マーケティングTAG
リードジェネレーションとは|オンライン・オフラインそれぞれの方法や活用のコツを解説
リードジェネレーションとは、新たな見込み顧客(リード)を獲得する取り組みのことです。営業やマーケティングにおいては、顧客が商品やサービスを認知したあと、興味や関心を抱き、比較や検討を経て購入や契約に至るまでフォローする必要がありますが、その入り口となるのがリードジェネレーションによるリードの獲得です。ただし、質の高いリードを集めなければ、最終的に購入や契約に至る顧客の割合は低くなってしまうため、ポイントを押さえて取り組むことが大切でしょう。本記事では、リードジェネレーションの定義や役割、主な手法、効果を高めるコツについて解説します。リードジェネレーションの導入や改善によって自社ビジネスの強化を図りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
リードナーチャリングとは?注目される背景やメリット・デメリット、代表的な手法を紹介
マーケティング活動において、見込み顧客の購買や契約に対する意欲を向上させるための取り組みが「リードナーチャリング」です。この用語は聞いたことがあるものの、具体的な取り組み内容やそのメリットがよくわからないという方もいるでしょう。 リードナーチャリングは、計画的に取り組むことで販売やマーケティング活動を効率化し、見込み顧客へのアプローチを最適化するというメリットがあります。 本記事では、リードナーチャリングの概要や注目される背景、メリットとデメリット、代表的な手法についてまとめてご紹介します。リードナーチャリングをマーケティング活動に取り入れたい方や見込み顧客へのアプローチを改善したい方は、ぜひ参考にしてみてください。 リードナーチャリングとは リードナーチャリングとは、獲得したリード(見込み顧客)をナーチャリング(育成)し、自社の商品やサービスに対する興味や関心を高めていく取り組みを指します。広告やダイレクトメールなど、リードを獲得するための手法はさまざまですが、そのすべてが購入や契約に前向きだとは限りません。いきなり営業担当者からアプローチをしても、断られる可能性は高いです。 リードナーチャリングによって段階的に見込み顧客の興味や関心を高めていき、一定レベルに達したリードだけを営業のアプローチ対象とすることで、効率的な営業活動が可能になります。特に商品やサービスを認知してから購入までのプロセスが長くなりがちなBotビジネスにおいて、長期にわたって見込み顧客をフォローし続ける仕組みであるリードナーチャリングは、効果が高いとされています。 リードナーチャリングを含むマーケティング活動全体の流れ マーケティング活動による見込み顧客の獲得や育成、絞り込みといったプロセスには、それぞれ以下の用語が用いられます。 リードジェネレーション リードナーチャリング リードクオリフィケーション 各プロセスの内容と役割を見ていきましょう。 リードジェネレーション リードジェネレーションは、リード(見込み顧客)を獲得するためのプロセスです。広告やダイレクトメール、展示会への出展、テレアポなどリードジェネレーションの手法は多岐にわたります。自社の商品やサービスを購入または契約している既存の顧客の特徴を整理し、類似した特徴を持つターゲット層に対してアプローチすることが一般的です。 本記事のテーマであるリードナーチャリングは見込み顧客を育成するプロセスですが、そもそも育成対象の見込み顧客が十分にいなければ大きな効果は見込めません。購入または契約に至る可能性の高い見込み顧客を多く集めるためには、最終的な購入率または成約率をもとにした質のよいリードジェネレーションが不可欠です。 リードナーチャリング リードナーチャリングは、前述の通りリード(見込み顧客)を育成し、自社の商品やサービスに対する興味や関心を高めるプロセスです。リードジェネレーションによって多数の見込み顧客を獲得しても、その段階で購入または契約への高い意欲を持っているケースは多くありません。特に、BtoBビジネスにおいては購入または契約の金額が大きく、また社内承認にかかる期間や手間も大きいため、すぐに成果につながることは少ないと考えられます。 各見込み顧客の興味や関心の度合いに合わせ、相手のニーズを満たす情報を提供することで徐々に意欲を高め、自社商品やサービスの魅力が伝わるように育成するのがリードナーチャリングの役割です。リードナーチャリングによって長期的に見込み顧客をフォローすれば、「獲得した見込み顧客を放置しているうちに他社に流れてしまった」といった機会損失も防ぐことができます。 リードクオリフィケーション リードクオリフィケーションとは、獲得や育成したリード(見込み顧客)を絞り込むプロセスです。見込み顧客に自社の商品やサービスを購入または契約してもらうには、最終的に営業部署からアプローチを行うのが一般的でしょう。しかし、どれだけ丁寧にリードナーチャリングを実施しても、すべての見込み顧客が自社の商品やサービスに高い関心を持ってくれるわけではありません。 リードナーチャリングを通して、メール開封率やセミナー参加率など、見込み顧客の反応を常に計測し、興味や関心の度合いをチェックします。そして、購入または契約の可能性が高い見込み顧客に絞り込んだうえで営業部署に受け渡すことで、営業担当者は限られたリソースのなかでも効率よく成果を上げることが可能になります。 リードナーチャリングが注目される背景 マーケティング活動のなかでもリードナーチャリングが注目されるようになった背景としては、以下の2点が挙げられます。 顧客による情報収集力の向上 成果につながらないリードの増加 それぞれ順番に見ていきましょう。 顧客による情報収集力の向上 まず、インターネットを中心とした顧客の情報収集力の向上が挙げられます。 顧客はさまざまな情報を自主的に取得できるため、せっかくリードを獲得しても、放置していると競合他社に流れてしまうといった状況が生まれました。商品やサービスの提供元によるアプローチを待つのではなく、インターネット上にある情報や評判などから社内での検討を進め、利用する商品やサービスを絞り込んでいる可能性があるためです。リードナーチャリングによって継続的に自社商品やサービスの魅力を伝えていかなければ、せっかく需要が高まったタイミングであっても、競合他社との比較検討から漏れてしまうかもしれません。 情報収集力の高い顧客に対しても適切に魅力を伝えるため、リードナーチャリングは欠かせないプロセスだといえます。 成果につながらないリードの増加 リードジェネレーションによる見込み顧客の獲得方法は多様化しており、結果として購入、または契約の意向の低いリードも増加しています。 広告経由でメールアドレスを入力しただけだったり、たまたま展示会で名刺交換をしただけだったりする場合、購入または契約に対する意欲が低いケースも少なくないでしょう。成果につながる見込みが低い状態の顧客に、営業担当者が時間や労力を割くのは非効率です。しかし、見込みが低いからといってそのまま放置していては、将来的にニーズが発生した際にチャンスを逃してしまいかねません。 リードナーチャリングを取り入れることで、獲得直後は購入または契約意向の低い見込み顧客に対しても継続的にアプローチし、適切なタイミングで営業部署に引き継ぐことが可能になります。 リードナーチャリングを実践するメリット リードナーチャリングを実践するメリットとしては、以下の3点が挙げられます。 リードを継続的にフォローできる 営業やマーケティング活動を効率化できる リードへのアプローチを最適化できる 順番に詳しく解説します。 リードを継続的にフォローできる リードジェネレーションで獲得したリードを継続的にフォローすることで、放置による機会損失を防げます。 リードナーチャリングがない状態では、リードジェネレーションで獲得したリードに営業を行ったあと、購入または契約の可能性が低い見込み顧客は放置せざるを得ない状況になることがあります。その後、需要が高まったタイミングでも再アプローチする機会がなく、結果として競合他社に流れてしまう可能性があります。 リードナーチャリングによって継続的かつ段階的にアプローチを続けていれば、獲得した見込み顧客を放置することなく、需要の高まりに合わせたコミュニケーションが可能となります。 営業やマーケティング活動を効率化できる リードナーチャリングを実施することで、営業やマーケティング活動全体を効率化できる点も大きなメリットです。 獲得した見込み顧客全体にいきなり営業をかけるのではなく、まずリードナーチャリングによって自社商品やサービスへの関心を高めます。これにより、リードジェネレーションによってコストをかけて獲得した見込み顧客のうち、購入または契約に至る顧客の割合を高められるでしょう。さらに、リードクオリフィケーションによって購入または契約意向の高い見込み顧客に絞り込んだうえで営業活動を行えば、効率的に成果に結びつけることが可能です。 リードナーチャリングを取り入れることで、営業やマーケティング活動全体が効率化されます。 リードへのアプローチを最適化できる リードジェネレーションでは、獲得した見込み顧客全体に対して同様のアプローチを行うのではなく、各見込み顧客の状態に応じて適切な手段をとります。 例えば、まだ購入または契約の意向が低い見込み顧客に対して自社製品やサービスの魅力をどれだけ伝えても、そもそもニーズがないという状態が想定されます。その場合、まずは見込み顧客が現状抱える悩みや課題に寄り添い、そのなかで自社製品やサービスにつながるニーズに気づいてもらうといった流れが必要になるでしょう。 逆に、すでに購入または契約の意向が高い見込み顧客に対しては、具体的な商品やサービスの使い方などを伝えることで、購入または契約に向けた不安や疑問を解消するほうが効果的だと考えられます。 見込み顧客の状況に合わせてアプローチを最適化できるのは、リードナーチャリングの強みです。 リードナーチャリングを実践するデメリット 一方、リードナーチャリングを実践することには以下のようなデメリットもあります。 成果が出るまでに時間がかかる 一定のリソースを投下する必要がある こちらも順番に見ていきましょう。 成果が出るまでに時間がかかる リードナーチャリングでは、獲得した見込み顧客にすぐに営業をかけるのではなく、時間をかけて自社商品やサービスに対する関心を高めていきます。獲得した見込み顧客からの購入や成約を最大限引き出せるというメリットがある一方、成果が出るまでには時間がかかるでしょう。 瞬間的な売上だけを見れば、いきなりすべての見込み顧客に営業をかけたほうが結果はよいかもしれません。しかし、それでは営業効率が悪くなるほか、まだ関心の低い見込み顧客に悪い印象を与えかねません。 関心が低い状態から自社商品やサービスの魅力を理解してもらうには、継続的な取り組みが不可欠です。リードナーチャリングで成果を出すには時間がかかることを理解し、事業計画に落とし込みましょう。 一定のリソースを投下する必要がある リードナーチャリングでは、見込み顧客の状態に合わせて多様なアプローチをとるため、人的リソースや予算が必要になります。 自社商品やサービスに対して、まだ高い関心がない見込み顧客にアプローチするには、その相手が現在抱える悩みや課題に寄り添うことが必要です。例えば、多くの見込み顧客が抱える課題をテーマにしたセミナーを実施し、そのなかで自社商品やサービスの魅力に触れれば、自然な形でニーズを高められるでしょう。しかし、セミナーの企画や案内、実施、開催後のフォローには手間も時間もかかります。 このように見込み顧客の状態に応じて適切なアプローチを行うには、一定のリソースが必要になる点を理解したうえでリードナーチャリングに取り組む必要があるでしょう。リソース不足を補う手段としては、マーケティングオートメーション(MA)や営業支援システム(SFA)などのITツールがあります リードナーチャリングの代表的な手法5選 ここでは、リードナーチャリングの代表的な手法として以下の5つをご紹介します。 メール オウンドメディア セミナー SNS Web広告 具体的にどのような使い方ができるのか、順番に見ていきましょう。 メール 獲得した見込み顧客のメールアドレスに直接情報を発信できるメールは、リードナーチャリングの重要な手段の一つです。 メルマガとして見込み顧客の多くが抱える悩みや課題をテーマにした情報を発信したり、自社商品やサービスの魅力を伝えたりすることで、一定割合の反応が得られるでしょう。 さらに、ステップメールという手法も活用できます。ステップメールでは、事前に準備したメールを複数回に分けて段階的に発信します。これにより、見込み客に情報を徐々にインプットし、自然に自社の商品やサービスへの関心を高めることが可能です。「ある課題をどのように解決すべきか」や「○○(自社商品・サービス)の使い方」などテーマを決め、見込み顧客の状態に合ったものを発信しましょう。 リードジェネレーションでメールアドレスを獲得しているなら、メールを通じたリードナーチャリングにはぜひ取り組むとよいでしょう。 オウンドメディア オウンドメディアとは、自社が運営するWebサイトを指します。見込み顧客にとって役立つ情報を提供することで、「この企業の情報は役に立つ」「この領域に知見のある会社だ」といった認識がなされ、将来的な購入や契約につながりやすくなります。 ブログ形式の記事の投稿に加え、動画やダウンロード形式のホワイトペーパーをオウンドメディア上にアップロードしておくのも効果的です。 セミナー 見込み顧客に対して、直接語りかけたりコミュニケーションをとったりできるセミナーは、リードナーチャリングにおける重要な手段の一つです。近年では、オンライン上のセミナーである「ウェビナー」が一般化しており、さらに活用の幅が広がっています。 セミナーの内容としては、顧客が抱える課題の解決をテーマにしたものや、自社商品やサービスの活用事例といったものが挙げられます。ただし、購入または契約の意向がまだ高まっていない見込み顧客に対して、宣伝に終始してしまわないよう注意しましょう。せっかくセミナーに参加してもらえたにもかかわらず、悪い印象を与える恐れがあるためです。 SNS SNSは企業によるマーケティングの手段として一般化しており、リードナーチャリングにも活用されます。自社アカウントをフォローしているユーザーに対して役に立つ情報を届けることで、ファンとしての育成や、購入または契約の意向の引き上げにつなげられるでしょう。ファンによって自社の投稿が拡散され、さらなる見込み顧客の獲得につながる可能性もあります。 Web広告 Web広告はリードジェネレーションによる見込み顧客の獲得だけでなく、リードナーチャリングにも活用できます。リターゲティング広告と呼ばれる仕組みを使えば、過去に自社のWebサイト、商品やサービスの販売ページを訪問していたユーザーに絞って広告を表示できます。すでに一度興味を持っている可能性のある見込み顧客が対象となるため、改めて商品やサービスの魅力を伝えることで購入または契約につながる可能性は高いでしょう。 リードナーチャリング実践の流れを7ステップで解説 それでは、リードナーチャリングの実践に向けて必要なステップを以下の7つに分けて見ていきましょう。 リードの情報を整理する カスタマージャーニーマップを作成する リードを関心度合いによって分類する 注力すべきリードを特定する 各リードへのアプローチ方法を決定する 各リードに適したコンテンツを作成する 施策を実行し、PDCAを回す 1.リードの情報を整理する まずは獲得したリードの情報を整理しましょう。リードジェネレーションにはさまざまな手法があるため、獲得した見込み顧客の情報がバラバラに管理されていることも少なくありません。名刺やメールアドレスなどを一つのデータにまとめ、一元管理することが大切です。 2.カスタマージャーニーマップを作成する 次に、見込み顧客が自社の商品やサービスを認知してから購入または契約するまでの流れを整理し、カスタマージャーニーマップを作成しましょう。各見込み顧客の状態が購入または契約に至る過程のどの段階にあるのか、適切に理解したうえでマーケティング施策を立案することが大切です。 3.リードを関心度合いによって分類する 作成したカスタマージャーニーマップに沿って、獲得済みのリードを分類しましょう。例えば、「Webサイトを通じて登録があった」や「電話での問い合わせがあった」、「セミナーに参加した」といった場合、それぞれの見込み顧客の状況に応じて関心度合いを評価し、最適なアクションにつなげていきます。 4.注力すべきリードを特定する 分類したリードのなかで、特に購入または契約を増やすにあたって、注力すべきリードを洗い出します。購入または契約に至りやすいリードの特徴が見えてくれば、より費用対効果の高いマーケティング活動が可能になります。 5.各リードへのアプローチ方法を決定する もちろん、注力すべきリードだけを追いかけるわけではありません。より多くの見込み顧客が最終的に購入または契約に至るよう、各リードの状態に応じたアプローチ方法の検討が必要です。メールやオウンドメディア、セミナーなど、リードの状況に合った手法を選択しましょう。 6.各リードに適したコンテンツを作成する 各リードへのアプローチ方法が決まったら、具体的なコンテンツの作成を開始します。メールであれば送信メッセージ、オウンドメディアであればコラム記事やホワイトペーパー、セミナーであれば説明資料など、それぞれコンテンツの作成が必要です。十分な社内リソースを確保したうえで準備を開始しましょう。 7.施策を実行し、PDCAを回す リードナーチャリングの取り組みを開始したら、各施策を実行しながらPDCAを回すことが大切です。施策実施後の反応率に変化は出たか、購入または契約につながったかなどを数値で追跡し、効果を検証しましょう。取り組みを改善し続ければ、いずれ大きな効果を生むようになります。 リードナーチャリングを成功させるポイント 最後に、リードナーチャリング成功のポイントとして、以下の2点を見ておきましょう。 KPIを設定する 部門間の情報共有を密にする KPIを設定する リードナーチャリングで成果を出すためにはPDCAを回す必要があるとお伝えしましたが、効果を検証するうえでは評価基準が欠かせません。各取り組みにおけるKPI(重要業績評価指標)を設定しておき、フォローすることが大切です。例えば、メールの開封率やカスタマージャーニーマップにおける次のステージへの移行率、最終的な購入率または契約率などが挙げられます。 部門間の情報共有を密にする リードナーチャリングはそれだけで完結するものではなく、リードジェネレーションやリードクオリフィケーション、その後の営業といった各プロセスとの連携が重要です。部門間でさまざまな情報を共有し合うことで、得た情報を施策の改善や商談に活用するなど、より適切な顧客対応につなげられます。 まとめ 本記事では、リードナーチャリングの概要や注目される背景、メリット・デメリット、代表的な手法をまとめてご紹介しました。 見込み顧客の育成を図るリードナーチャリングは、獲得した見込み顧客の継続的なフォローや営業やマーケティング活動の効率化といった観点で重要な取り組みです。成果が出るまでに時間がかかるほか、一定のリソースも必要になるものの、ポイントを押さえて取り組むことで大きなマーケティング効果をもたらしてくれるでしょう。 今回解説したリードナーチャリングのほか、マーケティングや営業領域にはさまざまな取り組みや手法があります。マーケティングや営業領域に課題を抱えている場合は、外部の専門家(プロ人材)の支援を受けるのも一つの方法です。状況に応じてさまざまな手段を取り入れながら、マーケティングや営業領域の強化を目指しましょう。
コホート分析とは?注目される背景や活用のメリット、使えるツールを紹介
ユーザー行動を追跡・分析する手法として、マーケティング領域でよく利用されるのが「コホート分析」です。コホート分析という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのように分析を進めるのか、どのような目的に合った分析手法なのか分からないという方も多いでしょう。 本記事では、コホート分析の概要や注目される背景、活用のメリット、ツールなどをまとめて解説します。コホート分析によってマーケティング活動の最適化を図りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。 コホート分析とは コホート分析とは何か、ここでは以下3つのポイントで解説します。 コホート分析の概要 コホート分析で重要な3つの効果 コホート分析が特に有効なビジネス 順番に見ていきましょう。 コホート分析の概要 「コホート」とは、同時期に生まれたり似たような経験をしたりすることで、同じような思考や行動の傾向がある集団を指す言葉です。マーケティングにおけるコホート分析では、分析対象となるユーザーを属性や条件によってグループ分けし、その後の行動を追跡・分析します。 各グループの行動を追うことで、マーケティング活動の最適化につながるヒントが得られるため、有効な分析手法として利用されています。特にWebマーケティングにおいては、Webサイトにアクセスした時期や時間、流入元のプラットフォームなどで細かく分けられるため、ユーザーグループごとの定着率やリピート率などを正確に算出することが可能です。 ベースとなる顧客行動データは、WebサイトやSNS、メールなどから収集したものが用いられます。近年ではツールの発展によって収集できるユーザーデータの種類が増えており、コホート分析の利用価値はますます高まっています。 コホート分析で重要な3つの効果 コホート分析は統計学の分析方法の一つとして用いられてきました。統計学でのコホート分析は、主に以下3つの効果によって人々の思考・行動が影響を受けると考えられています。 年齢効果:加齢やライフステージの移行に伴うもの 時代効果:過ごした時代の社会環境によるもの コホート(世代)効果:生まれ育った時期・環境によるもの 10代と40代、昭和生まれと令和生まれなど、人々が持つ思考・行動の習慣は年齢や過ごした時代、環境によって左右される部分が少なくありません。共通項を持つグループの特徴をつかむことで、行動・意識などからくる消費行動の調査に用いられてきました。 マーケティング手法としてコホート分析を用いる際は、「特定の期間にサービス登録を完了した」「同一週にアプリをダウンロードした」というように共通項を見出してグループ分けし、分析する場合もあります。自社ビジネスの最適化につながるよう、適切なグルーピングをすることが重要です。 コホート分析が特に有効なビジネス コホート分析が活用できる代表的なビジネスとしては、以下のようなものが挙げられます。 ECサイトの運用 サブスクリプションサービス Webサイトの運用 SNSの運用 共通する特徴は、顧客との接点が継続的にあることです。ECサイトであればリピート購入、サブスクリプションサービスであれば購読の継続など、顧客に長く利用してもらうことがビジネスの成長に欠かせません。そのため、コホート分析によってユーザー行動を追跡・分析し、リピート購買や購読の継続につながるようマーケティング活動を最適化します。 ユーザー行動の傾向を把握できていれば、変化を予測したうえでの対策が可能です。例えば、月額利用料無料キャンペーン時に登録したユーザーをグルーピングしておき、無料期間の終了とともにサブスクリプションサービスを解約されないよう、キャンペーンの案内やクーポンの付与などで継続を促すといった施策が考えられます。 コホート分析が注目される背景 コホート分析が近年注目される背景としては、以下の3点が挙げられます。 サブスクリプションサービスの浸透 オンラインショッピングの拡大 SNSやWebサイトの活用拡大 順番に見ていきましょう。 サブスクリプションサービスの浸透 いまやサブスクリプションサービスは誰もが使うものとなり、動画配信サービスやレンタルサービスなどさまざまな種類が登場しています。しかし、なかには事業の継続が難しく、サービスを終了するものもあります。 サブスクリプションサービスの事業を継続するには、いかに顧客をつなぎとめるかが重要です。そこで役立つのが、コホート分析による顧客行動の把握です。顧客離れの要因を特定し、適切なタイミングで的確なアプローチを行うことで、顧客満足度を維持し、継続契約につなげます。 そのためには、顧客を特徴ごとにグルーピングし、それぞれのグループに対して適切なアプローチを検討していく必要があります。購読開始後のどのタイミングでフォローするのが良いか、解約率が高いのはどのような特徴を持つ顧客グループなのかなどを分析することで、各顧客グループに適したアプローチの検討が可能になるでしょう。 また、一部の顧客グループにポジティブな変化が生じた場合は、その要因を特定し、その他のグループにも展開するといった活用も可能です。 オンラインショッピングの拡大 オンラインショッピングの拡大も、コホート分析が注目されている背景の一つと考えられます。 オンラインショッピングの事業を成功させるには、顧客のリピーター化が重要です。リピーターを増やすためには、コホート分析を通じて顧客の購買行動の傾向を把握し、マーケティング施策に落とし込むのが効果的です。具体的な手法としては、顧客グループごとにおすすめの商品をメールで案内したり、カート内に入ったまま購入されていない商品について、適切なタイミングでリマインドしたりといった方法が考えられます。 リピーターを育成してロイヤルカスタマーを創出できれば、売上の安定だけでなく口コミなどの効果も期待できるでしょう。オンラインショッピング事業に取り組むなら、顧客理解を深めるうえでコホート分析は大いに役立つはずです。 SNSやWebサイトの活用拡大 SNSやWebサイトがビジネスに広く活用されるようになったのも、コホート分析が注目されている一つの要因です。SNSやWebサイトの活用においては顧客との継続的な接点の確保が重要であり、顧客をグルーピングしたうえで行動傾向を把握するコホート分析が役立ちます。 例えば、SNS上でフォローした時期やフォロー期間によってユーザーをグルーピングすれば、商品の購入やサービスの契約につながりやすいタイミングを把握できます。適切なタイミングでプッシュすることで、マーケティング施策の効果を高められるでしょう。 コホート分析を行う3つのメリット コホート分析を行う主なメリットは、以下の通りです。 ユーザー維持率の向上につなげられる 売上予測の精度が上がる マーケティング施策の効果検証ができる コホート分析は現状の維持・改善に役立つだけでなく、今後のビジネスに役立つ基礎データの収集にも活用できます。それぞれのメリットについて見ていきましょう。 ユーザー維持率の向上につなげられる ユーザーの維持率を高めたい場合は、コホート分析でユーザー離れの要因やタイミングを特定することで維持率向上につながるヒントを得られます。サブスクリプションサービスの契約期間やSNSのフォロー期間、商品の定期購入期間などを顧客グループごとに把握することで、必要なアクションのタイミングがつかめるでしょう。 もっとも離脱が発生しやすいタイミングやその理由を把握できれば、別の顧客グループが同じ状況に陥る前に対策をとれます。例えば、サブスクリプションサービスの契約開始から3か月目に解約が多く発生している場合は、新しく購読を開始したグループに対して、3か月目の利用が終了する少し前にクーポンを配布するなど、予防的な対策が可能です。 売上予測の精度が上がる コホート分析で顧客グループごとの行動傾向を明らかにできれば、精度の高い売上予測が立てられるようになります。例えば、ECサイトであれば初回購入後のリピート購入について、購入率やタイミング、購入金額を予測できます。また、サブスクリプションサービスであれば初回購読からの継続期間について、精度の高い予測ができるでしょう。 収集したデータは、短期的な売上の予測はもちろん、類似のサービスを新たに立ち上げる場合などにも活用できます。事業計画の立案や必要なリソースの確保に役立つはずです。 マーケティング施策の効果検証ができる コホート分析は、マーケティング施策の効果検証にも活用できます。例えば、キャンペーンをきっかけに利用を開始したユーザーの購読継続率を検証したり、同じ属性を持つ複数のグループに対して異なるタイミングでクーポンを配布し、反応率の良いタイミングを見極めたりといった使い方ができます。 マーケティング施策は、初回の実施で計画通りの効果が出ることは多くありません。コホート分析によって効果を検証し、改善を繰り返すことで、徐々にマーケティング施策の効果を高めていくことが可能です。 コホート分析に使えるツール ここでは、コホート分析に使える代表的なツールとして、以下の2つをご紹介します。 Googleアナリティクス(GA4) エクセル Googleアナリティクス(GA4) Googleアナリティクスは、Googleが提供しているWebサイトのアクセス解析ツールです。Webサイトを訪れたユーザー数が把握できるだけでなく、得られたデータを活用してさまざまな分析ができます。 例えば、自社サイトを訪れたユーザーを年齢や地域、性別といったグループに分けたうえで、コンバージョン率やサイトの再訪問率を比較すれば顧客の詳細な分析が可能です。成果の出ている顧客グループを分析し、マーケティング活動に落とし込めば、顧客の獲得効率を高められるでしょう。 エクセル エクセルに顧客のデータを入力し、グループごとに分析することも可能です。例えば、サブスクリプションサービスの利用開始日と解約日を入力し、その差をエクセル関数で算出します。特定の条件で顧客をグループ分けし、解約までにかかった平均日数を比較すれば、顧客グループごとの特徴を把握できます。 専門的なツールが必要なく、簡単な関数だけで分析できるため、前述のGoogleアナリティクスなどに精通していない方でもコホート分析を活用できるでしょう。 まとめ 本記事では、コホート分析の概要や注目される背景、活用のメリット、ツールなどをまとめて解説しました。 Webマーケティングが一般化した現代において、顧客をグルーピングしたうえで追跡・分析するコホート分析は活用の機会が増えています。特に、ECサイトやサブスクリプションサービスなど顧客との継続的な接点が重要なビジネスにおいては、コホート分析に基づくマーケティング施策の最適化が大きな効果を発揮するはずです。まずはGoogleアナリティクスやエクセルなどの身近なツールを使い、コホート分析を取り入れてみてください。 マーケティング領域には今回解説したコホート分析をはじめ、さまざまなフレームワークが存在します。抱える課題によって適切に使い分けることで、課題の特定や施策の効果を高められるでしょう。一方、テクノロジーの発達によってマーケティング活動の領域は広がっていることから、難易度も高くなり、求められる知見やノウハウも時代の変化と共に多様化していることも事実です。 マーケティングの課題を解決するには、外部の専門家(プロ人材)の支援を受けるのも一つの方法です。状況に応じてさまざまな手段を取り入れながら、マーケティング領域の強化を目指しましょう。
RFM分析とは?メリットや使い方、課題・注意点をまとめて解説
マーケティング施策の効果を高めるには、顧客それぞれの購買傾向に合ったアプローチを行う必要があります。このとき役立つのが、最終購入日・購入頻度・合計購入金額で顧客を分類する「RFM分析」です。 本記事では、RFM分析の概要やメリット、使い方を解説します。RFM分析を施策に取り入れたいと考えている方、マーケティング施策にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。 RFM分析とは RFM分析とは3つの指標に基づいて顧客をグループ分けする分析手法で、R・F・Mはそれぞれ以下の指標の頭文字から取られています。 Recency:最終購入日 Frequency:購入頻度 Monetary:合計購入金額 Recencyはその顧客が直近でいつ購入したのかによってグループ分けを行い、最終購入日が近い顧客ほど高評価とします。Frequencyとは、これまでの購入回数です。リピート購入率が高い顧客は優良顧客であると評価します。Monetaryはこれまでの合計購入金額を指し、金額が高い顧客を高評価とします。 それぞれの指標におけるグループ分けの基準やグループ数は、商品の購入サイクルや価格帯などに応じて設定しましょう。RFM分析は、顧客ID・購入日・購入金額などを含んだ購入履歴データがあればExcelでも行えます。 RFM分析を行う3つのメリット RFM分析には、以下3つのメリットがあります。 ビジネスの現状や課題を把握できる 顧客へのアプローチを最適化できる 注力すべき顧客を絞り込める それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。 ビジネスの現状や課題を把握できる 顧客を3つの指標でグループ分けをすることで、顧客の購買傾向や優良顧客の人数などビジネスの現状を可視化できます。例えば、R・F・Mのすべてが高評価である優良顧客は全体の何割を占めているのか可視化することで、これまでのマーケティング戦略の成果が見えてきます。 優良顧客の割合が高ければ一定の成果が出ていると判断できますが、逆に少数の優良顧客に依存しているという事実が明らかになれば、その他顧客の育成や休眠顧客の掘り起こしが優先課題になるでしょう。 このようにRFM分析を使えばビジネスの現状や課題が明らかになるため、適切なマーケティング戦略の検討に役立ちます。 顧客へのアプローチを最適化できる 顧客の購買傾向によって、最適なアプローチの方法は異なります。例えば、購入頻度や購入金額の高い優良顧客には特別優待や限定キャンペーンの案内など、他社への流出を防ぐための取り組みが必要です。 また、「購入頻度と合計購入金額は高いにもかかわらず、最終購入日から期間が空いている」という顧客グループは休眠顧客化していると考えられ、再び購入してもらうためのアプローチが必要だと判断できます。 同じアプローチをしても、顧客の状況によって成果は変わります。RFM分析で顧客をグループ分けすることで、それぞれのグループに対する最適なアプローチの方法を検討しやすくなるでしょう。 注力すべき顧客を絞り込める 企業の人員やコストには限りがあるため、マーケティング活動は効率化が求められます。その際に役立つのが、RFM分析による「注力すべき顧客の絞り込み」です。例えば、休眠顧客にアプローチする際には、合計購入金額や購入頻度が低い顧客よりも、かつて優良顧客だった顧客にアプローチするほうが効果を見込めると考えられます。 現時点での優良顧客に対して、継続利用してもらうための施策を実行することも重要です。優良顧客の割合が高いなら、休眠顧客の掘り起こしよりも優良顧客の満足度向上に注力するほうが高い成果を得られるケースもあります。 RFM分析のグループ分けによって注力すべき顧客グループを絞り込めば、限られたリソースでより高い成果を目指せます。 RFM分析の流れを5ステップで解説 RFM分析は最終購入日・購入頻度・合計購入金額を算出してグループ分けを行うのが基本的な手順です。マーケティング活動に活かす際には、以下のステップを参考にできます。 分析の目的を明確にする データを集計・整理・入力する データを分析する 課題を特定する 改善策を立案・実行する それぞれのステップで取り組む内容について、順番に解説します。 分析の目的を明確にする まず、RFM分析の目的を明確にしておきましょう。目的が不明確なまま分析を進めると、適切なデータを集められなかったり、分析のやり直しが必要になったりするため、効率的ではありません。 RFM分析の実施を検討しているなら「昨年より売上が減少した」「実施中のマーケティング施策の成果が上がらない」など、きっかけとなる課題があるはずです。自社が抱える課題から仮説を立て、その検証にRFM分析を活用するのがよいでしょう。 実際の分析に取り掛かる前に分析の目的を明らかにしておくことで、集めるべきデータやグループ分けの基準を適切に設定できます。 データを集計・整理・入力する 分析の目的を明確にしたら、必要なデータを集めてRFM分析の準備を整えます。 RFM分析では、顧客ID・購入日・購入金額などの情報が揃った購入履歴データが必要です。これらのデータを集計すれば、顧客ごとの最終購入日・購入回数・合計購入金額が分かります。また、購入商品や顧客の性別・年齢などのデータがあればより詳細な分析が可能になるため、目的に応じて必要なデータを揃えましょう。 分析の目的によっては「最終購入日が1年以内」「購入回数が一定以上」など、対象データの絞り込みが必要です。また、複数のシステムにデータが分散している場合は、集計できるようにデータを集約するところから始めます。 データを分析する 分析対象のデータが揃ったら、実際にRFM分析を進めます。エクセルや専用の分析ツールを用いて、顧客をグループ分けしていきましょう。 グループ分けの方法としては、以下のようにR・F・Mのそれぞれの値に応じてスコアを設定する方法があります。 スコア 最終購入日 購入回数 合計購入金額 5 1週間以内 20回以上 20万円以上 4 1か月以内 10回以上 10万円以上 3 3か月以内 5回以上 5万円以上 2 半年以内 2回以上 3万円以上 1 1年以内 1回のみ 3万円未満 _ 顧客ごとにR・F・Mそれぞれのスコアを合計して総合スコアを算出し、グルーピングしましょう。例えば、「総合スコア12以上」「総合スコア6〜11」「総合スコア5以下」というように顧客をグループ分けします。 _ 上記の基準とスコアは一例であるため、商品の購入サイクルや価格帯、分析対象データの期間などに応じて適切な値を設定しましょう。 課題を特定する 顧客のグルーピングを終えたら、その結果から自社が抱える課題を特定します。それぞれのグループの規模や推移を見ることで、以下の例のようにさまざまな課題が見えてきます。 優良顧客グループの人数が少ない、または減っている 優良顧客グループのなかで最終購入日から期間が空いている顧客が目立つ 休眠顧客が増えている 優良顧客グループの直近の購入金額が低下傾向にある 課題を正確に特定することで、現状改善に向けて必要な施策が明らかになります。課題の特定が不十分な状態では的外れな改善策を採用してしまう可能性があるため、十分な分析・検証を行いましょう。 改善策を立案・実行する 課題を特定したら、現状を改善するための施策を検討します。 例えば、優良顧客グループの規模が小さいなら、次いで総合スコアの高いグループを優良顧客に引き上げるための施策を準備します。リピート顧客が少ない場合は、二度目の購入に使えるクーポンの配布などが考えられるでしょう。 また、改善策を実行して終わりではなく、適切に効果検証を行うことも重要です。マーケティングの成果を高めるには、実行と効果検証によってPDCAサイクルを回していく必要があります。 RFM分析の課題・注意点 マーケティング戦略の策定に役立つRFM分析ですが、取り組む際には以下のポイントに注意が必要です。 商品の品目が考慮されない 集計の期間・時期に結果が左右される 順番に詳しく見ていきましょう。 商品の品目が考慮されない RFM分析は最終購入日・購入頻度・合計購入金額を分析する手法のため、顧客が買った商品の品目は考慮されません。そのため、「ライフステージの変化に合わせて提案する商品を変える」など、商品を軸としたマーケティングに活用するのは難しいという課題があります。 商品の品目を考慮した分析を行いたい場合は、RFM分析にアイテム(Item)の項目を加えたMRFI分析や、カテゴリ(Category)の項目を加えたRFMC分析がおすすめです。 集計の期間・時期に結果が左右される RFM分析は集計する期間や時期によって、得られる結果が変わります。例えば、購入頻度が低い商品や発売から期間が経っていない商品、季節によって販売数量が大きく異なる商品などは十分なデータが揃わず、有効な分析結果を得られない可能性があります。 また、集計データにセール期間が含まれている場合にも注意が必要です。「セール時期にだけ購入している顧客」のほうが「日常的に購入している顧客」よりもスコアが高く出るケースがあり、本当の優良顧客を見逃してしまう可能性があります。 まとめ 本記事では、RFM分析の概要やメリット、使い方を解説しました。RFM分析によって顧客をグルーピングすれば、それぞれのグループに最適なアプローチを行ったり、注力すべき顧客を絞り込んだりできるため、効率的なマーケティングが可能になります。 マーケティング領域には、今回解説したRFM分析をはじめ、さまざまなフレームワークが存在します。抱える課題によって適切に使い分けることで、課題の特定や施策の効果を高められるでしょう。一方、テクノロジーの発達によってマーケティング活動の領域は広がっていることから、難易度も高くなり、求められる知見やノウハウも時代の変化と共に多様化していることも事実です。 マーケティングの課題を解決するには、外部の専門家(プロ人材)の支援を受けるのも一つの方法です。状況に応じてさまざまな手段を取り入れながら、マーケティング領域の強化を目指しましょう。
コンコルド効果とは?ビジネスでの活用方法や対応策をわかりやすく解説
「ここでやめるともったいない」「せめて元をとりたい」、このような考えから、一度決めた行動がやめられなくなった経験を持つ方もいるでしょう。 それは「コンコルド効果」と呼ばれる心理状態に陥ったことが原因かもしれません。 コンコルド効果の影響を受けると合理的に判断しづらくなり、ビジネスや日常生活において大きな損失を被る可能性があります。 今回は、コンコルド効果の事例やビジネスでの活用方法、対策方法を解説します。 コンコルド効果とは コンコルド効果とは一体どのような心理状態で、なぜ対策を講じておく必要があるのでしょうか。ここでは、コンコルド効果が私たちに与える影響、コンコルド効果と同様の心理状態を指すサンクコスト効果との関係性を解説します。 損をするとわかっているのにやめられない心理的傾向のこと コンコルド効果とは、投資を続けると損失が出るとわかっていながらこれまで投資した分を惜しむあまり、やめられない心理的傾向を指します。 コンコルド効果という名前は、超音速旅客機コンコルドの開発からきています。イギリスとフランスが共同開発に着手し、一般的なジェット旅客機と比べて移動時間が半分になる超音速旅客機がコンコルドでした。 コンコルドは燃費の悪さなどの問題から、運用を開始しても採算が取れないと開発段階で判明しました。すぐに開発を中止すれば損失を抑えられると予測できたにもかかわらず、開発は継続されました。 中止しなかった理由は、それまで投入してきた膨大な資金や時間、労力を無駄にしたくないという心理が働いたためです。 結果、ビジネスは失敗に終わり、膨大な借金を背負った開発企業は倒産に追い込まれました。 このことから、損失が増えるとわかっていながら費やした時間や費用を惜しんでやめられない心理的傾向を、コンコルド効果と呼ぶようになりました。 コンコルド効果とサンクコスト効果 コンコルド効果と同様の心理状態を指すのが「サンクコスト効果」です。 すでに費用を支払っており、どのような方法でも取り返せないコストのことを「サンクコスト」といい、「埋没費用」とも呼ばれます。 たとえば、ある事業を始めるために費やした資金や労力は、その事業を途中でやめたとしても返ってくることがないため、サンクコストといえます。 サンクコスト効果とは、このまま続けたら損失が拡大すると分かっていても「サンクコストを無駄にしたくない」と執着を捨てられず、引き返せない心理状態です。 コンコルド開発にまつわるエピソードは、サンクコストを惜しむあまり、膨大な損失を出してしまった事例として有名です。 身近なコンコルド効果の例 次に、私たちの身近なところで見られるコンコルド効果の例を紹介します。 恋愛 恋愛中は、コンコルド効果に陥りやすいです。たとえば「この人と交際していても幸せになれない」と分かっていても、これまでにかけた時間やお金が惜しくて関係を断ち切れないケースはコンコルド効果です。 どれほど努力しても恋愛関係に発展しないであろう相手に対し、いつまでも諦めきれないケースもコンコルド効果と言えるかもしれません。 どちらも、状況が好転する見込みはないと分かっていながら、引くに引けなくなってしまった顕著な例です。 ソーシャルゲーム ソーシャルゲームにも、コンコルド効果の影響を受けやすい要素があります。 その1つが、ゲーム内で使用できるアイテムやキャラクターが手に入る「ガチャ」システムです。無料のものもありますが、よりレアなものを手に入れるためには課金が求められるケースがあります。 ガチャは、数多く回せば狙ったものが手に入るわけではありません。一方で、一定の確率でレアなものが出るため、やめられない心理状態に陥りがちです。 たとえば、これまで5,000円をガチャにつぎ込んだにもかかわらず狙ったアイテムが手に入らない場合、冷静な状態であれば「確率が低いから、もうやめよう」と考えられるはずです。しかし、コンコルド効果に陥ると「ここまでお金をつぎ込んだから、これからレアアイテムが当たるはずだ」「ここでやめたら今まで使ったお金が無駄になる」と考えてしまいます。 結果として、さらに1万円、2万円とお金をつぎ込み、損失が増えてしまう結果となってしまうのです。 パチンコ・ギャンブル パチンコやギャンブルは返ってくる見込みが低いと言われており、リスクが高いことで知られています。 しかし、すでに多くの資金をつぎ込んでいると冷静な判断ができなくなり「ここまでつぎ込んだ分を取り戻そう」と考え、やめられないということが起こり得ます。 ギャンブルは的中すればお金が入るため「うまくいけばこれまでの損失を埋め合わせられる」という考えになりやすいです。そのため、負けが続いたにもかかわらずお金を借りてまでギャンブルを続けたり、一発逆転を狙って確率の低いものに賭けてしまったりするケースもあります。 ビジネス・事業 コンコルド効果の語源にもなったビジネスのように、事業でも引くに引けない心理状態に陥りやすいケースがあります。 事業を始めるためには多くの時間や労力、人的資源などのコストがかかるため、撤退や縮小を決断するのは容易ではありません。特に、大変な思いをして立ちあげた事業や社運を賭けた一大プロジェクトとなると、利益が出ないと分かっていても続けたい気持ちが働きやすくなります。 また、多くの事業は利益が出るまでに時間がかかるため「もしかしたら状況が好転するかもしれない」と考えてしまうこともあるでしょう。 ビジネス・事業は、自分だけでなく同僚や部下も巻き込む可能性があるため、サンクコストを無視した判断がしにくく、コンコルド効果の影響を受けやすいです。 コンコルド効果の対策方法 これまで紹介してきたとおり、コンコルド効果には我々の正常な判断を妨げる力があります。では、コンコルド効果の影響を受けないようにするためには、どのような対策が有効なのでしょうか。コンコルド効果に対する有効な対策方法を紹介します。 損切りをする 損切りとは、値下がりした株式などを売却してこれまでに費やした時間や労力などの損失を確定させることを意味します。損切りはこれ以上の損失を生み出さないために行われ、ロスカットやストップロスとも呼ばれることもあります。 たとえば、購入した金融商品の価値が下がって大きな含み損が出ている場合、売りに出すことで価値がさらに下がった場合の損失を防ぐことが可能です。損失が出ることに変わりはないものの被害を最小限に抑えれば、今から費やす時間や労力を、利益が期待できる別のものに使えるでしょう。 損切りは自分の失敗や間違いを認めることにもなり、なかなか踏み出せないかもしれません。その失敗を損失ではなく「経験」や「授業料」ととらえ、積極的な方向に転換する切り替えが大切です。 損益計算をする 損益計算(会社の商品・サービスなどの売上によって得た収益から経費を差し引いた額を計算すること)をして、「このまま続けるとどれほどの損失が出るのか」と数値化することは、コンコルド効果対策として有効です。 コンコルド効果の影響下にいると「これから状況が好転するかもしれない」と考えてしまい、正常な判断を下せないケースが多いです。サンクコストを惜しむ気持ちから、事業の撤退や縮小に踏み切れない場合もあるでしょう。 しかし、損益計算によって損失を予想し数字面から現実を直視すると、冷静で客観的な視点を取り戻せます。 ゼロベース思考の徹底 ゼロベース思考とは、これまでの知識や経験に囚われず、ゼロから物事を考える思考法です。 ゼロベース思考では、今までのサンクコストをすべて切り離して考えます。たとえば、事業の継続について考える場合、これまでのサンクコストに縛られず「コストを回収したい」という思いから解放されることで、白紙の状態から物事を考えられます。 ゼロベース思考を実践することで「せっかく立ち上げたこの事業をどうするか」ではなく、「そもそもこの事業は必要なのか」という原点まで立ち戻り検討することが可能です。 ルールを設定する コンコルド効果に惑わされずに冷静な判断を下すためには、事前のルール設定が役立ちます。損切りをしたり、経済活動をやめたりするタイミングの基準となる金額・時間を事前に決めておきましょう。 たとえば、ソーシャルゲーム内のガチャであれば「目当てのものが手に入らなくても2,000円以上は使わない」と金額を設定する、恋愛なら「年内に進展がなければあきらめる」と期限を決めるなど、事前に決めていた基準に達した時点でやめるようルールを設定します。ルールがあれば、判断に迷わず損失は最小限に抑えられるでしょう。 第三者に相談しアドバイスをもらう 客観的な視点をもつ第三者にアドバイスをもらうことも、コンコルド効果の抑止に役立ちます。コンコルド効果に陥った状態では、主観が強くなり冷静な判断を下しにくいです。そのような場面でも第三者に相談することで、コンコルド効果に惑わされることなく落ち着いた判断ができるでしょう。 ビジネスシーンでは、事業に参加していない部署外の社員や社外の専門家やコンサルタントに相談するという手法があります。 まとめ コンコルド効果の影響下にいると、日常生活やビジネスにおいて、冷静な判断をできなくなる可能性があります。コンコルド効果という心理状態の存在を知っておくこと、対策方法も理解しておくことは、コンコルド効果発生の抑止につながるでしょう。 自身の業務や携わる事業を振り返り、コンコルド効果が働いていないかを考えてみるのもおすすめです。
ペルソナ分析とは?分析方法や企業の活用事例を解説
企業のマーケティング活動を考えるなかで「ペルソナ分析」という言葉を耳にすることがあるでしょう。 当コラムではペルソナ分析を知りたいビジネスパーソンに向けて、ペルソナ分析の概要や実施する目的に始まり、メリットやデメリット、具体的な事例まで紹介します。 ペルソナ分析とは はじめに、ペルソナ分析の概要を理解しましょう。ペルソナの意味やターゲットとの違いを解説します。 そもそもペルソナとは?ターゲットとの違いは? 「ペルソナ」とは、商品やサービスの購入者となる顧客像を指します。ペルソナ分析とは、商品・サービスを購入する顧客像を具体的にイメージできるよう、詳細に作り出すマーケティングフレームワークのひとつです。 似たような言葉に「ターゲット」があります。ペルソナもターゲットを設定する点は同じです。しかしターゲットとペルソナは、顧客像をどこまで具体的にするかが異なります。 ターゲットが顧客像を特定の「集団」や「属性」程度でまとめたものであるのに対し、ペルソナ分析では、より顧客像を突き詰め、できるだけ人物像を1人に絞り込むところまで設定します。たとえば、ターゲットの顧客像は以下のような設定になります。 30代 男性 会社員 既婚 一方でペルソナの場合は、以下のようにさらに細かく具体的に顧客像を設定します。 山田 太郎 男性 35歳 30歳の妻 3歳と5歳の子どもが2人 年収700万 マンション暮らし 趣味はゴルフ 老後を意識し始め、資産形成に興味がある 両親は地方在住 友人は大学時代からの付き合いが数名 このように、ペルソナを分析する場合、絞り込んだ人物がどのような状況で、どのような趣味嗜好をもち、どのような価値観の持ち主か、といったところまで深く設定します。さまざまな要素が含まれることが、ターゲットとの根本的な違いです。 ペルソナ分析をする目的 ペルソナ分析をする目的は、具体的な顧客像を定め、より精度の高い顧客視点での商品やサービスの開発・販促を行うためです。 ペルソナ分析をすると具体的な顧客像がわかり、商品開発やマーケティング施策の課題の解決策や、響くキャッチフレーズが考えやすくなります。 たとえば、インターネット広告では精微なターゲティングの配信が可能なため、ペルソナ分析をして顧客像を明確にすることで、より効果的な広告を配信できます。 このように、ペルソナ分析をすると効果的な商品・サービス開発やマーケティング施策を実行できるでしょう。 ペルソナ分析のメリット ペルソナ分析のメリットの代表例としては、以下の3つがあります。 顧客視点で施策を考えられる プロモーションの精度を高められる 社内の共通認識、判断軸をもてる それぞれを解説します。 顧客視点で施策を考えられる ペルソナ分析をすると、顧客視点で具体的な施策を検討しやすくなります。なぜなら、ペルソナ分析で具体的な顧客像を設定するため、ニーズや購入の検討タイミングなど、顧客の考えや行動をイメージしやすくなるからです。 顧客の考えや行動をイメージできれば、ニーズを明確化し効果的な商品・サービスの開発がしやすくなります。このようにペルソナ分析をして顧客視点で施策を考えられると、より効果的な施策を練られるようになります。 プロモーション精度を高められる プロモーションの観点からも、ペルソナ分析は有効です。「プロモーション」とは、商品やサービスの認知度を上げて購入に繋げるための活動を指します。プロモーションを考える際には、顧客がどのような形で情報に接し、どのような形で興味をもち購買に至るのか把握する必要があります。 たとえば、40代男性をターゲットにしたケースを考えてみましょう。都心在住の会社員と設定した場合、通勤時に電車のつり革広告や駅中広告に接する機会が多いと考えられます。反対に郊外在住と設定した場合、車通勤の可能性が出てくるため、前述の広告に接する機会が少ないかもしれません。 以上のように、ペルソナ分析を行い顧客像が詳細になるほど、より効果的なプロモーションがしやすくなります。 社内の共通認識、判断軸をもてる ペルソナ分析をすると、社内で商品やサービスの顧客像に関する共通認識、判断軸をもちやすくなります。 「マーケティング」といっても、営業、販促担当、広報、製品開発、カスタマーセンターなど、多くの部門が関わっています。そのため大まかなターゲット設定のみで話を進めてしまうと、一人ひとりが思い描く顧客像にズレが発生しかねません。 ペルソナ分析をして自社の顧客像を明確化、共有化しておくことで、それぞれの判断のズレを抑えやくなります。プロジェクトに関わるすべての人が共通認識を持ち議論できれば、正しい判断がしやすくなり、意思決定も迅速にできるでしょう。 ステークホルダーが多くなるほど、自社の顧客像が分散されがちです。誤った方向に進みそうな場合でも、軌道修正できるようにペルソナ分析をおこない、首尾一貫したマーケティング活動を進めていきましょう。 ペルソナ分析のデメリット ペルソナ分析のデメリットとして代表的な例は、以下の2つがあります。 時間がかかる 誤ったペルソナ像になる可能性がある 時間がかかる ペルソナ分析は顧客像をよりリアルな形に近づけるためには、時間がかかります。 単純にターゲット設定と比べても設定すべき項目が多いうえに、精緻な像に近づけるためアンケートやインタビューといった調査をおこなうケースも少なくありません。さらに、コストと時間をかけてペルソナ設定を行っても、時間が経過してマーケット状況が変われば、再度ペルソナを設定する必要も出てきます。 ペルソナ分析は実施やその後の更新に手間と時間がかかることを認識しておく必要があります。 誤ったペルソナ像になる可能性がある 収集する情報の正確性が欠けていたり、データに基づくことなく想像や思い込みでペルソナを考えてしまったりすると、誤ったペルソナ像を作り上げてしまう可能性があります。 ペルソナ分析を誤ってしまうと、プロモーション活動に悪影響を及ぼす可能性があります。ペルソナ分析の結果に基づいてプロモーション活動をおこなう場合、ペルソナ分析により作った人物像が実態と乖離していると顧客に的外れなアプローチを行うことになり、コストの浪費につながりかねません。 このような事態に陥らないためには、適切な手法で分析し、情報に不足がないように努める必要があります。正しいプロモーション活動をするためにも、ペルソナ分析は丁寧に進める必要があります。 ペルソナ分析の方法 ペルソナ分析の方法を解説します。これから紹介するステップで進めると、正確な情報に基づいたペルソナ分析ができるでしょう。 STEP1 ある程度のターゲット層を決める 最初に、セグメント別に大枠のターゲット層を決めましょう。特定の商品を購入するのはどのような人物なのか、想像してみるのがおすすめです。 既存商品の購買情報をヒントにするとターゲットを想起しやすいため、社内でデータを収集しましょう。自社内のデータが乏しければ、総務省や経済産業省、その他研究機関、業界団体などが公表しているデータを入手することもおすすめです。 その後、ターゲットをさらに絞り込み具体化し、自社で開発した商品・サービスを購入しやすい顧客像のグループを複数作ります。初期の段階で顧客像を具体的に絞りすぎると、実態からかけ離れたペルソナを設定してしまう可能性があるので注意しましょう。 STEP2 アンケートを実施する ターゲット層を決めた後は、アンケートを実施します。アンケートの対象は、STEP1で作成したグループに分けて実施することが望ましいです。サービス・商品によって異なりますが、アンケートの代表的な項目は以下のとおりです。 名前 性別 職業 年齢 既婚、未婚 年収 趣味 よく使用するSNS 消費行動 よく使用するお店 よく見るメディア 上記はあくまでも一例にすぎません。自社の製品では、他にどのような項目があるとプロモーション活動がしやすいか検討してみましょう。アンケートの手法にはさまざまありますが、この段階のものであれば、単一選択型のようなシンプルなものを心がけましょう。複雑なアンケート形式にすると、回答率が低下する可能性もあるので注意してください。 STEP3 アンケート結果をグループ分けする アンケートにより明確になった情報から、共通項目があるグループに分けます。グループ分けをしたら、そのなかからインタビューをする対象者を決めましょう。グループごとにインタビューをする人物を決めますが、複数人選ぶようにしてください。 STEP4 インタビュー調査をする 次に、インタビュー調査を実施しましょう。インタビュー調査は、ペルソナ分析のなかでも非常に重要な段階です。これまでは、あくまでデータ上でしか顧客ニーズに触れていませんが、ここでは直接顧客の意見に向き合うことになります。 そのため、インタビュー調査の際には、何を聞くべきか十分に検討する必要があります。年齢や家族構成など基本情報から、趣味や仕事の役職など、さまざまな情報を聞けるように準備しましょう。 STEP5 ペルソナを決定する インタビュー調査の結果から、ペルソナを決定します。インタビューの設問項目に分けて整理していくと、ペルソナ設定がしやすくなります。 基本情報 仕事について 趣味について このように、分野別に考えていきます。ある程度具体的なペルソナが決定したら、ミスや漏れがないか念入りに確認しましょう。確認作業を怠らずに実施することで、より精度の高いペルソナを設定できます。 STEP6 商品購入までのストーリーを作る 設定したペルソナの顧客がどのように商品を購入するか、ストーリーを作りましょう。購入までのストーリーを作ると、マーケティング活動の進め方を検討しやすくなります。自社の製品を知り、興味を持ち、紆余曲折を経て購入に至ったプロセスを明確に記載してください。 ペルソナ分析をして購買までの具体的なストーリーを描くと、より効果の高い広告施策を検討できるようになります。 ペルソナ分析の具体的な事例を紹介 ここからは、ペルソナ分析の結果をマーケティング活動に活かしている企業の事例を紹介します。それぞれの事例から理解を深め、ペルソナ分析の具体的な活用イメージを掴みましょう。 飲料メーカーの事例/A社 A社の発泡酒は綿密なペルソナ分析が功を奏し、安定した売上の貢献につながった事例です。 具体的には、過去の定量的なデータ分析から、ペルソナを「30代後半以上の男性」にフォーカスし、消費者へライフスタイルや目標など内面に関するインタビュー調査を実施しました。質問の半分は製品とは直接関係ない質問だったそうですが、インタビューの記録はペルソナづくりの定性的な情報になりました。 共通項をまとめることで具体的なペルソナを設定でき、それを基に商品名やパッケージデザインなどの商品開発を進めた結果、ヒット商品誕生につながりました。 IT業界の事例/B社 B社は、部門やプロジェクトごとに個別のペルソナを設定していました。過去に制作されたペルソナを他の部署や他のプロジェクトでも参考にしようと試みましたが、メンバーからの共感が得られず再活用できないため、非効率な状態でした。 そこで、メンバーからの共感と業務の効率化を両立するため、部門間で共有できるようなペルソナを作成するプロジェクトを立ち上げます。 その結果、部門ごとにバラバラにペルソナを設定し活動していた従業員が連携し、ペルソナに響くような商品開発やサポート体制を考えるようになりました。 B社のように、ペルソナを設定することで従業員の業務に対する姿勢の改善につながるケースもあります。 ペルソナ分析の注意点・失敗例 ペルソナ分析をする際の注意点・失敗例は以下のとおりです。 注意点:目的を明確にする 注意点:担当者、関係者全員にイメージしやすいよう意識する 失敗例:ペルソナ分析の深掘りが甘い 失敗例:ペルソナを理想像にする 注意点や失敗例を理解すると、実際にペルソナ分析をする際に失敗するリスクを低減できます。ペルソナ分析をする前に一読しておきましょう。 目的を明確にする なぜペルソナ分析をするのか、目的を明確にしておきましょう。目的が不明瞭のままペルソナ分析をしても、有効的な活用は見込めません。 そのため、まずは「ペルソナ設定を活用して開発機能を決定する」「プロモーションも、この設定をもとに行う」など、ペルソナ分析の目的を明確にすることをおすすめします。 担当者、関係者全員がイメージしやすいよう意識する 担当者や関係者全員がイメージしやすいようにペルソナ分析をしましょう。ペルソナ分析の結果を関係部署に共有しても、その内容が不明瞭であれば適切な形で共通認識をもてない可能性があります。 関係者間でイメージしやすくなるよう、想像しやすい人物を設定しつつ、分かりやすい言葉を使用し表現することを意識してください。 ペルソナ分析の深堀りが甘い ペルソナ分析の失敗例に、深堀りが甘いケースが挙げられます。具体的な顧客像を作れていなければ、ペルソナ分析を活用した効果的なマーケティングはできません。年齢や性別などのセグメントだけではなく、生活スタイルや年収、役職など、より具体的な顧客像を作りましょう。 ペルソナを理想像にする ペルソナを自社にとって理想的な人物像にしてしまうと、マーケティング活動で失敗する可能性があります。 ペルソナを設定する際、どうしても自社にとって都合の良い、理想的な人物像に近づけてしまいがちです。そのようなことが原因で誤ったペルソナ分析を行った結果、マーケティング活動に支障をきたす恐れがあります。 可能な限り多くの、また正確な情報を収集し「リアルなペルソナ像」を設定することを心がけてください。 まとめ ペルソナ分析には時間がかかりますが、正しく実践することでより高い成果を期待できるマーケティング活動が行えます。 自社のマーケティング活動がうまくいっていない、効果的な販促活動をしたい、ペルソナ分析をしないといけないと感じた場合は、このコラムの内容を参考にペルソナ分析を行い、実務に活かしていただけたら幸いです。
【リード獲得とは?】具体的な施策やポイントを紹介
売上拡大のためには、新規顧客を増やすことが欠かせません。そして、新規顧客を増やすには既存顧客への施策だけではなく、将来顧客になりそうな見込み客(リード)にアプローチする“リード獲得”が重要です。 本コラムでは、リード獲得の方法をオンライン施策とオフライン施策に分けて紹介します。また、リード獲得後の施策も解説します。リードの獲得を目指す際の参考にしてください。 リード獲得とは?意味や目的を解説 リード獲得とは、将来自社の顧客になるかもしれない見込み客(リード)を見つけるためのマーケティング施策を指すことが一般的で、“リードジェネレーション(Lead Generation)”とも呼ばれます。 リード獲得では、氏名・メールアドレス・住所・電話番号・会社名・部署名などの情報を得ることで、そのあとのアプローチができる状態を目指します。 リード獲得の代表的な方法は、BtoBではセミナーや展示会で名刺交換をする、資料請求をしてもらう、問い合わせをしてもらうなど。BtoCでは、サンプルの請求をしてもらう、メールアドレス登録をしてもらう、会員登録をしてもらうなどが一例です。 リード獲得の目的 リード獲得の目的は、新規顧客を獲得して受注件数を増やし、売上の拡大につなげることです。いくら既存顧客がいたとしても、すべての顧客が継続してくれるとは限りません。安定的に利益を伸ばすためには、新規顧客を獲得し続けることが必要です。 また、新規顧客獲得に向けて、マーケティング施策や営業施策を行ったとしても、すぐに購入意思を持ち顧客になってくれるとは限りません。だからこそ、将来の顧客づくりを目指し、リード獲得をする必要があるのです。 新規顧客を増やすという目的は一緒であっても、リードの獲得にあたって重視するポイントは、BtoBとBtoCで異なります。 BtoBのリード獲得ポイント BtoB向けの商品・サービスの場合、BtoCと比べ、ターゲットになる顧客の数に限りがあります。また、BtoBでは購買プロセスが複雑で検討期間も長いケースが多いため、商品・サービスを認知してから契約までに時間がかかりがちです。そのため、リードとの関係を継続させ続け、リードが購入する状態まで育成することも必要になります。 だからこそ、限られたターゲットに着実にアプローチを行い、取りこぼしが起きないようにすることが大切です。 BtoCのリード獲得ポイント BtoC向けの商品・サービスの場合、BtoBと比べ、ターゲットとなる顧客の数に限りがありません。また、個人の意思で契約を決断できることも多いため、商品・サービスを認知してから契約までの時間が短い傾向にあります。 一方、契約してもすぐに別の商品・サービスに乗り換えられてしまうことも多くあります。そのため、リード数を常に増やし続けることが大切です。 リード獲得方法・施策 リード獲得のための施策は、オンライン施策とオフライン施策があります。ここでは、それぞれの施策を解説します。 オンライン施策7選 オンライン施策のメリットは、場所や時間を問わずにスピード感をもって見込み客にアプローチできることです。 Web広告 Web広告は、インターネット上にある媒体に掲載される広告を指し、媒体に広告費を使って広告枠を取り、広告を配信する施策です。コストはかかりますが、特定のターゲットに絞った配信もできるため、効率よくリード獲得できることがあります。また、効果がデータで可視化されるため、費用対効果を判断しやすい点もメリットです。 Web広告には、Twitterなどに掲載できるSNSの広告枠、Googleなどの検索結果ページに表示されるリスティング広告などがあります。 メディア掲載 人気があり集客力の高いメディアに記事・広告を掲載する方法です。他社が運営するメディアに、自社のサービスをコンテンツとして紹介してもらい、リード獲得を目指します。 特に自社のターゲット層が集まるメディアで訴求してもらえば、多くのリード獲得が期待できるでしょう。どのようなメディアに掲載してもらうかが、リード獲得の重要な鍵を握るといえます。 オンラインセミナー・ウェビナー コロナ禍において多く開催されたのが、オンライン会議ツールを使ったオンラインセミナー(ウェビナー)です。現在もさまざまなウェビナーが実施されており、セミナー開催方法として定着したといってよいでしょう。 ウェビナーの内容に興味をもっている人が集まるため、質の高いリードを集めやすい点がメリットです。ウェビナーに参加するための申し込み時にリードを獲得できるほか、資料や動画配布などでコミュニケーションを取りやすい手法です。 オフラインセミナーと比べて移動時間やコストも抑えられるため、気軽に実施しやすい施策でしょう。 メールマガジン 自社商材やサービスに合わせて作成したメールリスト宛てに、定期的にメールマガジンを発行する方法です。 メールマガジンのメリットは、時間や場所にとらわれずに、多数のターゲットに向けて一度に自社商材をPRできる点です。口頭での説明と異なり、商材やサービスの詳しい資料を送れるため、興味をもったリードが開封してくれれば、一定の効果が期待できます。 また、後述するランディングページへの遷移を誘導できるほか、動画のURLを送信して視聴を促すアプローチも可能です。メール開封率やリンクへのアクセス情報なども取得でき、これらをもとに次の施策を練ることもできます。 LP(ランディングページ) LPは、広義では「検索エンジンやWeb広告などから流入したユーザーが、最初に到達するページ」を意味します。狭義では「商品やサービスの問い合わせや資料請求などを誘導するために作られたWebページ」のことで、今回は後者です。 LPを最適化することで、Web広告やメルマガで自社商材やサービスに興味をもったリードを効率的に獲得できます。LPは、基本的に1枚のページに自社商材やサービスの特徴、メリットなどをまとめて掲載します。サンプル購入や問い合わせにつなげるためには、セールスライティングの知識や、印象に残りやすいクリエイティブを実現する技術も必要です。 自社のWebサイト 自社運営のWebサイト(オウンドメディア)への流入を増やすことも、リード獲得に効果的です。 現在は、インターネットを用いて情報を集めることが当たり前になりました。そこで、検索エンジンからの流入を獲得するために重要なのが、SEOです。検索キーワードの設計を戦略的に行えば、より自社のターゲットに近い悩みや興味・関心をもつリードを集められます。その後はWebサイトに問い合わせフォームを設置するなどし、リード獲得につなげましょう。 しかし、SEOで検索流入を増やすためには時間と知識、技術が必要です。自社にノウハウやリソースがなければ、SEOに特化した企業に任すのも一つの手です。 SNSマーケティング SNSマーケティングとは、その名の通りSNSを活用したリード獲得の手法です。 近年、商品やサービスの検討時にSNSを参考にする消費者は格段に増加しています。ユーザーが投稿をシェアすることで情報が拡散されるため、うまく運用すれば大きなPR効果が期待できるでしょう。SNSは双方向のコミュニケーションができることも魅力の一つです。集客だけに留まらず、顧客とのコミュニケーションによって、顧客ロイヤルティの向上にも寄与できるメリットがあります。 一方、SNSマーケティングは効果が出るまでに一定の時間がかかります。有益な情報を継続的に発信し続ける運用コストが必要であることを理解し、はじめる際には長期的にリソースを準備しておく必要があるでしょう。また、SNSは拡散力がある分、投稿内容が原因で炎上するリスクも考えられます。発信内容は十分に精査するのはもちろん、万が一炎上した場合に備えて、危機管理のフローを整備しておくと良いでしょう。 オフライン施策5選 次に、オフラインでできる施策を紹介します。オフラインを使ったリード獲得方法としては、対面での営業活動や交通広告、紙媒体の広告などが挙げられます。 展示会などのイベント 展示会やセミナーなどのイベントに出展し、直接情報交換をする方法です。アンケートや名刺交換などの機会をもてるため、リード獲得につなげやすい施策といえます。出展する展示会を選ぶ際は、展示会の来場者の傾向と自社の親和性を判断しましょう。 展示会はリード獲得方法として、以前から有効活用されている代表的な施策です。オンラインでの情報収集が得意ではない企業などにもアプローチできるメリットがあります。 ダイレクトメール(DM) ダイレクトメール(DM)は、古くからあるオフラインマーケティング施策の代表格です。見込み客やターゲットに向けて直接ハガキやチラシを郵送、またはFAXなどを利用してDMを送ります。 DM施策は配送費や印刷費などのコストがかかりますが、商材やサービス内容、ターゲットの年齢層によっては効果が得られる施策です。オンライン施策ではアプローチしにくい層であっても、一定の効果を上げられるでしょう。 DM施策を実施するうえでは、セールスレターの知識も大切です。DMにはメールアドレスや二次元バーコードなどを記載して、オンラインに誘導する方法もあります。 新聞・雑誌 新聞や雑誌を使ったリード獲得方法は、大きく分けて広告と折込みチラシの2種類があります。 折込みチラシなら入れるエリアをセグメントしてアプローチでき、新聞・雑誌を読む多くの人をターゲットにできるメリットがあります。どちらもコストはかかるものの、ターゲットや自社サービスとの相性を考えて、有効な媒体を選定することが大切です。 交通広告 電車やバスの車内、タクシーなどで見かける交通広告は、目にしたユーザーが移動時間を利用してスマートフォンで検索することを期待できます。BtoCの商品・サービスであればすぐに購入してもらえることもあります。 交通広告は、短時間でリードを獲得できるようにするのが成功のポイントです。二次元バーコードなどを用いて直接入力フォームにアクセスできるようにするなどの工夫をしましょう。 飛び込み営業 飛び込み営業は、顧客の自宅や企業に直接訪問して自社のサービスを紹介し、リード獲得を目指す施策です。オフライン施策の古典的な方法といえるでしょう。 ほかの施策は顧客側からアクションを起こしますが、飛び込み営業は企業側から顧客にアプローチをします。そのため、相手がサービスの必要性を感じていないと、リード獲得には結びつきません。 しかし、オンライン施策では獲得が難しいとされている高年齢層に向けた商材の場合は、直接話せる飛び込み営業が効果的なケースもあります。 リードを獲得したらリードナーチャリング(顧客育成) ここまでリード獲得の流れやポイント、施策を紹介してきました。しかし、リードを獲得するだけでは売上拡大という目標を達成できません。目標達成のためには、リード獲得後の“リードナーチャリング”が重要です。 リードナーチャリングとは、獲得した見込み客(リード)を育成(ナーチャリング)することです。獲得したリードに適切なタイミングで情報提供やアプローチを行い、自社への興味関心を高めます。売上拡大というゴールを達成するためのプロセスとして、リードナーチャリングは欠かせません。 リードナーチャリングの手法としては、メールマーケティング、オウンドメディアやセミナーの実施などが挙げられます。 リードナーチャリングの効率化 効率的に顧客を獲得するため、リード獲得やリードナーチャリングではMAと呼ばれるツールを活用することがあります。 MAとはMarketing Automationの頭文字をとったもので、リード獲得における施策を管理・自動化するツールです。 顧客分析や顧客との継続的なコミュニケーションを自動化し、マーケティング施策に反映。たとえば、獲得はしたものの購入にいたっていないリードにメルマガを自動配信し、成約するまでリードナーチャリングを継続するなどの施策が可能です。 リードナーチャリングのメリット ここからは、リードナーチャリングの実施にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは2つほど解説します。 営業活動の効率化 購買プロセスが複雑で検討期間も長くなりがちなBtoB向け商品・サービスでは、検討期間中も自社とリードとの信頼関係を保ち続けることが重要です。 リードナーチャリングでは、ツールなどを活用してリードにアプローチをかけられるため、営業担当が常に対面で対応する必要がありません。また、オウンドメディアやSNSを通じて自社のサービスや価値観をリードに届けられるため、効率的に営業活動を展開できるでしょう。 機会損失の予防 リードナーチャリングの実施により、機会損失を予防できる点もメリットの一つです。 獲得はしたものの購入意欲が高くないリードを放置し続けると、リードの関心が薄れ、競合他社への流出にもつながりかねません。リードナーチャリングにより継続的にリードの関心を自社に留めておくことで、機会損失を未然に防げるでしょう。 質の高いリードを絞り込むリードクオリフィケーション リードナーチャリングのあとは、購入意欲の高いリードを選別する“リードクオリフィケーション”を行いましょう。 リードクオリフィケーションでは、リードの属性、興味関心の対象、自社製品に対する関心度などでセグメント分けを行い、それぞれの属性や行動に対してスコアリングしていきます。 たとえば、見積もり依頼=8点、展示会への参加=5点といった加点方法です。スコアリングの基準は、業界によっても異なります。 スコアリングの結果、合計点が一定の基準に達したリードは、営業部門をはじめ適切な部門・担当者に引き渡します。 まとめ リード獲得は、将来的に自社の顧客になりそうな見込み客を獲得するためのマーケティング施策です。リード獲得により顧客を増やすことで、最終的な売上の拡大を目指します。 リード獲得には、オンライン・オフラインともにさまざまな施策があります。ターゲットの年齢層や取り扱っている商品・サービスに合った施策を選定し、実施することが大切です。また、リード獲得後の施策も重要です。 取り扱うサービスや商品に合わせて、自社にぴったりの効率よいリード獲得施策を見つけてください。
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは? 顧客体験の重要性や向上させるポイントを解説
近年注目されているマーケティング戦略の1つにCX(カスタマーエクスペリエンス)があります。「顧客体験」や「顧客体験価値」を意味するCXの向上に向けた改善策の実施は、企業のブランディングやリピーターの獲得につながるとされています。 本コラムでは、CXの意味や、類似するマーケティング用語との違い、メリットやポイントを解説。加えて、CX向上の成功事例なども紹介するため、CXを詳しく知りたい方やこれからCX向上に向けて準備したい方は、ぜひ参考にしてください。 CX(カスタマーエクスペリエンス)とは? CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、日本語で「顧客経験価値」や「顧客体験価値」と翻訳される、経営戦略やマーケティング戦略の考え方です。機能・性能・価格などの商品やサービスが有する合理的価値だけでなく、購入に至るまでの過程から、アフターフォローなど購入後までの体験によってもたらされる感情的価値を重視する考え方を指します。 CXと混同しやすいマーケティング用語には、カスタマーサクセスとUX(ユーザーエクスペリエンス)があります。CXへの理解を深めるためにも、それぞれどのような違いがあるのかを押さえておきましょう。 カスタマーサクセスとの違い カスタマーサクセスとは、商品やサービスの提供を通じて顧客のビジネス成功をサポートすることです。また、顧客の顧客生涯価値(LTV)の最大化を目指す活動も含まれます。顧客の成功に向けて能動的なアプローチが求められ、具体的な指標としては、アップセル・クロスセル、解約率などがあります。 カスタマーサクセスはサブスクリプションサービスとの親和性が高く、注目を集めるようになった背景に、サブスクリプションサービスの普及があるといわれています。 カスタマーサクセスは顧客の目標達成をサポートする活動であるのに対し、CXは顧客の体験を高めるために活動するものです。いずれも顧客に向いた活動ですが、目標が異なります。 UX(ユーザーエクスペリエンス)との違い UX(ユーザーエクスペリエンス)は、商品を購入したりサービスを利用したりしたあと、実際に使用することで得た体験にフォーカスする考え方を指します。 CXは購入にいたるまでの過程やアフターフォローなども含めるため、対象となる体験の範囲が異なります。CXを細分化した際の一部がUXです。 CXが注目されている理由 CXが注目されている理由は、大きく分けて2つあります。それぞれ、具体的に解説します。 消費者行動の多様化 以前は、実店舗やコールセンター、広告などを活用して企業が情報発信し、消費者に商品・サービスを紹介して購買につなげていました。 しかし、インターネットの普及やSNSなどの進歩により、消費者自身で情報収集が可能になりました。これにより、自社の商品・サービスを売り込みたいとアプローチしても、すでに消費者は自力で情報収集を済ませて候補を絞り込んでいることがあります。あるいは、すでに商品・サービスの購入後だったというケースもあるでしょう。 単に情報発信をするだけでは、優位性の確保が難しくなっています。そのため、企業は他社との差別化を図れるように、CXを重視するようになりました。 商品やサービスによる差別化が難しくなった 現代では、さまざまな商品・サービスがあふれかえっています。価格や機能などの価値では他社との違いを明確にできず、差別化が難しくなりました。 CXの向上により、価格や機能のほかに、消費者の感情に働きかける価値を加えることで差別化を図れるようになります。 CXを向上させるメリット CXを向上させることで、おもに4つのメリットが得られます。 ブランドイメージの向上 商品・サービスが顧客にとってプラスの価値と経験をもたらすと、その顧客はブランドに信頼を寄せるようになります。その結果、顧客は同ブランドが展開している商品・サービスにも興味を持ち、購入に至ることがあります。 離脱防止 商品・サービスの質が良いことはもちろん、CXを向上させ顧客満足度が高まれば、他社と差別化でき離脱防止につながるでしょう。 一般的に、離脱してしまった顧客数を補うために新規顧客を獲得し、商品・サービスを利用してもらおうとすると、既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかるとされています(1:5の法則)。 顧客が離れないようにするためにも、事前にCX向上を目指した仕組みづくりが重要です。 リピーターの獲得 リピーターの獲得につながる点も、CX向上によりもたらされるメリットです。商品・サービスとあわせて顧客が満足する体験を提供できれば、顧客は「再び利用しよう」と考えるようになり、リピーターになるでしょう。 口コミ効果による新規獲得 CX向上によって商品・サービス、ブランドに好意的になった顧客は、ファンとしてポジティブな情報を周囲に広めてくれる可能性が高まります。 現代はSNSの口コミなどを参考に商品を比較し、購入する人も増えています。そのため、良い口コミが多ければ多いほど、商品・サービスの宣伝と新規顧客獲得が期待できるでしょう。 他社との差別化 CX向上により商品・サービスに付加価値が生まれると、企業やサービスのブランディングにつながります。その結果、競合他社との差別化を図れるでしょう。 CX改善のポイントは、一人ひとりに寄り添うこと 続いて、CXを改善するためのポイントを紹介します。 多様化した価値観に合わせる CXを改善するには顧客の価値観に合わせたサービスを提供しなければなりません。近年は、価値観の多様化に伴い、顧客の趣味嗜好や商品・サービスに求める要素も細分化しています。 したがって、顧客一人ひとりの趣味嗜好やニーズに合わせて最適なコミュニケーションを図る「One to Oneマーケティング」が重要です。 感覚・知覚・興味関心に訴える CXを改善して向上させるには、感覚・知覚・興味関心に訴えることも重要です。それぞれ、どういったものが該当するのかを紹介します。 感覚 感覚に訴える行為には、接客時の丁寧なサービス提供、顧客が好印象を抱くコミュニケーションなどがあります。購入した商品・サービスの利用により得られる満足感も、感覚に訴える行為の1つです。 知覚 知覚には、五感で感じるものが該当します。例えば、店舗デザインなどの視覚に訴えるもの、香りなどの嗅覚に訴えるもの、BGMなどの聴覚に訴えるものが挙げられます。 また、Webサイトの使いやすさも、五感に訴える要素の1つと考えられるでしょう。 興味関心 顧客の興味関心に訴えるためには、以下のような方法により顧客のニーズや情報を得て、適切な価値をアプローチすることが大切です。 顧客のWeb検索履歴 SNSの投稿や口コミ 顧客アンケート 過去に購入した商品・サービス CXを改善して向上させるには、感覚・知覚・興味関心の要素を複数組み合わせて実施します。 CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させる方法 CXを向上させるための方法を紹介します。 顧客データの蓄積と管理をする CVを向上させるには、顧客から得たデータを蓄積して整理し、分析することが重要です。そのためには、アンケートやユーザーインタビューなどの実施による、顧客データの収集が欠かせません。 アンケートやユーザーインタビューでは、商品・サービスの利用者に直接意見を聞けるため、ペルソナ設定や施策検討のヒントにしやすいでしょう。 顧客データからカスタマージャーニーマップを作成する カスタマージャーニーマップとは、顧客がどのように商品・サービスを知って購入したかを、時系列にしてまとめたマップのことです。どのような人が、どのようなきっかけで商品・サービスを知り、ニーズを満たすのかを洗い出すために使います。 顧客データからカスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動や感情が整理できたら、どのような場面で顧客満足度が下がってしまっているのか、その原因や改善ポイントを検討していきましょう。 企業全体で一貫した価値観や行動指針を構築する 情報収集や整理によって明らかになった課題に対し、各プロセスにおける改善施策を決めていきます。また、各プロセスでの対応を決定したあとは、企業の価値観と行動指針を明確化します。組織全体へ共有して、意思の統一を図りましょう。 CXは、顧客が商品やサービスと接した際の総合的な体験を指します。そのため、限られた部門だけがCX向上に取り組むのではなく、全従業員が共通認識をもち、同じ方向を向いた状態での行動が求められます。 施策の評価・改善を実施する CX向上の施策を考えて実施したあとには、施策の評価・改善をしましょう。KPIは各プロセスによって異なりますが、以下のようなものが挙げられます。 顧客満足度 NPS チャーンレート(解約率) 顧客獲得率 平均ページビュー数 コンバージョン率 リテンションレート(定着率) CXを向上させた事例 ここでは、CXを向上させた事例を複数紹介します。 飲食業界/A社の事例 A社は、フードドリンクやグッズ販売などの各種サービスを提供しています。A社ではA社の店舗でしか買えない定番商品・限定商品といった機能的価値のほか、接客の際は一人ひとりの様子を察して最適な接客を実施することで、優れた顧客体験を生み出しています。 また「自宅と職場以外の自分なりにリラックスできる場所」という独自の概念を打ち出し、競合との差別化を図りました。店舗のデザインはそれぞれ異なり、出店地域に向き合いながら店舗づくりをしています。 保険業界/C社の事例 保険業界のC社では、実際に顧客から寄せられた意見と回答を公式ホームページに掲載しています。不満を含む意見の掲載はデメリットがあるように感じるかもしれません。しかし、顧客の意見と対処した内容を明確にすることで、顧客に寄り添う企業の姿勢を示しています。 また、ホームページ訪問時の顧客の行動やチャットツールでのデータを管理・分析し、常に接客業務も改善しています。 ガス業界/D社の事例 ガス業界のD社も、公式ホームページをリニューアルしてCX向上につなげました。ページ内のUIが改善され、顧客が情報収集をしやすくなったことで会員数が大幅に増加。加えて、既存顧客も含めた全ユーザーを対象に、ログインでポイントを付与するキャンペーンなども実施しました。 まとめ CXの意味やCX向上によるメリット、具体的な企業の成功事例などを紹介しました。 CX向上は、ブランディングやリピーターの獲得につながるだけではなく、口コミ効果による新規獲得や離脱防止も目指せます。 CX向上に向けた分析をおこない、自社の顧客ニーズに合わせたCXの提供を目指しましょう。