顧客管理とは?顧客管理の基本とシステム導入のポイントをわかりやすく解説
ビジネスのグローバル化を皮切りに、企業を取り巻く環境は刻々と変化しています。
- 市場競争の激化
- 顧客ニーズの多様化
- 新規市場への顧客流出
- 既存ビジネスの高付加価値化
- プロダクト・ライフサイクル(PLC)の短命化
特に近年はVUCAと呼ばれる予測不能な時代に突入したことで、変化に対していかに迅速・柔軟な対処ができるかが、企業の存続にも大きな影響を与えます。
そのうえで顧客の変化を素早くキャッチし、適切なアプローチを実践するうえで重要なのが、顧客管理です。
本記事では、顧客管理の意味や目的、具体的な管理方法や導入時の注意点などについてご紹介します。
顧客管理とは?
顧客管理とは、顧客の情報を記録し、管理することを指す言葉です。デジタルシフトが進む以前は紙での管理が一般的でしたが、現在はソフトウェアを活用したデジタル管理が主流となっています。
顧客管理で収集される情報は、企業や担当者の属性情報、アポイント・商談履歴、取引・購買履歴、収益性、クレーム履歴、アクセス履歴など、多岐に渡ります。
顧客「関係」管理
単に顧客の情報を収集するだけでは、十分な価値を発揮しているとは言えません。記録した顧客の情報をもとに、継続的な関係構築に向けたマネジメントを行うことで、新規顧客の獲得やリピート購入率の向上など、売上の安定化につながります。
つまり、顧客管理の本来の価値は、エンゲージメントの維持にあります。大前提として顧客満足度を保てなければ、成約の機会は発生しません。だからこそ、日時や動機など、行動に伴う要素を分析し、ニーズの理解を深めることで、成約を狙うのです。
この考え方が広まり、近年は顧客との関係を管理することにフォーカスした単語として、CRM(Customer Relationship Management)という言葉が浸透しています。
顧客管理が求められる背景
顧客管理の重要性が高まっている背景には、「少子化による国内人口の減少」と「デジタル化による購入ハードルの上昇」にあります。
少子化による国内人口の減少
総務省の2022年の調査結果において、日本の総人口推計は約1億2484万人(※1)となっています。
※1 出典:人口推計 − 2022年(令和4年)7月報 −(総務省統計局)
国内の人口は減少傾向にあり、これによってエンドユーザーの接触可能数が減り、新規顧客の獲得が以前よりも難しくなっている状況です。
だからこそ、企業が継続的に利益を獲得するためには、既存顧客のリピート購入に加えて、アップセルやクロスセルを促し、顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)を高めることが重要になっています。
このLTVを向上するための手段として、顧客管理の重要性が高まっているのです。
デジタル化による購入ハードルの上昇
従来の情報提供は、TVCMなどのマスマーケティングや、テレアポによるプッシュ営業など、不特定多数の見込み顧客群に対するアプローチが一般的でした。
しかし、インターネットの普及によって、現在はニーズに合致した情報提供ができる時代になっています。
一方で、インターネット上には競合の商品・サービスの情報が乱立しているため、新規顧客の獲得は容易ではありません。
そのため、見込み顧客の行動を分析し、態度変容のタイミングを逃さず、適切なアプローチを実施することが重要になっています。
この情報分析を行うための手段として、顧客管理の重要性が高まっているのです。
顧客管理の目的
顧客管理には、「LTVの最大化」「顧客満足度の向上」「顧客獲得コストの削減」という3つの目的があります。
LTVの最大化
新規顧客の獲得が難しくなった現代では、顧客ライフサイクルをいかに長期化するかが重要です。この顧客ライフサイクルにおいて、期間中に生み出せる利益を顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)といいます。
顧客管理によって良好な関係性を維持できると、購買の単価・頻度・期間などが好転します。これにより、LTVの最大化が期待できるでしょう。
顧客満足度の向上
インターネットの普及による消費者行動の変化により、不特定多数のマスマーケティングは通用しにくくなっています。代わりに台頭してきたのが、One to Oneマーケティングによるパーソナライゼーションです。
One to Oneマーケティングで顧客のニーズを個別に拾い上げることで、柔軟なコミュニケーションが実現できます。このコミュニケーションの要となるのが、顧客管理による情報の収集・分析です。
顧客1人ひとりのニーズに合わせたコミュニケーションを取れることで、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
顧客獲得コストの削減
新規顧客の獲得が難しくなると、顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)が増加してしまいます。このCACの削減につなげる術として期待されているのが、顧客管理です。
顧客管理では、顧客との接点獲得から、商談開始、契約成立、アフターフォローまでの期間において、営業活動のアクション最適化に役立てられます。
顧客管理でニーズの理解が進むと、適切な情報の出し分けだけでなく、顧客の購買意欲が醸成されたタイミングでクロージングに進められるため、余分なコストをかけずに成約率を高められるでしょう。
顧客管理の方法
ここでは顧客管理の具体的な手法として、3つのツールをご紹介します。
CRMツール
CRMとは、Customer Relationship Managementの略称であり、顧客関係管理を指します。そして、顧客の情報を集約し、関係性を管理するために使われるのが、CRMツールです。
CRMツールでは、顧客との接触時に得た全ての情報を一元管理し、提案する商材や態度変容の状況に応じて、適切なアプローチを設計します。
CRMツールの活用により、顧客が「今、何を求めているのか」が可視化されます。この作業をリアルタイム、かつ顧客の担当者単位で実現できるのが、CRMツールの特徴です。
SFAツール
SFAとは、Sales Force Automationの略称であり、営業支援システムを指します。
SFAツールは、商談履歴や案件進捗などの営業活動を一元管理し、組織として効率的な営業体制を確立するためのツールです。
SFAツールの活用により、営業担当がメモ帳やExcelを使って属人的に管理していた情報が共有され、管理職やチームメンバーのフォローも受けやすくなります。
MAツール
MAとは、Marketing Automationの略称であり、マーケティング活動の自動化を指します。
MAツールは、見込み顧客の創出、属性単位でのナーチャリング、スコアリングなどを通じて、顧客の購買意欲を醸成するためのツールです。
MAツールの活用により、パーソナライズ化した情報発信が可能になります。例え顧客数が増えたとしても、継続してOne to Oneでのコミュニケーションが実践できるため、ニーズの察知やフォローのタイミングを逃す心配がありません。
これによって個別対応の品質を平準化しながら、エンゲージメントを高い状態で維持することができます。
CRM(顧客管理)ツールを導入するうえで重要なポイント
CRM(顧客管理)ツールを導入するうえで、押さえておくべきポイントは主に4つあります。
顧客管理の目的を共有する
まずはCRMツールを導入する目的を整理・共有しましょう。CRMツールを導入すれば自動的に売り上げや顧客満足度が上がるほど、簡単に成果が得られるわけではありません。
どのような課題を解決したいのか、何を実現したいのかなどが全体周知されていないと、現場との意見・認識の食い違いが生まれやすくなります。
目的や課題を整理できれば、活用する業務範囲や機能要件、導入後の目標指標も決めやすくなるでしょう。
顧客データの整理と集約
企業の中には、プロダクト単位で顧客データを別々に管理していることも珍しくありません。この場合、管理項目やフォーマットが統一されてない可能性があります。
そのため、全ての顧客データを集約し、データの整理を行うことで、ツール導入時に必要なデータのインポート作業の負担が軽減できるでしょう。
フローの明確化
顧客データを一元管理すると、責任の所在が不明瞭になる可能性もあります。
特に複数のプロダクトが存在する場合、営業担当などの関与者が複数名いるため、誰がどのデータをどのように扱うかなど、フローを明確化することが重要です。
関係各所との連携
CRMツールの導入時に忘れてはいけないのが、関与者との連携です。
営業部署だと営業活動の効率化や平準化を目的としたSFAツールと、マーケティング部署だと顧客の動向分析やMAツールとシナジーを発揮するために、CRMツールの存在が欠かせません。
その他、情報システム部門、カスタマーサポートなど、CRMツールを活用する関係各所と目線合わせを行い、運用の方針やデータ項目の設定などを決めていくことが重要となるでしょう。
まとめ
本記事では、顧客管理の意味や目的、具体的な管理方法や導入時の注意点などについてご紹介しました。
デジタル化に加えて、商品・サービスの多様化が進行した現代において、顧客管理は企業が継続的な利益を出していくために欠かせない存在です。
特に現在はインサイドセールスやカスタマーサポートなど、営業部門が担っていた業務を切り離し、独立した組織として稼働するケースも増えています。
これに伴い、今まで以上に部門横断的な連携が求められるため、いかに顧客情報をリアルタイム、かつ情報の過不足ない状態で可視化できるかは、企業の生産性にも大きな影響を与えるでしょう。
ぜひこの機会にCRMツールなどを用いて、戦略的な顧客管理を検討してみてください。
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