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【弁護士監修】副業は会社に報告すべき?報告の進め方・競業避止義務違反にならないための注意点を解説

副業の会社報告への報告のイメージ

「副業を始めたいけど、本業の会社に報告すべき?」
「競合他社での副業は、契約違反にならないか心配…」

自身のスキルアップや収入増を目指して副業を検討する際、会社への報告義務や手続き、そして「競業避止義務」の存在は大きな懸念点となることがあります。ルールを正しく理解しないまま副業を始めてしまうと、思わぬトラブルに発展し、本業でのキャリアに影響を与える恐れもあります。

本記事では、副業の報告義務の有無から、会社への具体的な報告手順、そしてトラブルを未然に防ぐための「競業避止義務」の注意点まで、網羅的に解説します。会社のルールと信頼関係を守りながら、安心して副業に取り組むためにも、ぜひ参考にしてみてください。

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そもそも副業は会社に報告する義務がある?

副業を始める際、多くの方が最初に悩むのが「会社への報告義務」の有無です。円満に副業を行うためには、まず自社のルールを正しく理解することが不可欠です。本章では、報告義務の根拠と、報告を怠った場合のリスクについて解説します。

会社の労働契約・就業規則で報告が義務付けられている場合が多い

副業を始める前に、まず確認すべきなのは自社の労働契約や就業規則です。多くの企業では、副業を開始する際に会社への届け出や許可を義務付ける規定を設けています。

パーソル総合研究所の調査によると、副業を容認している企業(64.3%)のうち、何らかの条件を設けている企業は36%となっています。

出典:第四回 副業の実態・意識に関する定量調査(パーソル総合研究所)

これは、企業側が従業員の労働状況を把握し、本業への影響や情報漏洩などのリスクを管理する必要があるためです。

また、厚生労働省が公表している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」においても、労働者は労働契約や就業規則を確認した上で、定められたルールに沿った副業を選択する必要があると示されています。

これらの事実から、副業を検討する際は「まず自社の就業規則を確認し、定められたルールに従って報告・申請する」のが基本原則であるといえるでしょう。

出典:副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚生労働省)

報告せずに副業を始めた場合はペナルティを受ける可能性がある

就業規則で報告が義務付けられているにも関わらず無断で副業を始めた場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。処分の内容は、副業が本業に与えた影響の度合いによって異なりますが、一般的には以下のようなペナルティが考えられます。

  • 譴責(けんせき)・戒告:始末書を提出させ、将来を戒める比較的軽い処分
  • 減給:一定期間、給与から一定額を差し引く処分
  • 出勤停止:一定期間、出勤を禁じ、その間の給与は支払われない処分
  • 懲戒解雇:懲戒処分の中で最も重い処分で、雇用関係を即時に終了させるもの。悪質なケース(本業の機密情報を漏洩させる、会社の信用を著しく損なうなど)に適用される

無報告という事実だけですぐに懲戒解雇となるケースはまれですが、本業への支障や競業避止義務違反などが認められれば、より重い処分が下される可能性が高まります。

会社との信頼関係を損ない、自身のキャリアに傷をつけてしまう事態を招かないためにも、定められたルールに従って誠実に報告することが重要です。

副業を会社へ報告しない場合に気づかれることはある?

「報告は義務かもしれないが、黙っていれば気づかれないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、秘密裏に始めた副業が会社に発覚するケースは決して少なくありません。

大前提として、副業は会社の許可を得て規則の範囲内で行いましょう。もし、会社へ報告しないまま副業をすると、主に以下の経路で発覚する可能性があります。

  • 住民税の金額変動
  • SNSでの発信や知人との会話

一般的なのは、住民税の金額変動です。副業によって所得が増えると、翌年の住民税額が変わり、会社の経理担当者がその変化に気づくことがあります。また、SNSでの発信や知人との会話から、情報が巡り巡って同僚や上司の耳に入る可能性も十分に考えられるでしょう。

リスクを冒して隠し通すよりも、誠実に報告し、堂々と活動できる環境を整える方が賢明な選択です。

副業の会社への報告・申請の進め方

副業を始める意思が固まったら、次に行うべきは会社への正式な報告と申請です。

このプロセスを丁寧に進めることは、会社との良好な関係を維持し、スムーズに副業の許可を得るために重要です。感情的に「やりたい」と伝えるのではなく、定められた手順に沿って、論理的かつ誠実に相談を進めましょう。

ここでは、一般的な報告・申請の進め方を3つのステップに分けて解説します。

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ステップ1:自社の就業規則で副業に関する規定を確認する

報告・申請のアクションを起こす前に、自社の就業規則を隅々まで確認しましょう。「副業・兼業」に関する項目を探し、許可の条件(許可制か届出制か)、禁止されている副業の種類、申請手続きの方法などを正確に把握します。

もし就業規則の場所が分からない場合や、記載内容の解釈に迷う場合は、人事・労務部門に問い合わせてみましょう。この最初のステップを怠ると、後の上司への相談や申請書作成の段階で手戻りが生じたり、見当違いな説明をしてしまったりする可能性があります。

会社のルールという「土台」をしっかり理解した上で、次のステップに進むことが重要です。

ステップ2:直属の上司に相談・報告する

就業規則の内容を把握したら、次に直属の上司に相談します。

申請書を提出する前に、まずは口頭で相談の場を設けるのがスムーズです。相談の際は、「なぜ副業をしたいのか」「どのような副業を、どの程度の時間で行うのか」などを具体的に説明できるように準備しておきましょう。また、上司の懸念(業務への支障、情報漏洩リスクなど)を先回りして払拭する姿勢を見せることも、理解を得るために重要なポイントです。

この段階で上司の理解と協力を得ておくと、その後の正式な申請手続きも円滑に進みやすくなります。

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ステップ3:副業許可申請書を提出する

一般的には上司への相談を経て、会社指定の「副業許可申請書」を提出します。もし決まったフォーマットがない場合は、以下のような項目を明記した書類を自身で作成し、人事部門などに提出します。

  • 副業先の会社名、業種などの情報
  • 副業先での契約形態、はたらきかた
  • 副業を行う理由
  • 副業の内容
  • 副業にかける時間、活動時間帯
  • 活動期間
  • 報酬の有無
  • 本業への影響がない根拠

申請書の作成にあたっては、後述する「納得してもらえる理由の書き方」を参考に、客観的かつ具体的に記述することを心がけましょう。事実と異なる記載や曖昧な表現は避け、誠実な内容で作成することが大切です。

本業の会社で副業が禁止されている場合は諦めるしかない?

就業規則を確認した結果、原則として副業が禁止されていた場合でも、すぐに諦める必要はありません。会社の懸念を解消し、双方にとってメリットがある形を提案することで、例外的に認められる可能性があります。

大切なのは、一方的に権利を主張するのではなく、対話を通じて解決策を探る姿勢です。ここでは、副業禁止の会社に対して取りうる3つのアプローチを紹介します。

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副業の必要性を説明して会社に掛け合ってみる

まずは、なぜ自分が副業をしたいのか、その必要性と本業へのポジティブな影響を論理的に説明し、会社と交渉してみましょう。

「将来的に本業のマーケティング業務で活かすため、スタートアップ企業でSNS運用の実務経験を積みたい」
「本業のコンサルティング領域とは異なる業界の知見を得ることで、提案の幅を広げたい」

その際、上記のように、スキルアップや知見拡大が目的であり、それが最終的に会社に還元されることを具体的に伝えることが大切です。会社の懸念点である「時間管理」や「情報漏洩」に対して、具体的な対策を併せて提示することで、会社側の不安を和らげ、真摯な姿勢を示せるでしょう。

社内副業ができるか相談する

会社が外部での副業に難色を示す場合、代替案として「社内副業」の機会がないか相談してみるのも一つの手です。

社内副業とは、所属部署の業務時間外に、他の部署の業務を手伝う制度です。これにより、会社は従業員のスキルを有効活用でき、従業員は新たな経験を積めます。社内副業は、会社が管理できる範囲内で従業員の成長意欲に応えられるため、外部での副業よりも許可のハードルが低い場合があります。

プロボノやボランティアへの参画の可否についても確認する

営利目的の副業が厳しく禁止されている場合でも、専門知識やスキルを活かした社会貢献活動であるプロボノやボランティア活動であれば、許可される可能性があります。

プロボノとは仕事で培った専門的な知識やスキルを、非営利組織や社会的なプロジェクトに無報酬で提供する活動のことであり「収入を得る副業」とは性質が異なる点が特徴です。

本業で培ったスキルを社会のために役立てる活動は、個人の成長だけでなく、企業の社会的評判の向上にもつながる可能性があります。会社側も前向きに検討してくれるかもしれません。

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会社に納得してもらえる副業申請理由の書き方

副業の許可を得るためには、申請理由の書き方が重要です。単に「収入を増やしたいから」という動機だけでは、会社側の懸念を払拭し、納得を得ることは難しいでしょう。

ここでは、会社の理解を得やすい申請理由を作成するための3つの重要なポイントを解説します。単なる個人的な活動ではなく、会社にとっても価値のある取り組みだと示すためにも、以下のような要素を盛り込むことが大切です。

本業への貢献意欲を伝える

副業申請の理由として説得力のあるものの一つに「副業で得たスキルや経験を本業に還元したい」という貢献意欲が挙げられます。副業を自己成長の機会と位置づけ、その成長が最終的に会社の利益につながるというストーリーを具体的に示しましょう。

たとえば、事業会社のマーケターであれば「BtoC向けのデジタルマーケティング支援を行う副業を通じて、最新のSNS活用ノウハウを習得し、自社のマーケティング戦略に活かしたい」といった書き方が考えられます。

コンサルタントであれば「異業種の事業開発支援に携わることで、多角的な視点を養い、本業のクライアントへの提案品質を向上させたい」など、本業の業務内容と直結した成長イメージを提示することが重要です。

本業への支障がないことを明確にする

会社は、副業が原因で本業のパフォーマンスが低下することを懸念しています。そのため、時間管理や体調管理を徹底し、本業に支障が生じないよう配慮・管理する旨を明確に示すことが重要です。

「副業の活動は、平日の業務時間外および休日に限定し、週の合計活動時間も10時間以内とします」といった具体的なルールを示すようにしましょう。これにより、あなたが自己管理能力を有し、本業に対する責任感を失っていないことを示せます。

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具体的な副業内容を正直に伝える

誰から(契約先)、何を(業務内容)、どれくらい(業務時間や期間)行うのか、副業の具体的な内容を正直に、かつ明確に記載しましょう。

たとえば、「コンサルティング業務」とだけ書くのではなく、「〇〇業界のスタートアップ企業に対し、週5時間程度、新規事業開発に関するアドバイザリー業務を3か月間行う」というように、5W1Hを意識して具体的に記述します。

特に、後述する「競業避止義務」に抵触しないことを示すためにも、契約先の企業名や事業内容は正確に伝えましょう。誠実で透明性の高い情報開示をすることで、会社との信頼関係の基盤となり、円滑な許可取得につなげられます。

副業を報告する際に特に注意したい「競業避止義務」とは

副業を会社に報告し、許可を得るプロセスにおいて、特に慎重な配慮が求められるのが「競業避止義務」です。これは、従業員が在職中および退職後、会社の正当な利益を害するような競合行為を行ってはならない、という義務を指します。

副業がこの義務に違反すると判断された場合、許可が得られないだけでなく、損害賠償請求や懲戒処分の対象となる可能性もあります。

したがって、自身の副業が競業にあたらないかを事前に確認し、会社に対して明確に説明できることが、トラブルを回避する上で重要です。

競業避止義務違反と判断されやすい副業の具体例

では、どのような副業が競業避止義務違反と見なされるのでしょうか。その判断は、本業で扱う情報や技術の専門性、従業員の地位、そして副業の内容などを総合的に考慮して行われます。ここでは、特に注意すべき3つの典型的なケースを具体例と共に解説します。

出典:競業避止義務契約の有効性について(経済産業省)

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本業の顧客情報を利用する

競業避止義務違反の中でも、特に悪質と判断されやすいのが、本業で得た顧客情報を利用して副業を行うケースです。

たとえば、本業で取引のあるクライアントに対し、個人的に連絡を取り、同種のサービスをより安価な価格で提供するような行為は、明確な違反行為です。これは、会社の営業秘密を不正に利用し、本来会社が得るべきであった利益を奪う行為(利益相反行為)に他なりません。

マーケティングコンサルタントが、本業のクライアントリストを使い、個人名義で営業活動を行うことなどがこれに該当します。会社の資産である顧客情報を私的に流用することは、信頼関係を根底から覆す行為であり、厳しく禁じられていることを認識しておきましょう。

競合他社で同種の業務を行う

本業の会社と事業内容が重なる「競合他社」で、同種の業務を副業として行うことも、競業避止義務に違反する可能性が高い行為です。

たとえば、事業戦略コンサルタントが、直接的な競合である会社で、同様に事業戦略に関するアドバイザー業務を行うケースが考えられます。このような副業は、本業で培ったノウハウや内部情報が競合他社に流出するリスクが考えられるでしょう。

たとえ本人に情報漏洩の意図がなくても、業務を遂行する上で、無意識のうちに本業の知見を活かしてしまうことは避けられません。会社の競争力の源泉である独自のノウハウが外部に漏れることは、会社にとって大きな損害となるため、制限されていることがほとんどです。

本業の同僚や顧客の引き抜きを行う

副業先のために、本業の同僚や部下、あるいは顧客を引き抜く(ヘッドハンティングや引き抜き)行為も、競業避止義務違反となり得ます。

たとえば、副業として立ち上げたコンサルティングファームに、本業で共にはたらいている優秀な同僚を勧誘したり、担当しているクライアントに副業先への契約切り替えを促したりする行為です。

これは、会社の重要な経営資源である「人材」や「顧客基盤」を毀損する行為であり、会社の信義則に反すると評価される場合があります。

副業の報告・競業避止義務に関するよくある質問

副業の報告や競業避止義務について検討する中で、さまざまな疑問が浮かぶことでしょう。誓約書へのサインの可否や報告のタイミングなど、具体的なアクションを前にして判断に迷うポイントは少なくありません。

ここでは、多くの方が抱くであろう典型的な質問をピックアップし、Q&A形式で分かりやすく解説します。

Q1.競業避止義務の誓約書へのサインは拒否できる?

入社時や退職時に、競業避止義務に関する誓約書へのサインを求められることがあります。このサインを拒否すること自体は可能ですが、円満な解決は難しくなる可能性があるため注意が必要です。

会社側は、サインを雇用契約の前提条件としている場合があり、拒否することで採用が見送られたり、退職条件の交渉が難航したりするケースも考えられるでしょう。ただし、誓約書の内容が職業選択の自由を不当に制限するような、過度に広範なものである場合は、その有効性が裁判で争われることもあります。

もし誓約書の内容(競業を禁止する期間、地域、職種の範囲など)に納得がいかない場合は、安易にサインせず、まずは会社に内容の修正を交渉してみることが重要です。

Q2.会社に副業を報告するベストなタイミングはいつ?

会社に副業を報告する最適なタイミングは「副業の具体的な内容が固まり、始める直前の段階」です。副業を始める前に報告し、許可を得るのが大原則です。

「いつか始めたい」という曖昧な段階で相談しても、会社側は判断材料が乏しく、許可を出しにくいでしょう。一方で、すでに契約を締結し、業務を開始した後の「事後報告」は、規則違反と見なされ、心証を悪くする原因となります。

会社への報告を徹底し、安心して副業できる環境を整えよう

副業は、個人のスキルアップや収入増につながる有効な手段ですが、その一方で、本業の会社との信頼関係を損なうリスクもはらんでいます。トラブルを未然に防ぎ、双方にとって「win-win」の関係を築くためには、就業規則の確認と誠実な報告が不可欠です。

まずは、自身の会社の就業規則を改めて確認することから始めてみてください。

(監修日:2025年10月20日)

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【監修者】河野 冬樹 法律事務所アルシエン|弁護士

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