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【税理士監修】フリーランスの請求書の基本|インボイス・源泉徴収・消費税の書き方まで徹底解説

フリーランス請求書のイメージ画像

フリーランスとして活躍する上で、請求書は必要不可欠なビジネスツールです。報酬の受け取りや取引先との信頼関係を築くうえでも、正確な対応が求められます。本記事では、フリーランスが知っておくべき請求書の基本から、インボイス制度、源泉徴収、消費税の扱いまで、実務で役立つポイントをわかりやすく解説します。

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フリーランスの請求書の基本

フリーランスとして活動する上で、請求書は報酬を得るための重要な書類です。ここでは、請求書がなぜ不可欠なのか、その役割、そして請求書作成における基本的な項目について解説します。

フリーランスにとって請求書が不可欠な理由と役割とは?

フリーランスにとって請求書とは、報酬を受け取るための単なる書類ではありません。請求書は、以下のような複数の重要な役割を果たします。

取引の証明

請求書は、業務の内容や納品日、取引先との関係性を明確に記録することで、契約履行の証拠となります。

支払い管理

請求書を発行することで、未払い金の管理が容易になり、確実な入金へと繋げられます。

会計処理

請求書は、収入を証明する書類として、会計処理や税務申告に不可欠です。

信頼性の向上

正確かつタイムリーな請求書の発行は、取引先から「業務管理能力の高いプロフェッショナル」としての評価にもつながります。

請求書は、フリーランスが自身のビジネスを円滑に進めるための、非常に重要なツールなのです。

請求書の必須記載9項目とそれぞれの書き方ポイント

請求書には、一般的に以下の9項目を記載することが推奨されます。これらの項目を適切に記載することで、スムーズな支払いとトラブルの防止に繋がります。

項目

書き方ポイント

個人宛の場合

法人宛の場合

請求書番号

連番で管理しやすい番号を設定

同じ

同じ

発行日

請求書を作成した日付を記載

同じ

同じ

請求者の氏名または名称

個人の場合は氏名、法人の場合は法人名を記載

氏名を記載

法人名を記載

請求者の住所

個人の場合は住所、法人の場合は所在地を記載

住所を記載

所在地を記載

請求者の連絡先

電話番号やメールアドレスを記載

同じ

同じ

請求先の氏名または名称

個人の場合は氏名、法人の場合は法人名を記載

氏名と敬称(様)を記載

法人名と敬称(御中)または担当者名と敬称(様)を記載

請求金額

税込みの請求金額を記載

同じ

同じ

請求内容

業務内容や商品名、数量、単価などを具体的に記載

サブスクリプションなど毎月発生するものは、何月分の請求なのかを明確にするために〇月分と明記

同じ

同じ

振込先情報

銀行名、支店名、口座番号、口座名義を記載

同じ

同じ

支払期限

支払いをお願いする期限を記載

同じ

同じ

補足:請求先が法人の場合、「御中」は会社全体への敬称として使用し、特定の部署や担当者宛に送る場合は「〇〇部 御担当者様」のように記載します。請求書には、クライアントとの契約時に決まった振込手数料の負担について明記しましょう。「振込手数料は貴社ご負担でお願いいたします」など、具体的な文言を記載することで、誤解を防げます。

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請求書番号の正しい付け方、発行日と支払期限設定のルールと注意点

請求書番号、発行日、支払期限は、請求書を管理する上で非常に重要な情報です。これらの設定には、いくつかのルールと注意点があります。

請求書番号のつけ方

  • 連番方式:一般的には、発行順に連番を振るのが一般的です。例:0001、0002、0003...
  • 日付+連番方式:発行日と連番を組み合わせる方法もあります。例:20250130-001、20250130-002 ...
  • 顧客ID+連番方式:顧客IDと連番を組み合わせることで、顧客ごとの請求書を管理しやすくなります。

注意点:請求書番号は、重複しないように注意し、規則性を持たせることで管理を容易にしましょう。

発行日

  • 原則請求書を作成した日を記載します。
  • 月末締めなど、特定の締め日がある場合は、締め日を記載することも可能です。

注意点:発行日は、請求のタイミングを示す重要な情報となるため、正確に記載しましょう。

税理士からのアドバイス

請求書の締め日は自由に設定できますが、特別な事情やこだわりがない限り、「月末締め」にしておくのが無難です。

たとえば「毎月20日締め」としている場合、12月21日~31日の業務分は、翌年1月20日締めの請求書に含まれることになります。しかし、フリーランスの場合、所得税の課税期間はその年の12月31日までです。

そのため税務調査などが入ると、「12月21日〜31日分の売上が、その年の収入としてきちんと計上されているか」をチェックされる可能性があります。20日締めなどにしていると、記載時期と実際の売上計上時期にズレが生じやすく、誤認や指摘のリスクもあるため、月末締めにしておくことで、収支と帳簿の整合性を保ちやすくなります。

支払い

  • 支払期限設定:一般的には、「発行日から30日以内」や「月末締め翌月末払い」など、契約時に取り決めた条件に基づき設定します。
  • 交渉:クライアントとの間で、事前に支払条件(支払サイト)について合意しておくことが重要です。

注意点:支払期限は、クライアントの支払いサイクルを考慮し、無理のない範囲で設定しましょう。また、支払いが遅延した場合の対応についても、事前に確認しておくことが望ましいです。

これらの基本を押さえることで、請求書に関するトラブルを未然に防ぎ、スムーズな取引を実現できます。

フリーランスの請求書発行が重要な理由

フリーランスにとって請求書とは、ビジネスを円滑に進め、取引先と信頼を築くための重要なツールです。正確に請求書を発行することは、以下のような点で大きなメリットがあります。

「事務作業まで適切に対応できる人」と評価されやすい

請求書は、業務の正確さや責任感が現れるものでもあります。必要な情報を漏れなく記載し、期日を守って送付することで、取引先は「事務作業まで適切に対応できる人」と評価する可能性が高く、プロフェッショナルとしての信頼を得る上で非常に重要です。一方で、請求書に不備があったり、送付が遅れたりすると、だらしのない印象を与えてしまう可能性があるため、細心の注意を払いましょう。

間違いがあると発注者に手間をかけてしまう

請求書に記載ミスがあると、発注者側の経理処理に余計な手間をかけてしまうことになります。たとえば、金額が間違っていたり、振込先口座の情報が誤っていたりすると、発注者は確認を取ったり、修正を依頼したりすることになります。これは、発注者にとって大きな負担となり、信頼の低下を招く恐れがあります。

また、発注者の社内処理をスムーズに進める意味でも、請求書は正確に作成することが重要です。

お金にルーズな印象を与える可能性がある

請求書の発行が遅れたり、金額の計算が間違っていたりすると、取引先から「お金にルーズな人」という印象を持たれてしまう可能性があります。フリーランスとして仕事をする上で、お金の管理は非常に重要です。請求書は、あなたの金銭管理能力をアピールするチャンスでもあります。請求書一つで、今後の仕事にも影響を与える可能性があるため、細心の注意を払いましょう。

また、請求書の発行が遅れることで本来回収できる時期に資金が回収できず、資金繰りが悪化して、経営難に陥る可能性もあります。

請求書は、事業者としての信用を体現する書類といえます。正確で丁寧な請求書を作成し、期日を守って送付することで、取引先との良好な関係を築き、ビジネスを成功に導きましょう。

フリーランスのための適格請求書(インボイス)作成ガイド

適格請求書(インボイス)の記載項目を紹介

インボイス制度が、2023年10月1日から始まりました。フリーランスとして課税事業者を選択した場合、以下の項目を記載した「適格請求書(インボイス)」を発行する必要があります。

項目

詳細

売手(自分)の氏名又は名称及び登録番号

請求書を発行する売り手(自分)の正式な氏名または名称を記載し、国税庁から通知された登録番号(T+13桁の数字)を記載します。

取引年月日

取引をした日付を記載します。

取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

取引の内容を記載します。軽減税率対象の場合は「※軽減税率対象」などで区別します。

10%・8%それぞれの対象となる対価の総額及び適用税率

請求する商品やサービスに適用される消費税率(8%または10%)を記載します。

10%・8%それぞれの消費税額

税率ごとに区分した消費税額を記載します。

これらの項目が不足している場合、取引先が仕入税額控除を受けられず、迷惑をかけてしまう可能性があります。必ず確認するようにしましょう。

出典:インボイス制度について(国税庁)

課税事業者向けと免税事業者(インボイス発行事業者以外)の請求書の注意点

インボイス制度において、課税事業者と免税事業者では、請求書に記載できる内容や法的効力に違いがあります。それぞれの注意点を確認しましょう。

事業者区分

請求書の記載方法

課税事業者(インボイス発行事業者)

適格請求書(インボイス)を発行します。

免税事業者(インボイス発行事業者以外)

従来の請求書を発行します。インボイス(適格請求書)は発行できません。

免税事業者がインボイス制度に対応するには、「適格請求書発行事業者」として登録することが必要です。その際は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を所轄の税務署に提出します。

将来的な取引機会や信頼性の観点から、課税事業者への転換を検討するのも一つの選択肢です。

フリーランス請求書の源泉徴収と消費税の正しい記載方法

源泉徴収ありの場合の請求書への源泉徴収税額の計算方法と記載例

フリーランスとして仕事をする上で、源泉徴収は注意が必要な税金の扱いです。源泉徴収とは、企業がフリーランスへ報酬を支払う際に、所得税をあらかじめ差し引いて国に納付する制度のことです。請求書に源泉徴収額を明記することで、支払い企業側の事務処理をスムーズにし、後のトラブルを防ぐことにも繋がります。

源泉徴収の対象となる報酬は、主に以下のものが挙げられます。

  • 原稿料や講演料
  • 弁護士、税理士などの専門家への報酬
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  • 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  • ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  • プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(国税庁)

ただし、これらの報酬でも、例外的に源泉徴収の対象とならないケースもあります。支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う交通費、宿泊費等で、その金額が通常必要な範囲内のものであるときは、源泉徴収の対象となる報酬・料金に含めなくても問題ありません。

また、弁護士などに支払う金銭等であっても、支払者が国等に対し登記、申請をするため本来納付すべきものとされる登録免許税、手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては、源泉徴収をする必要はありません。詳しくは国税庁のホームページで確認するか、税理士に相談することをおすすめします。

出典:No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金(国税庁)

源泉徴収税額の計算方法は、報酬の種類によって異なりますが、ここでは一般的な「原稿料や講演料など」を例に解説します。

  1. 1回の支払い金額が100万円以下の場合
    報酬金額×10.21%
  2. 1回の支払い金額が100万円を超える場合
    (報酬金額-100万円)×20.42%+102,100円

たとえば、原稿料として8万円の報酬を受け取る場合、源泉徴収税額は8万円×10.21%=8,168円となります。この場合、請求書には以下のように記載します。

項目

金額

報酬金額

80,000円

源泉徴収税額

8,168円

差引支払金額

71,832円

請求書には、源泉徴収税額を明記するとともに、差引支払金額(実際に振り込まれる金額)も記載するようにしましょう。源泉徴収額を記載することで、発注者側の税務処理がスムーズになり、信頼感にも繋がります。また、源泉徴収額を事前に把握しておくことで、確定申告の際の納税額を予測しやすくなるメリットもあります。

出典:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき(国税庁)

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消費税の内税・外税表記の違い、税率ごとの区分方法、免税事業者の場合の書き方

請求書における消費税の扱いは、フリーランスにとって重要なポイントです。消費税の記載方法には、内税と外税の2種類があり、それぞれ請求書の書き方が異なります。

  • 内税:商品やサービスの価格に消費税が含まれていることを示す
  • 外税:商品やサービスの価格に消費税が含まれておらず、別途消費税額を加算することを示す

たとえば、1万円の商品を販売する場合、内税方式では「商品代金 11,000円(税込)」と、外税方式では「商品代金 10,000円」「消費税 1,000円」と記載します。

2019年10月1日からは、消費税率が10%に引き上げられましたが、一部の商品やサービスには軽減税率(8%)が適用されています。そのため、適格請求書発行事業者の場合、請求書には税率ごとに区分して記載しなければなりません。軽減税率の対象となるのは、主に以下のものです。

  • 飲食料品(酒類、外食を除く)
  • 新聞(定期購読契約に基づくもの)

税率ごとに区分して請求書に記載する際には、たとえば以下のように記載します。

項目

税率

金額

商品A

10%

5,000円

商品B(飲食料品)

8%

3,000円

消費税額(10%)

-

500円

消費税額(8%)

-

240円

合計

-

8,740円

インボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者(課税事業者)は、上記の記載に加えて、税率ごとの消費税額や登録番号などを記載する必要があります。一方、免税事業者はインボイスを発行できません。

出典:軽減税率制度の概要(国税庁)

源泉徴収と消費税を含めた請求金額の計算と請求書への表示方法

源泉徴収と消費税の両方が関係する場合、請求金額の計算は少し複雑になります。ここでは、具体的な例を挙げて、請求金額の計算方法と請求書への記載方法を解説します。

▼報酬、税率例

  • 報酬金額:100,000円
  • 消費税率:10%
  • 源泉徴収税率:10.21%

▼請求金額の計算例

  1. 消費税額の計算
    100,000円×10%=10,000円
  2. 請求金額(税込)の計算
    100,000円+10,000円=110,000円
  3. 源泉徴収税額の計算
    100,000円(税抜報酬金額)×10.21%=10,210円
  4. 差引支払金額の計算
    110,000円-10,210円=99,790円

上記の例の場合、請求書には以下のように記載します。

項目

金額

報酬金額(税抜)

100,000円

消費税額

10,000円

請求金額(税込)

110,000円

源泉徴収税額

10,210円

差引支払金額

99,790円

このように、請求書には報酬金額(税抜)、消費税額、請求金額(税込)、源泉徴収税額、差引支払金額をそれぞれ明記することが重要です。特に、源泉徴収税額は、税抜きの報酬金額を基に計算することを忘れないようにしましょう。また、インボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者は、税率ごとの消費税額を記載する必要があるため、注意が必要です。

請求書の作成は、フリーランスにとって重要な業務の一つです。正確な請求書を作成することで、クライアントとの信頼関係を築き、スムーズな取引を実現できます。

フリーランス向け請求書作成を効率化するテクニック

フリーランスにとって、請求書作成は避けて通れない業務の一つです。しかし、毎月発生する作業だからこそ、効率化を図りたいものです。ここでは、請求書作成を効率化するテクニックをご紹介します。

クラウド請求書サービスを利用する

クラウド請求書サービスは、請求書作成、送付、管理までをオンラインで一括して行える便利なツールです。多くのサービスが、請求書のテンプレート提供、自動計算機能、入金管理機能などを備えており、請求業務にかかる時間を大幅に削減できます。

クラウド請求書サービスのメリット

メリット

詳細

時間短縮

請求書作成、送付、管理にかかる時間を大幅に削減できます。

ミスの削減

自動計算機能により、計算ミスを減らせます。

業務効率化

請求状況の把握や入金管理が容易になり、業務効率が向上します。

どこでもアクセス可能

インターネット環境があれば、どこからでも請求書を作成・確認できます。

クラウド請求書サービスの選び方

  • 料金プラン:無料プランから有料プランまで、さまざまな料金プランがあります。必要な機能と予算に合わせて選びましょう。
  • 機能:請求書作成、送付、管理機能だけでなく、入金管理、会計ソフト連携など、必要な機能が搭載されているか確認しましょう。
  • 使いやすさ:操作画面が見やすく、直感的に操作できるか確認しましょう。
  • サポート体制:操作方法やトラブル発生時のサポート体制が充実しているか確認しましょう。

Word・Excel対応の請求書フォーマットとカスタマイズして利用する

クラウド請求書サービスを利用する以外にも、WordやExcelの請求書テンプレートを利用する方法があります。テンプレートをダウンロードして、自社の情報や取引内容を入力するだけで、簡単に請求書を作成できます。

Word・Excelテンプレートのメリット

メリット

詳細

費用を抑えられる

無料で利用できるテンプレートが豊富にあります。

カスタマイズ可能

自社のロゴやデザインに合わせて、自由にカスタマイズできます。

手軽に始められる

WordやExcelがあれば、すぐに請求書を作成できます。

Word・Excelテンプレートのデメリット

デメリット

詳細

手作業が多い

請求情報の入力や計算を手作業で行います。

管理が煩雑

作成した請求書を自分で管理する必要があります。

法改正への対応

インボイス制度など、法改正があった場合、自分でテンプレートを修正する必要があります。

WordやExcelで請求書を作成する際は、計算ミスに注意し、控えをしっかりと保管するようにしましょう。計算ミスが不安な場合は、Excelを使ってテンプレートを利用すると良いでしょう。

フリーランスが請求書発行・管理で失敗しないための注意点とトラブル対策

フリーランスが請求書の発行・管理で失敗しないためには、注意点やトラブルの対策方法を把握しておくことが大切です。ここからは、請求書発行のタイミングや振込手数料の負担、請求書でよくある記載ミスなどを紹介します。

請求書発行のベストタイミングと送付方法

請求書は、フリーランスにとって報酬を得るための重要な書類です。適切なタイミングで送付することで、スムーズな入金に繋がり、クライアントとの信頼関係を築けます。

一般的に、請求書の発行タイミングは以下の2つのパターンがあります。

  • 月に一度:「月末締め・翌月末払い」など、契約で定められた期日に合わせて発行します。多くの場合、月初に前月分の請求書をまとめて送付しますが、契約により異なるため、事前に支払い条件を確認しておきましょう。
  • 都度発行:プロジェクトや業務が完了するごとに発行します。比較的短期間で完了する案件や、スポットでの依頼の場合に適しています。

送付方法としては、メールでPDF形式の請求書を送るのが一般的です。メールの件名には「請求書」と明記し、請求金額、支払期限などを記載すると、クライアントが内容を把握しやすくなります。また、郵送が必要な場合は、事前にクライアントに確認を取りましょう。

振込手数料はどちらが負担?クライアントとの事前確認と請求書への明記

振込手数料の負担については、法的な定めはありません。そのため、原則として、クライアントとフリーランスの間で自由に決定できます。

トラブルを避けるためには、契約時に振込手数料の負担について明確に合意しておくことが重要です。一般的には、以下のいずれかの方法で決定されることが多いです。

  • クライアント負担:クライアントが全額負担する方法です。
  • フリーランス負担:フリーランスが全額負担する方法です。
  • 折半:クライアントとフリーランスが折半する方法です。

請求書には、振込手数料の負担について明記しましょう。「振込手数料は貴社ご負担でお願いいたします」など、具体的な文言を記載することで、誤解を防げます。

請求書の控えの保存期間と正しい保存方法

請求書の控えは、税務申告や会計処理において重要な証拠書類となります。法律で定められた保存期間を守り、適切に保管しましょう。

請求書の控えの保存期間は、法人と個人事業主で異なります。

  • 法人:原則として7年間保存する。
  • 個人事業主:原則として5年間保存する。ただし、消費税の課税事業者の場合は、7年間の保存が必要です。

保存方法としては、紙媒体で保管する方法と、電子データで保管する方法があります。紙媒体で保管する場合は、ファイルに整理して、日付順に保管すると管理しやすくなります。電子データで保管する場合は、PDF形式で保存し、バックアップを取っておくことをおすすめします。なお、2024年から、請求書を電子データで送付・受領した場合は、電子データで保存することが義務化されました。

出典:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)No.5930 帳簿書類等の保存期間電子取引データを適切に保存できていますか?(国税庁)

請求書のよくある記載ミスと未払い・支払い遅延時の具体的な対処法

請求書の記載ミスは、クライアントの社内処理を遅らせたり、支払いの遅延につながる可能性があります。請求書を作成する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 記載漏れがないか:請求日、請求書番号、宛名、請求金額、振込先など、必須項目がすべて記載されているか確認しましょう。
  • 金額に誤りがないか:計算ミスがないか、消費税の計算は正しいかなど、金額を再度確認しましょう。
  • 誤字脱字がないか:社名や担当者名などに誤字脱字がないか確認しましょう。

万が一、未払いや支払い遅延が発生した場合は、以下の手順で対応しましょう。

1.状況の確認

まず、クライアントに連絡を取り、支払い状況を確認します。支払い忘れや、請求書が届いていないなどの理由が考えられます。

2.催促状の送付

電話やメールで連絡しても支払いがない場合は、催促状を送付します。催促状には、請求金額、支払期限、未払いである旨を記載します。

3.内容証明郵便の送付

催促状を送っても支払いがない場合は、内容証明郵便を送付します。内容証明郵便は、送付した内容を証明するもので、法的な証拠となります。

4.法的措置の検討

内容証明郵便を送っても支払いがない場合は、弁護士に相談し、法的措置を検討します。

未払いや支払い遅延を防ぐためには、日頃からクライアントとのコミュニケーションを密にし、信頼関係を築くことが大切です。

フリーランスの請求書に関するよくある質問

Q1. 個人間の取引でも請求書は発行すべきですか?

個人間の取引であっても請求書を発行することをおすすめします。請求書は、取引内容を明確にするための証拠となり、後々のトラブルを避けるために役立つためです。税務調査があった場合にも取引が実際にあったことを証明する術となります。

口約束だけでなく、書面として残しておくことで、認識の相違を防ぎ、信頼関係を築くことにも繋がります。

特に、継続的な取引を行う場合や、金額が大きい場合には、請求書の発行は必須と言えるでしょう。請求書には、取引日、品名・サービス名、数量、単価、金額、支払期限などを明記し、双方が合意した内容であることを確認できるようにしましょう。

Q2. フリーランスの請求書に印鑑(角印・認印)は必須ですか?電子印鑑の扱いは?

請求書への印鑑は、法律で義務付けられているものではありません。しかし、日本の商習慣として、特に企業間取引においては、請求書に印鑑が押されていることが一般的です。印鑑は、請求書の発行者が誰であるかを明確にし、正式な書類であることを示す役割を果たします。

角印は、企業や団体の正式な印鑑として用いられます。フリーランスの場合、法人格を持たない個人事業主であれば、角印を作成する必要はありません。認印でも問題ありませんが、シャチハタなどインク浸透印は避けましょう。また、銀行印や実印の使用も避けるべきです。

PDFで請求書を送付する場合、電子印鑑を使用できます。ただし、電子印鑑が使えるかどうかは企業によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

Q3. 過去の請求書を紛失・誤って削除してしまったらどうなる?

請求書を紛失・誤って削除してしまった場合、まずはクライアントに連絡し、請求書の再発行を依頼しましょう。再発行された請求書には、「再発行」である旨を明記しておくと、経理処理上の混乱を防げます。

請求書の控えは、確定申告の際に必要となる重要な書類です。税務署から提示を求められることもありますので、紛失しないように適切に管理する必要があります。

万が一、請求書の控えを紛失してしまった場合は、銀行の入出金明細や、会計ソフトのデータなど、取引を証明できる他の書類を保管しておきましょう。これらの書類も、税務調査の際に有効な証拠となります。

フリーランスにとって請求書は重要

フリーランスにとって、請求書は単なるお金の請求手段ではありません。あなたのビジネスを円滑に進め、信頼を築くための重要なツールです。

整った請求書は、取引先からの信頼を得る第一歩です。「事務作業まで丁寧な人」との印象を与え、その後のビジネスにも良い影響を与えます。また、請求書がルーズな場合、信頼を損なう恐れがあります。期日を守り、正確な請求書を発行することが大切です。

請求書は、あなたのビジネススキルをアピールするチャンスでもあります。本記事で請求書の作成方法をマスターし、あなたのフリーランスとしての価値を高めましょう。

(監修日:2025年6月11日)

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山本 聡一郎氏

山本聡一郎税理士事務所(https://nagoya-soutax.com/)|税理士

山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。

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