競争が激しいテクノロジー分野の人材確保。
プロ人材活用という新たな選択肢で、人材獲得戦略に柔軟性を。
企業
社名:マツダ株式会社
所在地:広島県安芸郡
業務内容:自動車メーカー
従業員数:30,000名以上(連結)
プロ人材
名前:Nさん(フリーランス)
居住地:愛知県
経歴:人材関連企業2社の立ち上げや、人材会社のWeb戦略部長などを経験。人材領域に関する豊富な知見とWebマーケティングの知見を活かして、企業の採用戦略、自社サイトでの採用力強化、人材会社の支援を複数実施。
〈プロ人材としての活動〉
業務内容:採用領域全般に関するマーケット情報の提供、採用戦略の課題特定
活動頻度:月3回以内
活動方法:リモート
- 自動車業界を取り巻く環境は厳しく、テクノロジー人材の確保が重要に。
- 特定分野(テクノロジー分野)に知見を持ったプロ人材を受け入れ。
- 社内外の知見を合わせて、採用市場の“多面的かつ正確な”現状把握が実現。
- 競争スピードに遅れをとらない、柔軟な人材獲得戦略の策定・実行を目指す。
1)プロ人材活用の背景
課題はテクノロジー分野の人材確保。
今、自動車業界は、電動化や自動運転などのニーズの高まりにより、大きな変革期にあります。業界各社は、制御・ソフト・アプリ・通信系などのテクノロジー分野の人材確保に力を入れていることもあり、この分野の人材を確保したいと思うものの、国内では引き合いが多く十分に集めきれないため、海外にまで足を延ばして人材獲得の活動をしている企業もあると聞きます。
当社でも、制御・ソフト・アプリ・通信系といったテクノロジー分野の人材獲得に向けて自分たちなりに採用活動をしたり、市場を把握する努力もしてきたのですが、(人材獲得に向けて)活動を開始したのが遅かったのと、外部からの情報収集を行ってこなかったため、この分野の人材に関する知識・経験、大局的な知見が不足し、求める人材の採用には苦戦している状況でした。
こうした状況の打開の意図から、さまざまな外部能力活用の方法の可能性を探るとともに、その一環として、準委託契約でのプロ人材活用の可能性に着目しました。こうした新しい外部能力活用提案を作っていくためには、私たち自身が実験的に実際に飛び込んで、まずはプロ人材を体感し、頼ってみよう、ということになりました。それで、テクノロジー分野での人材マーケット、採用戦略に知見を持ったプロ人材の方との交流機会を得て人事戦略をサポートしていただくことになったのです。
2)プロ人材の選定と決め手
特定分野での経験値を評価軸に選定。
プロ人材の募集にあたり期待したのは、制御・ソフト・アプリ・通信系の領域で、人材獲得に知識のある方、実際に人材紹介などを手掛けた経験のある方です。この条件で、紹介していただいた2名の中から、Nさんをパートナーとすることにしました。テクノロジー分野での知見に長けていた、というのが決め手です。
2ヶ月の短期契約からスタート。
まずは契約期間を2ヶ月間として、来期に向けてどんな人材獲得手法があるか、情報収集をし、見極めようという段階です。メールでのやり取りを基本にしながら、適宜リモート会議で情報の共有、次の議題の設定などを行なっています。リモート会議は、その都度何か調査結果やアウトプットを出してもらう、という形式ではなく、まず私たちが進めているものを提示して評価してもらい、それをもとに議論を深めていく、というやり方です。
3)具体的な依頼業務
外部のプロの視点で、多面的な現状把握を。
もともと私たち自身でも技術者の人材獲得に向けた活動を行っていなかった訳ではありません。ただ、やり方としてはお付き合いのある人材会社に「こういう人はいませんか」とメールで聞いて、「今、この分野はご紹介できません」という回答をもらうという繰り返しでした。
これではいけないと、今度は1ヶ月以上かけて人材会社を回り、「この分野の人材の市況感はどうですか」と聞いたんです。それで、私たちなりに、この市場の現況をある程度把握できた感覚は持てました。
ただ、それが的確な内容か否かわからない。それを、この分野で活動してきたNさんに客観的に見ていただきたかった。要は、私たちの活動から得た認識と、Nさんの経験に基づく認識と、多面的な現状認識をしたかったということです。結果、より正確な現状把握に繋がりました。
プロ人材の経験とネットワークを活かした人材会社の情報を入手。
当社は数十社の人材会社とお付き合いがあります。しかし、Nさんはそれ以上の幅広い領域で、人材会社の情報をお持ちなので、(実際に実現するかどうかは別として)「人材の獲得先としてこういう候補の企業があります」という情報も提供していただきました。
私たちが求める条件を提示して、実際に2〜3社の会社をピックアップしていただき、さらに実現可能かどうか見えてくるまで間に入って調整をする、というところまでやっていただいています。
社内の人材を育成する「リスキリング」という選択肢も浮上。
さらに既存社員のリスキリングに関する情報も教えていただきました。もともとは人材確保を目的に始まった本取り組みですが、Nさんからの提案で、外部からの人材獲得にこだわっていくところと、一方で既存社員のリスキリングというソリューションもあると。
また、Nさんは、過去の経験から制御系ソフトのエンジニア領域についても知見が広く、リスキリングに役立つ具体的な情報もいろいろと提供していただきました。課題認識の思考をも広げてもらっており、これは当初想定していなかった+αのメリットになっています。
4)得られた成果
外部人材もひとつの選択肢とした、バランス感覚のある柔軟な人材獲得戦略を。
今回のNさんの様な外部人材の活用は、今後も人材確保の重要な選択肢のひとつと考えています。当然、自社の中で人材を育てていく、既存社員をリスキリングしていくという方向も考えなければいけないでしょう。その上で、やっぱり外部の力も活用していかないとダメだなという気がします。
外部人材については、今まで派遣を最優先に考えていましたが、これからは委託という手段も含めてさまざまなバリエーションで組み立てていく必要性を感じています。また新卒採用と中途採用のバランスも同様です。そういうバランス感覚をもって人材獲得戦略を取り組んでいかないと、生き残れないなと今回気づかせてもらいました。
自前・内製化にこだわりすぎると、競争のスピードに追いつけない。
今は、競争のスピードが速くなっている実感があります。技術開発したり、人を採用したり、育てたり、ということに2年も3年もかけていては他社に遅れをとってしまいます。もちろん、そういうことは従来通りちゃんとやる。その一方で、業界内で競争力を保とうとすれば、外部人材の活用は選択肢として欠かせないものになっていると感じます。何から何まで自・内製化にこだわっていると、遅れてしまう。その遅れのほうが、経営的なインパクトが大きいと思います。
価値創造の余裕を生むためにも、外部人材活用を。
スピードが速くなった、これは自動車業界だけではなく、産業界一般に言えるのではなないでしょうか。IT技術で地球の裏側とも繋がって、24時間365日仕事が動いている。便利な反面、慌ただしい毎日です。それは開発部門でも、私たちのような管理部門でも同じだと思います。これからの企業活動は、価値創造のための余裕をどうやって生み出すか、そんなところに主軸を移していかないといけないと感じています。
だから少しずつ価値観を新しくしながら、外部の方にも、新しい形態で助けてもらい、共に歩んでいく、という発想がないと乗り切れない。そういう意味でも、今回のようなプロ人材との協業手法は、新しいチャレンジのひとつ、選択肢のひとつとして、期待しています。