メールマーケティングとは何か?期待できる効果や種類、やり方を解説
メールマーケティングとは、文字通り、メールを用いたマーケティング手法となります。ビジネスシーンに限らず、メールはすでに私達の日常生活に馴染んでいることから、メールマーケティングの遂行経験がない方でも、比較的施策のイメージは持ちやすいのではないでしょうか。
しかし、メールマーケティングの具体的な進め方などについて、詳しく理解している方はあまり多くないと思います。
そこで本コラムでは、メールマーケティングの概要説明からはじまり、期待できる効果や種類、実践前に知っておきたい成功のコツなどについて詳しく解説します。
メールマーケティングとは
メールマーケティングとは、メール配信を通して、売上増加や見込み顧客との関係性構築などを図る、マーケティング施策の一つです。
メールマガジンとの違い
メールマーケティングと混同されやすい用語にメールマガジン(以下、メルマガ)がありますが、両者には配信目的に違いがあります。メルマガの目的が情報を一方的に届けることに対し、メールマーケティングでは、メール送付を通して資料請求や問い合わせなどといった顧客行動の喚起を図ります。顧客に明確な行動を起こしてもらう点に重きが置かれているため、メールマーケティングでは、メルマガと比較しより詳細に顧客属性をリスト化した上で、自社製品・サービスの魅力が伝わるコンテンツを設計・配信します。
なぜ今メールマーケティングが重要視されるのか
多くの企業でメールマーケティングが重要視されている理由につき、以下に解説します。
メールは普及率が高く、多くの人にリーチできる
メールマーケティングが注目されている理由に、メールの普及率の高さが挙げられます。近年SNSを活用したコミュニケーションが増加傾向にありますが、総務省情報通信政策研究所が発表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※1)によると、30代〜60代の平日におけるネット利用項目別利用時間では、「メールを読む・書く」がTOPであることがわかりました。
10〜20代を除く30代以上では、依然としてメールが他者とのコミュニケーションツールの主流であることから、多くの人にリーチできるメールマーケティングは現代においても重要視されているのです。
※1出典: 総務省情報通信政策研究所「令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
投資対効果の高いマーケティング施策
メールマーケティングは、非常に投資効果の高いマーケティング施策の一つに位置付けられています。その理由に、施策遂行時のコストの低さが挙げられます。施策開始時に必要となる配信リスト(対象顧客のメールアドレス)や配信コンテンツについては、いずれも自社が保有する顧客情報を活用の上、準備できます。また、各種メール配信サービスを利用した際の一通あたりの配信コストは、一般的に数円程度であるといわれています。
このように低コストで施策を遂行できるのにも関わらず、得られる成果(資料請求や製品・サービス購入など)は高いことから、メールマーケティングに重きを置く企業は依然として多い状況です。
BtoC、BtoB問わず効果のあるマーケティング施策
仮に、製品・サービスの検討から購入に至るすべてのプロセスにおいて、営業担当が見込み顧客とコミュニケーションを図る場合、非常に大きな人的工数が発生します。後段で解説しますが、メールマーケティングではさまざまなアプローチを用いて、見込み顧客との関係性構築を図ります。
見込み顧客に対して、自社の製品・サービスを購入してもらうためには、継続的に興味・関心を喚起する必要があり、そのための効果的なツールが「メール」です。とりわけ製品・サービスの検討から購入に至るプロセスが長い見込み顧客に対しては、メールマーケティングは高い効果が期待できるため、有用なマーケティング施策として多くの企業で用いられています。
メールマーケティングで期待できる効果
メールマーケティングで企業はどのような効果を期待できるのでしょうか。以下に代表的なものをご紹介します。
顧客の育成
顧客の育成は、リードナーチャリングとも呼ばれており、購買意欲を高めるために不可欠なマーケティング活動です。購買意欲を高めるためには、製品・サービスに対する見込み顧客の認知度を徐々に高めていき、潜在ニーズを掘り起こす必要があります。その際に効果を発揮するのが、メールマーケティングです。
購買意欲が低い最初のフェーズでは、トレンドの紹介記事など、まず見込み顧客に有益だと感じてもらえるコンテンツを配信し、メールコンテンツに対する安心感を与えます。その後、自社事業の強みや導入事例などのコンテンツを配信することで、「この企業であれば、現状抱えている課題が解決できるかもしれない」という自社製品・サービスへの興味・関心を最大限高めていき、資料請求や問い合わせへとつなげています。
リピーターの獲得
一度製品・サービスを購入した顧客は、未購入の顧客と比較し、購入時のハードルが低くなる傾向にあるといわれています。定期的なメール配信を通して接点を取り続けることで、顧客との良好な関係性を構築でき、再購入へとつなげることが可能です。
営業の効率化
メールマーケティングは、営業の効率化にも寄与します。一例として、顧客との接点がない状態からテレアポを実施した場合、難易度の高さから、目標数値の達成までに多くの人員と時間を要する恐れがあります。メール送付後に何らかのアクションを示した顧客(メールを開いた、文中のURLをクリックしたなど)に絞ってテレアポを実施した方が顧客に大きな不安を与えることなく電話の目的を伝えることができ、結果として成果を得やすくなることから、営業の効率化を実現できます。
効果検証が容易
メール配信後の効果検証のしやすさも期待できる効果の一つです。現在市場では、メール配信後の効果を検証できる多種多様なツールがリリースされており、効果検証ツールの導入により、メールの開封率やクリック率、配信停止率、反応率などを確認できます。
また、効果検証ツールの中には、CVR(コンバージョン率)の達成比率を確認できるものもあります。目的に沿った効果検証を行いやすい点は、メールマーケティングの大きなメリットだといえるでしょう。
コンテンツ設計の自由度の高さ
HTMLメールを活用した場合、コンテンツ設計の自由度が高く、さまざまな表現を配信対象者に届けられる点もメールマーケティングの強みです。昨今では、メール本文内に動画の埋め込みもでき、資料請求や問い合わせにおけるURLを適切な場所に設置することもできます。メール内で自在にさまざまな表現を行えるため、CV(コンバージョン)の増加を図れる点も、メールマーケティングで期待できる効果になります。
メールマーケティングの種類
以下に代表的なメールマーケティングの種類について、ご紹介します。
メルマガ
メルマガとはメールマガジンの略称であり、前段でご説明の通り、すべての顧客に対して一斉送信するメールを指します。主な送付内容として、新製品・サービスの告知やキャンペーン情報などが挙げられます。
ステップメール
ステップメールとは、会員登録や製品・サービスの閲覧など、何からのアクションを示した顧客に対して、予め準備していたものを設定したタイミングで送付するメールを指します。会員登録の後には「自社事業の紹介メール」を、製品・サービスの閲覧の後には「導入事例の紹介メール」といったように、顧客のアクションに沿った最適なメール送付が可能です。ステップメールの活用により、段階的に顧客の興味・関心を喚起できるようになります。
ターゲティングメール
ターゲティングメールとは、年齢・性別・業種・地域・ライフスタイルなど、属性ごとに内容の異なるメールを指します。ターゲットを切り分けた上でメール配信を行うため、「セグメントメール」と呼ばれる場合もあります。
リターゲティングメール
リターゲティングメールは、ターゲティングメールの一種です。「Webサイトを訪問した後に離脱」や「資料請求ボタンをクリックした後に離脱」など、顧客の行動を細かくセグメントし、次のアクションを喚起するためのメールがリターゲティングメールになります。
休眠顧客発掘メール
休眠発掘メールとは、過去の自社製品・サービスの購入・利用時から、一定期間反応がない顧客に対し、新たな行動喚起を目的にしたメールを指します。なんらかの理由で「休眠した顧客」に対して、キャンペーンなどの有益な情報を配信することで、購入意欲を喚起できる点が特徴です。
効果的なメールマーケティングの方法
効果的なメールマーケティングの方法につき、以下3つのステップに沿って解説します。
目的・ターゲットを決める
メールマーケティングを実施する際のファーストステップは、「何のために、誰に向けてメールを配信するのか」という目的とターゲットを決めることです。メールマーケティングの目的には、「購買意欲の喚起」「製品・サービスの購入」「アクションを起こした顧客のフォロー」「リピーターの獲得」などがあります。
目的を事前に設定することで、追うべき指標も定まり、改善を図りやすくなるため、最優先で設定するようにしましょう。また、ターゲットの設定も不可欠なポイントです。なぜなら配信対象者が事業責任者クラスか担当者かによって、配信内容や訴求ポイントが大きく変わるためです。
ターゲットに合わせてコンテンツを設計する
ターゲットの設定後は、「ターゲットが思わず目を引き、クリックしたくなる件名・タイトル」「誰から届いたメッセージかがすぐにターゲットに伝わるような工夫」「訴求ポイントが完結に伝わる本文構成」など、ターゲットが求めているメールコンテンツを設計します。また、資料請求や問い合わせへと誘導するURLなど、メール本文のファーストビューにて、遷移先の設定は忘れず実施するようにしましょう。
配信&効果測定
メール配信後の効果を測定するKPIとして、一般的に用いられているのが、開封率・クリック率・反応率・購読解除率の4つの指標です。これらのKPIの分析により、配信対象者がメール配信後の各プロセスにおいて、目的の行動を起こしているかをチェックできます。
開封率
開封率とは、配信完了メールがどの程度の割合で開封されているかを表した指標です。
- 開封率の計算式:メールが開封された数÷読者に届いたメールの総数(×100)
開封率の低い場合、多くの配信対象者にメール本文が読まれていないことを意味し、その後のクリック率に与える影響も大きいため、件名・タイトルを修正・改善する必要があります。
クリック率
クリック率とは、メール内のURLやコンテンツが、どの程度の割合でクリックされたかを表す指標です。
- クリック率の計算式:クリックの総数÷配信対象者に届いたメールの総数(×100)
クリック率が低い場合、コンテンツ内容と併せて、配信時間や偏移先の設置場所の見直しが必要になります。
反応率
反応率とは、メールが開封された数に対し、どの程度の割合でURLがクリックされたかを表す指標です。
- 反応率の計算式:URLクリック数÷開封数(×100)
クリック率は「配信対象者に届いたメールの数」に対してURLがクリックされた割合となる一方、反応率は「開封されたメールの数」に対してURLがクリックされた割合となる点に違いがあります。反応率が低い場合、件名・タイトルとコンテンツにギャップがある可能性があるため、件名・タイトルとコンテンツの相関性に不備はないか確認の上、見直しを図りましょう。
購読解除率
購読解除率とは、届いたメールのうち購読解除(配信停止)された割合のことです。
- 購読解除率の計算式:購読解除数÷配信成功数(×100)
購読解除率が高い場合、メールコンテンツに興味を抱いていないターゲットが多いと想定されることから、コンテンツ内容の改善が必要になります。
実践前に知っておきたい成功のコツ
メールマーケティング実践前に知っておきたい成功のコツにつき、以下にご紹介します。
効果的な配信時間
メールの開封率は、顧客属性などによって変わります。一例として、ビジネスパーソン向けのメールの場合、一般的に休日よりも平日の方が、開封率が高いといわれています。効果的な配信時間は、顧客が属する業界や配信者の業務スタイルによっても異なるため、一定期間効果測定の上、最適な時間帯を決定するようにしましょう。
開封率を上げる件名・タイトル
メールの件名・タイトルは、顧客との最初の接点になるため、メールマーケティングの成功に欠かせない要素となります。なぜなら、メールを受信した顧客は、件名・タイトルを見て即座に開封するか否かを判断し、開封されないことには本文も閲覧されないためです。以下に、効果的な件名・タイトル作成の手法をご紹介します。
文字数は30文字前後で簡潔に
現在、さまざまな企業がメールマーケティングを実施していることから、一日に配信対象者の元には多くのメールが届きます。顧客は大量にあるメールの中から、瞬時に自分にとって必要なものか否か判断を下しています。
件名・タイトルが長すぎる場合、配信対象の顧客が一瞬で内容を理解できず、クリックされずにスクロールされてしまう恐れがあることから、文字数は30文字前後で簡潔にすることが重要です。また、冒頭の15文字にキーワードを盛り込むことで、顧客にメールの概要を即座に伝えることができるため、積極的に取り入れましょう。
件名・タイトル作成における「4Uの原則」
文字数に加えて重要な要素に位置付けられているのが、4Uの原則です。4Uの原則とは、「Useful(有益性)」「Urgent(緊急性)」「Ultra specific(超具体性)」「Unique(独自性)」の4つのUの要素を件名・タイトルに設けることで、顧客の興味・関心を喚起する考え方です。なお、すべての件名・タイトルに「4U」を設ける必要はありません。訴求内容に応じて、適切に組み合わせるようにしましょう。
ファーストビューに遷移先を入れる
顧客に行動を起こしてもらうことに、メールマーケティングの目的があります。例えば、資料請求を目的とするメールの場合、資料請求をワンクリックで行えるリンク先を設定する必要があります。 その際に重要なのが、ファーストビュー(メールを開封した際にスクロールをせずに表示される範囲)に導入文とリンク先を挿入することです。リンク先への導線を設計することで、目的とする顧客行動を喚起しましょう。
A/Bテストを行う
メールマーケティング実施後に、当初に想定していた成果を得られないケースもあります。その場合は、改修や修正を図る必要があり、A/Bテストが効果的です。
A/Bテストとは、AとBのパターンのどちらがより高い効果を得らえるかを比較、検証する際に用いられるテストを指します。一例として、メールマーケティングにおけるA/Bテストでは、件名や本文内容、配信時間など複数のパターンを準備し、同じ属性の顧客に送付の上、効果検証を行います。A/Bテストでは一般的に効果検証が図りやすくなるよう、一つの要素のみ異なるAとBのパターンを準備し、検証します。
A/Bテストで効果検証を得るためには、相応の時間を要するため、中長期的な施策となることを予め認識しておきましょう。また、場当たり的ではなく、仮説を持ってテストに臨むことで、A/Bテストの回数削減を図れます。
ツールの活用
メールマーケティングを効果的に行うためには、メール配信ツールやMAツールの活用が効果的です。以下に、特徴をご紹介します。
メール配信ツール
メール配信ツールとは、メール配信に特化したツールを指します。メール作成からデータ収集・分析の効率化を図りたい場合は、メール配信ツールの導入が効果的です。メール配信ツールの中には「開封率やクリック率がグラフ化され効果測定しやすいもの」や、「行動や反応があった顧客だけをリスト化できるもの」など、現在さまざまな種類のツールが市場に流通しています。メールマーケティングの目的に即したツールを選択し、上手に活用の上、成果を望めるメールコンテンツを作成しましょう。
MAツール
MAツールとは、マーケティング業務の自動化や効率化に寄与するツールを指します。MAツールには、メール配信ツールの機能を備えているものも数多くあります。他にも広告管理やリード管理をスムーズに行える機能が搭載されているMAツールもあるため、メールマーケティングを効率的に推進し、早期の効果を得たい場合は積極的な導入を検討しましょう。
まとめ
本コラムでは、メールマーケティングの概要から重視される理由、実施方法、成功のコツなどについて、幅広くご紹介しました。本コラムを通して、実施に至るイメージを持てた方も多いのではないでしょうか。
メールマーケティングは、これまでご紹介した通り、低コストながら高い効果を期待できるマーケティング手法となりますが、より高い成果を得るためには中長期的な運用が不可欠です。
設定した目的の達成に向け、メール配信後も定期的な効果検証やA/Bテストの実施、各種ツールを活用の上、繰り返し改善を図るようにしましょう。
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