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メタ認知能力とは?重要性と高める方法、注意点について解説

メタ認知能力 イメージ画像

「メタ認知」という言葉は、もともと脳科学や教育学などの専門分野で使用されていましたが、近年ではビジネスの分野、特に人材育成で注目されています。

メタ認知能力とは、「物事を1つ上の視点から認知すること」と考えるとわかりやすいでしょう。メタ認知能力を伸ばすと、仕事を進めるうえで多数のメリットがあります。

本コラムでは、メタ認知能力の概要や重要性を解説し、メタ認知能力を向上させるトレーニング方法などを紹介します。ぜひ、企業の人材教育の参考にしてみてください。

メタ認知能力とは

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まずは、メタ認知の概要やその重要性を解説します。

自分の認知活動をコントロールする能力のこと

メタ認知とは、アメリカの心理学者のジョン・H・フラベル氏が定義して広めた言葉です。「メタ」は「高次の」という意味を持ち、「自分の思考を客観的にとらえて制御すること」「物事を1つ上の視点から認知すること」などを指します。「もう1人の自分」や「認知についての認知」と呼ばれる場合もあります。

つまり、メタ認知とは「もう1人の自分がいると仮定して、そのもう1人の自分の視点で自分を俯瞰して見てみる」ことです。メタ認知は、視野を広げて自分を客観的に見るために役立ちます。そして、メタ認知を行う心理的な能力のことを「メタ認知能力」と呼びます。

メタ認知能力の重要性

メタ認知は答えのない状況で問題を発見し、課題を設定するうえで重要です。人は多かれ少なかれ、無意識下で自己中心的なバイアスをかけて物事を見ています。メタ認知が高い状態なら、こうした思考の偏りに気付け、高い視座から問題点や対処法を見いだすことが可能です。

また、自分ができることとできないこと、長所・短所などを適切に把握できるようになるため、周囲と協働しやすくなります。

メタ認知能力を高め、1つ上の視点から物事を見ることで、自分が普段気付いていない領域を知れます。いわゆる、ソクラテスの「無知の知」です。

「自分が気付いていないこと」に気付いていない人に、いくら教育しても成果は出にくいでしょう。そのような意味でも、企業の人材教育の面でメタ認知能力の強化は重要です。

メタ認知能力には2種類ある

メタ認知能力には、メタ認知的知識とメタ認知的技能の2種類があります。ここでは、それぞれの内容を簡単に解説します。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、自分自身の課題や目標、経験からくる知識などのことです。たとえば、運動は得意だけれど勉強は苦手、人目を気にしてしまうなど、自分自身のことをよく考えると出てくる「自分に関する情報」を指します。

メタ認知的知識は、おもに次のように分類されます。

  • 人に関する知識
    「疲れていると認知能力が低下する」などの一般的な知識や「運動は得意だけれど勉強は苦手」など、自分自身の認知特性に関する知識
  • 課題に関する知識
    「数字の桁数が増えると計算ミスが発生しやすい」など、課題スキームに関わる知識
  • 方略に関する知識
    「こういう課題はこのように考えると解決しやすい」など、課題を解決するための方法に関する知識

メタ認知的技能

メタ認知的技能とは、メタ認知的知識を把握したうえで自分の状態を察知したり、それを踏まえて行動したりできる力のことです。メタ認知的技能には、次の2つがあります。

  • メタ認知的モニタリング
    自分の状態をよく見つめ、認知の状態が正しいか、良い方向に向かっているか、知識の不足がないかなどを確認すること
  • メタ認知的コントロール
    モニタリングで確認したことを踏まえ、改善に向けた行動変容などを行うこと

企業によるメタ認知能力強化の育成では、メタ認知的技能に関する教育が多く行われています。

メタ認知能力を高めるメリット

続いて、メタ認知能力の向上によって得られるメリットを解説します。

良好な人間関係を築ける

メタ認知能力を高めると、感情のコントロールがしやすくなる、協調性を高められるなどの点から良好な人間関係を築きやすくなります。

自分と他人との間でどのような考え方の差異があるのかを見つけ、その溝を埋めるための方法を適切に見いだせるため、より円滑なコミュニケーションが可能です。その結果、同僚や上司と連携が取りやすくなり、業務効率化や生産性向上につながるでしょう。

さまざまな変化に適応できる

メタ認知能力が高いと、自分を含めた全体の状況を把握できます。トラブルが起きたときも自分の現状を認識し、冷静に対処できるでしょう。つまり、環境がどのように変化しても、柔軟に対応できるようになります。

またメタ認知能力が高いと、汎用性の高い、いわゆる「抽象的な思考」ができます。本質をとらえて物事を考えられるため、時代が大きく変化してもスムーズに適応できるでしょう。

問題解決力が高まる

メタ認知能力が高いと、何か問題が起こっても「大変だ」と思うだけでなく、「今、自分は問題が起こって大変だと感じているな」と自身を客観視できます。

状況を適切に判断して、課題の設定から解決までを焦らずに処理することが可能です。課題のなかで優先順位の高い部分を見つけ、最善の策を導き出すことができるでしょう。また、一度メタのレベルで上位目的を考えると、まったく別の手段を発想することも可能になります。

さらに、自分のことをよくわかっているため、目的に向けて自分の能力を活かしながら、足りない部分は他の人に任せるなどの対策も講じられます。

メタ認知能力が高い人の特徴は?

メタ認知能力が高い人は、自分自身を1つ上の視点から見ているため、自分が見ている世界と他人が見ている世界のギャップが小さくなります。メタ認知能力が高い人に見られる具体的な特徴を紹介します。

周りへの配慮ができる

周囲との適度な距離感を判断でき、周りの人に対して配慮できるというのは、メタ認知能力が高い人の特徴です。そのため、仕事上でも良好な人間関係を形成しながら業務を遂行できます。

また協調性が高いため、周囲をうまくまとめながら目標を達成させる能力もあり、リーダー的な立場に適しています。

冷静な判断ができる

誰かと揉めた場合、メタ認知能力が高い人なら「なぜ相手が怒っているのか」「自分に非はないか」など、相手の立場や自分の状況を客観的に考えて冷静に分析可能です。

また、冷静に全体を把握することで新たな失敗を防ぎ、改善につなげられるため、業務をうまく進められます。

柔軟性がある

メタ認知能力が高い人は先述の通り高い適応力があります。変化に対し何が必要かを把握し行動できる柔軟性を持っているため、何か問題があっても自分や周囲を冷静に見つめながら課題を発見し、その課題を解決するための対処法を探し出せます。たとえば、ミスをしても再発防止のために考え、次に活かすことが可能です。

そのほか、業務の進め方が変わったときや担当者が変更になったとき、新しい部署に配属になったときにも、柔軟に対応することが可能でしょう。

メタ認知能力が低い人の特徴

次に、メタ認知能力が低い人に見られる特徴を紹介します。

思い込みが強い

メタ認知能力が低い人は、自分を客観視できないがゆえに思い込みが強くなる傾向があります。物事を極端に判断したり、感情に任せた突発的な行動をとったりすることがあるでしょう。そのため、仕事で課題解決に手間取ったり、適切な協働ができなかったりすることもあります。

俯瞰的に見られない

メタ認知能力が低い人は全体を俯瞰できず、相手と自分との差異や衝突を素直に受け入れられない傾向があります。そのため、人間関係で悩みすぎる、感情的な言動を発してしまうという行動が多くみられます。

結果的に自分を信頼できない、達成感を得られないなどの問題が生じやすく、成長意欲が高まりにくいこともあるでしょう。

メタ認知能力を高めるトレーニング

メタ認知能力を高めれば、人間関係が円滑になるうえに、業務を効率良く進められることがわかりました。ここからは、メタ認知能力を高めるための具体的なトレーニング方法を紹介します。

メタ認知的モニタリング

メタ認知的モニタリングは、自分を客観視しながら思考・行動の傾向を把握することです。モニタリングをする際は、自分の弱点や欠点から目をそらさずに向き合うことが大切です。自分の思考を紙に書き出して自分自身を客観視し、思考や行動の傾向や長所・短所を確認していきましょう。

すぐに自分を客観視するのが難しい場合は、自分にどのような特性があるのかを把握してみるのもおすすめです。

メタ認知的モニタリングは、自分をいかに客観視できるかがポイントです。客観視するためには、日々の感情を言語化することが効果的でしょう。感情の言語化を習慣にすれば、メタ認知的モニタリングのレベル向上につながります。

メタ認知的コントロール

メタ認知的モニタリングが終わったら、その課題を解決するためのメタ認知的コントロールを行います。自分の弱点や欠点を改善するための対策を考え、それを実行するための目標を立てて、前向きに行動してみましょう。

メタ認知的コントロールでは、過去の成功体験・失敗体験の要因を分析して、成功パターンを見つけることが大切です。そのため、自分1人で行うより、周囲の人と課題を共有し目標設定と振り返りを定期的に実施するとよいでしょう。

メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールを重ねるうちに、課題解決力や課題に向き合う積極性が身に付き、メタ認知能力が高まるといわれています。

瞑想

瞑想は、集中力を高める手法として注目されています。瞑想をすると、自分の思考や状態に集中しその瞬間を客観視できるため、メタ認知能力向上のトレーニングの第一歩として取り入れてみるのもおすすめです。

瞑想の仕方は以下を参考にしてください。初心者なら、1分程度の瞑想でも十分な効果が得られるといわれています。

  1. 調身:上半身の力を抜き、あぐらなどリラックスできる体勢で座って背筋を伸ばす。目は閉じるか半目にする。
  2. 調息:鼻から空気を吸い、鼻から空気を吐く。呼吸を3秒以上かけることを意識する。リラックスしながら行う。
  3. 調心:呼吸音や周囲の静寂、日の光などに意識を向け、それらから刺激を感じている自分自身を認識する。今この瞬間に意識を集中する。

呼吸に集中し、呼吸から意識が逸れてしまったらまた呼吸に集中する、という流れを繰り返すことで、メタ認知能力の向上が期待できるでしょう。

メタ認知能力を高める際の注意点

メタ認知能力が高いことのメリットは多くある一方で、客観視できるがゆえに人の目が気になりすぎてしまい自意識過剰になるというデメリットも考えられます。精神的に負荷がかかりやすくなり、自分の能力を発揮しきれなくなったり、思わぬミスを誘発したりするケースも考えられるでしょう。

企業が社員のメタ認知能力を鍛えることは、業務を円滑に進めるうえで効果的な施策です。しかし、部下を抱える方や管理職の方は、メタ認知能力の高い部下へのフォローも随時行いましょう。能力が発揮しやすい環境作りを意識すると、人材育成だけでなく組織としての成長にもつながります。

また、メタ認知能力が高い人は、常に頭が働いている状態に陥りやすく、思考力を低下させてしまう場合があります。そうした兆候が見られた社員には、自身の内面に集中することや、信頼できる人と対話させるなどの対策をするのがおすすめです。こうしたデメリットは必ず発生するわけではありませんが、留意しておきましょう。

まとめ

メタ認知とは、「自分が認知している物事を客観的にとらえること」「物事を1つ上の視点から認知すること」を指します。メタ認知は答えのない状況で問題を発見し、課題を設定するうえで重要です。

メタ認知能力を高めれば、社員間で良好な人間関係を築きやすくなります。また、全体の状況を把握して変化に柔軟に対応することで、解決策を冷静に導き出しやすくなるため、問題解決力の向上も期待できるでしょう。つまり、成果が出しやすくなるといえます。

メタ認知能力を高めるためには、メタ認知的モニタリングで自分の認知活動の観察と課題の抽出を行い、メタ認知的コントロールで自分の弱点の改善対策を練り、それを実行するための目標を立てて行動することが効果的だといえます。

本コラムを参考に、メタ認知能力の向上を目指してみてはいかがでしょうか。

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