京都 株式会社ゆずりは工務店

古民家を再生し、ワーケーション施設を立ち上げ。
プロ人材の知見を取り入れ、能動的なプロモーションに着手。

Profile

企業

社名:株式会社ゆずりは工務店
所在地:京都府木津川市
業務内容:注文住宅、リフォーム工事の設計、施工
従業員数:50名未満

プロ人材

名前:Uさん
居住地:東京都
本業の業種:商社
本業の仕事:マーケティング、PR
<プロ人材としての活動>
業務内容:ワーケーション施設の販促支援・プロモーション、イベント企画等
活動頻度:月20時間程度
活動方法:リモート

  • 古民家再生事業のモデル物件として
    ワーケーション施設開設へ。
  • アドバイスをもとに、
    プロモーションの土台となる
    コンセプトやキャッチコピーを策定。
  • 自社にはない発想とノウハウを得て、
    初めてのプレスリリース配信を決定。
  • 外部人材を活用することで、
    雇用コストとリスクを軽減。

1)プロ人材活用の背景

既存事業を続けながら、
新たに古民家再生を事業化したい。

 当社は創業5年目の工務店です。事業は注文住宅とリフォームが中心ですが、創業したときから、いずれは事業として古民家再生をやりたいと考えていました。(事務所も古民家を利用しています)。古い家でも直せばまだ使えるのに、日本では解体されてしまったり空き家になってしまったりするケースがとても多い。私たち自身も解体の依頼を受けてきました。ただ、古民家再生を事業として成立させるのは簡単ではありません。まずは日頃からネットで古民家物件を検索したり、スタッフと現地を見に行ったりしながら、「いい物件があれば自社で所有して、時間をかけて手直ししてみたい」と話していました。
 そんなときに、たまたま見つけた物件が京都府南山城村にある築100年の古民家です。周囲の環境も建物も一目で気に入り、直感で「これは買わなければ!」と思いました。

古民家再生のモデルとなる絶好の物件を購入。

 資金を多少やり繰りしてでもこの物件を購入したのは、古民家に興味があるお客様のための“モデル物件”にできないかという考えがあったためです。私たちが古民家を再生させ、「築100年でもこんなふうに再生できます」と実際に実物を見せることができれば、古民家の魅力を伝えられると思いました。当初、古民家再生事業については、中長期的に進めていくことを想定しており、スタッフで少しずつ(古民家を)修繕・再生していこうと考えていました。当社のスタッフはモノ作りが好きなメンバーばかり。手が空いたときに自分たちで取り組めば、当社のスキルアップにもつながるのではないかとも考えたんです。

自社にノウハウのないプロモーション領域に
外部人材を活用。

 古民家を購入して間もなく、お世話になっている金融機関の担当者から「現在、国や銀行では地域の再生に力を入れている。ゆずりは工務店さんがやろうとしている古民家(空き家)再生は、地域再生の取り組みに合致しているため、補助金を申請できるのではないか」と助言をいただきました。
 “モデル物件”としての古民家活用は徐々に進めていこうと考えていましたが、古民家再生が補助金対象となるという話は納得感のある提案だったため、急速に話が進展していきました。“ワーケーション施設”という案が挙がったのはその頃です。私たちが再生させた古民家を見学してもらうだけではなく、実際に過ごしたり泊まったりできるようにすれば、古民家の魅力がさらに伝わるのではないかと考えました。
 その一方で、当社は地元密着の工務店ですから、施設の運営はもちろん、広くお客様を誘致するためのノウハウがありません。当然、自社スタッフでも調べたのですが、本業をやりながらではなかなか難しいと感じました。そんなときに、“専門スキルをもった副業人材の活用”ができることを金融機関の担当者に教えていただいたんです。まだ先が見えない事業のため、新たに人材を雇用するのは大きなコストがかかりますし、リスクも大きい。専門スキルを持った人材にスポットで相談できるなら、これこそ望んでいることだとすぐにお願いすることにしました。

2)依頼業務と進行

20名以上の応募から
“経験”と“縁”を重視。

 募集に対し、20名以上の方から応募がありました。今回ご依頼したUさんは、ワーケーション施設のプロモーション経験はないものの、販促・PRと地域再生の経験をお持ちでした。Uさんとは共通の知り合いもいて、偶然にも(古民家の所在地である)南山城村にご縁があったんです。話をする中で「南山城村を盛り上げよう」という気持ちを強く感じて、この方なら一緒にやっていけると期待し、依頼を決めました。

アドバイスをもとに、
プロモーションの土台となる
コンセプトやキャッチコピーを策定。

 打ち合わせは7〜10日間隔で月に3〜4回、基本はリモートです。
 最初の打ち合わせで「コンセプトは何ですか? キャッチコピーや施設のネーミングは?」とUさんから聞かれてハッとしました。コンセプトの構想はあったものの明確にはなっておらず、キャッチコピーやネーミングについては検討できていなかったためです。「ホームページやSNSで発信する際には、コンセプトやキャッチコピーを前面に出す必要がある」と言われ、その策定から取り組むことにしました。当社の設立の際にコンセプトやキャッチコピーを決めた経験はありましたが、改めてコンセプト・キャッチコピーの重要性を再認識しました。
 コンセプトやキャッチコピー、施設のネーミングを決めるにあたっては、当社から出したアイデアに意見をもらったり、Uさんに他社事例を教えていただいたりと、第三者的な立場から相談にのっていただきました。

コンセプトは、
地域課題の解決につながる「再生利用」。

 建物自体のコンセプトは、「再生利用」です。建物そのものも古民家を再生したものですが、それだけではありません。たとえば、放置竹林の再利用。過疎化が進む地域では、もともと人口で作られた竹林が管理者を失い、放置されてしまうという問題を抱えています。今回購入した古民家も裏山に放置竹林があったため、その竹を利用して、柵や階段を作ったり、瓦の一部に利用したり、竹炭を作って調湿・防虫に活かしたりしています。
 地域課題の解決にもつながる再生材利用の取り組みは、Uさんに「ユニーク」だと言われ、私たちも改めて意識するようになりました。古民家再生や再生材利用の取り組みは、これまで動画や写真で撮りためてきたため、ホームページなどを作成しそこで情報発信することで、私たちの想いが伝えられるのではないかと話しています。Uさんからはアイデア出しに留まらず、コンテンツ制作にも携わらせてほしいとお声かけをいただいています。

プレスリリースやインフルエンサーを活用した
プロモーションプランを策定。

 「ユニークな特長があるのだから、これをプロモーションしましょう。それも極力費用がかからないように」というのがUさんの提案でした。プロモーションのアイデアとしてまず言われたのは、プレスリリースを配信してメディアに取材してもらえるように動くこと。今、古民家を取り上げるメディアも増えているため興味を持ってくれるのではないかと言われました。また、インフルエンサーやYouTuberに実際に古民家を体験してもらって、発信してもらおうという案も出していただきました。

人的ネットワークを活かした提携も進行中。

 Uさんは、偶然にも(古民家の所在地である)南山城村にご縁があったという話をしましたが、そのつながりが一つのきっかけとなり、某企業と提携する話も進んでいます。双方の持つ人脈や施設を共有しながら、「地域を盛り上げたい」という共通の想いに沿って、さまざまな取り組みをできたらと考えています。たとえば、南山城村はお茶の生産地として有名なので、茶農家さんを巻き込んで宿泊者向けの茶摘み体験イベントを計画中です。まだ具体的な制作物はできていませんが、Uさんのおかげで着々と準備を進められています。

3)得られた成果

自社にはない発想とノウハウを得て、
初めてのプレスリリース配信を決定。

 ワーケーション施設は、2024年7月末頃のプレオープンを目指して進めています。デスクやWi-Fiを完備し仕事がしやすい環境を整えたのはもちろん、バーベキューもできますし、近くにゴルフ場もあるため、田舎暮らしを体験したい方や都会から離れてゆったりと過ごしたい方にはぴったりの環境です。
 当社は地域に根ざした工務店のため、普段は紹介など“縁でつながる”仕事がほとんどです。そのため今回のワーケーション施設も、最初は知人の利用などから小さくスタートしようと考えていました。しかしUさんから「せっかく素晴らしい施設なのだから、もっと広くプロモーションすべきだ」と熱心に提案いただき、このたび当社初のプレスリリースを配信することになりました。現在Uさんに準備を進めていただいています。
 プレスリリースの配信やインフルエンサーによるプロモーションなど、こうした能動的な取り組みは想像していなかったため、正直驚きました。しかし、ワーケーション施設はゼロからのスタートなので、まず知ってもらうところから始めなければなりません。驚きつつも、社内ではきっとそのようなアイデアは出てこなかったと思うので、学びになりました。

今後の新事業展開にもプロ人材活用を検討。

 今回、古民家再生事業におけるワーケーション施設のプロモーションについてUさんにお願いしましたが、実はそれ以外にもいくつか手がけたい事業があります。たとえば、空き家・古民家に特化した不動産売買。空き家や古民家を自社で買い取り再生し、販売・賃貸することを検討しています。しかし新規事業のために、スタッフを最初から何人も雇い入れるわけにはいかないため、今回のように外部のプロ人材にサポートしてもらえればとても助かるだろうと思いました。
 もう一つ、今回改めて感じたことは、新しい領域の事業を始めるときに、自社のスタッフから出てくる意見と第三者の意見はまったく違うということ。Uさんから提案いただいたプロモーション方法もそうですが、やはりその業界のプロの方に来ていただくと、新鮮な意見がもらえます。スポットで期間を決めて、伴走者として入ってもらえるとありがたいですね。