京都 株式会社島津製作所

業界に精通したプロ人材と共に、
隠れた顧客ニーズと新たなサービスの種を探る。

Profile

企業

社名:株式会社島津製作所
所在地:京都府京都市
業務内容:精密機器などの製造・販売
従業員数:10,000名以上

プロ人材

名前:Mさん
居住地:愛知県
経歴:大手総合化学会社、外資系化学工業・製薬会社で勤務。独立後も50件以上のプロジェクトを支援。
<プロ人材としての活動>
業務内容:市場動向に関する情報提供、開発プロセスや競合優位性確保の検討支援、開発における方向性検討支援
活動頻度:月2回以内
活動方法:リモート

  • 新サービス開発の前提となる、
    顧客ニーズや課題の把握に苦戦。
  • 材料・素材業界の幅広い知見を持った
    プロ人材を受け入れ。
  • 提供された生の情報をもとに、
    プロ人材と本音で議論を深める。
  • 仮説とは異なる潜在顧客ニーズを発見し、
    プロジェクトが進展。

1)プロ人材活用の背景

ミッションは
「新製品・新サービスの“種”を創る」。

 当社の主要製品は分析・計測機器です。さまざまな物質の組成・性質・構造・状態を測定する装置の開発・製造を行っています。その中で、基盤技術研究所では新たな製品・サービスを提供していくために、必要な技術の獲得や要素技術開発などを進めていく、つまり新しい製品・サービスの“種”を創ることが私たちのミッションです。数あるテーマの中から、今回は材料・素材開発の領域を検討していました。

「モノ」から「コト」へ。
一歩踏み出した新しいサービスを模索。

 今、材料業界では、マテリアル・インフォマティクス(MI)といって、機械学習などの情報科学を用いて材料開発をより効率的にしていこうというトレンドがあります。加えて、ビジネスの大きな流れも「モノを売る」から「コトを売る」に変化しています。そうした中で、私たちも分析・計測機器メーカーとして機器・装置を提供するだけでなく、もう一歩踏み込んでお役に立てることはないだろうか。ハードウェアに留まらず、ニーズに沿った新しいサービスを打ち出していくことが必要である。そのような課題意識がありました。たとえば、データの解析結果から新たな知見に発展させていくような、MIに資するソリューションが提供できないだろうかと考えていました。

新サービスの前提となる、
顧客ニーズや課題の把握に苦戦。

 ところが実際に動き出してみると、材料メーカーがどのような課題を抱えているのか、どのようなニーズがあるのか、私たち他業界の者では知見が足りないことがわかりました。現在提供している製品の改良や困りごとには、営業担当者が適切に対応しています。しかし、今までにない新たなサービスを提供しようとすると、材料メーカーのニーズが見えてこない。特に材料開発という業務の性質上、材料メーカーからなかなか情報を得られない難しさがありました。

仮説の検証に、
業界に精通したプロ人材の知見と経験が必要に。

 ニーズが見えてこない以上、私たちはあくまで仮説を立てながら進めていくことになります。しかし、その仮説が本当に正しいのだろうかという検証が、最後はどうしても必要です。そうしたときに、プロ人材の活用が有効ではないかと考えました。特定の分野に関して豊富な知見と多くの情報を持たれているプロ人材に入っていただき、私たちの課題感と、プロ人材の見解をすり合わせながらソリューションを構築していったほうが、素早く進められ、遠回りも起きにくいのではないか。そう考えてHiProを活用することにしました。

2)具体的な依頼業務

材料・素材業界の幅広い知見を持った
プロ人材を受け入れ。

 今回参画いただいたMさんは、大手総合化学会社や製薬会社に長年お勤めになり、プロ人材として独立されてからもさまざまな企業を支援されています。そのため、ご自分が開発されていた特定の材料について把握しているだけではなく、幅広くさまざまな材料についての知見があり、材料メーカーの課題もよくご存じでした。私たちの課題は、まずどういうところに取り組むべきかを見つけ出し、新たな研究テーマを立ち上げることだったので、Mさんは最適な人材だと感じました。

業界の動向を調査し、
オンラインでディスカッション。

 Mさんにはまず、材料業界の中で今どのような課題があるのか、市場の動向・情報を整理していただいたり、私たちが考えている方向に対して、どのあたりの材料メーカーがターゲットとなり得るのかをリスト化していただいたりしました。業界動向を幅広く調査をした後、ニーズに合った材料を絞り込んでいきましたが、そこでは絞り込んだ材料について、現在どのような技術動向があるのかなども調査していただきました。これら調査結果報告をもとに、月2回程度、オンラインでディスカッションしていくというのが基本的な進め方です。

ネットやセミナーでは得られない
生の情報を得られるメリット。

 ネットで検索したりセミナーに参加したりするだけでは得られない、業界の実情や生の情報を効率よくまとめていただいたのが大きかったですね。今はネットを見ればなんでもわかると言われますが、ネット上にあるのは表面的な情報が多いです。しかし、ネットやセミナーには出てこない情報こそ、私たちが一番求めているところなので、それを提供いただけるのはとてもありがたかったですね。私たちには調べようがないところですから。

提供された生の情報をもとに、
プロ人材と本音で議論を深める。

 Mさんには、私たちと共に議論して考えていただけたことも大きいですね。たとえば、顧客のニーズと言ってもいくつもの項目が挙げられます。その中でも、現場で一番困っていて解決しなければいけないニーズは何か、それに対して私たちはどのようなソリューションを提供したらよいのかを、私たちのプロジェクトの背景・目的・ゴールをきちんと理解いただいた上で、共に議論しながら探ることができました。Mさんは個人的な意見としながらも「ここが一番大事です」「ポイントだと思います」とはっきり言ってくれたのでありがたかったです。研究開発において専門家の声を聞くことは重要です。学術的なことは大学教授に尋ねるなど方法がありますが、ビジネス・プロダクトとなるとなかなか聞き先がありません。そうした中で、専門性の高いプロ人材からエビデンスを得ながら本音で議論できたのは、とても有意義でした。

3)得られた成果

仮説とは異なる潜在顧客ニーズを発見し、
プロジェクトが進展。

 Mさんに支援いただいた4ヶ月の間に、今回の目的としていた着目すべきテーマと提供するソリューションについて、大きな方向性を示すことができました。当初、私たちだけで仮説を立てていましたが、Mさんの支援を通して、当初の仮説とは異なる顧客ニーズに辿り着けたのです。やはりプロフェッショナルの方にお願いしてよかったと思います。

次のフェーズではテーマを絞り込み、
特定分野に特化したプロ人材を。

 プロジェクトは次のフェーズに進んでいて、先日新たなプロ人材の方と契約を開始したところです。Mさんに支援いただき、絞り込んだテーマの延長線上で、特定の分野・ニーズに対して、どのような技術・手法でソリューションを実現していくか、より具体的な検討を進めていく予定です。Mさんには幅広い知見で支援いただきましたが、次のフェーズでは特定の材料、特定の工程に対して詳しい方に支援をいただくのが適切だろうと判断しました。

フェーズごとに最適なプロ人材と組むことで、
アジャイルな開発が可能に。

 新しいことをやろうとすると、やはりどうしても私たちの知見が及ばない領域まで踏み込むことになりますが、新たな領域だからこそ仮説を立てながらアジャイルに開発したい。プロ人材の活用は、プロジェクトのスタート当初は、お互いの理解や情報共有に多少時間を要しますが、それが済めばあとはどんどん議論を深め、検証スピードをアップできます。また、数ヶ月という短期間の活用もできるので、フェーズに応じて、それぞれ異なる専門性を持ったプロ人材に支援いただけるのは、大きな利点です。フェーズごとに適切なプロ人材と組むことで、より早く、よりよい開発ができると感じています。

外部とのコラボが大きな時流。

 これからの技術開発は、自社単独で行うのではなく、大学や他企業、あるいは国の研究機関などと共に取り組んでいくのが世の中の流れだと思います。当社が2022年に新研究棟「Shimadzuみらい共創ラボ」を開所したのも、こうした流れを意識したものです。新しいアイデアは、自分たちの内部だけで考えていてもなかなか出てきません。開発フェーズでは他企業・他機関とコラボレーションしていますが、その前段階にある研究テーマの検討にあたっては、プロ人材の方とコラボレーションしていくことが、とてもよい方法だと思っています。さまざまな専門性を持った方が登録されているので、今後も有効に活用していきたいと考えています。