【税理士監修】フリーランスは確定申告が必要?ケース別の判断基準やメリット、やり方を解説

現在は会社員としてはたらいているものの、将来的にフリーランスへの転向を検討している場合、「確定申告って必要なの?」「どうやればいいの?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、フリーランスとして活動する場合に確定申告が必要なのか、ケース別の判断基準や確定申告をするメリット、やり方について解説します。フリーランスへの転向を検討している方、フリーランスとしての活動を始めたばかりの方は、ぜひ参考にしてみてください。(2025年4月時点情報)
確定申告とは?フリーランスも対応が必要?

確定申告とは、1月1日から12月31日までの一年間に得た所得を税務署へ申告し、所得税や復興特別所得税を納めるための手続きです。会社員であれば勤務先が年末調整を行うため、基本的には個人で申告する必要はありません。しかし、フリーランスとして独立している場合や副業で個人事業を営んでいる場合は、自分で所得を計算して税金を申告する必要があります。
フリーランスとは、特定の企業に所属せずに個人で業務を行うはたらき方を指します。収入や経費を正しく管理し、一定額を超える所得があると確定申告を行わなければなりません。会社員の副業としてフリーランスをしている場合であっても、所得が基準を超える場合には申告が必要となるため、注意が必要です。
フリーランスで確定申告が必要なケースと不要なケース
フリーランスとしてはたらく場合、「所得の金額」によっては確定申告を行わなければなりません。反対に所得が少ない、あるいは赤字の場合は確定申告が不要となるケースもあります。
フリーランスで確定申告が必要なケース
フリーランスとして活動している場合、確定申告が必要になるのはたとえば以下のようなケースです。
フリーランスの事業所得のみで、一定以上の所得がある
フリーランスとして一定以上の所得がある場合、確定申告を行う必要があります。所得は「収入(売上)−経費」によって計算され、基礎控除などの適用後、残った所得に対して申告の要否が判断されます。
フリーランスの場合、会社員のように年末調整はないため、基礎控除やその他の控除を超える所得があれば、必ず確定申告を行う必要があります。
本業が会社員で、副業事業所得がある
副業としてフリーランスの活動を行う場合は、事業所得が20万円を超えると申告が必要です。ただし、本業の年間給与収入が2,000万円を超える場合は副業所得の金額に関わらず確定申告が必要となります。年間給与収入2,000万円以下・副業所得20万円以下であっても、副業所得が少しでもあれば住民税の申告は必要になるため注意が必要です。
また、住宅ローン控除や医療費控除、ふるさと納税をしており、寄附金控除を受けたい場合においても確定申告が必要です。
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フリーランス以外に一定以上の所得(副収入)がある
フリーランスの所得のみで確定申告が不要なケースだったとしても、そのほかに一定以上の収入がある場合は確定申告が必要となる場合があります。たとえば、本業のフリーランスの所得が基礎控除の範囲内だとしても、副収入として株式の譲渡益や配当金を得ており、事業所得と合計すると基礎控除を超えるような場合は確定申告が求められます。ただし、源泉徴収がされる特定口座で取引していたり、NISAなどの非課税口座を利用していたりするケースでは不要です。
その他、2か所でアルバイトをしている場合や雑所得があるような場合など、状況によっては確定申告が必要になることがあります。
不動産投資を行っている場合、本業とは別に得た家賃収入などに対して申告が必要です。ただし、不動産投資が赤字の場合は事業所得と相殺し、最終的な所得が基準を下回れば申告が不要となることもあります。
フリーランスで確定申告が不要なケース
フリーランスとしての所得が基準を下回る場合や赤字の場合には、確定申告が不要となります。ただし、状況によっては申告したほうが得になることもあるため、事前によく検討しましょう。
フリーランスとしての所得が基準を下回っている
本業のフリーランスとしての年間所得が基礎控除や各種控除の合計よりも小さい場合、確定申告を行う必要はありません。副業としてフリーランスをしている場合は、本業の給与所得以外の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要です。ただし、フリーランスとしての活動が本業や副業どちらの場合でも、所得が少しでもあれば住民税の申告は必要になるため注意しましょう。
フリーランスとしての所得が赤字であり、他の所得がない
フリーランスとしての所得が赤字の場合、原則として確定申告の義務はありません。
しかし、確定申告を行うことで損益通算や損失の繰り越しといった節税効果が得られる場合があります。まず、事業所得の赤字はその他の給与所得などから差し引けるため、合計所得を減らして税額を抑えることが可能です。さらに、青色申告を選択している場合は、赤字を最大3年間繰り越せるため、翌年以降に事業が黒字に転じたときにその赤字分を差し引き、税負担を軽減できるメリットがあります。
「赤字だから確定申告は不要」と安易に考えるのではなく、今後の収支を見据えたうえで慎重に検討しましょう。
フリーランスが確定申告によって得られるメリット
フリーランスが確定申告をすれば、以下のようなメリットが得られます。
- さまざまな控除が受けられる
- 経費を計上できる
- 第三者に所得を証明できる
- 赤字の相殺や繰り越しができる
- 税金の還付を受けられる場合がある
各メリットを順番に見ていきましょう。
さまざまな控除が受けられる
フリーランスとして確定申告を行えば、基礎控除や青色申告特別控除、配偶者控除、配偶者特別控除などを適用して所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。
基礎控除はすべての納税者に適用され、所得が一定以下の場合は48万円分の控除が認められます。青色申告特別控除は、複式簿記による青色申告やe-Taxでの電子申告に対応するなど一定の要件を満たすことで最大65万円の控除を受けられる制度です。また、配偶者の収入が一定以下の場合には、所得に応じて配偶者控除や配偶者特別控除の適用が可能となります。こうした控除を的確に活用すれば、結果的に納税額を引き下げられる可能性があります。
経費を計上できる
フリーランスの事業活動に必要な支出は「経費」として計上できます。具体的には、仕事で使用するパソコンやソフトウェアの購入費、取材や打ち合わせの交通費、通信費などが挙げられます。経費が大きくなればなるほど、課税対象となる所得が下がり、税額を抑えられるでしょう。もちろん、私的な支出との区別を明確にし、領収書やレシートなどの証拠書類をしっかり保管することが重要です。
第三者に所得を証明できる
フリーランスとして活動していると、社会的信用を得るために所得の証明が必要になる場合があります。たとえば、住宅ローンの審査などが挙げられます。確定申告書の控えは、所得証明の場面で根拠として役立つため、各種手続きがスムーズに進められるでしょう。
赤字の相殺や繰り越しができる
フリーランスの所得が赤字の場合でも、確定申告を行うことで損失をその他の所得と相殺したり、翌年以降に繰り越したりすることが可能です。損益通算や繰越控除と呼ばれ、青色申告の場合は最大3年間の赤字繰り越しが認められています。将来的に大きな利益が出る可能性があるなら、赤字でも確定申告を行っておいたほうが有利になるかもしれません。
税金の還付を受けられる場合がある
源泉徴収された税金や予定納税額が実際の所得に対して過大であった場合、確定申告を行うことで払いすぎた分を還付してもらえる可能性があります。たとえば、フリーランスが報酬を受け取る段階で源泉徴収されている場合、経費計上によって所得が低くなり、本来の納税額がもっと少なくて済んだというケースがありえます。税金を払いすぎたままにならないよう、還付を受けられる可能性があるなら所得を計算してみましょう。
フリーランス向け確定申告のやり方
フリーランスが確定申告を行う場合は、以下6つのステップで進めていきましょう。
- 必要な届出・申請を行う
- 取引を記録する
- 必要書類を揃える
- 確定申告書を作成する
- 確定申告を行う
- 納税する
各ステップについて詳しく解説します。
必要な届出・申請を行う
フリーランスとして独立する際、まずは税務署に対して「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。提出することで正式に個人事業主と認められ、事業所得として扱われるようになります。
また、青色申告を選択する場合は「所得税の青色申告承認申請書」も提出が必要です。青色申告者として青色申告特別控除や赤字繰越などを利用するには、申告対象年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2か月以内)に提出する必要があるため、早めに対応しましょう。
取引を記録する
フリーランスが確定申告を行ううえで、日々の取引記録は不可欠です。売上や経費が発生したら、その都度正確に帳簿へ記帳し、領収書や請求書を保管します。青色申告の場合は、一定の要件を満たすことで最大65万円の控除を受けられます。普段からクラウド会計ソフトなどを活用し、正確な記帳を心掛けましょう。
必要書類を揃える
確定申告の際には、収入や経費を証明するために請求書、領収書、レシートなどの証拠書類に加え、源泉徴収票なども揃えたうえで手続きをしなければなりません。申告に必要なタイミングですぐに取り出せるよう、日頃から保管や整理しておくことが重要です。
確定申告書を作成する
確定申告書を作成する段階では、個人事業主向けの「確定申告書B」に収入や経費、所得額などを記入し、青色申告を選択している場合は、損益計算書や貸借対照表を含む「青色申告決算書」も合わせて用意します。
また、生命保険料控除や地震保険料控除を申告する場合には、保険会社などから発行される証明書が必要です。書類の記入方法などで不明点が生じたら、国税庁のウェブサイトや会計ソフトの解説などを参考に作成を進めるとよいでしょう。
確定申告を行う
書類をすべて用意したら、税務署へ申告を行います。申告方法としては、税務署の窓口に直接書類を持参して提出する方法のほか、郵送、e-Taxによる電子申告が可能です。e-Taxを利用すればインターネットを通じていつでも申告が可能なため、多くのフリーランスが活用しています。
納税する
申告の結果、税金の納付が必要な場合は、原則として申告期限(通常3月15日)までに納税します。納付方法は、税務署や金融機関の窓口での納付のほか、インターネットバンキングやクレジットカード納付など多様化しています。納期限を過ぎると延滞税が発生したり、ペナルティが科されたりする可能性があるため、注意しましょう。
まとめ
フリーランスとしての活動で一定以上の所得を得た場合、会社員とは異なり、自分で所得を計算し、税務署に申告し納税を行う必要があります。手間や税負担などのデメリットに目を向けがちですが、各種控除の利用や経費計上、損益通算などのメリットが得られる場合もあります。
フリーランスへの転向を検討している方は、確定申告の要否やメリットを理解したうえでキャリアプランを検討してみてください。
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公認会計士・税理士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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