのため、自分に合ったライフスタイルを構築したい人には追い風といえるでしょう。 そこで気になるのが、雇用形態や勤務時間といった諸条件による違いです。本記事でははたらき方の種類について、雇用形態や勤務時間などの観点から解説します。はたらき方を見直したいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。 はたらき方の種類にはどのようなものがある? はたらき方の種類や条件を知るうえで、最初に把握しておきたいのが以下の2点です。 ・ 雇用形態別のはたらき方 ・ 社会保険の適用有無 順番に見ていきましょう。 雇用形態別のはたらき方 主な雇用形態としては、以下の5種類があります。 正社員 契約社員 派遣社員 アルバイト・パート 業務委託(副業・フリーランス) ここでは、雇用形態別の特徴やメリット、注意点を見ていきましょう。なお、上記のうち業務委託は雇用形態ではなく契約形態の一種ですが、ここでは多様化するはたらき方の一つとして解説します。 正社員 厚生労働省の資料によると、正社員は以下3つの条件に該当する労働者を指すとされています。 労働契約の期間の定めがない 所定労働時間がフルタイムである 直接雇用である 出典:勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて(厚生労働省) 正社員としての勤務では、雇用が安定していることや、他の雇用形態と比べて収入が高い傾向にあること、福利厚生や待遇が充実している傾向にあることから、比較的安定した労働環境を得られるのがメリットです。一方、はたらく年数が長くなると給与が上がっていく傾向にあるため、短期的に収入を伸ばすのが難しいとされます。努力や結果に応じた収入を望む人は成果報酬制度がある企業などを探すと良いでしょう。 契約社員 契約社員は、期間が定められた「有期労働契約」による雇用形態を指します。労働基準法により、契約期間の上限は原則3年と定められています。ただし、専門的な知識や技術などを有する労働者、または満60歳以上の労働者と労働契約を結ぶ場合の上限は5年です。 契約社員のメリットは、正社員に近い待遇を得られることや、企業によっては転勤や異動の可能性が低いこと、労働期間の定めが明確なことなどです。しかし、有期契約であることから長期的な安定性があるとはいえず、計画的なキャリア設計が必要です。 派遣社員 派遣社員は、人材派遣会社(派遣元)などと雇用契約を結んだうえで、人材派遣会社を通じてほかの会社に派遣されるはたらき方をいいます。派遣期間の上限は原則3年となっており、賃金は派遣元の会社から支給されます。ただし、派遣社員に対して指揮命令を行うのは派遣先の会社です。 派遣社員のメリットは、ライフスタイルに合わせて派遣先を選びやすいことや、アルバイトやパートと比べると賃金が高い傾向にあることなどです。一方、派遣期間に上限があるため、契約社員と同じく安定性があるとはいえないでしょう。 アルバイト・パート アルバイトやパートは、1週間あたりの所定労働時間が同一事業所における通常の労働者よりも短い雇用形態を指します。給与は時間単位で計算されるのが一般的です。 アルバイトやパートとしてはたらくメリットは、自分のライフスタイルに応じて労働時間を調整できることや、転勤や異動が基本的に発生しないことなどです。一方、一般的には責任のある仕事を担当できる機会が少ないとされているため、キャリアアップにつながりにくい点を理解しておく必要があります。 業務委託(副業・フリーランス) 業務委託は、副業を行う個人やフリーランスが企業などと業務委託契約を結び、業務に従事するはたらき方です。雇用関係はないため、厳密には雇用形態ではなく契約形態の一つです。副業の場合、本業を続けながら空いた時間で業務に取り組むのが一般的で、フリーランスの場合は個人事業主として業務を受託し、複数企業と契約することも珍しくありません。 業務委託のメリットは、自分のペースで業務に取り組みやすいことや、努力した分がそのまま収入につながりやすいことです。一方、雇用関係ではないため、案件が単発で終了するものもあります。事前に単発案件なのか継続案件なのか確認しましょう。 社会保険の適用有無 はたらき方を選択する際は、社会保険の適用有無を確認しておくことも重要です。社会保険とは、健康保険や厚生年金保険などの公的な保険制度を指します。また、雇用保険と労災保険を含む「労働保険」の適用有無も確認しておきましょう。 社会保険や労働保険の適用有無は、雇用形態の違いだけによって決まるものではなく、業種や雇用人数、労働時間などさまざまな要素によって決まります。一般的には、正社員であれば健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの適用対象となるケースが多いため、より安心してはたらける環境だといえるでしょう。短時間勤務の正社員や契約社員、パート・アルバイトの場合は適用条件が定められており、勤務先への確認が必要です。 勤務時間・勤務地・給与制度におけるはたらき方の違い ライフスタイルに合わせてはたらき方を考える場合、雇用形態のほかに以下の3つの要素にも着目するとよいでしょう。 勤務時間 勤務地 給与制度 ここでは、それぞれの観点ではたらき方の種類やメリット、注意点をご紹介します。 勤務時間による違い 勤務時間という観点では、大きく4つのはたらき方が挙げられます。 固定時間制 変形労働時間制 フレックスタイム制 裁量労働制 順番に見ていきましょう。 固定時間制 固定時間制は、会社が定める所定の曜日や時間に勤務する形態のことです。後述するフレックスタイム制などの導入も最近では進んでいますが、正社員としての雇用であれば固定時間制が基本となっているケースはまだ多いでしょう。予定が立てやすい反面、業務量やプライベートの事情に応じた柔軟なはたらき方が難しいというデメリットがあります。 変形労働時間制 変形労働時間制は、1か月や1年など一定の期間内における総労働時間をあらかじめ定め、その枠内で勤務する形態です。シフト制の仕事や季節によって繁閑の差が大きい業種や職種などに適したはたらき方とされています。繁忙期に勤務時間を増やし、閑散期に勤務時間を減らすといったメリハリのあるはたらき方が可能な場合があります。 フレックスタイム制 フレックスタイム制とは、一定期間において定められた総労働時間のなかで、労働者自身が日々の労働時間を自由に決められる制度です。フレックスタイム制を導入している企業の多くは、勤務を必須とする時間帯として「コアタイム」を設けています。 例えば、フレックスタイム制では、ラッシュアワーを避けて出退勤をするといった柔軟なはたらき方が可能です。コアタイムが10時〜15時だった場合、10時以前および15時以降の勤務時間を自由に決められます。身体的な負担やストレスが軽減され、仕事のパフォーマンスが向上する可能性もあるでしょう。 裁量労働制 裁量労働制はみなし労働制とも呼ばれ、実際の勤務時間にかかわらずあらかじめ定められた労働時間分の勤務を行ったとみなす制度です。例えば、労働時間を1日8時間と定めた場合、実際の勤務時間が8時間未満だったとしても所定時間通り勤務したものとみなされます。 厚生労働省のサイトによると、具体的には以下3つのパターンがあります。 事業場外みなし労働時間制 専門業務型裁量労働制 企画業務型裁量労働制 出典:労働時間・休日(厚生労働省) 事業場外での勤務により労働時間の算定が困難な場合や、使用者が具体的な指示をしない専門業務・企画業務などを行う場合が想定されています。 勤務地による違い 近年では、リモートワークの普及によって勤務地に制約されないはたらき方も可能になりました。ここでは出社型、リモートワーク型それぞれの特徴を見ていきましょう。 出社型 出社型とは、従来のはたらき方ともいえる「オフィスへの出社」を前提とする勤務形態です。出社が必要なため、通勤にかかる時間や負担はデメリットといえます。しかし、上司や同僚と適宜コミュニケーションを取りながら業務を進められる点や、仕事とプライベートのオンとオフを明確に切り替えられる点はメリットです。製造業の技能職や小売業の販売職など、リモートワークの導入が難しい業種や職種では、出社型の勤務が一般的です。 リモートワーク型 リモートワーク型とは、オフィス以外の場所で業務を行うはたらき方のことで、テレワークとも呼ばれます。従来はWeb関連の職種やシステムエンジニア、プログラマー、デザイナー、カスタマーサポートなどの職種で利用されていましたが、新型コロナ感染症の拡大をきっかけに幅広い職種で活用が始まりました。すべての勤務をリモートワークにするのではなく、必要に応じて使い分ける「ハイブリッド型」も広く利用されています。 リモートワークのメリットは、出社が不要なため時間的、体力的な負担が軽減されることです。ただし、集中できる環境づくりやオンとオフの切り替えが難しい点には注意が必要です。 近年ではリモートワークで対応可能な副業や兼業を始める人も増えています。出社が不要なため本業を続けながら取り組みやすく、新たなスキルアップや収入アップの機会となっています。 給与制度による違い 給与制度は、大きく分けて固定給と歩合制の2種類があります。それぞれの特徴やメリット、注意点を見ていきましょう。 固定給 固定給とは、一定の時間・期間の勤務に対して事前に定められた金額が支払われる給与制度です。収入が安定しやすい点はメリットですが、成果に応じて収入が変動するわけではないため、モチベーションが上がりにくいという面もあります。営業職などにおいては、後述する歩合制と組み合わせることも少なくありません。 固定給のなかでは月給制や時給制が一般的ですが、ほかにも年俸制や日給制などがあります。年俸制とは、給与の年間支給額を定め、その総額を月ごとに分割して支給する制度です。日給制とは、1日あたりの給与が事前に決められている制度です。ただし、1ヶ月分まとめての支給になるなど都度支払いではないケースも多いため、確認をするようにしましょう。 歩合制 歩合制では、仕事の量や達成した成果に応じて給与が変動します。勤務先に貢献した分だけ収入に反映されるため、モチベーション高く業務に取り組める点はメリットです。ただし収入の安定性には欠けるため、特に完全歩合制の仕事を選ぶ場合などは慎重に検討しましょう。 まとめ 本記事では、はたらき方の種類について、雇用形態や勤務時間などの観点から違いを解説しました。 はたらき方を選ぶ際には、雇用形態や社会保険の適用有無、勤務時間、勤務地、給与制度、自分がどのようなキャリアやライフスタイルを望むのかといったさまざまな観点で検討することが大切です。 近年では、固定時間制かつ出社型の勤務以外にも多様なはたらき方が可能になりました。正社員としてはたらきながらリモートワークで副業や兼業に取り組む人や、フリーランスとして独立を選ぶ人も増えてきています。 本コラムを参考に、自分がどのようなはたらき方を望むのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
注目を集めているパラレルキャリアとは?副業との違いやメリットを紹介
近年、パラレルキャリアというはたらき方が注目を集めています。パラレルキャリアとは、キャリアの開拓を目的に複数の仕事を行うことです。 本記事では、パラレルキャリアと副業の違いや注目されている背景、メリット、パラレルキャリアの始め方などを解説しています。本記事を通して、多様なはたらき方について考えてみましょう。 パラレルキャリアの意味とは?副業と何が違うのか? パラレルキャリアと副業はどちらも複数の仕事を持ちますが、目的が異なります。 パラレルキャリアは経営学者であるピーター・ドラッカーが提唱した概念で、スキルアップやキャリアアップなどが主な目的です。ボランティア活動をして社会貢献する、趣味の活動をするなど、収入を目的としない活動も含みます。個人の成長や多面的なキャリアの展開を重視し、仕事だけでなく個人の価値観や生き方にも影響を与えます。 一方の副業は、本業以外で収入を得ることをおもな目的としたはたらき方です。多くの場合、本業に対するサイドビジネスとして位置づけられます。副業はパラレルキャリアと比較すると、経済的な安定を求める手段としての側面が強いといえるでしょう。 パラレルキャリアが注目を浴びている理由 パラレルキャリアが注目される背景には、はたらき方の多様化と企業寿命の変化があります。 現代では、転職の一般化、リモートワークやフレックスタイム制度の導入など、はたらき方が多様化しています。これにより、企業に勤めながらもさまざまな職業に関わり、キャリアアップやスキルアップを目指すことが可能になりました。 また、企業寿命の短命化が進むなか、収入源が本業だけでは、本業の企業に寿命が訪れた際に困ってしまいます。その際に、パラレルキャリアなどで複数のキャリアを持っておくと、突然の転職や再就職にも柔軟に対応できる可能性が高まります。 パラレルキャリアは個々の成長や目標達成に寄与するだけでなく、新たな発想やマネジメントスキルの強化など、企業側にもプラスの効果をもたらします。そのため、パラレルキャリアの導入は、働き方改革の一環として今後さらに広がっていくと考えられるでしょう。 パラレルキャリア3つのタイプ別の違い パラレルキャリアは、ベーススキルアップ型、自己実現追求型、新たなキャリア開発型の3種類に大きく分けられます。 ● ベーススキルアップ型: 現在のスキルを活用して、業種や職種の幅を広げるタイプです。本業に近い仕事で、キャリアを発展させたい人に適しています。 ● 自己実現追求型: 趣味やボランティアなども含む幅広い活動を行い、本業とは異なるはたらき方をするタイプです。やりたいことが明確な人に向いています。 ● 新たなキャリア開発型: 現在のスキルを活かしながら、新たな分野に取り組むタイプです。本業では経験できないことに挑戦したい人に適しています。 実際には、上記3種類のいずれかに明確に分けられるわけではなく、多くの場合はこれらのタイプが重なり合う複合型になっています。政府や企業も多様なキャリア形成を奨励しているため、自分の目標や興味に応じてキャリアを築いていくことをおすすめします。 パラレルキャリアの5つのメリット パラレルキャリアによって得られるメリットを5つ紹介します。 新たな人脈を築ける パラレルキャリアは、新たな人脈を築く絶好の機会です。本業だけでは限られた範囲の人としか接しませんが、さまざまな環境で活動することによって人脈が大幅に広がります。 新しい場所でのつながりは、新しい知識や視点を得られるだけでなく、人生を豊かにしてくれるでしょう。新たなビジネスチャンスや、利益をもたらす可能性もあります。 スキルや経験をたくさん積める 複数の場所ではたらくと、さまざまな経験を積めます。パラレルキャリアを通じて得た知識やスキルは、本業にもプラスの影響を与えるでしょう。 また、パラレルキャリアの導入によって、売上が発生したり人を雇用したりした場合には、経理やマネジメントなどの専門的なスキルを身につけることも可能です。これらのスキルは、あらゆる職種やはたらき方に応用できるため、大きな価値があります。 収入がアップする可能性がある パラレルキャリアを追求すると、収入がアップする可能性があります。本業を続けながら、さまざまな知識やスキルを積み重ねられるため、転職や起業に伴う経済的なリスクを抑えることも可能です。 また、パラレルキャリアを通じて得た新しいスキルや知識を本業で活用すると、業績向上や昇進の機会が生じることも考えられます。 視野が広がる パラレルキャリアで新たな経験を積み、異なる背景や価値観を持つ人々と交流する過程で、自然と視野が広がる可能性があります。特に、異なる価値観を持つ人々と接すると、新たな視点を得る機会が増え、柔軟な発想力を養うことが可能です。 金銭面を気にせずキャリアを見直したりステップアップしたりするきっかけを作れる パラレルキャリアでは、本業により金銭的な不安を軽減しつつ、新たな分野への挑戦やスキルアップに集中することが可能です。 また、パラレルキャリアを通じて経験を積んだあとに、転職や起業を考えることもできます。安定した収入源があるため、自己実現や新たなキャリアへの転換をスムーズに実現できるでしょう。さらに、収入の分散によりリスクヘッジも可能です。 パラレルキャリアに関する4つの注意点 パラレルキャリアにはメリットが多くありますが、いくつか注意点もあります。トラブルや失敗を避けるためにも、よく確認しておきましょう。 勤務先企業の就業規則を事前に確認する パラレルキャリアを始める前には、企業の就業規則を確認しましょう。企業によっては、副業を禁止しています。 副業を許可している企業であっても、情報漏洩のリスクやセキュリティを考慮して、同業他社の仕事は禁止としている場合があります。企業の就業規則をよく確認し、迷った際には上司や人事部に相談しましょう。 また、パラレルキャリアでの報酬は基本的に副業として扱われますが、無報酬の活動でも副業と誤解されることがあります。パラレルキャリアに対する認識は企業と社員間でずれが生じやすいため、認識のずれを避けるためにも就業規則を遵守することが重要です。 本業に支障が出ないよう気をつける パラレルキャリアを実践する際は、本業に支障をきたさないように注意しましょう。パラレルキャリアは本業と並行して行うものであり、スケジュール管理やタイムマネジメントが欠かせません。 また、パラレルキャリアによって得られる新しい経験やスキルは、本業にも良い影響を与えます。負担が大きくなって本業のパフォーマンスが低下しないよう、自分の体調管理やメンタルヘルスにも注意を払いましょう。 休息も含めしっかりとした時間管理が必要 パラレルキャリアを成功させるためには、ワークライフバランスを考慮することが重要です。 パラレルキャリアを始めるために休息を削ってしまう人もいるかもしれませんが、ワークライフバランスを保つためには、仕事以外の自由時間も大切にする必要があります。休息時間を削ってしまうと、将来的に健康や生活の質へと悪影響をおよぼすことになりかねません。最初は短時間からスタートし、徐々に自分に合ったペースを見つけていきましょう。 健康的なライフスタイルを維持することが、充実したキャリアを築くポイントです。 パラレルキャリアは続けることが大切 パラレルキャリアの成功の鍵は、継続にあります。好きなことややりたいことを単なる趣味の範囲に留めず、他者に価値を提供できるレベルまで高めるためには継続が必要です。 ただし、無理に続ける必要はありません。自分に合っていないと感じたら、その経験を本業の転職やキャリアの再考に活かすなどで、方向転換も可能です。 パラレルキャリアの始め方 ここでは、パラレルキャリアを始めるための具体的なステップを紹介します。 目標やゴールを明確にする パラレルキャリアを成功させるためには、明確な目標やゴールを設定することが大切です。単に「知人がやっているから」「収入を増やしたいから」などの漠然とした理由では、成功は難しいでしょう。特にパラレルキャリアは本業と異なり、自分自身の力だけで成果を出さなければならず、本業以上の努力が必要となる場合もあります。 途中で挫折しないためには、「本業ではできないことを実現する」「キャリアアップするためのスキルを磨く」などの明確な目標設定が必要です。 目標を立てたらゴールから逆算し、すべきことを明確にしましょう。徐々に成功体験を積みながらキャリアを築くことで、目標を達成しやすくなります。急いで高みを目指すのではなく、着実なステップアップが成功のポイントです。 自分の強みや弱み、伸ばしたいスキルなどを知る 自己分析を通じて、自分の強みや弱み、伸ばしたいスキルなどを明確にしましょう。自己分析は仕事だけでなく、趣味やプライベートの経験も含めて行うのがポイントです。日常的にこなしていることが、ほかの環境では貴重なスキルとして評価される可能性があります。 自己分析を行うと、自分がどのような環境や仕事に適しているか、どのような分野に挑戦できるかの見極めが可能です。将来のキャリアパスを描きやすくなり、パラレルキャリアでの成功への道がより明確になるでしょう。 なお、自己分析は一人で行うのは難しい場合もあるため、キャリアアドバイザーなどの専門家に相談することもおすすめです。 パラレルキャリアを実現できる環境を準備する パラレルキャリアを実現するには、適切な環境を整えることが大切です。現在の職場でパラレルキャリアの実現が難しい場合は、副業や兼業に理解のある企業への転職を検討するのも一つの手段です。 転職エージェントに希望のはたらき方やキャリアプランを伝えれば、それに適した職場を紹介してもらうことも可能です。具体的なキャリア目標を明確にしておくと、より自分に合った提案を受けられます。 まとめ パラレルキャリアは、はたらき方の多様化を実現し、新しい視野と人脈の構築などのメリットをもたらします。複数の仕事を通してさまざまな経験を積み、自分の可能性を広げることが可能です。 パラレルキャリアを始める際には、明確な目標とゴール設定が重要で、適切な環境作りも欠かせません。パラレルキャリアを継続できるよう、本業とのバランスを保ちながら、慎重に計画を進めていきましょう。
「世界は広かった」——。正社員を卒業しめぐり合った、パラレルキャリアという新たな選択肢
働き方は日々多様化し続けており、望むキャリアや生き方によって、自分に合った働き方を選び取れるようになってきました。その一つとして、近年注目を浴びるのが、パラレルワークという働き方です。パラレルワークは2種類以上の仕事を同時に手がけることであり、「本業を複数持つ」というイメージの働き方を指します。今回お話しをお伺いする世永亜実さんは、パラレルワークを実践する一人。株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドの非常勤取締役や、オイシックス・ラ・大地株式会社のブランドディレクターをはじめ、現在4社で活躍されています。パラレルワーカーに転向される以前は、正社員としてサマンサタバサジャパンリミテッドに17年間勤務。広報部(現プレスマーケティング部)の立ち上げを経験し、ブランディングやマーケティングを統括してきました。また28歳で部長、30歳で執行役員、33歳で上席執行役員に就任。プライベートでは一男一女の母親でもあります。キャリアの階段を駆け上がり続け、名実ともに成果を上げてきた世永さんですが、2019年に正社員卒業という決断をします。なぜ、順風満帆に見えるキャリアを転向し、パラレルキャリアを歩み始めたのでしょうか。転向の経緯やパラレルワークの魅力、働くうえで大切にされていることなどを伺いました。
社会により大きなインパクトを与えるために、独立の道へ。新規事業のプロフェッショナルが感じた、イノベーションの矛盾
近年はさまざまなデータを活用し、顧客の行動を細かく分析し、一人ひとりに合わせた体験価値を提供するビジネスモデルが増えています。それに伴い、データを活用する新規事業の立ち上げ・開発を担う人材の注目も高まっている状態です。しかし、新規事業の案件を担当するにあたって、どのような知識・スキルが必要となるのか、詳しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、データサイエンス領域を強みとし、ビッグデータ×新規事業で幅広い企業を支援した実績を持つ久米村氏に、新規事業の考え方や外部人材としての関わり方についてお伺いしました。
1つのスキルで生きていくことは、決して不可能じゃない。デザイン思考を極めたコンサルタントが語る、専門スキルを磨くことの重要性
近年では第四次産業革命によるテクノロジーの進歩や、多様化する消費者ニーズに対応すべく、多くの企業がDXを通じた新規事業の開発、既存ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。しかし、複雑化する課題を前に、目的を見失ってしまい、知らず知らずのうちに手段が目的化してしまう企業も多いのではないでしょうか。また、個人では幅広い課題を解決するために、多様なスキルを手に入れようとする傾向にありますが、1つのスキルで生きていくことは本当に不可能なのでしょうか。そこで今回は、デザイン思考を武器に、DX推進や新規事業の開発を支援してきた河上氏に、独立の経緯や課題解決の考え方、1つのスキルで生きていく方法を伺いました。
マーケット構造が複雑化する現代において、新規事業開発をリードする人材とは
昨今では、社会構造や消費者行動の変化、テクノロジーの急激な進歩、SDGsの浸透などによって、ビジネスモデル改革のニーズが高まっています。しかし、成長戦略として新規事業開発に取り組む企業が多い反面、課題も山積みになっている状態です。「新規事業アイデアの発案方法や絞り方が分からない」「現状から新規事業開発の方向性をどのように考えるべきか分からない」「仮説検証方法や事業評価基準を含めて、新規事業の妥当性が判断できない」「曖昧な上流の構想を、どのように新規事業として具現化すれば良いか分からない」「サービスのKGI・KPI設計が正しくできておらず、事業計画が絵に描いた餅になってしまう」そもそも新規事業に取り組むこと自体が初めてで、「何から取り組むべきか分からない」という状態に陥っている企業も、少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、幅広い業界の新規事業開発を支援する百瀬氏に、新規事業開発に重要な考え方を伺いました。