京都 マクセル株式会社

豊富な情報から裏付けされた客観的なアドバイスをもとに、
自社のDNAを活かした“新規事業創出の型”を学ぶ。

Profile

企業

社名:マクセル株式会社
所在地:京都府乙訓郡
業務内容:エネルギー、機能性部材料、光学・システム及びライフソリューション製品の製造・販売
従業員数:2,000~5,000名未満(連結)

プロ人材

名前:Mさん
居住地:東京都
経歴:大手コンサルティング会社に勤務後、独立。約38年にわたり経営革新を経験。メーカー、小売、物流、製薬、IT、公益法人など幅広い業種で支援実績を有する。
<プロ人材としての活動>
業務内容:新規事業の個別案件の進め方のサポート、新規事業組織の管理に関するアドバイス、新規事業部門の人材育成
活動頻度:月2回以内
活動方法:対面

  • プロダクト・アウトを脱却し、
    課題解決型の新規事業創出を目指す。
  • 豊富な情報から学びと議論を繰り返し、
    “マクセルらしい”新規事業創出の型を追及する。
  • プロ人材から得た学びを事業計画にも反映。
  • 活用のポイントは、
    依頼側が課題感を明確にすること。

1)プロ人材活用の背景

自社のDNAを活かした新規事業開発に着手。

 当社は長年、電池や磁気テープを中心にさまざまな事業・製品を展開してきましたが、近年はなかなか新しい事業が立ち上がらない状況が続いていました。そこでもう一度、自社が持つDNAを活かした、つまり“マクセルらしさ”のある新規事業を立ち上げようと、2021年、各事業部の開発部隊を集めて新規事業統括本部を発足させました。

プロダクト・アウトを脱却し、
課題解決型の新規事業創出を目指す。

 発足当初は、それぞれの事業本部が持っていた新規事業の案(テーマ)をすべて事業化することを目的としていましたが、進行度合いに濃淡があったため、案(テーマ)を絞り可能性の高い事業に集約していきました。その成果の一つが全固体電池の事業化促進です。
 当社にはさまざまな技術があります。また、企業として「独創技術のイノベーション追及を通じて持続可能な社会に貢献する」というミッションを掲げる中で、従来のプロダクト・アウトのやり方から脱却し、当社が持つ技術のシナジーをさらに活用しながら、社会や顧客の課題を解決する、新たな新規事業の創出を目指しています。

プロジェクト当初から積極的にプロ人材を活用。

 当社ではプロ人材を以前より活用しており、HiProにはたびたび相談をしていました。今回の新規事業開発のプロジェクトにおいては既に2名のプロ人材の支援を受けています。
 たとえば、冒頭でお話しした「マクセルのDNA」を明確にするために、当社が保持するコア技術の整理に取り組んだ際には、新規事業や研究開発におけるマーケティングに専門性を持つプロ人材にサポートいただきました。コア技術は競争の源泉です。さらに先にある独創技術の整理についても考え方を教えていただいたので、現在進めているところです。

テーマは「“新規事業創出の型”を学ぶ」。

 2023年秋からは、プロ人材のMさんにサポートいただき、新規事業創出のための型づくりに取り組みました。Mさんは数十件もの新規事業開発実績があり、事例やフレームワークを用いて体系的に説明してくれます。「マクセルらしい新規事業を開発したい」という私たちの要望に対し、支援開始前の要件定義の段階から当社の課題感をまとめてくださったこと、また思ったことを実直に言ってくださる方だと感じたことが決め手となりました。

2)進行と提案

豊富な情報から学びと議論を繰り返し、
“マクセルらしい”新規事業創出の型を追及する。

 Mさんには月に2回来社していただき、毎回2時間程度の打ち合わせの場を設けました。打ち合わせでは、世の中のトレンド…たとえば市場の動向や、新規事業創出のための研究に関する文献、あるいは過去事例のデータなどを教えていただきました。毎回そうした資料を40~50のテーマから抜粋し提供いただけるので、勉強し自分たちなりに考察します。その後マクセルらしい設計に落とし込み、次の打ち合わせの際に「私たちはこう考えています」とMさんに相談した上で議論を深めていくというプロセスを、半年ほど続けました。

新規事業創出は「マインドが6割」という、大きな気づき。

 Mさんから学んだものはたくさんありますが、一番大きかったのは“考え方”です。たとえば「新規事業の創出に重要なのは知識ではなく、マインドが6割を占める」ということ。マインドセットがいかに大切かを何度も繰り返し教えていただきました。
 新しいチャレンジをすれば、当然、何度も失敗をします。これを失敗ではなく学習と捉え、学習する文化を組織内に育てなければいけない。実際、新しい事業を立ち上げている会社は、小さな失敗を何度もしながら、その経験を新しい事業開発に活かしています。こうしたことを、資料をもとに統計的に教えていただきました。それまで開発部門には「良いモノを作れば売れる」というプロダクト・アウトの考えがあったため、課題志向での失敗経験を繰り返すことは大きな気づきとなりました。

行動の大切さを学び、
部門内で行動基準の策定に着手。

 Mさんには重要な提案もいただきました。行動基準の策定はその一つです。新規事業は学問ではないため知識があるだけでは駄目であり、好奇心を持って外に出て、課題を見つけにいくスキルが求められます。そのスキルを育てるためにも、行動基準は大切だからぜひ作った方がいいと伺いました。
 行動基準の策定にあたっても、世の中のトレンドや他社事例などをMさんに伺いながら、具体的な中身は自分たちに合うよう検討しました。たとえば、最初の項目は「出張は一人で行く」。これは会社代表で顧客に向き合うために、一人前になるという心構えを示したものですが、部内でもインパクトが大きく、Mさんにも大絶賛をいただきました。行動基準は新規事業統括本部の目標となるものなので、現時点で体現できているかと言えばそうではありません。ただ、目に見える指針として置くことで、少しずつ私たちの行動も変わっていくと考えています。

イノベーションを生み出す「自由研究」を導入。

 自由研究もMさんからの提案です。イノベーションを生むために自由研究の時間を設け、開発担当者の自由な活動を推奨している企業があります。その仕組みを当社でも今年から導入し、新規事業統括本部のメンバー全員に自由研究の時間を設けました。業務全体の10%の時間なのでそれほど多くはありませんが、活動を始めています。
 自由研究もマインドセットに通ずるものです。実践するか少々悩みましたが、失敗(学習)をする文化をつくることが新規事業を醸成させると学んだこともあり、必要なことであると実践を決めました。

3)得られた成果

プロ人材から得た学びを事業計画にも反映。

 近年、新規事業を創出できていない中、私たちは自分たちの課題を適切に認識する必要がありました。Mさんは「それは駄目」「うまくいかない」とオブラートに包むことなく実直に伝えてくれたのでとてもわかりやすかったです。もちろん、Mさん本人の考えというだけでなく、世界中のさまざまな研究や文献から統計・データ・分析をもとに、客観的に指し示してくれた上で議論できたので、腹落ち感がありました。
 Mさんから学んだことは、事業計画策定の際にも参考にしており、新規事業創出の具体的な行動も含め反映させました。“マクセルらしさ”のある新規事業を生み出そうと挑戦をする私たちを、Mさんの支援が後押ししてくれたと感じています。

企業の事情やレベルに合わせた具体的な提案。

 Mさんに依頼したテーマは「新事業創出の型を学ぶ」ですが、テーマが大きく、広いため、対話を繰り返しながら、やるべきことを絞り込んでいきました。Mさんは当社の組織バランスなども視野に入れながら「次の一手はこれがいいのではないか」と、具体的な提案をしてくれたので取り組みやすかったです。コンサルティングはパッケージ型が主流だと思っていたため、Mさんが、私たちの事情やレベルに合わせて具体的なネクストアクションを設計してくれたのは、とても新鮮でした。

活用のポイントは、
依頼側が課題感を明確にすること。

 プロ人材を有効に活用するためには、依頼側が自分たちの課題感を明確にする必要があると思います。プロ人材はそれぞれ専門的な知識や経験を持っていますが、依頼側の考えていることを正しく共有できないと、なかなか前に進みません。また「こういうことをやりたいんだ」と適切に言語化できることは自分たちの整理にもなるため、プロ人材を活用する上でポイントになると思います。
 HiProは短期間での契約も可能なため、必要なときにかゆいところに手が届きます。今回は新規事業創出のテーマでしたが、それ以外にも幅広いテーマに対応できるため、他部門にも何度か紹介しました。課題を抱える組織にとって、プロ人材の活用はよい仕組みだと私は感じています。