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副業実践者が語る副業活動のリアル

Ambitions FUKUOKA 兼 NewsPicks for Business 九州
編集長大久保 敬太
副業(九州電力株式会社 在籍)
矢野 恒
副業(西日本鉄道株式会社 在籍)
飯田 浩之
元副業、現在はプロ人材(元株式会社電通)
大久保 祐介
Ambitions FUKUOKA 兼 NewsPicks for Business 九州 大久保氏、副業者 矢野氏、副業者 飯田氏、プロ人材 大久保氏

政府による働き方改革の推進を背景として、近年は企業での副業解禁が進んでいます。人手不足に悩む多くの企業にとって、副業人材の受け入れは、課題解決に向けた選択肢の1つになる可能を秘めています。

「HiPro」では、都市部ではたらきながらも、「地域を発展させたい」「この企業の可能性を信じている」という想いを持つプロ人材のスキルを“ふるさと”に還元(リターン)する取り組み「スキルリターン」を2023年6月から開始、2023年12月には福岡での取り組みをスタートしました。

今回は、2024年2月7日に開催した「MEET UP EVENT」より、「副業実践者が語る副業活動のリアル」をテーマとしたトークセッションの様子を紹介します。モデレーターにAmbitions FUKUOKA 編集長 兼 NewsPicks for Business 九州 編集長の大久保氏、パネリストに九州電力在籍の矢野氏、西日本鉄道在籍の飯田氏、副業をきっかけに起業して活躍する大久保氏を迎え、リアルな副業事情について意見を交わしました。

コロナが副業を始めるきっかけに

大久保(モデレーター):まず、副業を始めた理由について教えていただけますか?

矢野:3年ほど前(当時は45歳だったのですが)、ニュースで「45歳定年説」を見かけました。会社によっては55歳くらいで役職定年になることがあると耳にして、私自身の将来も考えていたときに、もともと知り合いだった方から会社の立ち上げを手伝ってほしいという話がありました。この話をいただいたのは、ちょうど在籍中の九州電力で副業制度が開始になったタイミングでした。上司に相談したところ「やってみたらいいんじゃない?」という回答をもらい、副業を始めたという流れです。

大久保(モデレーター):在籍されている会社で副業が解禁になったとのことですが、実際に副業に取り組まれている方はどの程度いらっしゃるのでしょうか?

矢野:私が知っている限りだと10名くらいかなと思います。正確な数字はわかりませんが、おそらく少ないのではないかと思います。全面的に導入されているのではなく試験的運用で、対象の社員が限られているのも、少ない理由の一つです。

大久保(モデレーター):副業で会社の立ち上げをサポートされたとのお話でしたが、本業で新規事業に関するご経験をお持ちだったのですか?

矢野:そうですね。新規事業に10年以上携わり、新しいことにチャレンジするということを続けてきていたので、会社の立ち上げをお手伝いできたのかなと思います。

大久保(モデレーター):飯田さんはいかがでしょうか?

飯田:コロナが流行し始めたころ、思いがけずまとまった時間ができたこともあり、これからの生き方を考えてみようと思いました。人生100年時代といわれるなか、「まだ人生の半分だ」「将来、会社を離れて何もしないというのは寂しすぎる」「何かチャレンジしたい」という思いが湧いてきました。今の会社にいるからこそ、できることもたくさんありますが、会社の外でもチャレンジしてみたいと考えたんです。当時はまだ、会社には副業制度はありませんでしたが、社会の流れからそう遠くない時期に副業制度は導入されるだろうと思い、いろいろと準備をはじめました。2023年4月から副業が可能になり、6月にたまたまご縁があって、長野県の企業と出会い、副業を開始したという流れです。現在は、さらにもう2社のご支援をさせていただいています。

大久保(モデレーター):矢野さん、飯田さんの企業で副業が解禁されたタイミングは、コロナが流行し始めたころだったのですね。

飯田:政府の方針として副業が推進されており、各企業が副業解禁を進めはじめていました。

大久保(モデレーター):お二人と少しキャリアは異なりますが、大久保さんはいかがでしょうか?

大久保(パネリスト):私が元々在籍していた電通は比較的個人での活動が許されるという風土でした。父親が亡くなったことをきっかけにNPO法人の運営に携わるようになったのですが、そこで小さな組織だからこそ感じられる「自己効力感」がよいなと考えるようになりました。そこから、これまでの経験を活かして、スタートアップや地方の中小企業を支援できたらいいなと思ったんです。そんななか、コロナ禍で時間に余裕ができ、Loino(現在は「HiPro Direct for Local」)を通じて鳥取県の中小企業の支援に携わることになりました。

大久保(モデレーター):みなさんの副業を始められたきっかけをお聞きしていると、コロナの流行やそれに伴うオンライン化の影響は大きかったのでしょうか?

矢野:その通りだと思います。出社が前提となっている時代だとその企業に行かなければならないですが、今はリモートですべて完結できるようになり、移動も無くなり、時間の使い方が大きく変わりました。

飯田:背景には、働き方改革の推進もあると思います。残業や休日出勤など、昔は時間的な余裕もなかった。今は働き方改革が進み、ワークライフバランスということでプライベートに多くの時間を使えるようになったというのもあると思います。

大久保(パネリスト):私は仕事が好きで、仕事が趣味である人生を送りたいと考えているので、コロナの影響で空いた時間を何かに使いたいという思いはありましたね。

大企業で得た経験・ノウハウを、スタートアップの課題解決に活かす

大久保(モデレーター):では、副業先のスタートアップから何を求められているのか、またそれにどのように応えているのか聞いていきたいと思います。

矢野:私自身は(本業で)スタートアップへの投資もしているので、スタートアップ側の目線でいうと、副業人材を活用するなら新規事業開発の経験を持っている方が、フィット感が高いと考えています。新規事業ではルーティンワークだけでなく、常に新しいことをしていく必要があるという点で、スタートアップとの相性がよいと感じますね。

飯田:「副業での仕事」というものをお互いによく理解することが大切だと思います。副業をする側にとっては、やっぱり優先すべきは本業です。スタートアップにとっても雇用にリスクを感じて、副業人材を探しているという側面があると思います。そのような状況をお互いに理解し、副業人材が持つ知見やスキルをうまく活用していくというスタンスがよいと考えています。

大久保(モデレーター):大企業でのキャリアを活かして、どのような形でスタートアップに貢献できるのかという点をもう少し詳しく聞かせていただけますか?

矢野:スタートアップ側が求めているものとしては、販路開拓や事業開発、営業のノウハウ提供などが挙げられるかなと思います。例えば、提案営業の進め方などは、ノウハウが蓄積されている分、大企業出身者のほうが身についているのかなと思いますね。

飯田:顧客開拓における大企業へのアプローチの仕方という点では、大企業の経験があるからこそアドバイスできる部分があるかと思います。一般的な企業組織のなかでどの部署にどのようなルートでアプローチすればよいのかなどアドバイスするとともに、場合によっては人脈も使いながらサポートできるのは強みだと感じますね。

矢野:第三者の視点を提示できるのも強みかなと思います。同じ会社にいる人間だけだと似たような考えになってしまいがちですが、大企業での経験をもとにスタートアップに新たな切り口を提示したり、逆にスタートアップの考え方を、自身が取り入れたりと、お互いにメリットがありますね。

大久保(パネリスト):少し抽象的になってしまいますが、「経験」と「第三者視点」が重要かなと思います。「経験」については、大企業での社内調整の経験がとても活きているなと感じます。決算月や稟議に要する期間などを念頭に置いたうえで営業を行うとか、そういった調整力は大事ですし、重宝いただいている部分なのかなと思いますね。

大久保(モデレーター):副業する側とスタートアップ、両方の視点でうまくいくこと、うまくいかないことなどがあれば教えていただけますか?

大久保(パネリスト):信頼関係の構築が大切だと思っています。経営者は人生をかけて、決意を持って経営に取り組まれているので、その目線を理解しながら信頼関係を構築し、第三者の立場から問題解決をサポートするといった姿勢が重要だと感じていますね。まったく同じ立場ではない、第三者だからこそ出せる意見がありますが、経営に対する目線を揃えておくことは大切かなとも思います。

大久保(モデレーター):立場の違いがあるという点も重要なのですね。

大久保(パネリスト):完全に同じ立場だと、意見を出す価値が薄れてしまうと、私は思っています。第三者の立場でありながら、経営者と同じ目線を持つことが重要ですね。

大久保(モデレーター):なるほど。矢野さんは、副業に取り組む側としてどのように感じていますか?

矢野:スタートアップの経営では、初年度が赤字ということも十分ありえます。本業としてその会社にいると、経営状況が不安になる可能性はありますよね。「他の会社に転職しようかな」と考えてしまう人も出てくると思います。ただ、副業であれば生活は本業の収入で成り立つので、業績が不安定だからといって辞めるという選択肢がすぐに出てくることは、あまりないのかなと思います。

プロジェクト単位での貢献度が問われる時代へ

大久保(モデレーター):最後に、これから副業がどのように変わっていくのか、何が重要になりそうか、みなさんの考えを改めて教えてください。

矢野:会社員が一つの会社だけから給料をもらう時代が、この先10年くらいで終わるのではと思っています。一人ひとりがプロジェクトベースで対価をいただくという形が広がり、本業・副業が関係なくなるのではないでしょうか。さまざまなプロジェクトに参画してシナジーを生み出したり、自分の成長につなげたりといったことが重要になり、本業・副業という線引きが無くなる時代がくるのかなと考えています。

飯田:うまく知見やノウハウをシェアできるかが重要だと思います。1つの仕事に100%コミットするのではなく、必要なときに必要な期間だけ関わりを持つという形ですね。イメージとしては、「壁打ち相手」として副業人材を活用するのがよいと思います。「アイデアとしてどうか」「社会に受け入れられるか」といった相談をする壁打ちを通じて、知見やノウハウをシェアできるのではないかと考えています。

大久保(パネリスト):社会全体の適材適所を考えたときに、少し前に「転職」が一般化しました。そこからさらに一歩進んで、職業単位ではなく時間単位での適材適所というものが、副業人材の活用を通して進んでいくのではないかと考えています。例えば、スタートアップで「経理の人材が欲しいけどフルコミットはしてもらわなくていい」といった場合に、時間単位での人材活用が選択されるようになるのではと思います。

大久保(モデレーター):今後も新しい副業の形がどんどん登場してきそうですね。

改めまして、本日はありがとうございました。

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