ハイパーオートメーションにデメリットはある?RPAとの違いや導入事例を交えて解説
データの入力や照合などの自動化が実現したことで、企業の業務は以前よりも効率的になりました。
そして、これから多くの企業で導入が予想されているのがハイパーオートメーションです。ハイパーオートメーションの技術によって、人材不足の解消や業務の大幅な効率化、コスト削減などが期待できます。
では、ハイパーオートメーションとはどのような技術で、現在の業務自動化と何が違うのでしょうか。本記事ではハイパーオートメーションのメリットについて、導入事例を交えながら解説していきます。
ハイパーオートメーションとは?
ハイパーオートメーションとは、AI(人工知能)やRPAを組み合わせることで自動化する手段を指します。
具体的にはツールの併用によって業務プロセスを自動化して、担当者の負担軽減や業務の効率化を図るものです。
業務自動化との違い
既存のAIやRPAツールの適用領域は限定的で、特定のタスクを対象に自動化を実行していました。
一方、ハイパーオートメーションは、業務プロセスにある複数のタスクを対象に、自動化プロセスを作成できます。つまり、AIやRPAを単体で使うよりも広範囲な自動化が可能になるのです。
ハイパーオートメーションはAIなどを組み合わせて、より高度な自動化の適応が可能です。その結果、これまでは専門的な知識を必要としてきた複雑な業務プロセスの自動化も可能になります。
ハイパーオートメーションが注目される背景
ハイパーオートメーションはなぜ注目されるようになったのでしょうか。現在のビジネスシーンの課題点とともに解説します。
ライフスタイルの変化
ハイパーオートメーションが注目され始めた背景には、新型コロナウイルス感染拡大にともなう日常生活や働き方の変化があります。これはニューノーマル(新常態)として浸透した関係で、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いた場合でも、以前のライフスタイルに戻るのは難しいと考えられます。
ニューノーマルな働き方に対応すべく、企業はDX推進に力を入れており、その1つにハイパーオートメーションがあるのです。
人材不足による労働力の減少
ハイパーオートメーションが注目された背景の要因として、人口減少による労働力の減少が挙げられます。日本は少子高齢化社会になり、今後も労働者は減少していくことが予想されます。
そのため、定型業務をはじめとした業務の効率化や自動化は必須であり、ハイパーオートメーションへの期待は高まっています。
ハイパーオートメーションのメリット
実際にハイパーオートメーションを導入することによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
業務を効率化できる
業務にハイパーオートメーションを導入すると、業務の大幅な効率化が実現します。ハイパーオートメーションであれば、24時間365日稼働できます。また、実行スピードが速く、ヒューマンエラーのない稼働が特徴です。
つまり、ハイパーオートメーションは従業員に代わるデジタルレイバー(仮想知的労働者)として、少ないコストで膨大な作業を処理できるのです。
生産性が向上する
ハイパーオートメーションが従業員の代わりとして機能することで、従業員とハイパーオートメーションで業務の分担が進み、従業員はコア業務に専念できます。
つまり、ハイパーオートメーションの導入は、結果的に企業としての生産性を向上させ、新しい製品やサービスを生み出す力の強化にもつなげられるでしょう。
自動化の対象や範囲の拡大ができる
ハイパーオートメーションを導入すれば、業務を自動化できる範囲が大幅に広がります。従来の自動化ツールは、自動化可能な領域が限定されていました。
しかし、ハイパーオートメーションはAIなどを組み合わせているので、構造化データと非構造化データの両方を扱うことが可能です。非構造化データが扱えると、画像や音声、動画などからも情報を読み取って、自動化へとつなげることができます。
専門性が高い業務を多くの人が実施できるようになる
ハイパーオートメーションを導入すると、機械学習の利用やアプリケーションの開発、統計学に基づく高度な分析などを自動化できます。今まではこのような専門知識を要する業務は、特定の人材のみが担当できていました。
そのため、これまでは専門スキルを有した人材だけがおこなうことのできた業務が、スキルを持たない従業員でも取り組めるようになるのです。ハイパーオートメーションの利点の1つとして、単純作業を自動化するだけではなく、高度で専門的な業務も自動化できることが挙げられます。
ハイパーオートメーション導入の課題
ハイパーオートメーションを導入する際にはいくつかの課題が存在します。
業務プロセスの見直し
ハイパーオートメーションを効果的に業務に組み込むには、業務全体のプロセスを見直す必要があります。ハイパーオートメーションは、いくつかの技術やツールを組み合わせ、複数の業務を連動させて自動化しますが、その分、定義も複雑になります。場合によっては従来の業務プロセスだけでなく、組織体制の作り直しを求められるかもしれません。
導入開始時は、プロセスの変更によるトラブル発生や業務遂行の遅れも予想されます。しかし、ハイパーオートメーションとうまく連携させると、結果として飛躍的な業務効率化が期待できるでしょう。
システム連携にともなうコストが必要
ハイパーオートメーションを導入する際は、従来の業務プロセスを変えるだけでなく、データの一元化やツール接続などのコストが必要となります。
また、ハイパーオートメーションとの連携が完了するまでは、確認を常におこなう必要があるので、業務効率が一時的に低下する可能性もあります。ハイパーオートメーションを導入する際は、システム運用によって得られるメリットと導入時のコストを比較し、費用対効果のバランスを考えて判断しましょう。
セキュリティ対策が必要
ハイパーオートメーションを導入するには、セキュリティの対策が必要です。ハイパーオートメーションはさまざまな業務を連携するため、機密情報を扱う機会も出てくるでしょう。だからこそ、外部からの攻撃を受ける際は、ハイパーオートメーションが狙われる可能性も高くなります。クラウドサービスやマイクロサービスなどを組み合わせる場合も、安全性が保たれるセキュリティ対策を講じてください。
導入後のフォロー体制が重要
ハイパーオートメーションを導入する場合は、イレギュラーが発生することを想定し、対応する組織体制の充実が求められます。ハイパーオートメーションの導入は、企業にとっても初めての挑戦であり、マニュアルが整備されていないケースも多いでしょう。そのため、導入後のトラブルが発生した際は、迅速に対応できる人材を組織体制に組み込んでいくことが重要です。
ハイパーオートメーションの導入事例
ハイパーオートメーションは、まだ発展途中のシステムです。自社の課題を理解してから、導入を判断する必要があります。ここからは、実際にハイパーオートメーションを導入した企業の事例をご紹介します。
人事・総務関連事業/A社の事例
人事・総務業務のシェアードサービスを提供するA社は、同サービスを導入する企業の増加にともなう定型業務の増加が課題となっていました。
そこで同社の選んだ解決策が、ELTツールとBIツールが一体化したプラットフォームにRPAを組み込むことです。具体的には業務を効率化するにあたり、定形フォーマットで出力するものや、大量のデータを扱うものなどの業務を洗い出し、RPAを用いて自動化を進めています。
また、自社システムが保有するデータを抽出、加工、分析するツールや、データ分析ツールを内包したデータ活用プラットフォームと連携し、業務効率化の幅を広げています。
このようにハイパーオートメーションを実現し、業務効率化や稼働時間の削減を実現しました。
不動産業界/B社の事例
商業施設を運営するB社は、運営施設の拡大にともない事務作業の増加に課題を感じていました。
そこで事務作業や経理、財務などを対象に、RPAツールを導入しました。中でも紙の利用が大半を占めるスタンプカードの押印履歴を管理する業務は、RPA単体では自動化が難しく、OCRと組み合わせて自動化しています。
ハイパーオートメーションが実現したことで、会社全体で業務効率化に成功しました。
旅行業界/C社の事例
旅行業界C社では、ハイパーオートメーションの導入で企業の経費精算における業務プロセスの効率化を実現しました。従来の業務プロセスでは、出張時に発生する領収書などの証憑が必要な経費は、原本の提出や突合確認業務というプロセスが発生していました。ここにAI-OCRとRPAを組み合わせることで、領収書の電子化やシステムへの入力や確認、承認という一連のプロセスを自動化しています。
まとめ
ハイパーオートメーションが注目されている背景や、導入時のメリットなどについて解説してきました。
ハイパーオートメーションによって自動化の領域は従来よりも大幅に広がり、企業にとって大きなメリットになります。一方、導入までにはコストの管理やセキュリティ対策という準備が必要になります。決して、簡単に導入できるシステムではありません。
ハイパーオートメーションの導入時にかかるコストを計算し、費用対効果を考えたうえで、導入を判断しましょう。
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