「はたらく」選択肢を増やし、
多様な社会を目指すメディア。

副業・フリーランス。雇用によらない「スキル」の活用がカギ 外部プロ人材の活用で地方企業の課題解決を目指す

鏑木 陽二朗氏/松井 太郎氏

人口減少による人手不足は、年を追うごとに深刻になっている。そこで注目されているのが、人材を雇用するのではなく、スキルを「スポットで活用する」という方法。この方法で成功を収めた鳥取県の事例について、鳥取県立鳥取ハローワークとっとりプロフェッショナル人材戦略拠点の松井太郎戦略マネージャーと、プロフェッショナル人材の総合活用支援サービスを運営するパーソルキャリアの鏑木陽二朗執行役員が語り合った。

鏑木:企業による人材獲得は、コロナ禍を経てますます難しくなっています。背景にあるのは、言うまでもなく労働力人口の急速な減少ですが、それに加え、経営を取り巻く環境の変化がますます目まぐるしくなり、課題解決に貢献する人材の争奪戦が起こっているからです。

例えば、コロナ禍によってビジネスやサービスのデジタル化が加速し、それに対応できる人材の獲得は急務となっていますが、どの企業も同じ課題を抱えているので、限られた人材を取り合う状況になっています。

人口減少のペースが都市部よりも速い地方は、さらに状況が深刻なのではないでしょうか。

都市部のプロ人材が「週1副社長」に

松井:ご存じのように、鳥取県は人口わずか54万人と、全国の都道府県で最少です。東京都の杉並区(約60万人)よりも少ない。しかも、毎年約5000人ずつ減っており、人口減少が加速しています。

そのため、鳥取県は早くから労働力人口の減少を食い止めようとさまざまな施策を打っており、2015年に「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」を設置。私は、その戦略マネージャーとして、都市部のプロ人材を〝移住就職〟させる取り組みをスタートしました。

鏑木:どのような成果が上がったのでしょうか。

松井:結論から言うと、移住就職を希望するプロ人材を受け入れる地元の企業はほとんどありませんでした。どの企業も、売り上げをもっと上げたい、新規事業を立ち上げたいといった経営課題を抱えてはいるものの、その解決のために都市部から移住する大企業の元社員や、デジタル人材といったプロ人材を採用するとなると、最低でも年収700万円以上は払わなければなりません。

とてもそんなお金はないし、仮に雇ったとしても、毎日やってもらうほどの仕事もないということで、ためらう企業がほとんどだったのです。

一方の人材側も、都市部で培ったキャリアや生活基盤を捨ててまで鳥取に移住したいという人はなかなか見つからず、計画そのものに無理があることを思い知らされました。

鏑木:そこで、発想を転換したわけですね。移住してもらうのではなく、都市部に住んだまま、リモートワークでスキルを提供してもらうという方法を生み出したと聞いています。

松井:はい。「鳥取県で週1副社長」というキャッチコピーを掲げ、月に数回、鳥取県の企業の社長の相談に乗ってくれる人材を募集しました。結果は大成功でした。初年度の19年度には14社の企業が名乗りを上げ、人材からも16の求人に対し、約1400人の応募があったのです。

鏑木:成功の要因は何だったのでしょうか。

松井:人材にとっては、月に数回の稼働で済むことが魅力だったようですね。これなら、仕事を辞めずに副業・兼業でこなせますし、移住を伴うという精神的な負担もないので、気楽に手を挙げられます。

一方で企業は、フルタイムで雇用する必要がなく、報酬が月3万~5万円で済むことがありがたいと感じたようです。

相談に乗ってもらえる時間は限られるものの、都市部に住む人材が、そのキャリアや経験を生かして「どうすれば売り上げをアップできるのか?」「どんな新規事業が展開できるのか?」といったことをアドバイスしてくれるのですから、非常に有益です。

ある老舗企業が「週1副社長」の助言を受けて、中期経営計画を策定し、食品自動販売機の設置を新規事業として始めるなど、成功例も数多く出ています。

企業と個人が相乗的に成長する「スキル循環社会」の実現へ

「スキル循環社会」を生み出していきたい

鏑木:人材を雇用するのではなく、その経験やスキルをスポットで活用するというのは、今の時代に合った方法だと思います。先ほども述べたように、人手不足の中で、企業間では優秀な人材の取り合いも起こっているので、欲しい人材を雇用するまでには相当な時間がかかります。しかし、経営を取り巻く環境はどんどん変化しているので、待っている時間はありません。

そこで、雇用という選択肢の他に、副業・フリーランスとして経験やスキルを提供してくれる人材をスポットで活用するという方法も柔軟に組み合わせることが求められているのです。

パーソルキャリアはそうしたニーズを予見し、11年に副業・フリーランス人材と企業をつなぎ、企業の課題解決を担う、経営支援サービスを立ち上げました。現在は「HiPro(ハイプロ)」というサービスで、経営課題の解決から、テクノロジー分野まで、多彩な経験とスキルを持ったプロ人材と企業のマッチング、企業課題の解決の支援を行っています。

松井:雇用という枠を取り払えば、個々の人材が持つ経験やスキルの流動性はもっと高まっていくのではないでしょうか。

鏑木:その通りです。当社ではそれを「スキル循環」と呼んでいます。「HiPro」を通じて、1人の人材が持つスキルがさまざまな企業に提供され、その経験を通じて人材のスキルがさらに向上するという「スキル循環社会」を生み出していきたいと思っています。

松井:地方にも、その動きが広がることを期待したいですね。

鏑木:そうしたニーズに対応するため、「HiPro」は「スキルリターンプロジェクト」をスタートする予定です。人材不足が特に顕著な地方の「スキル循環」を支援するためのプロジェクトです。

今後、全国展開していく予定ですので、ぜひご期待ください。

松井太郎氏
鳥取県立鳥取ハローワーク
とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点
戦略マネージャー
松井太郎
ソフトバンクを経て、2016年から現職。地方版ハローワーク「鳥取県立ハローワーク」の無料職業紹介機能と「プロフェッショナル人材戦略拠点」の人材スカウト機能を組み合わせた全国初のビジネス人材誘致プラットフォームを構築し、19年に「とっとり副業・兼業プロジェクト~鳥取県で週1副社長~」を立ち上げる。近著に「週1副社長になりませんか。」(今井出版)。
鏑木陽二朗氏
パーソルキャリア 執行役員
HiPro 編集長 兼 HiPro 事業責任者
鏑木陽二朗
2001年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。11年に、プロ人材による経営支援サービス「i-common(アイコモン)」(現「HiPro Biz(ハイプロビズ)」)を立ち上げ、事業責任者として組織をけん引。21年10月に執行役員就任。22年5月、業界初となるプロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」を立ち上げ、HiPro編集長に就任。

※2023/06/26公開 ダイヤモンド・オンラインタイアップ広告掲載

この記事が気に入ったら「シェア」

POPULAR

人気記事

DAILY
WEEKLY

SERVICE

HiPro サービス

HiPro Direct

企業と副業・フリーランスをつなぐ
マッチングプラットフォーム

HiPro Biz

経営課題解決に取り組む企業向けの
経営支援サービス

HiPro Tech

フリーランスITエンジニア専門の
IT・テクノロジー特化型エージェント