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副業解禁から学ぶ企業の事例と動向

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テレワークが普及し、働き方の多様化が進む現代において、副業のニーズは拡大しています。それに伴い、副業解禁に踏み切る企業も増えていますが、副業に対するリスクが懸念となり、なかなか解禁できない企業も少なくありません。

一方で、副業を禁止した場合、働き方の自由度に制限がかかるため、優秀な人材が他社に流れてしまう可能性もあります。

では、他社はどのように仕組みを構築し、副業を解禁しているのでしょうか。

本記事では企業の事例を踏まえて、副業解禁の重要性や注意点、副業規定の作成方法についてご紹介します。

副業解禁の背景

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これまで日本では終身雇用が一般的で、それに伴い副業を原則禁止とする企業が大半でした。そのうえで企業が副業解禁に踏み切るきっかけとなったのが、政府推進の働き方改革による「モデル就業規則の改定」と「副業・兼業の促進に向けたガイドラインの策定」です。

この政府の動きの背景には、次の4つが関係しているといわれています。

  • 長時間労働の是正対策
  • 少子高齢化による労働人口の減少
  • グローバル化によるダイバーシティの浸透
  • オープンイノベーションによる事業成長の促進

さらに外的要因として、日本経済の低迷や社会構造変化の加速などが原因で、企業経営の安定化は難しくなっています。

この問題への対策として、多様な人材が活躍するための環境を整えることによって生産性を改善し、持続的な企業価値の向上を実現することが、副業解禁の主な目的です。

そして、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及によって、労働者側の副業意識が高まるようになり、副業を容認する企業が増えています。

この労働市場に対する要求の変化に対して、厚生労働省は2022年7月に副業・兼業に関するガイドラインを改定しました。改定後のガイドラインでは、労働者の多様なキャリア形成を支援する目的で、企業が副業・兼業に関する情報をホームページ等で公開することを推奨しています。

これにより、副業の解禁に踏み切る企業はさらに増加することでしょう。

副業解禁のメリット・デメリット

ここでは企業が副業を解禁することで生まれるメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。

メリット

企業が副業を解禁するメリットは、機会の拡張です。働くことで得られる知識・経験の幅を広げることで、人材の「育成」「採用」領域に役立てることができます。

人材育成

企業の副業解禁は、従業員の成長を促すことができます。企業には人的リソースの兼ね合いで業務優先度などが存在するため、どうしても従業員の知識・経験が1プロダクトに偏ってしまいます。

しかし、企業が副業を解禁すれば、その制限は存在しません。従業員が副業先で異なる業界・業務領域のスキルを習得することは、自社の業務改善や事業成長をより多角的な視点で考えることにもつながるでしょう。

このことから副業は、自社の業務経験だけでは生まれなかった視点でのアイデアが生まれ、労働生産性の向上やイノベーションの創出が期待できます。

人材採用

副業の解禁は働き方の選択肢を増やすことになるため、採用強化や退職防止として役立てられます。

副業を希望する人材は、スキルアップに意欲的な傾向にあるため、主体性をもって思考・行動する人材を獲得しやすくなるでしょう。また、そのような人材が社内にいる場合は、退職の防止策としての機能も期待できます。

デメリット

企業が副業を解禁するデメリットは、リスクの拡大です。具体的には機密情報の漏えい、ワークライフバランスの崩壊、転職機会の増加などが該当します。

機密情報の漏えい

副業は、副業先で得た知識・経験の還元が期待できるのに対して、自社の機密情報の漏えいリスクがあります。

そのため、情報セキュリティ研修の実施や秘密保持契約(NDA)の締結など、情報漏えいを予防するための対策を実施しましょう。

ワークライフバランスの崩壊

副業は自社の労働時間外で実施されるため、従業員の働く時間は必然的に増えます。これによってワークライフバランスを維持することが難しくなり、健康管理に支障をきたす可能性があるのです。

従業員がワークライフバランスを上手く調整できなかった場合、本業での生産性が低下する可能性もあります。

また、アルバイトやパートなどの雇用契約の場合、本業との合算で労働時間の管理が必要です。この場合は労働時間の管理が複雑になるため、副業における契約形態を個人事業主やフリーランスに制限するなど、許可範囲の対策が大切になるでしょう。

転職機会の増加

働き先が増えることは、比較対象が生まれることを意味します。そのため、自社よりも収入や労働面で魅力的な副業先が存在した場合は、転職を検討する従業員も出てくるでしょう。

だからこそ、企業はただ副業を解禁するのではなく、従業員が継続的に働きたいと思えるような環境づくりも同時に進めることが重要です。

副業OKとしている企業の事例

ここでは副業解禁の取り組みとして、企業の事例を3社ご紹介します。

大手プラットフォーマーの事例

多数の事業を展開するA社は副業の解禁に加え、時間や場所などの働き方を制限する要素の見直しを行い、より自由な発想を促進するための機会提供に取り組んでいます。この土台にあるのが、属性や生活環境にとらわれず、社員1人ひとりが活躍できる環境をつくるという同社の風土です。

メディア、ファイナンス、Eコマースなど、多様なサービスを提供する同社にとって、イノベーションの創出は欠かせません。だからこそ、同社はダイバーシティの推進によって働き方の多様性を阻む課題解決に注力しています。副業解禁は、その一環と言えるでしょう。

Eコマース事業者の事例

主にCtoCでのマーケットプレイスを提供するB社は、副業推奨を明文化する際、承認制や申請制などの解禁プロセスを採用していません。競合他社での副業などのNG基準を示し、そこに該当しない副業であれば基本的に自由としています。

同社が副業を解禁する理由として、メインに挙げているのが市場価値の上昇です。この背景には、結果次第で大幅な昇給が実現できる同社の制度が存在しています。この制度によって、本業で収入を高めるために、副業でスキルを拡張するという考え方が根付いているのです。

とはいえ、従業員が目的を実現するために無理をしていては本末転倒です。そこで同社は管理職との定期的なミーティングや、産業医・カウンセラーによる健康管理を実施し、従業員の過労リスク低減に取り組んでいます。

メディア事業者の事例

メディア事業を主力に、ゲームや広告など、多数のサービスを展開するC社は、技術者向けの副業制度を採用しています。

この制度は同社のネットワークを活用し、グループ内での副業を促進することが目的です。グループ内で副業が実施されることによって、部署異動がなくても従業員のスキルを向上でき、グループ全体の技術力を高められます。

また、副業解禁の課題点として挙げられやすい転職リスクを予防できるという意味でも、グループ内での副業は大きなメリットがあるといえるでしょう。

副業規定の作成方法

副業の解禁にはリスクもあるため、就業規則での対策が必要です。従業員の副業を禁止あるいは制限範囲は、厚生労働省によるモデル就業規則を参考にすると良いでしょう。

(副業・兼業)

第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該 業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は 制限することができる。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合

※引用:モデル就業規則 令和4年 11月版 (第70条 副業・兼業)(厚生労働省)

副業を解禁する場合の注意点

副業解禁時の注意点は、「ルール」と「目的」の明確化です。

就業規則でルールを明確にする

ルールが曖昧になっていると、従業員も何を基準に判断すれば良いか分からないため、トラブルが発生した場合でも責任追及が難しくなります。そのうえで具体的に押さえおきたいポイントは、「安全配慮義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」の3点です。

  • 業務負担における心身疲労
  • 情報漏えいによる守秘義務違反
  • 競業先での副業による自社の利益侵害

これらは副業解禁によって発生しやすいトラブルのため、「安全配慮義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」で定義・範囲を明確化することが重要です。その内容をもとに注意喚起を行い、違反した場合は副業を禁止・制限する規定を定めることで、リスク対策にもつながるでしょう。

副業解禁の目的を明確にする

副業において許可・制限の範囲を定める場合、従業員の理解を得るためにも目的の明確化が重要です。

  • 働き方の多様化
  • 複合的なスキルアップ
  • キャリア形成の機会拡張

主たる目的としてイノベーションの創出があった場合でも、そこに紐づけるアクションは無数に存在します。そのため、企業として何を優先するのかによって、許可・制限すべき範囲は異なるでしょう。

まとめ

本記事では、副業解禁の背景から、解禁によるメリット・デメリット、企業の成功事例、副業解禁の注意点などを中心にご紹介しました。

終身雇用が形骸化した現代において、個人がキャリアを主体的に考える重要性は高まっています。そのうえで副業解禁は、単一企業で得られる経験の枠組みを越えて、従業員の体験機会を拡張する手段として有効といえるでしょう。

一方で、副業解禁にはリスクが伴います。そのため、従業員の負担軽減や情報漏えい対策などに注力することが重要です。

企業が持続的なイノベーションを創出していくためにも、副業解禁を上手く取り入れていきましょう。

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