マーケティングミックスとは?基本的な考え方や活用事例をご紹介!
新商品・サービスが次々と市場でリリースされ、企業間競争が激化する昨今の経済環境の中、「競合より低価格なのに、売上が伸びない」、「プロモーションに多額の予算を投じているに、市場認知度が低い」、「大都市メインで店舗展開しているのに、新規顧客が増えない」 といった悩みを抱えているマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。
さらなる事業拡大に向け、マーケティング戦略の策定や見直しを図る上で大切なのが、今回のテーマとなる「マーケティングミックス」です。
マーケティングミックスなしに、マーケティング戦略の実現化は不可能です。
本コラムでは、マーケティングミックスとはなにかについての用語解説からはじまり、マーケティングミックスの基本的な考え方、マーケティング戦略の観点から見た4Pと4Cの関係、活用事例などについて詳しく解説します。
マーケティングミックスとは
マーケティングミックスとは、マーケティング戦略の中で、理想的な顧客の購買行動を得るために、マーケティングフレームワークやツールを組み合わせることです。
マーケティングミックスにより、企業はマーケティング戦略の成功を期待できるため、現在、多くの企業で導入が進んでいます。
マーケティングミックスの位置づけは「実行戦略」
マーケティング戦略においては、一般的に前段階で策定された分析・戦略結果をもとに、マーケティングミックスを行い、施策の実行へと移ります。
以下は、マーケティング戦略の流れであり、マーケティングミックスはその位置付けから、「実行戦略」と呼ばれています。
ステップ1:環境分析
環境分析は、大きく「内部分析」と「外部分析」に分かれます。
環境分析を通し、企業は自社が置かれている状況を正しく把握することができ、より効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。
- 内部分析:資産やブランド力など、自社の強みや弱みを分析すること
- 外部分析:企業を取り巻く市場や経済、政治などを分析すること
ステップ2:STP分析と基本戦略の策定
事業成長が望める市場や参入可能な市場を選定するため、以下3つの要素(STP)を分析の上、基本戦略を策定します。
Segmentation(細分化された市場)
事業対象となる市場の顧客を、多様な軸(年齢、性別、職業、家族構成、国・地域、ライフスタイル・趣味嗜好など)でセグメントの上、自社商品・サービスとの相関性の高さを分析します。
Targeting(目標の市場)
セグメントしたグループの中から、事業成長につながる相関性の高いターゲット市場を分析・決定します。
Positioning(自社の立ち位置)
決定したターゲット市場における自社の優位性などを、競合他社と比較した上で、分析・把握します。
ステップ3:実行戦略(マーケティングミックス)の策定
STP分析を通し、策定された基本戦略をもとに、決定したターゲット市場に対してどのようにアプローチするか、具体的な実行戦略を策定します。
複数の要素の最良な組み合わせを考えることから、実行戦略は「マーケティングミックス」と呼ばれており、主に用いられる手法として、 後述する4P・4C分析があげられます。
ステップ4:施策の実行と評価
マーケティングミックスをもとに完成したマーケティング施策を実行の上、結果を評価します。評価結果によっては、マーケティング戦略の見直しを行います。
4Pとは?
マーケティングミックスで主に用いられる手法の一つが4P分析となるため、以下に各要素の特徴をご紹介します。
製品(Product)
企業が生産する、製品やサービスを指しています。「製品」なしに、マーケティング戦略は実現しないため、4Pの要の要素ともいえます。
「製品」には、品質、デザイン、パッケージ、プランド、アフターサービスなど、製品を構成する、すべての要素が含まれています。
価格(Price)
企業が生産する、製品やサービスの提供価格を指しています。利益を継続的に得るためには、価格が高過ぎても、低過ぎてもいけません。
市場内での相場をはじめ、自社のシェアや競合他社との競争力などにより、適正価格が決定されます。
流通(Place)
製品の流通ルートや販売場所などを指しています。「広範囲に」「限定的に」「独占的に」「複数チャネルで」など、幅広い選択肢の中から流通手法は選択されます。
流通によってはじめて顧客は製品との接点を持つことができ、売上アップや製品プランドの向上にも直結するため、製品・価格同様に重要な要素となります。
プロモーション(Promotion)
広告宣伝や販売促進などを指しています。製品やサービスを顧客に認知させ、購入してもらうためには欠かせない要素です。
マス広告、ホームページ、SNS、キャンペーンなど、プロモーション手法は多岐にわたるため、ターゲットとなる顧客に対し、最適な手法を調査の上、選定する必要があります。
4Cとは?
4C分析は、4P同様、マーケティングミックスで主に用いられる手法の一つです。4Pが企業視点であるのに対し、4Cは顧客視点に立ったマーケティング理論となります。
以下に各要素の特徴をご紹介します。
顧客価値(Customer Value)
顧客側が対象のモノ・サービスに感じとる価値観のことです。「使いやすい」「心地がよい」「オシャレ」「先進的」など、単なる機能性だけでなく定性的な情緒も意味に含まれます。
顧客が払う経費(Cost)
対象のモノ・サービスに対して顧客側に発生する負担のことです。金銭面だけでなく、そのモノ・サービスを購入するまでの作業負担なども含まれます。
利便性(convenience)
顧客側がどれだけ最短でモノ・サービスを入手できるかの工数のことです。
「場所」「時間」「エリア範囲」などのアクセス面から、「決済の利便性」などの購入手法、さらに主流となっているWebページ上では「検索粒度」「操作性の高さ」も挙げられます。
顧客とのコミュニケーション(Communication)
顧客側と接点を持つ手段のことです。「対面」「イベント」「SNS」や、間接的なものでは「お問い合わせフォーム」なども含まれます。
マーケティング戦略の観点から見た4Pと4Cの関係
4Pと4Cには、それぞれの要素間に密接な関係性があるため、マーケティング戦略を策定する上で充分に理解しておく必要があります。
製品(Product)と顧客価値(Customer Value)
製品と顧客価値は、密接に関係しています。
なぜなら、企業がいかに「これはすばらしい製品だ」とPRしたところで、顧客側が価値やメリットを感じない限り、製品の差別化には繋がらないからです。
価格(Price)と顧客が払う経費(Cost)
顧客が払う経費には、金銭面だけでなく、労力や時間などの要素も含まれます。
関係性を示す一例として、どれほど「価格」が安い製品でも、購入後に時間をかけて、顧客自身が製品を組み立てる必要性がある場合には、顧客側の負担が大きく、思い描く販売結果を得られないケースがあります。
流通(Place)と利便性(Convenience)
流通は、利便性と密接に関係しています。自宅にいながらにして製品を受け取れる宅配サービスは、両者の関係性を示す一例であり、より利便性が高いと感じるものに、顧客は興味・関心を寄せる傾向があります。
プロモーション(Promotion)と顧客とのコミュニケーション(Communication)
広告宣伝により、一方的に企業から顧客に製品・サービスの魅力を伝えるだけではなく、顧客とのコミュニケーションにより、より高い販売効果を見込めます。
一例として、製品利用後の顧客の声などを、プロモーションに反映した場合、顧客はより製品を身近に感じ、購入意欲が高まるケースがあります。
4Pを上手く活用するためのポイント
マーケティングミックス(実行戦略)を通したマーケティング戦略の実現には、4Pの活用が欠かせません。
以下に、4Pを上手く活用するためのポイントを解説します。
顧客を想定する
マーケティングミックスを策定する上で重要なのは、顧客をできるだけ具体的に、明確に想定することです。
年齢や性別、職業、家族構成、ライフスタイル・趣味嗜好などと併せ、購入権限を持つのは誰なのかも含めた想定をすることで、マーケティングミックスの効果はさらに高まります。
4Pに一貫性があるか
マーケティング戦略の実現には、4Pに一貫性があるか確認することも大切です。仮に薄利多売を目指す場合、流通網の確保がなければ、売上を最大化させることはできません。
4Pの一貫性の欠如は、顧客が「誰に向けて、どのような理由・思いで購入するのか」、ストーリーを想定しながらチェックすると、発見しやすいといわれています。
4Pのバランスは整っているか
4Pのバランスが崩れてしまうと、顧客が不安を感じ、顧客離れを引き起こす要因にもなります。
「この製品に対して、設定価格は妥当性があるか」、「商品流通を考えた際、このプロモーションは最適か」など、STP分析の結果をもとに、最適なバランスになるよう4Pを策定しましょう。
4Pは相乗効果を生み出せるようになっているか
4Pのバランスを巧みに設定することで、相乗効果を生み出すことも可能です。
一例として、「地域」限定の商品を、販売期間を限定して上手に「プロモーション」することで、顧客の中でプレミア感が生まれ、相場より「価格」が多少高くても、顧客は納得して商品を購入、企業は売上増加を期待できます。
策定した4Pが、相乗効果を生み出せるようになっているか、充分に検討の上、マーケティング戦略を実現しましょう。
マーケティングミックスの活用事例
市場ではどのように、マーケティングミックスが活用されているのでしょうか。4Pをもとに2つの活用事例をご紹介します。
某コーヒーチェーンの活用事例
某コーヒーチェーンは、「落ち着いた雰囲気で会話を楽しみたい」、「空いた時間でオシャレに仕事や勉強をしたい」と考えている人をターゲットに設定し、価格以上に、顧客が快適に過ごせる場所の提供に価値を置いた結果、業界内でも確固たる地位を確立しました。
製品(Product) |
価格(Price) |
---|---|
単にコーヒーだけでなく、 |
400円前後(割高) |
プロモーション(Promotion) |
流通(Place) |
広告宣伝は一切なく、 |
大都市を中心に展開、 |
某生命保険会社の活用事例
某生命保険会社は、対面販売が一般的だった保険業界で、いち早くインターネット販売に特化し、人件費や店舗運営費を抑えたことで、低価格の保険の提供に成功しました。
また、「プロモーション」をWEB上に特化し、これまで不透明な印象のあった保険料の内訳をすべて公開するなどした結果、子育て世代からの圧倒的な支持を集めています。
製品(Product) |
価格(Price) |
---|---|
保険料の内訳をすべて公開、 |
死亡保障500円台〜、 |
プロモーション(Promotion) |
流通(Place) |
検索エンジンやSNSなど |
対面販売ではなく、 |
まとめ
マーケティングミックスとは、理想的な顧客の購買行動を得るために、複数のマーケティングフレームワークやツールを組み合わせること、また、マーケティング戦略には4Pと4Cの関係性の理解が欠かせず、4Pを上手く活用するためのポイントなどについても、活用事例と併せ、本コラムを通してご紹介しました。
前述の通り、マーケティングミックス(実行戦略)を通したマーケティング戦略の実現には、4Pの活用が欠かせませんが、4Pに一貫性をもたらす必要があり、高い専門スキルを持ったマーケティング人材の活用が不可欠です。
現在のマーケティング戦略が効果不良の場合は、外部の専門人材の活用を、検討事項に入れることをおすすめします。
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