【税理士監修】会社員の副業には確定申告が必要?20万円以下でも申告する必要があるケースや注意点を徹底解説

副業に興味があるものの、確定申告などの手続きが気になってなかなか一歩を踏み出せないという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、会社員が副業をする場合に、確定申告が必要になる基準について解説します。副業所得が年間20万円を超えることが一つの目安にはなりますが、20万円以下であっても申告する必要があるケースもあるため、注意が必要です。
副業に興味がある会社員の方や、すでに副業を始めていて確定申告の手続きについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。(2025年2月時点情報)
- 副業で確定申告が必要なのはいくらから?
- 副業所得20万円以下でも確定申告をする必要があるケース
- 住民税の申告は金額にかかわらず必要
- 代表的な副業所得の種類
- 副業所得のパターン別、確定申告の注意点
- 副業の確定申告は青色申告で行う必要がある?
- 副業で青色申告を行うメリット
- 副業で青色申告を行う際の注意点
- 副業の確定申告に必要な準備・手続き
- 副業の確定申告の準備に必要な書類一覧
- 副業の確定申告の記入方法
- 副業で確定申告をする際に気をつけるべきポイント
- 副業で確定申告をしないとどうなる?リスクと対処法を解説
- 副業の確定申告で活用できる節税対策
- 副業の確定申告に関するよくある質問
- 安心して副業をするためにも、確定申告について理解を深めよう
副業で確定申告が必要なのはいくらから?

確定申告が必要なのは、具体的にいくらからなのでしょうか。
以下2つのポイントで解説します。
- 給与所得以外に20万円を超える副業所得がある場合は確定申告が必要
- 副業所得20万円以下なら基本的に確定申告は不要
給与所得以外に20万円を超える副業所得がある場合は確定申告が必要
給与所得以外に20万円を超える副業所得がある場合、原則として確定申告が必要です。副業所得とは、副業で得た収入から、その副業にかかった必要経費を差し引いた金額を指します。
たとえば、副業として年間で50万円の収入があり、必要経費が10万円かかったとします。この場合、副業所得は40万円(収入50万円-必要経費10万円)となり20万円を超えるため、確定申告が必要です。
確定申告は、国に納めるべき所得税の金額を確定させ、税金を納めるために重要な手続きです。手続きを怠ると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。
副業で得た所得が20万円を超えた際は、必ず確定申告が必要になる点を覚えておきましょう。
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副業所得20万円以下なら基本的に確定申告は不要
副業収入から経費を差し引いた所得が20万円以下であれば、一部例外はありますが基本的に確定申告は不要となります。たとえば、ある年に副業を行い、収入が30万円、経費が12万円だったとします。所得は「30万円-12万円=18万円」となり、20万円以下であるため、確定申告は必要ありません。
計算の期間は1月1日から12月31日であるため、毎月の収入がどの程度になりそうか、年末までに合計でどの程度の収入になりそうかを事前にシミュレーションしておきましょう。副業所得が20万円を超える可能性がある場合は、確定申告に必要な資料や手続きを把握しておく必要があります。
副業所得20万円以下でも確定申告をする必要があるケース
前述の通り、基本的には副業所得が20万円以下の場合は確定申告が不要となります。しかし、副業から得た所得が20万円以下でも、確定申告をする必要がある2つのケースがあります。
- 住宅ローン控除(初年度)・医療費控除などを受ける場合
- 税金の還付を受ける場合
それぞれのケースを見ていきましょう。
住宅ローン控除(初年度)・医療費控除などを受ける場合
住宅ローン控除や医療費控除を受ける場合は、確定申告が必要です。
住宅ローン控除については、2年目以降は年末調整で対応可能ですが、初年度は自身で確定申告を行う必要があります。医療費控除は、1年間の医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除で、配偶者や子どもなど家族のために支払った医療費も合算できますが、年末調整では適用できません。住宅ローン控除や医療費控除を利用できる場合は、副業所得が20万円以下であっても確定申告を行うほうがよいでしょう。
また、ふるさと納税をしており、寄附金控除を受けたい場合も確定申告が必要です。「ふるさと納税を行ったのに寄附金控除を受けられなかった」といった事態にならないよう、手続きやスケジュールを確認しておきましょう。
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税金の還付を受ける場合
税金の還付を受けられる場合も、副業所得が20万円以下であっても確定申告を行う必要があります。副業によって得た収入から源泉徴収が行われており、実際の税額よりも多く引かれていれば、確定申告をすることで税金の還付を受けられます。税金を払いすぎて損をしていないか、源泉徴収の金額などをよく確認しておきましょう。
住民税の申告は金額にかかわらず必要
確定申告は、副業所得20万円以下であれば基本的に不要ですが、住民税の申告は金額にかかわらず必要です。以下、2つのポイントを押さえておきましょう。
- 確定申告と住民税申告の違い
- 副業収入があるなら住民税申告が必要
確定申告と住民税申告の違い
大まかにいうと、確定申告は国税である所得税、住民税申告は地方税である住民税を納めるためのものです。管轄も異なるため、基本的には別の手続きが必要だと考えましょう。確定申告を行っている場合のみ、市区町村に情報が連携され、住民税の申告が不要となります。
副業収入があるなら住民税申告が必要
所得が20万円以下であっても、副業による収入がある場合は住民税の申告が必要です。「まだ副業初年度で所得が20万円以下だから、何も手続きは必要ない」と考えず、住民税の申告に必要な手続きを確認し、準備しておくことが大切です。
代表的な副業所得の種類
多様化する副業ですが、国税庁による10種類の所得区分のうち、代表的な副業所得としては以下の4つが挙げられます。
- 給与所得:アルバイトやパートなどで得る所得
- 事業所得:自身が営む事業から得る所得
- 不動産所得:所有する不動産から得る所得
- 雑所得:その他9種類の所得に該当しない所得
それぞれ、具体的に解説します。
給与所得:アルバイトやパートなどで得る所得
給与所得とは、副業としてアルバイトやパートをする際に発生する所得です。雇用契約を結び、会社や事業者から定められた時間はたらいた対価として賃金や給与が支払われます。
たとえば、平日に会社員としてはたらき、休日に飲食店で週2回パート勤務をする場合、その飲食店から受け取る給与は給与所得です。
副業で複数の給与を受け取っている場合は、給与額の多い勤務先を「本業(主たる給与)」とし、本業の1社のみで年末調整を行います。その際、「副業(従たる給与)」とした方の給与収入が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
出典:No.1400 給与所得(国税庁)/No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収(国税庁)
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事業所得:自身が営む事業から得る所得
事業所得とは、継続的に、かつ独立して営む事業から生じる所得です。副業を事業として行っている場合に該当します。
事業所得は、収入から必要経費を差し引いて計算します。必要経費とは、事業を営む上でかかった費用のことです。
事業所得として認められると、確定申告で「青色申告」を選択でき、最大65万円の特別控除を受けられます。また、赤字が出た年はその損失を翌年以降に繰り越すことも可能です。
不動産所得:所有する不動産から得る所得
不動産所得とは、自分が所有している土地や建物などを貸し出して得る賃料収入を指します。たとえば、マンションの一室を賃貸に出している場合、その収入は不動産所得に該当します。
駐車場経営やアパートの家賃収入も同じく不動産所得です。不動産管理会社を通して収入を得ている場合でも、所有者本人に賃料が振り込まれる形であれば、不動産所得として扱います。
不動産所得は、賃料収入から必要経費(修繕費や管理費、減価償却費など)を差し引いた額が課税対象です。
不動産を副業として活用している人は、収支を明確に記録し、毎年忘れずに申告しましょう。
雑所得:その他9種類の所得に該当しない所得
雑所得とは、所得税法で定められている他の9種類の所得(給与所得や事業所得、不動産所得など)に分類されない所得を指します。副業においては、スポット的な活動や副収入が雑所得に該当することが多いです。
たとえば、知識を提供する単発のセミナー講師や仮想通貨などでの取引の利益、フリマアプリで得た臨時収入などが挙げられます。
また、SNSでの広告収入(インフルエンサー活動)や、書籍に関する印税なども、内容によっては雑所得に含まれることがあります。
雑所得は必要経費を差し引いて課税対象額を算出しますが、事業所得のように青色申告はできません。そのため、節税面は事業所得に比べて劣る傾向があります。
副業の規模が小さく、一時的な収入である場合は雑所得として申告しなければならないケースが多いです。収入の種類に応じて、適切に分類しましょう。
副業所得のパターン別、確定申告の注意点
副業所得には10種類あると前述しましたが、所得の種類によって確定申告で注意する点が異なります。ここでは、以下3種類の所得について、確定申告時の注意点を解説します。
- 給与所得の場合
- 事業所得・雑所得の場合
- 不動産所得の場合
給与所得の場合
副業が給与所得の場合、年間の副業収入が20万円を超えていれば確定申告が必要です。
なお、年末調整を実施するのは一つの事業所のみであるため、基本的には本業側で行うことになります。副業先で年末調整をしないよう注意しましょう。また、本業の年間収入が2,000万円を超える場合は副業所得の金額にかかわらず確定申告が必要になるため、注意が必要です。
事業所得・雑所得の場合
続いて、副業で事業所得や雑所得を得ている場合の注意点について見ていきましょう。事業所得や雑所得の場合、給与所得と違って収入から経費を差し引けるほか、青色申告者であれば青色申告特別控除によって最大65万円の控除が受けられます。経費としては、たとえば事業を始めるにあたって必要な書籍や文房具、電子機器などの購入費用が挙げられます。
収入から経費と控除を差し引き、算出した所得が20万円を超えていれば確定申告が必要です。なお、青色申告特別控除を受けるためには確定申告が必要であり、たとえば青色申告特別控除65万円を差し引いたうえで副業所得が20万円以下になる場合でも、確定申告が必要となります。
不動産所得の場合
不動産所得の場合も、事業所得や雑所得の場合と同様に経費や青色申告特別控除を差し引くことが可能です(青色申告特別控除は青色申告者のみ)。ただし、65万円の青色申告特別控除を受けるためには不動産所得を得ている事業が「事業的規模」であるかどうかが問われます。
事業的規模と判断される基準は、独立した部屋が10室または家屋が5棟以上となっており、規模が基準未満の場合は10万円の控除となります。自身の営む不動産事業がどのような規模になるか想定したうえで、確定申告の準備を進めましょう。
副業の確定申告は青色申告で行う必要がある?
ここまでに「青色申告」という言葉が登場していますが、副業の確定申告は青色申告で行う必要があるのでしょうか。ここでは、以下4つのポイントを解説します。
- 青色申告とは
- 副業で青色申告が使えるケース
順番に見ていきましょう。
青色申告とは
青色申告は、確定申告で使える納税制度です。収入からさまざまな経費や控除を引いたうえで所得を計算することが可能となり、白色申告と比べて納税額を抑えられるのがメリットです。青色申告で確定申告を行うには、後述する通り事前の申請が必要になるため注意しましょう。
青色申告は、白色申告と比べて日常的な記録作業や申告手続きに手間がかかるというデメリットがあります。それでも、税額計算時に得られるメリットは大きいため、副業で一定以上の収入を得ている方や得たいと考えている方は、活用を検討するのがよいでしょう。
副業で青色申告が使えるケース
青色申告が使えるのは、副業所得が不動産所得や事業所得、山林所得のいずれかに該当する場合のみです。そのため、給与所得であるアルバイトやパートで得た収入には適用できません。また、雑所得の場合も青色申告を選択できず、確定申告を行う場合は白色申告で手続きをすることになります。
副業で青色申告を行うメリット
副業で青色申告を使うと、以下のようなメリットがあります。
- 青色申告特別控除を受けられる
- 家族に給与を支払える
- 赤字を繰り越せる
- 貸倒引当金を設定できる
順番に見ていきましょう。
青色申告特別控除を受けられる
まず、青色申告のメリットとして最初に挙げられるのが最大65万円の控除が受けられるという点です。青色申告特別控除と呼ばれ、e-Taxでの電子申告に対応するなど一定の要件を満たすことで適用が可能になります。収入から最大65万円を差し引いて所得を計算できるため、適用できれば納税額の大きな抑制につながります。
家族に給与を支払える
また、青色事業専従者給与として家族に給与を支払える点も魅力です。自身の配偶者や子どもに事業を手伝ってもらう場合、それに対する対価を経費として支払えるため、自身の所得を低く抑えられます。給与を受け取った家族は基本的に給与所得控除が受けられるため、トータルでのメリットを考えれば、利用を検討する価値がある制度です。
赤字を繰り越せる
青色申告を選択していれば、事業が赤字だった場合でも、3年間は赤字額の繰り越しが可能です。たとえば、前年が赤字、今年が黒字だった場合、前年分の赤字金額を繰り越すことで今年の所得を抑えられます。3年間の繰り越しが可能なため、事業開始当初に赤字が見込まれる場合などは、将来的な相殺を見越して青色申告をしておくとよいでしょう。
貸倒引当金を設定できる
青色申告では、取引先の倒産リスクなどを見越して計上する貸倒引当金を経費に計上できます。多額の売掛金を抱えている場合など、取引先からの支払いが滞れば手元のキャッシュが足りなくなる可能性があります。貸倒引当金を設定しておけば、リスクに備えられるほか、その年の所得金額を抑えることが可能です。
副業で青色申告を行う際の注意点
さまざまなメリットをもたらす青色申告ですが、以下のような注意点もあります。
- 事前に承認を得る必要がある
- 白色申告と比べて手間がかかる
あとになって「申請が間に合わなかった」「手間がかかりすぎて対応できない」といった事態にならないよう、事前にポイントを確認しておきましょう。
事前に承認を得る必要がある
青色申告を行うには、開業届や青色申告承認申請書の提出が必要です。開業届は開業した日から1か月以内、青色申告承認申請書は申告対象年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2か月以内)に提出する必要があります。
期限を過ぎると青色申告ができず、想定より多くの税金を納めることになりかねません。副業を開始したら早めに申請し、青色申告が可能な状態にしておくとよいでしょう。
白色申告と比べて手間がかかる
青色申告にはさまざまなメリットがありますが、一方で帳簿の作成や管理が複雑で手間がかかるというデメリットもあります。複式簿記によって帳簿を記録する必要があるほか、白色申告と比較して多くの書類を準備する必要があります。簿記の知識がまったくない場合、日々の取引の記録や青色申告の手続きに時間がかかるでしょう。
それでも、副業によって一定以上の収入を継続して得る予定であれば、青色申告はぜひ活用を検討したい制度です。確定申告の直前になって慌てないよう、仕組みや必要な情報や書類の理解を深めておきましょう。
副業の確定申告に必要な準備・手続き
ここでは、副業の確定申告に必要な準備や手続きとして、以下の7点をご紹介します。
- 開業届・青色申告承認申請書を提出する
- 帳簿を作成し、取引を記録する
- 請求書・領収書などを保存する
- 確定申告書を入手・作成する
- 確定申告書を提出する
- 所得税を納税する
- 帳簿や書類を保管する
順番に解説していきます。
開業届・青色申告承認申請書を提出する
青色申告の対象となる副業を開始すると決めたら、事業開始のタイミングで開業届や青色申告承認申請書を提出しましょう。開業届は開業した日から1か月以内、青色申告承認申請書は申告対象年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2か月以内)に提出が必要です。
申請を忘れると、初年度は青色申告特別控除や家族への給与の経費計上といった青色申告のメリットを享受できません。忘れずに手続きしておきましょう。
帳簿を作成し、取引を記録する
スムーズに確定申告を行うためには、日頃から正確に帳簿を作成し、取引を記録することが大切です。仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳など、必要な帳簿を作成して取引を記録していきましょう。取引の内容を遅滞なく記録していれば、確定申告の時期になって慌てることは少なくなるはずです。
請求書・領収書などを保存する
取引や経費の支払いに伴って受領した請求書や領収書などは、保存しておく必要があります。確定申告で提出することは基本的にありませんが、税務調査などの際に提出を求められる可能性があります。正しく記録していることを証明できるよう、受領した請求書や領収書は整理して保存しておきましょう。
確定申告書を入手・作成する
確定申告の時期になったら、確定申告書を入手して作成します。確定申告書は国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から入力や作成ができるほか、税務署で受け取ることも可能です。収入や経費、各種控除などを入力し、所得金額を正確に申告しましょう。
確定申告書を提出する
確定申告書の提出方法は、以下の3つが用意されています。
- 税務署窓口での提出
- 郵送での提出
- e-Tax(オンライン)での提出
e-Taxを利用すれば、マイナンバーカードを用いてオンラインで申告することが可能です。利用しやすい方法で確定申告を行いましょう。
所得税を納税する
確定申告を行うことで対象年の所得税が確定し、納税ができるようになります。所得税の納税方法としては、納付書を使ったコンビニや金融機関での支払いのほか、インターネットバンキングやクレジットカードでの支払い、口座振替などがあります。
帳簿や書類を保管する
確定申告が終わったからといって、書類を破棄してよいわけではありません。申告書や帳簿などには7年間の保存義務があるため、紛失しないように保管しておきましょう。
副業の確定申告の準備に必要な書類一覧
副業の確定申告を始めるには、必要な書類を事前にそろえておくことが重要です。書類がそろっていないと申告書の作成が進まず、手続きが間に合わなくなる可能性があります。
副業の確定申告で準備すべき代表的な書類は、以下のとおりです。
- 確定申告書
- 源泉徴収票(本業・副業分のすべて)
- 副業に関する収入証明書(請求書、支払明細など)
- 必要経費の領収書・レシート
- 各種控除証明書(保険料控除、医療費控除など)
- マイナンバーカードまたは通知カードのコピー
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)のコピー
- 銀行口座情報(還付金の受け取り口座)
申告で必要になる書類には、副業の収入や必要経費を証明するもの、本人確認に関わるものなどがあります。収入の種類や副業の内容によっては追加の書類が必要になることもあるため、早めに確認しておきましょう。
副業の確定申告の記入方法
副業の確定申告では、「確定申告書 第一表」と「確定申告書 第二表」に必要事項を記入します。副業収入の種類や金額によって記載内容が変わるため、各項目の意味を理解しておくことが大切です。
ここでは、各用紙に記入する内容を具体的に解説します。
「確定申告書 第一表」に記載する項目
「確定申告書 第一表」は、申告者の基本情報や所得の合計、納税額を記載する用紙です。申告全体の集計結果をまとめる役割を持っているため、正確な記入が求められます。
まずは、以下のような個人情報を記入します。
- 氏名・生年月日・住所
- マイナンバー
- 職業、屋号(副業で事業をしている場合)
続いて、収入の種類ごとの所得金額を記載します。副業収入が給与所得なら「給与所得」に、雑所得や事業所得なら該当する欄に記入しましょう。控除や所得税額もこの用紙にまとめます。
記入が必要な代表的な項目は以下の通りです。
- 各種所得の金額(給与所得、事業所得、雑所得など)
- 所得控除(社会保険料、基礎控除など)
- 所得税額
- 源泉徴収税額(給与や報酬から差し引かれていた税額)
- 還付金の振込先口座情報
この用紙は全体の集計結果を記すものなので、間違いがあると税額計算に影響します。収入・控除・納税額の計算結果は、帳簿や証明書を元に正確に入力しましょう。
「確定申告書 第二表」に記載する項目
「確定申告書 第二表」は、第一表に記載した所得や控除の内訳を詳しく記入する用紙です。副業収入の内容や、源泉徴収の詳細、控除の対象などを個別に示すことが目的です。
記入すべき代表的な項目は、以下のとおりです。
- 所得の内訳(副業の名称、支払者、所在地、支払金額)
- 配偶者控除、扶養控除などの内容
- 所得控除の内訳(生命保険料、医療費、寄附金など)
- 住民税・事業税に関する事項
- 所得の種類ごとの支払者の情報と源泉徴収税額
たとえば、企業と業務委託契約を結んでいる場合は、発注者名と所在地、支払金額、源泉徴収税額を記載します。副業先から支払い明細や源泉徴収票を受け取っていれば、それを参考に記入しましょう。
第二表の内容は、税務署が申告内容を照合する際の根拠になります。書き漏れや金額の誤記があると問い合わせを受ける場合があるため、証拠書類を手元に用意しながら丁寧に記入しましょう。
副業で確定申告をする際に気をつけるべきポイント
副業で確定申告をするには、いくつか注意すべき点があります。見落としや誤記があると、追加で税金がかかる可能性があります。
申告ミスを防ぐために、以下のポイントを事前に確認しておきましょう。
自分がどの所得区分に該当するかを適切に把握する
自分の副業収入がどの所得区分に該当するかを正しく把握することは、確定申告の第一歩です。所得の種類によって記載方法や控除の内容が異なるため、区分を誤ると申告内容が不正確になります。
たとえば、企業に雇われてアルバイトをしている場合は「給与所得」に該当します。一方で、自分で仕事を受けて請求書を出している場合は「事業所得」または「雑所得」です。不動産収入がある場合は「不動産所得」として扱われます。
申告内容の土台となる分類なので、自分の副業がどの所得にあたるかを早めに確認しておきましょう。
書類の記入ミスや添付漏れがないかを必ず確認する
書類の記入ミスや添付漏れは、税務署からの問い合わせや申告のやり直しにつながる原因になります。提出前にすべての項目と書類を見直し、内容に間違いがないかをチェックしましょう。
よくあるミスには、以下のような例があります。
- 所得金額や控除金額の記載ミス
- 控除証明書の添付漏れ(生命保険料、医療費など)
- マイナンバーの誤記
- 還付先の口座情報の記載漏れ
また、e-Taxで提出する場合は、住宅ローン控除等に必要な添付書類をデータで送信することもできます。PDFでのアップロードやスマホ撮影にも対応していますが、画質や内容が不明瞭な場合は受理されない可能性があるため注意が必要です。
すべての書類をチェックリストにまとめて、提出前に見落としがないかを必ず確認しましょう。
帳簿や領収書は必ず保管する
帳簿や領収書は、確定申告後も税務署からの問い合わせや調査に備えて保管しなければなりません。たとえば、青色申告の帳簿、白色申告の法定帳簿は7年間の保管が義務づけられています。
保管しておくべき書類には、以下のようなものがあります。
- 売上帳や経費帳などの帳簿
- 請求書、領収書、レシート
- 振込明細書や通帳のコピー
- 契約書や業務内容の記録
帳簿はExcelや会計ソフトで作成しても問題ありませんが、データ形式の場合は定期的なバックアップが必要です。紙の領収書は電子帳簿保存法の定める要件を満たす限りスキャンして電子化してもかまいませんが、原本も合わせて保管しておくと安心です。
過去の記録があれば、税務署からの問い合わせにも冷静に対応できます。副業を継続するなら、記録と保管の習慣を整えておきましょう。
所得税の確定申告が不要でも住民税の申告が必要な場合がある
副業の所得が年間20万円以下で所得税の確定申告が不要と判断された場合でも、副業による所得が発生した場合は住民税の申告が必要です。
住民税は所得に応じて自治体が課税します。そのため、税務署への確定申告をしない場合は、代わりに市区町村へ「住民税の申告書」を提出しなければなりません。
税務署と自治体は別の機関であることを意識して、必要な申告を済ませましょう。
副業で確定申告をしないとどうなる?リスクと対処法を解説
副業の確定申告を怠ると、税金の追徴やペナルティの対象になる可能性があります。悪意がなくても、うっかり申告を忘れることで余分な税負担が発生しかねません。
ここでは、確定申告をしなかった場合のリスクと、気づいた際の具体的な対処法を紹介します。
加算税・延滞税が課される可能性がある
副業で確定申告をしなかった場合、後から税務署に指摘されると、加算税や延滞税が課されることがあります。追徴された税金に加えて、ペナルティも追加で支払う必要があるため注意が必要です。
加算税には、以下のような種類があります。
- 無申告加算税(期限内申告がない場合)
- 過少申告加算税(申告内容に誤りがあった場合)
- 重加算税(意図的な仮装隠蔽がある場合)
また、納付が遅れた期間に応じて延滞税も加算されます。延滞税は最大8.7%(令和4年1月1日から令和7年12月31日までの期間)となり、遅れが長引くほど負担が増えます。(2025年8月時点情報)
申告をしないまま放置すると、税額が膨らみかねません。少しでも心当たりがある場合は、速やかに内容を確認しましょう。
出典:No.2024 確定申告を忘れたとき(国税庁)/延滞税の計算方法(国税庁)/延滞税の割合(国税庁)
過去の申告漏れに気づいた際の対処法
過去の副業収入について申告漏れに気づいた場合は、自主的に修正や申告を行うことでリスクを抑えることが可能です。気づいた段階で動けば、ペナルティの軽減や納税額の調整につながる場合があります。
具体的な対応方法は、以下のとおりです。
- 過去の収入や経費を整理し、必要な年度の確定申告書を作成する
- 税務署に「期限後申告」として提出する
- 税務署の窓口や電話で相談しながら対応する
- 不安がある場合は税理士に相談する
期限後申告を行うと原則として納付すべき税金に10%も割合を乗じた金額の無申告加算税が課されますが、自主的に申告した場合は5%に軽減されることがあります。また、延滞税についても、申告の時期によって一部が免除される場合があります。
過去の副業に申告漏れがあると気づいたときは、焦らず事実を整理して、正しい手順で申告を進めましょう。
副業の確定申告で活用できる節税対策
副業で得た収入が増えると、納税額も気になるようになります。確定申告では、正しく手続きすれば合法的に税負担を減らすことが可能です。
ここでは、確定申告で活用できる代表的な節税対策を紹介します。
経費を漏れなく計上する
副業で使った費用のうち、業務に直接関連するものは必要経費として処理することが可能です。経費を正確に計上すれば、課税対象となる所得を減らせます。
経費として計上できる代表例は、以下のとおりです。
- 自宅で使っている作業用PCの購入費
- 作業に必要なソフトウェアやアプリの利用料
- 副業に関する打ち合わせで利用したカフェ代
- メールやSNS運用のための通信費
- 自宅の電気代や家賃の一部(家事按分)
たとえば、月5,000円のソフト使用料を1年分計上すれば、それだけで年間6万円の経費になります。記録がなければ差し引けないため、領収書やレシートは必ず保存しておきましょう。
副業に関わる支出はすべて見直し、無駄なく経費計上しましょう。
最大65万円の青色申告特別控除を利用する(青色申告のみ)
青色申告を選ぶと、条件を満たせば最大65万円の特別控除を受けられます。控除額によって課税所得を減らせるため、高い節税効果を得られるでしょう。
65万円の青色申告特別控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
「事業所得」または事業的規模となる「不動産所得」として認められる副業である
- 青色申告承認申請書を提出している
- 電子申告または優良な電子帳簿保存をしている
- 複式簿記で記帳している
- 貸借対照表と損益計算書を添付して申告する
たとえば、年収300万円の副業で経費を50万円計上し、さらに65万円の控除を使えば、税金の対象となる所得は185万円に圧縮できます。
記帳や手続きにはやや手間がかかりますが、効果は大きいです。副業を継続的に行うなら、青色申告を検討しましょう。
所得控除を活用する
所得控除を活用すれば、納税額を抑えられます。所得控除とは、納税者の生活状況に応じて、課税所得から差し引ける金額のことです。
副業をしている人が使える代表的な控除は、以下のとおりです。
- 社会保険料控除(年金、健康保険など)
- 生命保険料控除(民間の生命保険)
- 医療費控除(年間10万円を超えた自己負担分)
- 配偶者控除・扶養控除(家族の収入条件に応じて)
- 小規模企業共済等掛金控除(小規模共済やiDeCoの掛金)
たとえば、iDeCoに年間24万円拠出している場合、全額が所得控除になります。その分だけ課税対象が減り、税金の軽減につながります。
副業の収入だけでなく生活全体の支出も見直して、使える控除を申告に反映させましょう。
副業の確定申告に関するよくある質問
最後に、副業の確定申告についてよくある以下の質問にお答えします。
- 副業していることが確定申告で会社に伝わる?
- 確定申告をしなかったらどうなる?
- 本業と副業は別々で確定申告が必要?
順番に見ていきましょう。
副業していることが確定申告で会社に伝わる?
副業をする際の前提として、本業が副業を許可しているのか、副業する旨を申請する必要があるのかを確認しておくことが大切です。規定がある場合は必ず守ったうえで、副業を開始する必要があります。
副業をしている事実は、住民税の通知がきっかけとなって会社に伝わることが少なくありません。住民税の徴収方法が「特別徴収」になっていると、本業と副業の合算で計算された住民税額が会社に伝わることになります。本業のみで計算された住民税額と不一致が生じるため、副業をしている事実に会社側が気付く可能性が高くなります。
トラブルを防ぐためにも、必ず本業の会社の規定に準じて副業を始めましょう。
確定申告をしなかったらどうなる?
確定申告が必要であるにもかかわらず行わなかった場合、以下のようなペナルティを受ける可能性があります。
- 無申告加算税
- 延滞税
- 重加算税
いずれも納税額が増えることになるため、確定申告を怠らないことが大切です。
無申告加算税
無申告加算税は、その名の通り所得を申告しなかった場合に課されるペナルティです。確定申告の期間を過ぎてから自主申告した場合にも適用されます。ただし、期限後1か月以内に自主申告していること、期限内に申告する意思があったと認められることなどの条件に該当すれば、無申告加算税は課されません。
無申告加算税の金額は、本来の納税額の5%や10%、15%など申告の状況によって差があります。税務署からの調査の通知前に自主申告を行ったかどうかによっても変動するため、申告漏れに気付いた場合は早めに自主申告しましょう。
延滞税
延滞税は、期限内に納付されなかった税金に対して発生するペナルティで、納付が遅れれば遅れるほど増加するのが特徴です。原則として、期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%、それ以降は年14.6%(実際は延滞税特例基準割合を基に計算した率が適用されます)の延滞税が課されます。無申告加算税と同様、申告漏れに気付いたタイミングで早めに納付するのがよいでしょう。
重加算税
重加算税は、所得に関する意図的な隠ぺいや虚偽の申告に対して課されるペナルティです。本来の納税額の35~40%と税率が高く設定されています。発覚した場合の負担が大きく、重加算税が課されることのないよう正しく確定申告を行っていくことが大切だといえます。
本業と副業は別々で確定申告が必要?
本業と副業は、まとめて1つの確定申告書で申告する必要があります。
確定申告は「個人の1年間の所得全体」に対して行うものであり、本業と副業を分けて申告する制度ではありません。収入の種類や勤務先が異なっても、すべての所得を合算して「総所得金額」を出す必要があります。
たとえば、本業の会社から500万円の給与収入を得ており、副業で年間30万円の報酬を受け取っている場合、以下のようにまとめて申告します。
- 給与所得:会社からの年収500万円
- 雑所得または事業所得:副業の収入30万円
このように、本業と副業の所得を合算して申告することで、正しい納税額が決まります。副業の申告を省略したり、本業と分けて申告したりすると、課税漏れとなってペナルティの対象になる可能性があるため注意が必要です。
すべての所得をまとめて1枚の申告書に記入する必要があるため、本業と副業の収入・必要経費を整理しておきましょう。
安心して副業をするためにも、確定申告について理解を深めよう
本記事では、会社員が副業をする場合に確定申告がいくらから必要になるのか、その基準を解説しました。「副業所得が20万円を超える」ことが一つの目安ではありますが、20万円以下であっても控除や還付のために確定申告が必要なケースもあります。まずは自身が始めようとしている副業や、すでに始めている副業がどの所得区分に入るのか確認したうえで、年間の所得金額をシミュレーションしてみましょう。
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公認会計士・税理士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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