広島
中国電力株式会社

経営・事業戦略に知財情報を有効活用。
プロ人材のアドバイスによって見えてきた
「自社の強み」と「新たな知財戦略」。

Profile

企業

社名:中国電力株式会社
所在地:広島県広島市
業務内容:電気事業を中核とした総合エネルギー供給、情報通信業等
従業員数:2,000~5,000名未満

プロ人材

名前:Mさん(フリーランス)
居住地:愛知県
経歴:大手自動車メーカーグループの研究所で経験を積んだのちに、知財分野での活動を志して独立。現在は、企業における事業戦略と一体化した知財戦略の策定、知財ポートフォリオの可視化、知財実務課題の洗い出しと改善、知財情報を用いた戦略活動など、企業の知財関連業務全般を支援。
〈プロ人材としての活動〉
業務内容:価値創造ワーキングで創出された各推進テーマの活動を分析し、事業全体の俯瞰を通じて知財戦略に関するアドバイスを実施
活動頻度:月2回
活動方法:リモート

  • 時代とともに新たな発想とノウハウが求められる知財戦略。
  • 専門性が高い分野に知見のあるプロ人材をスポットで受け入れ。
  • 第三者の視点で俯瞰することで見えてきた、全体像と自社の強み。
  • 重要課題に対する解像度が上がり、今後注力・特化すべき領域が明確化。

1)プロ人材活用の背景

電力自由化で、新しい発想の知財戦略が必要に。

 2000年初頭に電力の自由化が始まって、当社も競合企業を意識せざるを得なくなり、独自の強みを知財で確保するための知財戦略に取り組んできました。電気事業のオペレーション関連を中心とした重要課題の知財化は、一定の成果をあげてきたと思っています。
 しかし、脱炭素化の推進やDXによる技術革新など、時代や市場の変化は激しい状況です。電気事業においても、従来のやり方の延長線上ではなく、新しい視点や発想で事業の再構築を考えていかなければなりません。また、電気事業だけでなく第2、第3の新たな成長事業を創造していく必要も出てきました。

新たな知財ポートフォリオの構築に、今までの経験や知見だけでは不十分。

 知財グループでは、従来、各事業部署、研究部署から上がってきた申請を弁理士につないで特許出願する、というやり方でした。しかし、これからは、構想段階から各関連部署と連携しながら、将来なりたい姿を一緒に思い描いた上で、新たな提供価値を見据えた知財の創造活動を行なっていくスタイルに変わっていかなければいけないと考えたのです。
 30年近く知財に取り組んできましたが、知財のポートフォリオをより強固に構築していくには、経験や知見が不十分ではないかと考えました。

外部人材だからこそ、課題に応じて適切な人材に依頼できる。

 人的にもコスト的にも限られた中で、いかにパフォーマンスを高めていくか。これはいつも悩むところです。また、一口に知財といっても、技術分野によって専門家に相談したい案件もいろいろ変わってきます。それに応じて、それぞれ相応しい人材がいるでしょう。一人の方に、さまざまな技術分野で適切なアドバイスを求めるということはやはり難しいのではないでしょうか。プロ人材活用なら、課題に応じて一定の期間、スポット的に入っていただける専門の方がいらっしゃるというのが魅力的だと感じました。

専門性の高い分野で、実績のあるプロ人材とマッチング。

 今回お願いしているMさんは、何人かご紹介いただいた候補者の中から、今の当社の課題についてはこの方が最適だろう、とご一緒させていただくことに決めました。Mさんは大手自動車メーカーグループの研究所で経験を積まれていて、電気関係にも詳しいということで、その部分でも安心感がありましたし、面談を通じて、「ああ、この人なら当社が不足している面もいろいろアドバイスやサポートをしていただけるだろう」と実感しました。

2)具体的な依頼業務

基本はリモート会議。アイデア出しなどは対面で。

 今はまだ、スタートして約4ヶ月です。最初は当社に来ていただいて、全員で顔合わせをしてスタートしました。それ以降は、2週に1回のリモート会議が基本です。その間にそれぞれ“宿題”があれば、メールで資料などを適宜やりとりしながら効率的に進めています。必要に応じて、たとえば互いにアイデアを出し合うようなときには、当社に来ていただいて直接打ち合わせをすることもあります。

IPランドスケープに対するアドバイスで、今後強化・特化すべき領域を明確化。

 Mさんにご相談している内容は2つ。ひとつはIPランドスケープに対するアドバイス。IPランドスケープとは、戦略立案において経営・事業情報に知財情報を取り込んで分析を行う知財戦略活動ですが、これまで当社でも、他社が持っている特許の分析・把握などは行なっていました。しかし、その結果を踏まえて、当社がどういう技術に注力していこう、などと戦略策定や出願につなげるところまではできていなかったのです。
 今回、Mさんにアドバイスいただいたのは、まずは技術分野全体を俯瞰して、構成する技術や機能について細かくブレイクダウンしてみていくこと。その上で、当社が重点的に取り組むべきところ、(他社が大きく先行しているので)競合を避けるところ、他社と協力する方策を探るところ、とメリハリをつけて戦略的にやっていくことを決めました。こういった取り組みは、当社だけではできていなかったところでした。

戦略に基づいた企業の知財実務に関するアドバイス。

 もうひとつは、こうしたIPランドスケープを踏まえて、自社が知財戦略を策定・推進していく際に必要となる、より具体的な企業知財実務に関するアドバイス。世の中にある書籍やセミナーには、これが有効な戦略ですという“仕上がりの形”は示されていますが、実際にどうやって進めたらいいのか、具体的なことは書かれていませんし、そこに関して社内にもほとんどノウハウがありませんでした。そこで、実際に当社の場合にはこのように考えて進めましょう、というところを、Mさんにアドバイスいただいています。

3)得られた成果

広い視野、客観的な視点で全体像が見え、取り組みの解像度が上がった。

 新鮮だったのは、私たちが相談したテーマに関して、電力事業者だけでなく業界のさまざまな関係者を含めて全体の俯瞰図を描き、全体の流れを把握するというMさんのやり方です。そこで当社が注力すべきところ、新しく参入できそうなところを、“絵”を見ながら議論できました。
 当社だけでは、もっと小さなスコープで捉えていたため、そこをぐっと広げていただきました。すると今まで気がつかなかった部分で、やっぱりここは大事だよね、ここはもしかしたらいけるかもしれないね、ということがわかってくる。これはとても学びになりました。

 全体像が見えてきたことで、その中で自分たちの強みはどこなのかを明確にしながら、これからどういったところでビジネスをやっていきたいのか、ということを確認しながら進めていくことができました。
 これまで、各事業本部が知財推進計画を立てるときに設定する重点課題は、どこか一般論の範囲を出なかったように思います。それをもう少し絞り込んで、解像度を上げて取り組むことができるようになったと思います。

第三者の視点と十分なキャリアに基づく心強いアドバイス。

 当社は、知財の考え方や戦略の進め方については、自信を持っていました。スキルが足りなかった部分は、その中身をどうブラッシュアップして活かしていけるか、というところですね。せっかく自分たちが持っている原石のような成果やアイデアを、知財グループとしてどう強いものにしていけるのか、ということに関しては、言ってしまえば「弁理士任せ」の部分もありました。
 しかし、当社が今後どこに向かっていきたいのか、ということを一人ひとりが理解して明確に伝えることで、弁理士ともよりよい関係を築いてディスカッションできるようになるでしょう。そのために、当社が気づかなかった第三者の視点と、十分な経験・知見を有したプロ人材にサポートしていただけるということは、とても心強いですね。