M&Aとは?目的や成功のポイント、流れをわかりやすく解説します。

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M&Aの正式名称は「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)」。それぞれの単語を直訳すると、Mergersは「合併」、Acquisitionsは「買収」の意となります。一般的には企業間の合併・買収行為を指し、時には提携なども包括して「M&A」と呼ぶ場合もあります。

当コラムでは、「M&A」の目的から手法、進め方など、基本的な情報に絞って解説します。

M&Aとは(概要)

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M&Aの目的

M&Aは売り手企業と買い手企業、それぞれの立場によって目的が異なります。双方の視点から目的をご紹介します。

売り手側

売り手側の企業にとっては、大きく「後継者問題の解決」「従業員やノウハウの承継」「事業の整理」に分けられます。

1つめの「後継者問題の解決」は、昨今の人口減少や、経営を継ぐ人物の不在問題を解消するケースです。企業が廃業となる前にM&Aを行うことで、従業員の雇用を継続できたり、オーナー側も利益を得てリタイアできるメリットがあります。

2つめの「従業員やノウハウの承継」は、企業が保有する無形資産(技術やノウハウ)の損失問題を解消するケースです。たとえば売り手が、ニッチかつオンリーワンの技術で経営を継続させてきた老舗零細企業などの場合、当ケースに該当するでしょう。M&Aを行うことで単に従業員の雇用を守るだけでなく、その技術を必要としていた顧客にとっても助けとなります。

3つめの「事業の整理」は、企業が一部の事業のみを譲渡するケースです。M&Aは会社全体を譲渡せずとも、事業を切り分けて譲渡することが可能です。利益の出なくなった事業をM&Aで切り離すことによって、余ったリソースを順調な事業へ再分配することが可能となります。

買い手側

買い手側の企業にとっては、大きく「新規事業への参入」「既存事業の強化」「スケールメリットの獲得」に分けられます。

1つめの「新規事業への参入」は、既存事業にない領域の会社や事業を譲り受けることで、新しい事業として運営することを目的としたケースです。すでに、売り手側の技術や人材、販路など、一定のリソースがある状態からスタートできるため、軌道に乗せるまでのコストや時間を削減できます。

2つめの「既存事業の強化」は、買い手側に不足しているリソースをM&Aによって得ることで、既存事業をより成長させるケースです。戦略的なM&Aの活用方法といえます。

3つめの「スケールメリットの獲得」は、事業に留まらず会社全体の規模を拡大させる目的で行うケースです。拡大によってブランド力や認知度を向上することで、多角的に経営機能を底上げできます。

M&Aが急増する背景

売り手側

先述の通り、後継者の不在や、M&Aのイメージが以前に比べて向上したことが挙げられます。

従来は経営者が親族・子息に承継することが一般的でした。しかし昨今では、親族・子息が不在のケースや、経営者の意向で継がせたくないと考えるケースが増加しています。また従業員不足にも陥っている場合、然るべき継承対象がいないため、解決の手段としてM&Aを活用するケースが多いようです。

また、経営者にとって、従来M&Aは「会社が乗っ取られる、売り払う」というネガティブな印象が先行する傾向にありました。現在は、徐々にこのネガティブイメージが払しょくされ、経営手段のひとつとして認識されはじめていることも、M&Aが増えている理由のようです。

買い手側

要因として、法改正や、情報技術の発達・促進による環境変動が挙げられます。M&Aを進めやすい環境へと変化したことで、M&Aのハードルが下がり、また新規事業立案以外の事業拡大手段として認知されたことも、増加の背景となっています。

M&Aのメリット・デメリット

売り手側メリット・デメリット

先述の内容とも重複しますが、メリットとしては、後継者不在の中でも事業や技術の承継を果たせる点や、従業員の雇用を担保できる点などが挙げられます。

デメリットとしては、適切なM&Aの対象が見つからなかったり、条件の折り合いがつけられないなど、買い手側との間に生じるリスクがあるでしょう。また、せっかく譲渡したにも関わらず、自社従業員の雇用が更新されなかったり、待遇が落とされてしまうケースもあるようです。さらに、元々取引していた顧客がよくない印象を持った場合、契約を打ち切られる可能性もあります。

買い手側メリット・デメリット

メリットとしては、事業成長のためのリソースをより効率的に手に入れられる点や、新規事業立案時、ゼロから始めるよりもリスクを低減できる点が挙げられます。

デメリットとしては、経営統合の工数負荷や、組織拡大による運営スピードの低下などが挙げられます。またM&A後、買い手の企業風土や待遇に不満を持ったり、辞職する従業員が出てしまう可能性もあります。

M&Aの代表的な種類・手法

株式譲渡

「株式譲渡」とは、売り手側の株主が、株式を買い手側に譲渡し、会社の経営権を移転させる手法です。国内の中小企業ではよく活用されている手法となります。

買い手側の企業が代金を支払い、売り手側の企業が株式を交付することで、買い手側は経営権を取得します。経営権を得るための株式は、必ずしも100%でなくとも問題はなく、過半数(50.1%)以上取得すれば、対象会社の経営権を得られます(ただし、100%取得することが一般的)。

株式譲渡のメリット

売り手側のメリットとしては、「手続きが比較的簡単」「事業を切れ目なく存続させられる」「経営者が金銭を獲得できる」などが挙げられます。原則、売り手側が、所属する従業員や顧客などへ承諾を得る必要はありません。また、株式が買い手側に移るのみで、原則全ての資産や取引上の契約を自動で引き継ぐことが可能となります。また、株式譲渡は株主が変わるのみで、売り手側の法人格が存続するため、独立性を維持しやすい点もあります。

買い手側のメリットとしては、「許認可も引き継げる」「手続きが比較的簡単」などが挙げられます。先述の通り、株式譲渡は他のM&Aの手法と比較し必要な手続きが少ないため、買い手側にとっても負担が少ない点がメリットです。

株式譲渡のデメリット

売り手側視点では、「保有したい資産がある場合、手続きが別途必要」となる点が挙げられるでしょう。株式譲渡では経営権がすべて移動する分、譲渡したくない資産がある場合は、買い手との交渉や、別途手続き(譲渡後の資産買戻し、事前の資産譲渡、会社分割など)が必要となります。

買い手側視点では、「売り手側の負の資産も引き継ぐ」点が挙げられます。簿外債務(帳簿に現れない債務)を売り手側が抱えていた場合でも、包括して取得することとなります。

事業譲渡

株式譲渡と異なり、特定事業や事業に関連する資産だけを選別し譲渡する手法です。譲渡可能な範囲は、対象事業そのものを成立させるために機能する資産すべて(商品や設備、不動産、事業組織、特許権など)が含まれます。先述の通り、利益の取りづらい事業の整理などに、当手法が利用されます。

事業譲渡のメリット

売り手側としては、「(買い手との合意によって)譲渡範囲を選択できる」「会社経営権が手元に残る」点が挙げられます。特定の事業を譲渡した後も、他事業を継続できるだけでなく、売却による現金を得られる点、残す資産や従業員の契約を選べる点など、経営戦略に応じて柔軟に譲渡できる点がメリットです。

一方、買い手側としても、「(売り手との合意によって)譲受事業の選別が可能な点」がメリットとなります。継承する財産や契約範囲を指定することで、簿外債務や偶発債務など負の要素を忌避し、必要なリソースや財産のみを譲渡してもらうよう交渉することが可能です。また、取得した償却資産やのれんの償却によって、節税の恩恵も受けられます。

事業譲渡のデメリット

売り手側に対しては、「(株式譲渡と比較して)課税対象と課税率の増加」「競業避止義務による制限」などが挙げられます。後者に関しては、譲渡事業と同じ事業を行うことができなくなるため、注意が必要です。

買い手側に対しては、「許認可の再取得」「商号の変更」「譲渡規模に応じた多額の現金が必要な点」などが挙げられます。また引き継ぐ範囲の選択ができる分、引き継ぐ資産などに関して個別に明らかにしたうえで、事業譲渡契約を締結する必要があります。

会社分割

会社を事業ごとに分割し、譲渡する手法です。会社分割には、吸収分割と新設分割の2種類があります。前者は、切り離された事業が既存の会社に承継される場合を指し、後者は新たに新設される会社へと事業が切り出される場合を指します。ケースとして、グループ企業内での活用メリットが大きく、グループの再編手法として多く活用される傾向にあります。

会社分割のメリット

売り手側にとっては、「包括的に権利業務を譲渡できるため、従業員を流出させずに承継できる」「(事業譲渡と比較して)手続きが簡易的」な点などが挙げられます。

買い手側にとっては、「資金面での負担減少を図れる」点が挙げられます。売り手側へ払う対価について、現金の代わりに株式を選択することも可能なためです。ただし、売り手側の対価希望が、株式でなく現金の場合は交渉が必要となります。

会社分割のデメリット

売り手側には、「(業種によって)許認可の再取得が必要」な点、買い手側にとっては「債務や不要な資産なども引き継ぐ点」が挙げられます。財務状況のチェックや、デューデリジェンス(後述)など、入念な調査が必要です。

株式交換

売り手企業が買い手企業の100%子会社となる組織再編手法です。一般的に、買い手側が上場企業の場合に用いられています。株式交換の対価は、一般的に完全親会社の株式を完全子会社の株主に交付することとなりますが、完全親会社のさらに親会社株式を交付する「三角株式交換」などの手法もあります。

株式交換のメリット

売り手側にとっては「早急な経営統合を行う必要がない」点、買い手側にとっては「(買収対象企業の株主の3分の2以上賛同を得られれば)少数株主を強制排除の上100%子会社化できる」点が挙げられます。前者は、買収後も別法人として存在するため、株式譲渡と比較し経営統合を急ぐ必要はないといえます。

株式交換のデメリット

売り手側にとっては「対価となる株式の現金化が難しい」点、買い手側にとっては「株主構成が変化する」点が挙げられます。前者では、買い手側が現金を対価とせずとも買収可能なため、売り手側にとっては現金が手元に入らない事態ともなります。

合併

複数の会社を一社に統合する手法です。買収と異なり、合併の場合、被合併会社は消滅することとなります。解散した会社の資産や権利などを、新たに設立される会社に承継する「新設合併」と、既存会社に承継する「吸収合併」の2種類があります。

合併のメリット

「節税効果が期待できる点」「(買い手側にとって)資金が不要」な点が挙げられます。前者は、各会計期間の損益が統合される分、合併前に黒字だった会社と赤字の会社が合併することで相殺され、税金がより安くなるためです。後者は、消滅会社に対価として株式を渡すことも可能となります。

合併のデメリット

「手続きの多さ」「株価下落のリスク」などが挙げられます。後者は、人によっては吸収合併に対してネガティブイメージを持つケースもあり、間接的に株価下落につながる恐れがあります。

第三者割当増資

既存株主ではない、第三者に新株の購入権利を付与する増資手法です。未上場会社が資金調達の一環として実施することが多く、取引先などの縁故者に権利を与える場合が多いことから「縁故募集」とも呼ばれています。

第三者割当増資のメリット

「スピーディーな資金調達ができる」点が挙げられます。公募増資などの調達手段と比較すると必要な手続きが少なく、新規事業を立ち上げる際などの資金調達に向いているといえます。

第三者割当増資のデメリット

「既存株主の利益減少」が挙げられます。発行済株式数が増加することで、1株あたりの価値が下がる(希薄化)ため、既存株主が株式を手放したり、間接的に株価へ悪影響が生じるリスクもあります。

資本業務提携

複数企業が「資本の移動」と「業務の協力」を行う手法です。業務提携に加え、株式取得という形でより連携を深める手法となります。

資本業務提携のメリット

「経営権が移転せず、独立性を担保できる」点が挙げられます。双方が、一定のリソース・ノウハウを獲得しながらも、それぞれ経営権を保有したままシナジー効果を見出すことが可能です。

資本業務提携のデメリット

「経営介入の余地を与える」点が挙げられます。資本提携の形で一定の議決権を相手側に付与するため、経営の自由度が下がるリスクがあります。

資本参加

資金援助を目的として、対象企業の株式を取得・保有することで、関係性を強める手法です。企業経営に関与することが目的ではないため、株式取得の割合は3分の1未満となります。そのため、対象企業の独自性が失われることもありません。

資本参加のメリット

売り手側にとっては「独立性を損なわずに資本強化が可能となる」点、買い手側にとっては「経営に対する間接的影響の増加」が挙げられます。直接経営権を与えるほどではないにせよ、買い手側は大株主としてのポジションとなることから、少なからず無視できない存在となります。

資本参加のデメリット

売り手側にとっては「企業間の関係性維持が必要」な点、買い手側にとっては「シナジーが見込めない可能性がある」点が挙げられます。前者については、契約満了時に資本参加の打ち切りを受ける可能性があります。資本参加する企業側との関係性で契約が危うくなるリスクを秘めているため注意が必要です。

合弁会社設立

複数企業が共通の利益を得ることを目的として、共同で会社設立(または取得)を行う手法です(公正取引委員会の企業結合ガイドラインでは、「共同出資会社」という名称となります)。既存会社を用いて合弁会社化する方法と、共同での新設分割を経て新たに合弁会社を設立する方法の2ケースがあります。

合弁会社設立のメリット

「コスト・リスクの低減」「海外進出の容易化」などが挙げられます。出資金を折半できたり、仮に設立後経営継続が難しくなったとしても、失われる出資金が折半分抑えられることとなります。また海外進出の際、合弁会社であれば、外資だと企業設立を禁止している国でも進出可能となります。

合弁会社設立のデメリット

「方針統一の難しさ」「技術・ノウハウの流出」などが挙げられます。前者に関しては、共同出資の分、仮に出資額の差があったとしても、一方が独善的に方針を定めたりすることは好ましくありません。関係性を重視した結果、意思決定が遅れたり、意見が分かれて対立状態となってしまう可能性もあります。

M&Aの進め方

準備

M&Aを行うことによって、どのような方向性へ持っていきたいのか、目標などを設定し、買い手先企業を探すうえで、パートナーとなる外部の専門家を選定します。

先述の通り、M&Aの手法は多岐にわたります。適切な手法を選定したり、他買い手企業の情報を幅広く仕入れるためにも、第三者の専門家や、M&Aの仲介会社の協力を得ながら検討・推進する方が堅実です。

交渉

外部の専門家を選定した後は、M&Aを実施する企業を決定します。買い手先となり得る候補先を専門家や仲介会社にリストアップしてもらい、自社の希望条件とすり合わせながらM&A相手の候補を探します。

また売り手側からは、「ノンネームシート(匿名で、財務状況や事業内容などの自社情報をまとめたシート)」と呼ばれる書類を開示します。当シートは、買い手側が検討するうえでの参考資料となります。ノンネームシートで興味を持たれた売り手は、双方間で「秘密保持契約」を結んだうえで、さらに詳しい情報を買い手に開示します。

情報を確認した後は、直接経営トップ同士が面談を行い、具体的な検討フェーズに進みます。M&Aの方向性や将来性、運営方法などを確認し、協議します。条件面も含めて合意が取れそうであれば、「基本合意書」を作成し、買い手側が独占交渉権を獲得します。

基本合意が完了した後、買い手側は売り手側へ「デューデリジェンス(売り手側の状況把握を行うための精密調査)」を実施します。財務・法務など多角的に売り手側が問題を抱えていないかを調査し、問題が発覚しなければ、待遇や今後のスケジュールなど、最終条件の交渉に移ります。

最終契約

最終契約のプロセスでは、取締役会や株主総会などの議決同意が必要となります。議決で承認を得た後、売り手・買い手双方が改めて合意した場合は、「最終契約書」を締結します(「最終契約書」は、M&Aの手法によって名称が異なります)。

合意後、譲渡金の受け取りや、事業の譲渡などが済んだ時点で、M&Aとしての取引は完了します。その後はPMI(経営統合プロセス)に移行し、会社の方向性や戦略、ビジョンの浸透など、経営体制を再構築するための各種取組を行います。

M&Aを成功させるポイント

納得できるM&A仲介会社を見つける

基本的なことではありますが、仲介を行う専門家や仲介会社は重要な要素となります。今までの経験や知識量などはもちろんのこと、専門知識を要するM&Aでは、はじめての顧客にも分かりやすく説明したり、ささいな相談も丁寧にくみ取るコミュニケーション力が求められます。まずは複数の専門家・仲介会社と会い、納得できるパートナーを探しましょう。

従業員や取引先への説明を丁寧に行う

取引と同様、非常に重要な事項です。M&Aが未確定の状態で情報が広まると、従業員や取引先には混乱を招いたり、経営に対する不信のタネにもつながりかねません。従業員の退職や取引解除などのリスクを最小限に抑えるためにも、M&Aが確定したタイミングで、相手の疑問や不安がなくなるまで丁寧なコミュニケーションを取ることを推奨します。

関係者全員に対するメリットを考える

利己的な考えに偏らず、関係者全員のメリットを抑えることも、M&Aにおける重要なポイントです。相手との交渉や、社内への説明といったコミュニケーションの観点のみならず、成約の可能性そのものを底上げするための要点でもあります。M&Aはあくまでも相手との合意によって成立します。どちらかに利害が偏ってしまうと、交渉はまとまりづらくなるといえます。まずは自分の考える条件と、従業員・取引先にとって与える影響をもとに、条件に優先順位をつけます。そのうえで、交渉時には相手側の立場や目的を理解し、譲れる点と譲れない点をすり合わせながら交渉しましょう。

自社と相性の良い相手先企業を見つける

「相互シナジーを生み出せること」「戦略上における影響が大きいこと」「企業文化やビジョンのベクトルが似ていること」など、自社のM&Aの目的とすり合わせながら、最適な相手を探します。自社だけだと主観に偏りやすくなってしまうため、仲介パートナーのアドバイスも参考にしながら選定しましょう。

経営統合プロセスを丁寧に行う

M&A実施後に行う「経営統合プロセス」も、今後の従業員のモチベーションやパフォーマンスに直結する大切な要素です。売り手側と買い手側、双方の組織に置いて相互理解が深まれば、より一層のシナジーを生み出します。一方、統合が難航した場合、双方の立場で溝ができてしまったり、従業員の離職といった事態にもなりかねません。M&Aの検討段階から、統合のフェーズに目を向けておく方が賢明です。

日本企業におけるM&Aの課題点

M&Aは成長戦略のひとつとして認識が浸透しつつありますが、同時にM&Aを行ううえでの課題も現れ始めています。例としては、以下が挙げられます。

M&Aノウハウを持つ人材の不足

昨今の国内企業では、大手企業によるスタートアップ企業への投資が盛んに行われていますが、肝心のM&A実施を決断できる人材は不足の傾向にあります。というのも、現在の国内における大手企業マネジメント層の採用割合は新卒出身が多く、ゼネラリストとしてのキャリアを積んでいる人が多いがために、M&Aの専門知見を蓄えにくい環境となってしまっている点が挙げられます。

企業文化の違いによる衝突・問題発生

先項「M&Aを成功させるポイント」でも、企業間の相互理解は重要なポイントと述べました。しかし、理解が深まらないまま統合を行うと、各企業の従業員間で亀裂が生じ、衝突や問題が起こるケースも往々にしてあります。基本的には、仕事の進め方から意思決定に至るまで、買い手側の文化を踏襲するケースが一般的であり、この文化に売り手企業側だった従業員が違和感を感じてしまうということです。

日本の人事制度による障害

売り手側と買い手側の企業風土や制度が大きく異なるが故に、M&Aでのシナジーが得られないケースも少なからずあるようです。一例として、給与制度の違いによって失敗しうる例を挙げてみます。昨今では終身雇用制度崩壊に伴い、年功序列ではなく、成果に応じて職能給を支払う制度が浸透しはじめています。年功序列が根付いていた大手企業と、職能給制度を整備していた会社が統合されると、給与制度の相違が従業員にとってモチベーション低下となり、個々の能力が発揮されない事態も起こり得るのです。

まとめ

M&Aは、一見大企業がよく行う手法のようにも捉えられますが、中小企業にとっても十分なメリットがある手法といえます。昨今、問題となっている「承継問題」や「企業再編」など、経営存続および成長のための後押しとなるポテンシャルを秘めているのです。ただし、専門的な知見が多く求められることも事実であり、素人判断では進めにくい領域でもあります。第三者の力も借りることで、より円滑に推進できるでしょう。

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