フリーランス人事として独立するには?仕事内容や必要なスキル・案件の獲得方法を解説

「人事として培った専門性を活かして、フリーランスとして独立したい」
「フリーランス人事として、どうやって案件を獲得すればいいのか知りたい」
会社員として人事の経験を重ねるなかで、こうした思いを持つ方も多いのではないでしょうか。フリーランスの人事として活躍するには、求められるスキルや、案件を獲得するための具体的な方法を理解しておくことが重要です。
本記事では、フリーランス人事の具体的な仕事内容や市場での需要、独立にあたって必要となるスキル、そして案件獲得までのステップをわかりやすく解説します。人事の専門性を活かしてキャリアの選択肢を広げたい方は、ぜひ参考にしてください。
フリーランス人事は需要がある!約15%の企業が「人事・採用」を依頼

HiProが発表した「副業・フリーランス人材白書2025」によると、企業がフリーランスに依頼した業務内容として「人事・採用」が約15%にのぼりました。特にハイクラス層(※)の活用は、14.9%と高い水準です。

(※)高度な事業課題を解決できる経験・スキルを有する人材層。「副業・フリーランス人材白書2025」における基準として役職の目安は「課長クラス以上の管理職·エキスパート」とした。
専門的な人事機能(HR)を、外部のプロフェッショナルに求める企業が増加している証拠といえるでしょう。
【専門領域別】フリーランス人事の主な仕事内容
フリーランス人事は、特定の専門領域に特化して活動するケースが一般的です。企業が抱える課題に応じて、スポットでのコンサルティングやプロジェクト単位での実行支援を行います。
ここからは、代表的な5つの専門領域と、それぞれの具体的な仕事内容を解説します。
採用領域|採用戦略立案・採用代行(RPO)
採用領域は、フリーランス人事の主要な活動分野です。企業の経営戦略に基づき、以下のような採用戦略の根幹を立案します。
- 採用ターゲットの定義
- ペルソナ設定
- 採用手法の選定
採用ブランディングの構築支援も重要な業務です。また、RPO(採用代行)として、スカウト文面の作成・送信、面接調整、内定者フォローといった実務を担うこともあります。特にスタートアップや中小企業では、採用担当者が不足している場合が多く、即戦力となる採用のプロとして重宝されるでしょう。
制度領域|人事制度設計・改定コンサルティング
制度領域では、現状の制度が抱える課題を分析し、企業の目指す姿を実現するための新たな仕組みを構築します。
具体的には、以下のような「人事三制度」を中心に、社員が納得感を持ってはたらける仕組みを設計するのが主な業務です。
- 等級制度
- 評価制度
- 報酬制度
また、制度そのものを作るだけでなく「運用フェーズ」までを見据えた実効性のある仕組みづくりが求められます。以下のように、組織の成長を後押しする制度構築が重要です。
- 社員のエンゲージメントを高めるための評価基準の見直し
- 成果と連動したインセンティブ設計
- キャリア形成を支援する昇進・昇格の仕組みなど
経営課題を制度面から解決し、組織変革を推進する力が求められる領域といえるでしょう。
労務領域|労務体制の構築・コンプライアンス対応支援
労務領域では、勤怠管理システムの導入支援や、就業規則の見直し、労働法改正への対応(コンプライアンス対応)などをサポートします。
特にIPO準備企業や急成長中のベンチャーでは、労務体制が未整備なことも少なくありません。こうした企業に対しては、以下のような法令遵守体制を一から構築します。
- 労働時間の適正管理
- ハラスメント防止体制の整備
- 36協定・社会保険・安全衛生管理など
さらに、リモートワーク制度やフレックスタイム制など、多様なはたらき方を前提とした労務設計の導入支援も重要です。企業の人事リスクを未然に防ぎながら、経営と従業員の双方が安心できる労務体制を構築していく重要な役割といえるでしょう。
開発領域|人材育成・組織開発のプランニングと実行
企業の持続的な成長には「人」と「組織」の強化が欠かせません。開発領域では、次世代リーダーの育成プランや、全社的な研修プログラムの設計・実行を担います。
主な業務内容は、以下のとおりです。
- 次世代リーダーやマネジメント層の育成計画策定
- 全社的な研修体系の構築
- スキルマップや評価制度と連動した人材開発施策の設計
また、組織開発(OD)の観点から、サーベイを活用した組織課題の可視化や、エンゲージメント向上のための施策を提案・実行します。エンゲージメントの向上や心理的安全性の確保、チームの信頼関係構築など、組織文化そのものを変革する支援を行うことも珍しくありません。
さらに、1on1ミーティングの導入支援や、ピープルマネジメント研修、社内コミュニケーション活性化プロジェクトの企画・運営など、現場に根差した実践的な支援も重要です。制度や仕組みだけでなく「人が成長し、組織が自走する」状態を目指し、個人と組織の両輪で成果を最大化できる環境づくりを推進します。
DX領域|人事システムの導入・活用支援
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)は活発になっています。中小企業庁の調査によると、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態の企業は、2019年の9.5%から2023年には26.9%と3倍近い水準まで増加したことがわかりました。それに伴い、DX人材の確保・育成が企業の規模拡大における重要な戦略の一つとなっています。
DX領域のフリーランス人事は、HRテックと呼ばれる人事関連システム(タレントマネジメントシステムや勤怠管理ツールなど)の選定・導入を支援するのが主な業務です。また、単にツールを導入するだけでなく、導入目的を明確にして業務フローを再設計し、データが活用される状態まで伴走します。
テクノロジーを活用して人事部門の業務を効率化し、より戦略的な業務に集中できる体制を構築するのがミッションです。
フリーランス人事が目指せるキャリアパス
独立後のキャリアは以下のように多様で、自身の強みや志向性によってさまざまな方向へ発展できます。
- スペシャリストとして専門性を極める
- 戦略人事や人事コンサルタントとして幅広い課題に関わる
- 外部CHRO(最高人事責任者)や人事顧問として企業経営に参画する
まず「スペシャリスト」として特定領域に特化する道があります。採用・労務・人材開発・制度設計など、人事の中でも専門性を深めることで、企業から「この分野ならこの人」と指名される存在になることが可能です。
次に「戦略人事」や「人事コンサルタント」として、複数の企業の課題解決に携わるキャリアパスもあります。単なるオペレーション業務にとどまらず、採用戦略の設計、人材育成体系の構築、組織開発プロジェクトの推進など、経営課題と直結するテーマに取り組むことが特徴です。
さらに、経営の中枢に関わる「外部CHRO(最高人事責任者)」や「人事顧問」として活躍する道も開かれています。経営者に伴走しながら人事戦略全体を統括し、組織づくり・人材戦略・企業文化の醸成までを担うポジションです。
このように、フリーランス人事は「個の専門性を高める道」と「経営に踏み込む道」の双方でキャリアを広げられる、発展性のある職種といえます。自分の得意分野を軸に、スキルと信頼を積み重ねることが大切です。
フリーランス人事が案件を獲得する方法
フリーランス人事が安定的に案件を獲得するには、戦略的な営業活動が必要となり、自ら仕事を取りに行く姿勢が求められます。ここでは、代表的な3つの案件獲得方法を紹介します。
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人事特化型のフリーランスマッチングプラットフォームを利用する
効率的な方法の一つが、人事領域に特化したマッチングプラットフォームを活用することです。専門性の高い案件や、高単価な非公開案件を紹介してもらえる可能性があります。
プラットフォームには、人事課題を抱える企業が多数登録しています。独立初期は、こうしたサービスを活用して実績を積むのが堅実な方法です。自分の専門性が市場でどう評価されるかを知る機会にもなります。
人事領域の情報発信をして業界での認知度を高める
中長期的な資産となるのが、専門家としての情報発信です。SNSやブログ、専門メディアへの寄稿を通じて、人事に関する知見や実績を発信します。
発信を続けることで、「この領域ならあの人だ」という認知(パーソナルブランディング)を確立できます。結果として、企業から直接相談や講演依頼が舞い込むようになるでしょう。すぐに案件につながらなくても、信頼を蓄積する重要な活動です。
過去のクライアントや知人の紹介を受ける
案件の獲得方法には、リファラル(紹介)も挙げられます。会社員時代の上司や同僚、取引先からの紹介は、独立後の大きな助けとなるでしょう。
また、フリーランスとして一度支援したクライアントから、高い評価を得ることも重要です。満足度が高ければ、継続的な発注や、別のクライアントの紹介につながる可能性があります。
日頃から誠実な仕事を心がけ、良好な関係性を築いておくことが、安定した案件獲得の基盤となります。独立前から人脈を大切にしておきましょう。
フリーランス人事として活動する際に求められるスキル
フリーランス人事として成功するには、会社員時代の実務経験だけでは不十分です。クライアントの課題を解決し、事業成長に貢献するための高度な専門スキルが求められます。
重要となる主要スキルは、以下の5つです。
- 経営・事業戦略から逆算できる採用設計スキル
- HRテックの活用スキル
- 人的資本経営を支える制度設計スキル
- チーム力とエンゲージメントを高める組織開発スキル
- 人事施策を可視化・定量化するデータ活用スキル
自身の強みと照らし合わせて確認しましょう。
経営・事業戦略から逆算できる採用設計スキル
経営層のパートナーとして活動するには、経営戦略や事業計画を深く理解する力が必要です。企業のビジョンや中期経営計画を把握し「その目標達成のためには、いつまでに、どのような人材が、何人必要なのか」を逆算します。そこから、具体的な採用戦略や人員計画に落とし込みます。
事業の成功に直結する採用を設計し、経営陣に提案できる論理的な思考力が必要です。人事の視点と経営の視座の両方を持つことが求められます。
HRテックの活用スキル
現代の人事戦略において、HRテックの活用は不可欠です。以下のように多種多様なツールが存在しており、フリーランスの人事であれば、これらを使いこなせる必要があるでしょう。
- タレントマネジメントシステム
- 採用管理システム(ATS)
- エンゲージメントサーベイツール
また、クライアントの課題や規模に応じて最適なツールを選定し、導入を支援することもあります。普段業務で使用しているツールだけでなく、人事領域で広く使用されているツールの知識は身につけておきましょう。
テクノロジーを駆使して、人事部門の生産性と戦略性を高めることが期待されます。
人的資本経営を支える制度設計スキル
近年、企業価値の向上において「人的資本経営」が注目されています。これは、人材を「コスト」ではなく「資本」と捉え、投資することで中長期的な企業価値向上を目指す経営手法です。
フリーランス人事には、この人的資本経営を実現するための制度設計スキルが求められることがあります。たとえば、従業員のスキルや経験を可視化し、適切な配置や育成につなげる仕組みづくりなどです。また、多様な人材が活躍できるような評価制度や報酬制度の構築も含まれます。
企業の持続的成長を「人」の側面から支える専門性が必要です。
チーム力とエンゲージメントを高める組織開発スキル
どれだけ優秀な人材を採用しても、組織のエンゲージメントが低ければ定着せず、成果も上がりづらいでしょう。フリーランス人事には、個人の力を最大限に引き出し、チームとしての相乗効果を生み出す組織開発スキルが不可欠です。
組織サーベイなどで課題を特定し、1on1の導入支援やチームビルディング研修、社内コミュニケーション施策などを企画・実行することもあります。経営陣と現場の橋渡し役となり、風通しのよい、生産性の高い組織風土を醸成することが大切です。
人事施策を可視化・定量化するデータ活用スキル
人事施策の成果を経営陣に説明する際、客観的なデータは不可欠です。「なんとなく良くなった」ではなく、以下のようなデータを分析・可視化するスキルが求められます。
- 採用コスト
- 離職率
- エンゲージメントスコア
- 施策の投資対効果(ROI)など
データに基づいて施策の効果を定量的に示し、次の改善アクションにつなげることが大切です。感覚的な人事から脱却し、データドリブン(データ駆動型)な意思決定を支援することで、人事の専門家としての信頼を獲得できるでしょう。
フリーランスで人事をする際のリスクとその対策
フリーランスとして人事業務を請け負う場合、企業の内部情報に深く関わる立場になるため、法的・契約的リスクが高い点に注意が必要です。代表的なリスクは、以下の2つです。
- 情報漏えい・守秘義務違反のリスク
- 法改正・労務知識の遅れによるリスク
採用・評価・給与などの人事情報は、最もセンシティブな社内データの一つです。誤って個人情報を外部に流出させた場合、損害賠償や信頼喪失につながる恐れがあります。クライアントとの契約時に「秘密保持契約(NDA)」を必ず締結し、クラウド上のファイル共有はアクセス制限をかけるようにしましょう。
また、人事は労働基準法や社会保険制度など、法改正の影響を受けやすい領域です。知識が古いまま助言や手続きを行うと、クライアントのコンプライアンス違反を招くこともあります。厚生労働省や社会保険労務士会などの公式サイトで最新情報を定期確認するなど、知識をアップデートし続けることが大切です。
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フリーランス人事に関するよくある質問
これからフリーランス人事を目指す方から寄せられる、代表的な質問に回答します。独立への不安や疑問を解消し、具体的なキャリアプランを構築する際の参考にしてください。
Q1.人事実務経験が何年程度あれば独立できる?
独立に必要な実務経験として、明確に「何年」という基準はありません。重要なのは「年数」よりも「専門性」です。特に「採用戦略をゼロから設計した」「人事制度の改定を主導した」など、プロジェクトを完遂した経験が重要です。
会社員時代に、どれだけ多様な課題に取り組み、成果を出してきたかが問われます。幅広い経験よりも、特定の領域で「誰にも負けない」と言える強みを持つことを意識しましょう。
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Q2.フリーランス人事の単価・報酬の交渉はどのように進めればいい?
単価交渉は、自身の提供価値を明確に言語化することから始まります。まず、類似案件の市場相場を調査しましょう。そのうえで、自身の過去の実績や専門性を提示します。「過去に採用コストを30%削減した」「離職率を10%改善した」など、具体的な成果を数値で示すことが大切です。
報酬形態は、月額固定の「リテイナー契約」や、プロジェクト単位の「スポット契約」、時間単価の「タイムチャージ」などさまざまです。クライアントの期待する成果物(アウトプット)と、自身の工数(作業時間)を正確に見積もり、自信を持って希望単価を提示しましょう。
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Q3.会社員のうちに副業から始めることは可能?
会社員のうちに副業から始めることは可能です。むしろ、リスクを抑えて独立準備を進める際、副業(複業)から実績を積むことは有効な手段といえます。
まずは、自身の勤務先の就業規則で副業が許可されているかを確認しましょう。許可されていれば、週末や業務時間外を活用して、採用面接代行や知人の会社の労務相談など、小さな案件から挑戦します。
副業を通じて獲得した実績と人脈は、フリーランスとして本格的に独立する際の基盤となるでしょう。
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適切な準備を進めてフリーランス人事としてのキャリアを構築しよう
本記事では、フリーランス人事の仕事内容や必要なスキル、案件獲得方法を解説しました。
企業の「人」に関する課題が複雑化する中、専門性を持つフリーランス人事の需要は高まっています。ただ、フリーランス人事として活躍するには、会社員時代の実務経験に加え、経営視点やデータ活用スキルを身につけ、特定の専門領域を確立することが大切です。
まずは、自身の強みと市場のニーズを照らし合わせるなど、一歩を踏み出すことから始めてみましょう。
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