難しいといわれる一品一葉の品質管理を、
プロ人材によって実現したデータの一元化と分析によって改善。
企業
社名:友鉄工業株式会社
所在地:広島県広島市
業務内容:鉄鋳物製造
従業員数:50-100名未満
プロ人材
名前:Mさん(フリーランス)
居住地:千葉県
経歴:建設鉱山機械メーカーにてさまざまな改善活動やIT化の推進に寄与。2017年に退職後は、製造業を中心に現場改善の支援を数多く実施。
〈プロ人材としての活動〉
業務内容:製造現場のIT化推進による業務標準化・品質向上支援
活動頻度:月2回
活動方法:訪問・リモート(各1回/月)
- 品質管理が難しい一品一葉の製造現場で、アナログのデータ管理が続いていた。
- 紙ベースのアナログ管理を変革し、デジタル化を推進するITプロ人材を受け入れ。
- デジタル化・データ分析で、経験値だけに頼らない新たな視点での品質管理をスタート。
- 課題を解決しながら、同時に社員のスキルアップにも寄与。
1)プロ人材活用の背景
品質管理が難しい一品一葉の製造現場で、アナログのデータ管理が続いていた。
当社は1959年創業の鉄鋳造メーカーで、主要な製品は自動車製造のプレス用金型など大型鋳造品。大きなものは10トンを超えることもあります。また、広島をはじめとした地域の特色をデザインしたマンホール鉄蓋も製造しています。こうした製品は、大量生産ではなく一品一葉でひとつずつ作り上げていくので、ライン化・自動化がしにくいという特徴があります。
そこで課題となるのが、品質管理です。同じものを大量に造り続けるのであれば、続けていくうちに品質は安定します。しかし、当社製品は一つ一つが全く同じではないため、品質を安定させたり、不具合を減らすのが非常に難しいです。製造における条件をどう安定化させていくか、出来上がった製品の状態をどう評価するか、というデータの蓄積が重要なのですが、そこにずっと課題を抱えていました。
紙ベースのアナログ文化を変えたいが、推進できる人材がいない。
当社ではこれまでも、製造時の条件や出てきた結果などはすべて記録に残しています。ただ、これらのデータは帳票類に書き込まれたもの。膨大な情報量を残すことはできていましたが、活かすことがなかなかできていなかったのです。このアナログ文化をどうやって変えていこうかという課題を常に抱えていて、いろいろと模索しながら、推進できるような人材を探していたという背景がありました。
2)プロ人材の選定と決め手
専門性の高い鋳造の現場をわかっている人、が希望の条件。
「鋳造をわかっている人」というのが、まず最初に出した条件です。鋳造は専門的な分野なので、その工程を理解している人はなかなかいません。量産系の自動ラインの改善・デジタル化などの経験がある方は多いのですが、当社のように鋳造で、一品一葉で製造する工程での自動化・デジタル化は非常に難しく、この分野でそうした取り組みをしている方はなかなかいないんじゃないか、出会いは期待できなさそうだとずっと思っていました。
そんな中で、プロ人材活用支援サービスであるHiProを利用したところ、ピンポイントでMさんを紹介していただきました。
大企業での経験もあり「この人ならいっしょにやっていける」と確信。
Mさんは、大手企業でさまざまな改善活動・IT化推進を担当されていて、退職後も多くの現場で手腕を発揮されています。ITはもちろんのこと、鋳造の現場もよくご存知で、とても力強く感じました。
お会いするまでは、大企業にお勤めされていた方は理論を優先した物言いをされるイメージがあり、少し警戒するところもあったのですが、実際はまるでそんなことはなく、むしろ「先生と呼ばないでください。いっしょにやりましょう」とおっしゃっていただいて、この方となら、と確信できました。品質管理だけでなく、生産性向上など、いろいろと相談できそうだと期待もふくらみました。
3)依頼業務と業務進行上の工夫
スタートは現場・現物を精査してポイントの洗い出し。
最初は現場・現物を見ていただくことから始めました。当社の工場に来ていただき、現場を見ながら各プロセスを説明して、帳票類をすべて見てもらいました。それをベースに、人とモノの流れの全体像を共有し、それぞれの現場で起きている課題を洗い出し、その中から優先的に取り組むべき重要なポイントを見つけ出していくというプロセスで動き出しました。
毎月、オンラインと来社1回ずつの打ち合わせで2年間継続。
そのあとは、基本毎月2回の打ち合わせを実施しており、1回はオンラインで、1回は実際に現場に来ていただいています。千葉-広島は遠距離になりますが、Mさんは「それは気にしないでください」とおっしゃって足を運んでくださいます。もちろん、双方の状況次第で来社できない時もありますから、そのときはオンラインに切り替えるなど、臨機応変にやっています。そんなやり方で半年を1クールとして契約を更新しながら、もう4クール、約2年継続しています。
4)得られた成果
データのデジタル化・一元化が最大の成果。
この2年間の成果としてまず挙げたいのは、当初の目標のひとつであったアナログデータをデジタルで一元化して管理することができたこと。それだけで、ものすごく大きなことだと思います。
これまで蓄積してきたアナログデータを今後に活かしていくためには、各現場にあるさまざまなデータを一元化しなければいけません。そのためには、膨大な帳票類をすべてデジタル化する必要があります。それは私たちも以前から実現したいと思っていたことなので、各現場も積極的に協力して進めることができました。
教わりながら取り組むことで社員も成長。
今は各データを連携させる作業に取り組んでいますが、Mさんにすべてお任せしてやっていただくというよりは、何名かの社員がスキルを教わりながらいっしょに進めています。目の前のリアルなテーマを、講師がそこにいて教えてくれるので、独学で勉強するより非常に学びが早いですね。課題を解決しながら、同時にスキルが社内に定着していく、一石二鳥ではありませんが、私たちがずっとやりたかったことができている状況です。
経験値偏重から脱却して、見えてきた新たな視点。
私たち現場の人間は、これまでは経験値で判断してしまいがちでした。「鋳物とはこういうもの、だからこうなんです」とどうしても言いたくなってしまったり、自分が経験してきた感覚での判断に頼ってしまっていました。
でも、データは嘘をつきません。「データを見ると、こういう傾向がはっきり出ていますよ」と言ってもらえる。これはデータ分析の大きな力だと思います。それによって、誤った先入観を払拭することができます。今までは、「前の人がこうやっていた、先輩がこう言っていた」ということしか頼るものがありませんでしたが、データ分析という新たなツールを活用することで、違うものが見えてきました。品質を安定化・向上させるための新たな考え方や新たな視点が、今、始まりつつあると感じています。
5)プロ人材活用のメリット
地方でもプロのスキルを活用できる有効な方法。
当社のような地方の中小企業にとって、Mさんのような大企業での実績のある方やITのスキルがある方を採用するのは、給与体系等を考えると実際難しく、現実的ではありません。それでも、なんとか採用できないだろうかと模索していたときもあるのですが、結局できませんでした。このように、副業という形で、顧問的な立場で来てもらうというのは本当に有効な方法だと思います。
課題を見つけるステップから相談も。
こうした人材を受け入れるにあたっては、まず自分たちの課題がどこにあるのかを明確にすることが必須だと思いますが、まずはアプローチしてみることも大事だと思います。プロ人材を探すにあたってHiProの担当者といろいろ相談しているうちに「御社の場合、ここがポイントですね」と課題の明確化ができてきました。その上で「こういう方を探してみましょう」と絞り込んで、ピンポイントでMさんを紹介していただきました。HiProにはたくさんの方が登録されているからこそ、こうした人材と巡り会えたのだと思います。自分たちの力だけで探すのはまず不可能だったと思います。
まず動き出すことで危機感を乗り越える。
デジタル技術を取り入れる生産領域は、まだまだこれからも増えてくると思います。量産系では当たり前なのかもしれませんが、当社のような非量産系の一品一葉の工場でも、そのような考え方を取り入れないと生き残れなくなるという危機感をとても強く持っています。その基盤ができて、これを継続していけばもっといろんなことができるという実感が持てたのは大きいですね。自分たちの知見だけでは、このまま、不安なまま事業を続けることになっていたでしょう。そう思うと、とにかく動き出すことができたというのは非常に大きいと感じています。